3日目①:やっぱりリズム音痴
部対抗スポーツ大会3日目、つまり最終日。
『バレーボール男子、準決勝戦B、歴史研究部と、サッカー部の試合は、15―0、15―0の、2セット先取で、歴史研究部が、決勝戦に進みました。
Bコート、バドミントンの準備を、開始してください』
準決勝戦以降も15点先取制のままだが、3セット制になっている。
Aコートでは陸上部と水泳部の試合が白熱しているが、朝イチの試合をさっさと終えた歴史研究部員は黒瑯とリーロンの所に行った。
「頑張ってるなっ♪」
「彩桜とサーロンは?」
「彩桜はバドミントンの開会式だって。
サーロンは彩桜を見てたいって。
だから二人の分もください」
「おう♪ 冬でも水分補給は大事だからなっ」
「汗かいた分、シッカリとなっ♪ ほらよ♪」
「お♪ 悟も来たか♪」「バレーの試合は?」
「俺、サッカーなんです。
陸上部と水泳部の分、20本お願いします」
「6本ずつ袋に入れるからな♪」
「余りはテキトーに配れよな♪」
「ありがとうございます!」
「俺達も運んでやるからな」「そうだね」
一緒に体育館に戻るとコートから竜騎が睨んだ。
「相変わらずなんだね」
「苦戦してるから余計だと思う」溜め息。
ボードを見ると1セット目は負けていた。
進行中の2セット目も――
「4―8で負けてるのかぁ。
おい、ドリンク置いて向こー行こうぜ。
彩桜のバド始まるぞ」
「そうだね。また初戦にしてもらったんだね」
ぞろぞろとサーロンの所に行った。
ずらりと並んだところに彩桜が来てドリンクをゴクリ♪
「行ってきま~す♪」
元気にコートに入った。
彩桜の向こうにバレーボールをしているAコートがあり、真正面に陸上部が見えている。
「アイツ、トスは上げねぇんだな。
逃げてるぞ」
「トスを上げてしまったらアタックできないからだよ」
「けど、反対側にトスされたな」
「先輩にも遠慮なく怒ってるね」
「レシーブは積極的だな」
「キャットウォークに落ちたね」
「先輩達、ホッとしてない?」
「うん。してるよね」
バレーボールは予選の6人でとアニヲタ3人から拝まれてしまった堅太 祐斗 凌央 恭弥は、Aコートも気になって仕方がない。
「あ♪」「彩桜ナイス!」「鋭く決まったね♪」
喜んでいるとバドミントン部員が近寄って来た。
「噂通りだね部長君」
「練習試合とかは顧問の先生から狐松先生にお願いします」
副部長が困り顔でペコリ。
「うん。今朝、他の部長達から聞いたよ。
もしもダブルスをするとしたら、彼とは誰?」
「そうなるとサーロン?」見る。
「バドミントンは誰も、ですか?」
左右キョロキョロ。
「祐斗と俺なら、やれるとは思うけどな。
バド部相手となるとなぁ」
「だったらボクやるです♪」
「そう。だったらダブルスで申し込むよ。
その時はヨロシク」サーロンと握手。
「あっ!」「ん?」「いえ、バレーの方です」
「揉めているね。何があったの?」
「怒ってる彼がレシーブしたんですけど、誰も繋がなかったんです」
「それで負けてるのか。
去年の優勝チームなのに……」
「そうだったんですか。
あ、でも引退した3年生がメインの編成だったんじゃないんですか?」
「去年は、と言うか陸上部は例年そうだったらしいけど、上級生がバスケで、下級生はバレーだったと聞いたよ。
サッカーは全員参加。走り回るからね。
野球にエントリーしていて驚いたよ」
「アイツ、全てをブチ壊したんだな」
「また怒ってる1年?」連続失点で。
「はい。野球にエントリーしたのも強引にだと聞きました」
「深長も苦労してるんだね、可哀想に。
あ、交替したね。
あれが去年のメンバーだよ」
「へぇ~、よく下がったな」
「試合を棄権するか交替するか、みたいな口の動きだった。
決勝戦には また出るだろうね」
「凌央、読唇術?」
「このくらい普通だよね。
ほら、動きが変わった」
「陸上部が勝ちそうだね」「うんうん♪」
「「「「彩桜!?」」」」「ほえ?」
「彩桜、勝ったです♪
今の試合、終わったら、また彩桜です♪」
「どうして?」
ごっくん。
「この試合 勝ったヒトと俺、2回戦だから先なったの。バレー決勝戦あるから」
「あ、逆転した」陸上部が。
「このチームなら強いけどね~」
「「そうだね」」「だな」「うん……」
「どんなチームが相手でもボク達は全力で楽しむです♪」「うんうん♪」
「「そうだね」♪」「だよなっ♪」「うん♪」
―・―*―・―
地下礼拝神殿では、マヌルヌヌが広く取り直した保護結界を維持し、カウベルルが像から魂頭部を取り出しては保護光を重ね、ハーリィとエィムが魂顔を確かめては並べていた。
人神用の地下通路からラピスリが戻った。
【姉様、人神の皆様は?】
【礼拝神殿は揺れた原因を調査中として、通路途中に仮礼拝堂を穿ち、像を配置した。
順調に集まってくれている】
【神眼、使えるのですか?】神眼封じは?
【分身から見ている】
【でしたら僕も案内係の分身を置きます♪】
飛んで行った。
【やはり、かなりな数なのだな】
エィムを微笑んで見送り、礼拝神殿内を見渡した。
【ああ。こんなにも人世に名を残した大神様がいらっしゃるとはな】
【おそらく、なのだが。
継承神様も、お弟子様も、大神様に似た風貌の方もいらっしゃるのだろう。
私の兄弟も護りの地の外で捕まれば堕神とされていたのだからな】
【人神には区別がつかぬ、か……】
【ラピスリ。
ピュアリラ様の樹が仰るには、この方が最後に封じられたとの事です。
お目覚めいただいて、お話を伺っては?】
カウベルルが差し出した。
【はい。では少し離れます】受け取って礼。
―・―*―・―
『バレーボール男子、準決勝戦A、陸上部と、水泳部の試合は、6―15、15―12、15―4の2セット勝利で、陸上部が、決勝戦に進みました。
続きまして、Aコートは、バレーボール男子、決勝戦、歴史研究部と、陸上部との、試合を行います。
Aコート、午後は、バレーボール男子、3位決定戦。
バレーボール女子、3位決定戦。
バレーボール女子、決勝戦の順で、行います』
「よろしくお願いします!」両チーム一斉。
彩桜のサーブから始まった。
これまでの試合では誰も受けられなかった勢いのよい球を竜騎はレシーブした。
しかし高く弾んだ球は敵陣へ。
恭弥、祐斗と繋いで堅太が力強いアタック。
「俺が!」
しかし竜騎は追いつけず、歴史研究部が1点先取した。
「みんなナイス♪ 楽しんでいこ~ねっ♪」
次は悔しさが露な竜騎がサーブ。
彩桜、凌央、サーロンで、また1点。
そんな調子で歴史研究部は得点を重ねていった。
が――
〈なんか……変?〉彩桜が首を傾げた。
〈たぶん彼のリズム感が悪いんだよ〉
〈あ~、そっか。白桜も苦労してたもんねぇ〉
〈だから2年生達は非協力的なんじゃないよ〉
〈リズム合わなくて取れないんだねぇ〉
〈だと思うよ〉
――これまで面白いように決まっていたフェイントアタックが全く通用しない。
竜騎にとってはナイスタイミングらしく全て受けられてしまっていた。
けれどもレシーブの後が続かないので陸上部の得点には至らなかった。
「祐斗、時差フェイントはダメ。
誰打つかわからないのにしよ。
方向バラバラ同時ジャンプね」耳打ち。
祐斗が前を向いたまま頷く。
その時、竜騎がアタック!
彩桜 祐斗 サーロンが前衛になっていたので、にこにこ鉄壁ブロックでプッシュしてネット直下に落とした。
「ナイスブロック♪」
堅太がパパパンッとハイタッチ♪
〈すっごく睨んでるぅ!〉
〈2年生は苦笑してるね〉
―◦―
そんなこんなあって多少苦戦したが、これまで通り失点無しで歴史研究部は第1セットを勝利した。
集まって黒瑯特製ドリンクを飲んでいると、上から回復治癒が降ってきた。
〈青生兄ありがと~♪
ね、瑠璃姉は?
診察してるのメイ姉だよね?〉
〈うん。神世に行ったままなんだ。
ラピスラズリ様が急ぎの探しものだって〉
〈ふぅん。ね♪
ちっちゃい狐ちゃん達、だぁれ?〉
〈お稲荷様のお孫様だって。
珊瑚ちゃんと紫苑くん〉
〈ウチにも来てくれるかにゃ~♪〉
〈来るんじゃないかな?
好奇心旺盛そうだからね〉
〈病院うろちょろしてるもんね~♪
楽しみ~♪〉
〈そうだね。それはそうと……〉
〈うん。陸上部、大騒ぎだねぇ……ああっ!〉
〈どうしても彩桜に勝ちたいんだね。
棄権すると言われて暴力を寸前でやめたね〉
〈友達なりたいのになぁ……〉
第2セット開始を知らせる笛が鳴った。
リズム音痴な竜騎にとっては時差フェイントがナイスタイミングになるという、彩桜達にとっては困った状態ですが、歴史研究部の武器は他にもありますので無問題です。
〈3日目・午前中〉
グランドB :サッカー(団)3位決定戦
体育館 A :バレーボール(団)男子準決勝戦~
B :バレーボール(団)男子準決勝戦
→バドミントン(個)
・バレーボール男子 決勝戦
歴史研究部vs陸上部
・サッカー 3位決定戦
野球部vs軟式テニス部




