神世の真実の歴史①
夜中にキツネの社に集まった大神達は、解呪を試みようと夜明けと共に馬白家上空に移動した。
〈あら、こんなにも龍神様が……〉《お袋様!?》
〈はい? 私、産んだことはないのだけれど……〉
夜半から竜騎を見張っていたトウゴウジが驚き戸惑っている。
〈ツカサ、その少年が話しているのではない。
内なる大神様がお話しなのだ〉
〈ええっとホウジョウ、どういうこと?〉
《説明するより開いた方が話が早い!
皆! また手伝ってくれ!》
《サル、少しは落ち着け》八郎が悟をぽんぽん。
〈と言う事だ。俺が支える〉
《そりゃいいや♪
親父様が支えるのが一番だ♪
もう1人の親父様は?》
キンギョが娘に寄る。〈支える〉
〈父さんも? うん……お願いするわね〉
最初の解呪はクーゴソンとカイハック、オフォクスとドラグーナの予定だったので、他の大神達は交替迄と眠り修行をしていた。
なので器達が慌てて叩き起こし、トウゴウジと、支えるホウジョウとキンギョが並んで中央に居る魔法円を囲んだ。
トウゴウジにはキャティスの欠片も入っているので寿も呼ばれ、説明は後と囲みに加わらされてしまった。
〈兄さん、響ちゃんはいいの?〉
〈現状、響の力は全て写しらしい〉
〈らしい?〉
〈俺の内なる大神様が、そう仰っている〉
詠唱が始まった。
―・―*―・―
この日、死司神としては休日なエィムは、ラピスリを捜してキツネの社に行ってみた。
【オフォクス父様! ラピスリ姉様!
いらっしゃいませんか!?】
隠し社や他の社を探っても、何処にも居なかった。
【家も留守で、動物病院にも居ない……。
此処に居なければ他には……?
ん? バステト様もバステート様も?
フェネギ様とメイファ様も?
力丸だけが夢の中なのか……】
途方に暮れ気味に独り言ち、周辺を探る。
【エィム様、街の1箇所に神力の大きな獣神様方が集まっておられます】
【ありがとうございますソリューダン様】瞬移。
――ラピスリから貰った神器の部品を持って待機しているソリューダンに並ぶと、姿は見えないものの大神が集まっているとだけは感じ取れた。
その塊の中央から青い光が迸った。
【姉様の光ではありませんが行ってみます。
もう暫くお待ちください】
ソリューダンが頷いたのを見て瞬移した。
―◦―
【エィム、何かあったのか?】
すぐに気付いたラピスリが、歓喜に湧いている集団を迂回して飛んで来た。
【ラピスリ姉様を捜していたんですけど、これは何事なんです?】
【この真下には大神様の欠片を持つ少年が居るのだが、その素行に大神様がお怒りなのだ。
何度か生じさせてしまった禍に触れ、呪を受けてしまわれたらしいと他の大神様が集まり、解呪を試みようとしているのだ】
【大神様、ですか……】
見知っているユーレイ達を目で追っている。
【前の四獣神様やその補佐をなさっておられた方々だ。
他にも継承神名を称号として得られた大神様方もいらっしゃる】
【継承神名?】
【人にとっての古代、人を導き、進化を調整なさっておられた神々の御名を称号として名乗られている大神様だ。
バステト様のようにな】
【人世の神話に名を残している神様の継承者なんですね?】
【そうなるな。で、私に用なのか?】
【はい! 先日 頂いた神器の部品を観測域に届ける許しをやっと得たんです。
ただし、姉様の同行が条件なんです】
【随分と許しを得るのに時を要したな】
【また寝込んでいたそうなんです。
それと僕の休み待ちで遅くなりました】
【中間管理職は大変だな。
私が条件とは不気味だが、行こう】
【お願いします!】
―◦―
ドラグーナとオフォクスに話して神世の下空に術移したラピスリは、エィムとソリューダンを廊下に待たせて、龍狐の半獣姿で死司最高司の部屋に入った。
それを見たマディアも半獣姿になり、礼をした。
ラピスリはザブダクルに美しさを極めたような礼をしてからマディアに寄り、互いに尾を前に回してポンポン。微笑み合った。
そしてザブダクルと対峙する。
「随分と弱っておられますね」治癒光で包む。
「やはり強く清々しい治癒だな。感謝する」
「再誕なさった方がよろしいのでは?」
「それを許してもらえるのならばな」
「確かに。途上で封じられましょうね。
それで此度の件、私が出向かねばならぬ理由をお聞かせ願えましょうか?」
「幾つか有るのだが……纏めれば獣神の為だ」
「ほう。神世を滅ぼそうとなさっておられるのに、獣神の為とは……何故に?」
「獣神狩りを終わらせ、王からも等しいと宣言させたにも拘わらず人神は獣神を忌み嫌い、蔑む。
獣神は姿を見せぬ。
これではマディアの肩身が狭いままだ。
儂は、それが許せぬ。
故に獣神の圧倒的な神力を他の職神共に見せ付けてもらいたいのだ」
「弟の為……そうですか。
しかし、その程度では人神達は態度を改めないでしょう。
ダグラナタンが込めた支配には獣神への憎しみが込められております。
そこに更に強い支配を重ねれば憎しみも増幅されます」
「ならば、それは改善する!」
「それでも難しいとは思いますが……」
「それは何故だ?」
「貴方が地中に封じられて以降の長い歴史の中で、獣神狩りは何度も行われてきたからです。
ダグラナタンは それを徹底しただけ。
つまり根深いものがあるのです」
「ピュアリラ様に救われた子孫でありながら愚かな……」
「だから滅ぼす、に至るのですか?
それも初代ピュアリラ様のご意志に反するのでは?」
「そ、それは……」「今ピュアリラ様っ!」
それまで静かに控えていたマディアが声を上げた。
ハッとしてマディアに目を向けたザブダクルは『ザブダクル様を追い詰めないで!』と懇願する瞳と強い思いに負けて気を鎮めようと目を閉じた。
「姉様は今ピュアリラ様ですよね?
僕は獣神狩りが何度も行われてきたなんて知りませんでした。
どうかお教えください。
隠され、埋もれさせられてきた神世の歴史を。
お願い致します!」
話の矛先を変えようとしているとザブダクルには伝わった。
「儂も知りたい。
話してもらえるだろうか」
「前にもお話しした通り、私は継承途上でしたので正確には『今ピュアリラ』ではありません。
継承ピュアリラは歴代方々のご記憶をも継ぐのです。
その途上でしたので、完璧な歴史ではありません。
それでもよろしいですか?」
「頼む」「お願い致します!」
「過去に遡って得ておりましたので、私が知り得ているのは神世の半分が灼熱となって以降です」
ザブダクルが頷いたので続けた。
「かつて人神の地であった大陸が灼熱の地と化し、広大な雲海が干上がっていると知った初代四獣神様は逃げ惑う人神達を月へと逃がしました。
貴方が滅した あの道で人神達は命を繋いだのです。
その後、初代四獣神様は貴方を地中に隠した地に戻りました。
そして悪神オーロザウラの支配で動かされ続けている兵士達から貴方を護り続けたのです」
「護り続けていた、だと?」
「継承ピュアリラ様がご覧になられた記憶のままです。
聞きたくなければ観測域に向かいます」
「いや、話してくれ」
「初代四獣神様が成した岩壁は灼熱から獣神の地を護りました。
ですが その熱はオーロザウラの悪行の余波と共に下に降り、雲地の半分を消失させ、人世をも灼熱と化させて滅ぼしてしまったのです。
月から神世に戻り、獣神の地を分けて貰った人神達は獣神を端に追いやり、領地を拡げていったのです。
貴方を隠していた地にも何度も何度も攻め込んで来ました。
領地拡大の為、そして宝を護っていると信じ、その宝を奪う為に。
オーロザウラの支配が消え去った世代となっても、初代四獣神様の戦いは終わらなかったのです」
「何故そうまでして儂を護ろうと……?」
「諸悪の根元はオーロザウラだと信じていたからです。
支配を受けている兵士に見つかれば貴方は滅されてしまうでしょう。
欲に駆られている者達に見つかろうとも同じ。
宝ではないと滅されてしまったでしょう。
貴方を取り出し、何度も話そうとなさったそうですが、貴方からの禍に襲われ、呪を受けてしまったそうです。
それでも尚、初代四獣神様は貴方を護り続けたのです」
「それが……真実、だと……?」
「貴方が信じようとも信じられずとも、それが真実なのです。
継承ピュアリラ、継承アミュラは、龍狐の女神と決められてはおりません。
その子孫または子孫から欠片を受けた龍または狐の神。
男神であろうとも構わないのです。
神にとって性別なんぞは切り替えられるものですので」
「まさか儂を封じた中に居った龍も継承ピュアリラであったのか!?」
「はい。ですので、その記憶、それを私が客観的に見たものが先程の話なのです。
呪を受けてしまわれた青龍様は『ピュアリラ』を継がざるを得なくなりました。
ここからは次代の継承ピュアリラ様のご記憶ですが……。
呪の影響と大きな神力を失った青龍様は貴方を護る事が出来なくなり、月に。
獣神を排除しようとし続ける人神を護り続けたとして里から追放された為です。
この追放は初代四獣神様全てです。
青龍様から『ピュアリラ』を継いだ次代様は身を隠しつつ貴方の所に向かいましたが、時既に遅く、人神達に占拠されていた為に引き返さざるを得ませんでした。
宝が見つからなかった為に、人神達は腹癒せとして貴方の魂を鎮めていると記した石碑の『古の神』を『古の悪神』と変えたのです」
トウゴウジの魂内にはライガースの妻パンマーマが入っていました。
(名前は出ませんでしたが)
そして神器の件。
観測域に届けに行く条件として同行を求められたラピスリはザブダクルと会い、
今ピュアリラとして神世の真実の歴史とした億年単位の長い話を語り始めました。
あちらこちらで『神話の神=獣神』、『宗教神=人神が作ったもの』だと出てきますが、地星のお話ですのでっ。
m(_ _;)m
まぁ、宗教家の方が読んでるとか有り得ませんよね。




