1日目①:個人戦も全部!?
夜が明けてもキツネの隠し社は大神達で騒然としており、瑠璃も帰って来ていないが、輝竜兄弟とソラと八郎と悟は週明けの日常に戻っていった。
爆走散歩前に彩桜の部屋に戻り、サーロンとしての日常に戻っていたソラは、彩桜と一緒に登校して元気よく教室に入った。
「「おはよ~♪」です♪」
「おう♪ 二度目の おはようだな♪」
「おはよう、彩桜 サーロン♪」
堅太と祐斗に続いて他の部員達も口々に挨拶を交わした。
「クラス朝礼の後、歴史研究部は屋上ねっ♪」
「俺、体育館の準備しに行くから欠席な。
開会式の後、バスケの審判だから野球の予選まで会えないぞ」
「ん。頑張ってね~♪」「おう♪」『彩桜君!』
「ほえ?」
美雪輝達が驚き顔で走って来た。
「個人戦も出るの!?」「全種目!」
「ほえ? 俺、団体戦だけだよ?」
「でも!」「対戦表!」「確かめて!」
「彩桜 行こう!」「う、うん……」
祐斗に引っ張られて走った。
部対抗スポーツ大会は2学期の期末テスト明けの行事で、団体戦と個人戦がある。
団体戦は野球・サッカー・バレーボール・バスケットボールの4種目中、各部3種目までエントリー可能となっている。
エントリー部数が多い種目は予選結果の4強で準決勝戦・決勝戦が行われる。
個人戦は人数の少ない部でも参加できるように自由エントリーとなっている。
部内から何人エントリーしても構わないが、エントリー者は部の代表とされる。
個人戦に予選は無く、最初からトーナメント戦となっている。
団体戦・個人戦各種目優勝の他に、勝ち3・引き分け1・負け0の勝敗点合計を参加試合数で割った点数での総合優勝もある。
団体戦・個人戦とも部活動でしている競技には出られないレクリエーション的な行事だ。
「ほら見て!」
「マジかよ……」「どうなってるんだろ……」
予定時間を見れば、彩桜が走り回ればという条件付きだが個人戦も団体戦も1回戦は被らないように組まれている。
「ホントどぉして?」『どうかしたのか?』
「あ、瑞田先生」「これ見てくださいよ!」
サッカー部顧問の瑞田が、騒いでいる集団を若干 遠巻きに取り囲む人垣を分けて寄って来た。
「ん? 輝竜、やけに張り切ってるな」
「じゃなくて!」
「彩桜はエントリーしてないんです」
「個人戦の責任者は都辺先生だったな。
確かめてみよう。輝竜、職員室に」
「うん……」「彩桜 行くよ!」
また祐斗に引っ張られた。
瑞田が都辺に説明していると狐松も来た。
「エントリー票を見せて頂けますか?」
「ええ。これです」抽斗から出して渡した。
「机の上に置かれていた中にあったと思います」
「輝竜君の字ではありませんね。
顧問印も私の印鑑ではありませんよ。
私でしたら日付印を使いますからね」
「ね、先生。
彩桜の『彩』の字、間違ってます」
祐斗が指摘。
「そうですね。漢字の小テストでもすれば犯人は明らかになりそうですね。
さておき、輝竜君。どうしますか?」
「う~~~ん……」
〈全部、全力でいいんですよね?〉
〈構いませんよ。存分にどうぞ〉
〈こんなので歴史研究部は困らないもん〉
「やります。全部 出ます」「彩桜!?」
「大丈夫。全部 優勝するから。
みんなにも迷惑かけないから」
〈紅火兄、軟式テニスと卓球と剣道と柔道とバドミントンに必要な物お願い〉
〈ふむ。任せろ〉〈ん♪〉
「教室に戻ろ。失礼しました」ペコリ。
真顔で踵を返した。
「待って彩桜!」「行くぞ!」
―◦―
クラス朝礼後の打ち合わせも言葉少なで、全校(と言っても1、2年生のみ)開会式の後も無言で、彩桜は『心配しないで』とだけ言って軟式テニスの試合に行ってしまった。
「応援に行こう。
こういう時こそ団結しないと」
副部長として祐斗が部員達を見回す。
「そうだね。
こんな妨害なんて問題ないからね」
凌央がフンと鼻を鳴らした。
歴史研究部員は気合いを込めて頷き合うとテニスコートに向かった。
―◦―
彩桜は第一試合なので既にコートに入っていた。
対戦相手はバレーボール部の部長で、文化祭で世話になったのもあって笑顔で開始の握手をしていた。
サーブはバレーボール部長から。
運動部の部長らしく鋭い球がコーナーに向かったが、彩桜は難なく返し、より鋭く彩桜の正面のコーナーに突き刺した。
高く跳ねた球が遠くに行ってしまったのを軟式テニス部員が追う。
別の球で次のサーブとなった。
「ホントに軟式?」
「彩桜君がやれば、なんでも別物だね♪」
「だぁね♪」
美雪輝と愛綺羅が来ていた。
「あれ? テニス部じゃなかった?」
「審判は次の試合だし女子の方なんだよね。
今はチアガールとして来たの♪」
「え?」
後ろ手に隠していたポンポンを挙げて振った。
「「彩桜君ガンバって~!♪」」
彩桜がビクンとした。が、試合続行。
「あんまり騒がないであげてよ」
という祐斗の声は届きそうになかった。
―◦―
アッサリ勝った彩桜はテニスラケットも突っ込んだ大きなリュックを背負って次へと走って行った。
「追うよ!」「次、何?」「卓球!」
今度は体育館へ走る。
―◦―
「せいぜい走り回って疲れたらいい」
校舎に隠れて様子を窺っていた人影は、ニヤリと笑ってグランドの方に向かった。
―◦―
軟式テニスの試合を早く終わらせた彩桜だったが、卓球も前の試合が早く終わったらしく、開始ギリギリで到着した。
瞬移だったら楽勝なのにな~。
と思いつつ礼。
この試合も軽やかなステップでサッサとストレート勝ちした。
次は野球の予選試合。
A・Bブロックに分かれ、各4部での総当たり戦になっている。
「俺も見てたぞ♪ やっぱ強いなっ♪」
「ちゃんと審判して」「凌央君てば~」
「応援ありがと♪」
堅太も合流して揃ったところで、ようやく彩桜も笑顔を見せてグランドに向かった。
「いっぱい三振するです♪」
「うんうん♪
外野までいかないから安心してね♪」
予選第1試合の相手は水泳部だった。
ルールは通常の野球と同じだが、予選は6回までと短くなっている。
向かい合って並ぶと、体格で張り合えるのは堅太だけだった。
後攻な歴史研究部が守備に着く。
ピッチャーがサーロン、キャッチャーが彩桜で、内野は祐斗 堅太 凌央 恭弥。
アニヲタ3人は安心して近くに寄って楽しそうにエアーで守備練習している。
1回表。
サーロンが部員達に宣言した通り、掠りもさせずに連続三振でチェンジ。
1回裏。
先頭バッターの祐斗がヒットで出塁した。
続く凌央は冷静にフォアボールを選ぶ。
堅太もヒットで満塁になった。
次は彩桜。
水泳部キャッチャーは諦めて押し出そうと立ち上がったが、ピッチャーが首を横に振った。
「冗談だろ」
呟いてタイムを取り、ピッチャーへと駆け寄って言い合っていたが、戻ると座ってミットを構えた。
『勝負!』と投げられた球は前3人の時よりも格段に速かったが、嬉しそうな彩桜が打ち上げて空に消えた。
ノーアウト満塁ホームラン。
1回裏、終わるのか?
生徒達だけでなく父兄も集まり始めていて、見ている大勢が そう思った。
しかし、次の星琉はファウルの末に三振。
その次の直史はボテボテヒットがイレギュラーに跳ねて運良く出塁。
恭弥も走者を送ったに近いラッキーヒットだったので、誰もが前半だけかと思い直した。
――が、サーロンもホームランで3点追加。
尚樹のフライ、祐斗はファースト前に打ってしまってチェンジになったが、歴史研究部はイキナリ7点の好スタートを切った。
2回以降もサーロンは奪三振数を増やした。
当たったところで内野に止められてしまい、水泳部は出塁すらも許してもらえなかった。
攻撃では彩桜とサーロンが敬遠されてしまい、以降は大量得点には至れなかったが、押し出しもあり、ヒットを重ねて得点は加え続けていた。
そして最終6回の表。
守備に向かおうとしていると――
『歴史研究部、輝竜 彩桜君。
至急、テニスコートにお願いします』
――放送で呼ばれてしまった。
「ほえ?」
「試合が早く進んでるんじゃない?」
「彩桜抜きかぁ?」「どうするの?」
「三者三振でゲームセットです♪」
サーロンにっこり。
「だなっ♪」「急ごう!」
〈彩桜様、慌てなくても話しておきますよ〉
〈狐儀師匠ありがと~♪〉
〈彩桜、これからは神眼で見て、呼び出されないようにしよう。
ボクも見るから手分けしようよ〉投げる。
〈ありがとサーロン♪〉スパン! 返す。
〈呼ばれる前に行ってね。
必要なら分身するから〉投、受、投。
〈出来るよぉになった!?〉受、返。
〈短時間なら。
でも、あまり自由には動けないから、動かないといけない方をボクがするよ。
彩桜は心配しないで個人戦に集中してね〉
投、受、投、受、投。
〈迷惑かけちゃった~〉受、返。
〈ボクは楽しんでるよ♪
いい修行にもなるし♪
彩桜はバレないように頑張ってね♪
それと、楽しんでね♪〉
投、受、投、受、投。
〈うん♪〉スパン!
「3アウト。ゲームセット!」
〈勝ったね♪〉〈うんっ♪〉
誰かに、って誰かさんしか居ませんよね。
彩桜は全部勝つつもりです。
〈1日目・午前中〉
グランドAB:野球(団)予選
体育館 A :卓球(個)
B :バスケットボール(団)予選
テニスコート:軟式テニス(個)
・野球 予選Aブロック(Aグランド)
撫子連合、水泳部、吹奏楽部、歴史研究部
・野球 予選Bブロック(Bグランド)
陸上部、サッカー部、武道連合、バレー部




