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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団1.5  外伝その1 ~探偵団の裏側で~  作者: みや凜
第三部 第14章 嫌われ者の白竜と馬龍大神
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サクラ牧場からの帰路



 そしてサクラ牧場からの帰路。

彰子と八郎とは牧場で別れた馬白父子は暫くは無言だった。


「あの……期末テストの成績が悪かったら……?」


「馬は誕生日のプレゼントだから与えるが――」


 『が』? って何!?


「――成績次第で考える」


「……はい」


「空沢君は勉強会に参加しているようだが、竜騎は参加しないのか?」


「大勢で勉強なんて効率がいいとは思えません」


「そう言うのなら結果を楽しみにしておく」


「……はい。あれ? どうして悟のこと――」


「竜騎の事は野放しにはしていない。

 周囲も含めて常に見ている。

 竜牙と鞍木は?

 新たな馬はいいが、竜牙はどうする気だ?」


「脚をケガしたら安楽死しかありません」


「どんな怪我なんだ?」


「それは……」


「牧場のスタッフを鞍木だと思った理由は?」


「そ、それは……」


「走屋、モニターを」「畏まりました」


天井からモニターが下り、電源が入った。

父が手を伸ばし、操作する。


「えっ……」


 砂浜で竜騎が竜牙に乗っており、悟が並走しているのが映し出された。

そして手綱操作を誤り、竜牙の腹が悟を掠める。

これを見せられても竜騎は気付いていないが、どうやら、この時に不安定な砂浜で悟が怪我しないようにと踏ん張った優しさが竜牙の骨折に至ったらしい。


「あっ」


 画面が乱れたかに思えた。

しかしそれは複数の者達が同時に、しかも俊敏に動いた為に捉えきれなかっただけのようだった。

その後は竜騎が怒って喚き、竜牙を見捨てて車に向かっている途中で動画は終わった。


「さて、客観的に見て、どう思う?」


「誰がこんなのを!?」


「第一声が、それか。私だ。

 野放しにはしていないと言った筈だ」


「ごめんなさい!」


「悪い事をしたのは解っているのだな?」


「はい……ごめんなさい。

 この後、竜牙と鞍木は?

 どこに行ったんですか?」


「竜牙は動物病院に運ばれ、鞍木も付き添った。

 今は、その獣医師の自宅に保護されている」


「生きているんですか?」


「骨折していたそうだが今後も競技可能な程に治るそうだ。

 鞍木を雇っているのは私だ。

 竜牙の世話を頼んでいる」


「竜牙、戻って来ますか?」


「私も竜騎の考え次第では如何な状態であろうが引き取るつもりだった。

 しかし馬は賢い。

 竜騎に見捨てられたと理解しているそうだ。

 だから私の馬としてだが、獣医師に託そうと考えている。

 鞍木も共にな」


「鞍木も!?」


「竜騎がクビだと言ったのだろう?

 生後間もない頃から世話になっておきながら薄情な。

 献身的に親代わりを勤めてくれた鞍木に、よくもそんな偉そうな口が叩けたものだな。

 馬について学びたいからと牧場にまで行ってくれる執事が他に居ると思うのか?

 それを報せなかったというだけで追い出したのも忘れてしまったのか?

 戻ってもらえるなんぞと思える方がどうかしているぞ」


「っ……はい……」



―◦―



「なんだか別の黒いのが膨らんでない?」


「どうやら あの子自身のが膨らんでるみたいだね」


「お父さんからお説教中とか?」


「見てるの?」


「運転中だから見てないけど、ソラは?」


「見てるよ。お説教中だよ。

 行きに話した昨日の朝のを録画してたって見せられてた。

 で、竜牙と鞍木さんは、もう戻らないって言われたようなものだね。

 鞍木さん、あの子の親代わりだったらしいよ」


「これから どうするのかしらね~」


「捜せば合格、かな?」


「捜すかなぁ」


「その前に悟君に謝らないといけないから、無理かもね」


「そっか。

 行き先を知ってる一番 親しい人物だもんね。

 でも喧嘩中なんでしょ?」


「そうみたいだね。

 でも夜に悟君の部屋を見上げてたり、少しは反省してるみたいだけどね」


「素直になれたら、ってことね?」


「そこが大問題なんだよね」



―・―*―・―



 馬白父子の尾行をソラに代わってもらった八郎は彰子と海辺の道をドライブした後、夕暮れの海が見渡せる丘の上に建つ瀟洒なレストランに行った。


「レストランだけでは なさそうですね?」

夕闇が降り、明かりが灯りつつあるシルエットな建物を見ている。


「はい。奥がミツマル建設の保養所で、正面の大きな建物は結婚式場です」


「白久さんの……そうですか。

 確かにチャペルも見えますね」


「レストランは予約のみですが一般開放されていて、とても評判が良いのですよ」


「海が見えて、静かで、自然豊か。

 とても良い場所ですね」


 中に入り、席に案内される。

外観と同様に内装も瀟洒で、席は少なく、ゆったりと寛げるようにテーブルスペースは広く取られていた。

 昼間ならオーシャンビューなのだろうが、外は もう夕闇に包まれつつある。

少し残念だと彰子が思っていると、庭園が淡くライトアップされた。

冬場によく目にする煌びやかなものではなく、自然を活かした穏やかな光は、暖かさと優しさが八郎のようだと彰子には感じられた。


「綺麗ですね。優しくて」


「この暖色の光は星を見るのにも邪魔にならないそうですよ。

 レストランの反対側でしたら光を遮っていますので、後で見てみますか?」


「はい♪」


 前菜が運ばれてきた。


「秋の温サラダでございます。

 具はソースでも、スープに入れても楽しめます」


 ウェイターが去ってから、

「ですからスープと一緒なのですね♪」

早速 彰子は、さつまいもダイスと色とりどりの豆を掬ってスープに入れている。


「緑の側もスープに合いますよ」


「リーフも? 試してみます♪

 あら本当に♪ このスープのお味……」

何やら確かめようとソースも味見。

「……黒瑯さん?」


「もうバレてしまいましたか。

 黒瑯さんのレシピです。

 だからこそ今日を選んだのです」


「全メニューでは ないのですね?」


「はい。今日はコース全てが黒瑯さんのレシピなのですが、そういう日は月に2日程しかないのです。

 輝竜家では栄養面と家庭の味を重視している黒瑯さんの余所(よそ)行きの味を知りたかった。

 彰子さんと一緒に……」


「ぁ……」

恥ずかしさで庭園の方を向くと、映っても分かるくらいに頬が染まっていた。

「……少し、解りました。

 普段の穏やかな八郎さんと、先日の祓い屋としての鋭くて力強い八郎さん。

 その姿を、家庭とお仕事の黒瑯さんのお味と対比させているのですね。

 ……ゆっくり味わってみます」



―◦―



 その後は言葉少なに料理の味に集中して堪能し、今、揃って夜空を見上げている。


「目が慣れてきましたね」


「はい……向こうの空、星が沢山ですね」


「東から南にかけての空に瞬いているのは、冬の星座と呼ばれている星々です。

 西側の少し寂しい星空は秋の星座。

 1等星以上は少ないのですが、2等星3等星でしたら沢山あります。

 北に向かって巡るとペガサス座が見えています」


「白桜さんですね♪」


「そうですね。今日はローズさんと楽しそうでしたね」


「はい♪」

昼間の白桜とウィンローズの様子を思い出した途端、連想が駆け抜けて八郎も彰子も『好き』→『告白』に至ってしまった。


「ぁ……「あの」っ、あっ――」

目を見てタイミングを、と思うが出来ない。


「「どうぞ」ぁ――」


「では、私から――」「いえっ、あ、あのっ」


「――では待ちますね」


「なんだか伺うのが怖くて……すみません。

 ……私、いつもの黒瑯さんのお料理も、先程の『余所行き』なレシピも、どちらも美味しくて……大好きです……」

遠回しだとは分かっているが、料理の話なら、どうにか『好き』だと言えた。


「ありがとうございます。

 私が全力を出せるのは祓い屋として戦っている時のみだと思っていました。

 ですが輝竜さん達から、そうではないと教えて頂きました。

 黒瑯さんは小学生の頃、体育で使うボールを続けて破裂させたそうです。

 バスケットはボールだけでなくゴールまでも。

 ですから体育では本気を出さず加減して、料理で本気を、全力で出したそうなのです。

 私も色々と壊してきました。

 ですから日常では臆病になっているのです。

 優しいのでは――」「優しいです!」


「――ありがとうございます。

 そう、思い続けて頂けるよう努めます。

 そんな私が今、全力を出し尽くしたいと思っている事があります。

 それは、彰子さんを支えたいという事なのです。

 とてもとても大きなものを生まれながらにして背負っている彰子さんを、私は生涯 支えていきたいのです。

 一緒に背負いたいのです。

 そのくらい……好きなのです」


「まだまだお待たせしてしまいますけど……よろしくお願いいたします」


「良かった……」


「ただ……」「はい?」


「表看板としては私が継ぐのでしょうけれど、動かすのは八郎さんでなければなりませんよ。

 力持ちなのですから」


「では彰子さんごと全てを支えます。

 力持ちですので」


「私、そんなに重くありません」


「失礼しました。

 では一緒に巨大グループを支えましょう」


「はい♪」


「具体的には……これから白久さんから教わらなければなりませんが」


「では、それも一緒に♪」


「そうですね」ははっ♪


もどかしい隙間のあった2つの人影は、寄り添い合って1つになった。



―・―*―・―



「あら? 朝帰りではないの?」


少し遅くなったので、部屋のドアをそっと開けると清楓がニヤニヤ起きていた。


「清楓さんたら何をおっしゃっているの?」


「ちゃんと告白した?」


「そっとしておいてください」


「心配してたのにぃ」


「……一緒に松風院グループを支えましょうと約束しましたよ」


「結婚確定ねっ♪」


「清楓さんは?」


「ん? あ~、涼楓ね?

 涼楓が人になれるの、一瞬なのよぉ。

 まだまだ道のりは長そうだわ~」


「白桜さんとローズさんは自由自在のようでしたよ?」


「頑張ってもらわないと!

 あっ、お風呂に行きましょ♪」

彰子と腕を組んでグイグイ。


「あのっ、清楓さん!?」着替えを!


「だって早い時間は小中学生が楽しそうで入れなかったのよぉ」早く~♪


「小学生も、ですか?」持って廊下へ。


〈彩桜君の彼女ちゃんが友達と、中学生達の弟妹を連れて来ちゃったのよぉ〉


〈お泊まりですか?〉


〈向かいの大部屋で、さっきまで騒いでたわ〉


〈あらまぁ〉


〈明日も賑やかそうだから私はまた牧場に行くわよ♪

 彰子さんはデート?♪〉


〈そう、なりますね〉視線が泳ぐ~。


〈それじゃシッカリ磨いてサッサと寝ましょうねっ♪〉到着~♪

グイッと引っ張り込んだ。


〈もうっ、清楓さんっ〉







竜騎の方は説教されて辛い帰路になりましたが、八郎と彰子は恋人になれました。

正式に婚約するのは八郎が出向を終えた時でしょうか?

それとも彰子の卒業待ち?

そんな事は どうでもで、ゆっくりと愛を育んでもらいたいですね。



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