表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
399/870

犬に乗った少年、再び



牧丘(まきおか)さん、ど~もご無沙汰してます♪」


山南(やまなみ)牧場の事務所には牧場主と娘が居た。


「ああ輝竜さん。向こうでお待ちですよ」

小屋の方を指して、娘と一緒に席を立った。


「スミマセンねぇ、場所をお借りして」

一緒に歩き出す。


「そもそもは輝竜さんの小屋ですから遠慮なくですよ」


「ありがとうございます♪」

「ええっと白久君?」


「山南牧場の牧場主、牧丘さんとお嬢さんの歌音(かのん)さんです。

 先輩が見えたと受付から聞いて、ちょっと連絡しておいたんですよ」


「んん?」


「ま、どうぞ♪」ドアを開けた。


馬白(ましろ)さん!?」


「その隣が鞍木(くらき)さん。

 南渡音の浜近くに山南牧場の乗馬練習場を作る予定でしてね、鞍木さんには其処の責任者をお願いしようと思っているんです。

 スポンサーとして馬白さん。

 所有していた土地をご提供くださったんですよ。

 で、先輩の病院候補地も近くなんです」

話しながら席に着いた。


「そこで僕に繋がるのか。って!

 最初から僕の話を予想していたのか!?」


「そうであっても、そうでなくても加わってもらいたかったんですよ」


「そうでなくても僕に? どうして?」


「先輩も竜騎君が気になっていますよね?」


「それは確かに……」


「では、話を進めましょう」



―・―*―・―



 悟達は馬白家に着いた。


〈サクラ~♪〉


「あれれ? ショウだ~♪」「デューク!?」


広い庭の遠くから大型犬達が駆けて来た。

〈サクラとユートも遊びに来た~♪〉


「お見舞いに来たんだってばぁ」

【犬な神様達ウチから引っ越し?】


【修行で浄化するんだって~♪】

〈まだ寝てるよ?

 出て来ないだけかもだけど~〉


「たぶん閉じ籠ってるだけだよ」

悟が悲し気に答えた。


『いらっしゃいませ』〈僕の友達~♪〉

ショウが玄関に向かって走った。

〈入れてあげて~♪〉フリフリフリ♪


隅居(すみい)さん、竜騎君は?」

ショウを追う形になった悟が尋ねた。


隅居は残念そうに目を閉じ、小さく首を横に振った。

「ですが奥様がお待ちですので此方に。

 皆様もどうぞ」



 輝竜家の居間とは また違った豪華さの応接室に通されたが、悟はどうしても竜騎と話したいからと部屋に行かせてもらい、彩桜も追った。


「これ、連絡物です」

祐斗が悟から預かった物を渡した。


「ありがとう。

 この厳重なのは通信簿ね。

 失礼するわね」

封を開けて一瞥して溜め息。


「あら、ごめんなさいね。

 皆さんとは大違いなのよ」


「ですから勉強会に誘いに来たんです」

「俺の通信簿、1学期と比べてください」

堅太が堂々とテーブルに広げた。


「これは……その勉強会の成果かしら?」


「はい。ほぼ2だったから親から部活停止 喰らう寸前だったんです。

 助けてもらって4と5になったんです。

 なんせ1位から4位まで揃ってますから」


「「そこまで言わなくていい」から」

凌央と祐斗が身を乗り出した堅太を引いて座らせた。


「この2人が3位と4――」「「いいからっ」」


空沢(からさわ)君を追った輝竜 彩桜君とサーロン君が満点で1位です」

沙都莉(さとり)サンキュ♪」

「「サーロン大丈夫?」」「はい」苦笑。


「俺達、今は仲いいけど、こーなったのは最近なんです」

「そう繋げるんだ」「おう♪ 祐斗の真似だ」

「それまで僕達は彩桜をイジメていたんです」

それならと祐斗が継いだ。



―◦―



「白竜、起きてるんだろ。開けてよ」


 悟はドアを叩きながら呼び掛け続けていた。

彩桜は竜騎が警戒するだろうからと、ドアを開けた場合を考えて離れて見ている。


「白竜! 返事してくれ!」


『もう友達でも何でもない! 来るな!』


「元気そうだな♪」『ウルサイ!!』


「馬になりかけた時の、覚えてるか?

 彩桜とサーロンが上着脱いで被せて隠してくれただろ?

 お兄さんも協力してくれて、馬みたく叫んだのも全部、過呼吸って事にしてくれたんだよ。

 なぁ、意地張ってないでコッチ来いよ。

 白竜だって、犬に乗ってたコ捜してただろ?

 会えるから来いよ」


『そんなエサに乗るかっ!』


「エサじゃなくて本当だから来いって」


『騙されるもんか!!』


〈悟、キャンプー様が怒ってるから今日は そこまでに。ね?〉

〈そうだな……〉



―・―*―・―



 その頃キツネの隠し社では――


《おいキャンプー、そんな怒る事か?》

不穏を纏う浄化用の保護水晶をツンツン。


《ビシュヌ様……》


《ん? その気……器に怒りじゃなく、落ち込んでるのか?》


《そ、そのような……》


《悩んでいるのか? 話してみろよ》

《どうかしたのか?》

《負の感情が漂っていますよ?》

ブラフマーとシヴァも寄って来た。


《そうだろ。

 キャンプーが何やら抱えているんだ》

《何ナニ何~♪ 悩みって何~?♪》ぽんっ♪


《ガネーシャ、お願いがあります。

 向こうに参りましょう》

《は~い♪ 父様♪》ぽよん♪ ぱよん♪



《離してくれたのだな?》《おそらくな》

離れる象神父子を見送っていたが、キャンプーに向き直る。

《《で、どうした?》》


《いえ、別に……何も悩みなど……》


《無いとは言わせぬぞ》《ほら言えよ》


《ありませんてばっ!!》霧を纏った。


《おいっ!》《水晶ごと消えるとは……》

《捜すか?》《不穏を撒き散らかされては困る》

《確かにな》《シヴァの代わりが必要だな》

《そうだな》《誰が良いか……》

ビシュヌとブラフマーは目覚めていない魂頭部(たまかしら)の方が圧倒的に多く、目覚めていても未だ半覚醒状態な者も多い(やしろ)内を見回した。


忙しくしているケイロンからは微笑み返されただけだった。


《今ピュアリラは来んのか?》

《昼間は人として忙しいのでは?》

諦めて自分達だけでキャンプーを捜し始めた。



―・―*―・―



 祐斗と堅太が陸上部に話したよりも詳しく過去を話し終えた時、悟と彩桜が戻った。


「竜騎は……やっぱり……」


「でも少し話せました」

「お返事あったから前進です♪」


「そう……ごめんなさいね」


「3学期末のテストには間に合わせます」

「俺達も友達なりますねっ♪」


「こんなに良い人達に囲まれているのに、あの子ったら……」


「誤解なだけですから、これから解ってもらいます。

 諦めませんから」

「可能性を閉ざさないよぉに挑み続けます♪」


「狐松先生の言葉だね♪」「だなっ♪」

「僕達も諦めませんから」「おうっ♪」

祐斗と堅太がハイタッチ♪


「実は、南渡音中学校に転校させ――」

「ソレはダメです!」一斉!


竜騎の母は初めて笑みを溢した。

「ええ。ありがとう。

 転校させようかと思っていたの。

 でも、このまま様子を見るわ。

 可能な限り、この家にも戻ります。

 ですから竜騎をお願いします」

ゆっくりと深く頭を下げた。


中学生達は慌てて口々に騒ぎ、まだ立ったままだった悟と彩桜が身体を起こさせた。

「俺達が友達なりたいだけですからぁ」


「僕達は友達に『なる』だけど、彩桜と悟は『戻る』だよね?」


「ん?」


「この前、話してたじゃないか」


「あ♪ 凌央ありがと♪ うん戻る~♪」


「それは?」


「大きな犬に乗ってたチビッ子ですよ♪」

不思議そうに首を傾げていた竜騎の母に悟が笑顔で説明した。


「あら……ええっ? 実在したの?」


「はい♪」「えへへ~」

「僕達の母も彩桜が毎日 犬に乗って出掛けていたのを見ていたそうです」

「そぉなの?」


近所の一団、笑顔で頷く。


が、すぐに曇る。

「危険だから僕達には見せないように必死だったらしいけど」


「そぉなるよね~」にゃはは。


〈大きな犬ダメ?〉

ショウがドアを開けて入って来た。

続いて ぞろぞろ大型犬。


「デューク!」祐斗が出そうと走る。


〈ちゃ~んと足 拭いたよ~♪〉

二足立ちして両手パー♪

〈みんなも拭いてあげた~♪〉

【ソラ~♪ お兄、ヒトいっぱいで小さくなってるから大丈夫だよ~♪】

【ソレ言いに来てくれたの?】【うん♪】


「ショウてば~♪

 ビックリしちゃってるから外で遊ぼ~ねっ♪」


〈うんっ♪ 乗る?♪〉「いいの!?♪」

〈もっちろ~ん♪〉「ありがとショウ♪」

サッと乗り、

「それじゃ失礼しま~す♪」

笑顔満開で手を振って出て行った。


「僕も失礼します!」

祐斗はデュークを連れて出た。


我王と義王も新入り達を従えてスキップするように後を追う。


「俺達も行こーぜ!」

「ありがとうございました!」

「ごちそうさまでした!」

一斉に席を立って礼をして走った。



 残った悟が向き直って、ひと呼吸。

「騒がしくて ごめんなさい。

 みんなイイヤツで、彩桜は変わってないんです。

 でも普段は犬じゃなく馬に乗ってるんです」


「それじゃあ竜騎と同じ?」


「だから友達に戻れると信じてます。

 彩桜のお兄さんも、その繋がりを利用するって動いてくれてますから」


「もしかして社長が休みを取ったのは――」


「はい♪ おじさんはソッチです。

 みんなで楽しく乗馬計画です♪」







やはり白久は企んでいました。

『みんなで楽しく乗馬計画』は、悟と彩桜は知っているんでしょう。

サーロンも、かな?

前夜に白久が彩桜の部屋で話し込んだらしいので。


キャンプーはラピスリにフラれて落ち込んでいるのは間違いありませんよね。


シヴァは本当に用があってガネーシャを呼んだようですよ。

父子揃って凄い大神様なんですから。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ