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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団1.5  外伝その1 ~探偵団の裏側で~  作者: みや凜
第三部 第14章 嫌われ者の白竜と馬龍大神
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勉強会は順調です



 夜明けが近くなった人世では、再会を喜ぶ神達が、その明るい気を閉じ籠っている大神に届けようと祈りを(まと)わせて降らせ続けていた。


《そろそろ夜が明ける。

 浄化や破邪のみに変えようぞ》

アヌビスの柔らかなテノールが、騒いでいても皆の心に確かに伝わった。


 冴えた朝の宙空(そら)から爽やかな浄化光が降り注ぐ。

ソラにも悟にも、もう何処の真上で誰に向けているのかは明白なので、気付いてほしい、何事も起こらないでほしいと願いを込めて祈る気持ちで注いでいた。



―◦―



 その真下では、眠れなくて、入るつもりは全く無く訪れてしまった鞍木(くらき)竜騎(りゅうき)の部屋を見上げていた。

「何だろう……?」

微かにキラキラと見える清々しさが、竜騎の部屋へと吸い込まれていた。

そのキラキラから分岐した薄紅色が球になって鞍木に迫り、思わず腕で目を護ってしまった。

目も閉じてしまったが、瞼の向こうで光に包まれたような感じがした。


「おや?」

寝不足の重たい身体がスッキリとした。

腕を退()けて目を開け、キラキラの発生源を探したが、夜明けの気配を漂わせる冷えた空が広がるばかりだった。

「あの月かな?」

陽よりも少しだけ早く昇り、輝きを失い始めたばかりの細い月を見付けて首を傾げた。

 そこで、はたと、馬が居なくなっても坊っちゃんが目を覚ますかも知れないと思い、それでも折角ここまで来たのだからと封筒を郵便受けに入れて、急ぎ足で輝竜家に戻った。



―・―*―・―



「祐斗♪ 堅太♪ お散歩 行くよ~♪」

「起きてください♪」


「彩桜ぁ、もう食えねぇって~」


「何を?♪」


「俺よりデカいドーナツなんてよぉ……」


悟が吹き出す。

目を覚ました祐斗も聞いたらしく笑っていた。


「彩桜みたいです♪」

「俺、寝言なんて言わないってばぁ」

「言ってるよ♪」「いつもです♪」

「祐斗までぇ」


「ん? 爆走散歩の時間か!」ガバッ!


「犬達、待ってるです♪」「おう!」



―・―*―・―



 遅くまで女子会していた響もガバッと起きた。

「ソラ?」キョロキョロ。「あっ」

机の上に紙を見付けて駆け寄った。


『店で待ってるね』


「ちゃんと帰って来てたんだ……」


ソラの優しい字を見詰める。


「よーし! ソラ、行くからねっ!」


『響? どうかした?』


「あっ! お姉ちゃん何でもっ!」

隣の部屋に向かって叫ぶと慌ててベッドに戻り、ソラからの手紙を抱いて すぐにまた夢の中に戻った。



―・―*―・―



走屋(そうや)、今日は車はいい」


「竜騎様、乗馬練習は?」


「自転車で行く。準備運動だ」


「然様で御座いますか。

 午後、お父様がお帰りになられますので、午前の内にお戻りくださいませ」


「父様が? 分かった」


 昨夜、怖い思いをした場所だが、これから明るくなるのだから大丈夫だと自分に言い聞かせて厩舎に向かう竜騎だった。



―・―*―・―



〈夜中の、天の岩戸の前の宴みたいだったね♪〉


〈うんうん♪ 神様達、はしゃいでたよね~♪〉


〈伝わるといいね……〉


〈きっと伝わるよ♪〉


爆走する『犬橇』は馬白家前を通過した。


 やっぱり此処にも欠片持ちさん居る~♪


微かに感じる神力の持ち主にも協力してもらおうと彩桜は決めた。



―・―*―・―



 浜に行かなくてもよくなったので車を洗った走屋は、屋敷に入ろうとして郵便受けに何やら入っていると気付き、取り出した。


「私宛て? 鞍木さんかな? やはりマイクとデータか」


差出人は書いていなかったが、中を見て納得し、ポケットに入れた。

「それじゃ、もう一度 編集し直すかぁ」

独り言ちて自室に向かった。



―・―*―・―



 爆走散歩を終えた『犬橇』が帰還すると、皆 起きていてヤル気十分で居間に集まっていた。

「それじゃ朝ご飯の後みんなで数学して、朝オヤツの後は苦手トコ問題集ねっ♪」


「えっ……」「朝オヤツもあるのか!?」


銀河と悟の驚きに他は当然とニコニコ頷いた。


「銀河ちゃんも慣れてね」ふふっ♪

夏月が苦笑混じりに言った。


「いつも こんなに至れり尽くせり?」


「うん。美味しいけど食べる量は自分で考えないと大変になっちゃう」


「輝竜君、お金持ち?」


「ここ、世界のキリュウ夫妻のお家♪」


「それって……キリュウ兄弟……?」

視線は彩桜に。

そして朝食を運んで来た黒瑯に。


夏月が頷く。

「でもね、外で大きな声で言ったらダメよ。

 彩桜君もお兄さん達も普通に暮らしたいんだから」


「うん。わかった。

 動画とか高くて、お小遣いじゃ無理で。

 やっとCD買えたの。

 ジャケットは綺麗な絵で写真とかなくて。

 だから顔とか知らなくて……」


「もしかしてファン?」


「うん。でもテレビで、ちょっと聴いただけ。

 文化祭も来てたって聞いたけど……」


「そっか。銀河ちゃん、盲腸で入院してたね」


「うん。つくづく縁がないんだって思ってた」


「良かったね♪ 縁あったね♪

 空沢君のおかげね♪」


「あ……うん」ぽ♡



―・―*―・―



「やっぱり居ない……鞍木(くらき)も、竜牙(りゅうが)も……」


足の力が抜けてペタンと座り込んだ。


「次の馬が必要だよな。トレーナーも。

 次の競技会に間に合わせないと……。

 輝竜に勝たないといけないんだから。

 そうか! 父様に会えるんだ!

 それなら宿題くらいは しとかないと!」


立ち上がり、急いで自転車に乗った。



―・―*―・―



 このまま居間で、と始まった数学。

少しして、この日から合流の茉那実(まなみ)達5人と恭弥(きょうや)が加わった。


「恭弥、今日から悟も『君』ナシなっ♪」


「それって……友達になったんだね♪」


「だよ♪」「でも白竜は、まだなんだけどな」


「馬白君、昨日の夜 来てたよ。

 悟く――えっと、悟の部屋 見てた」


「え……」「また婆さん家に行ってたのか?」


「うん。毎週 泊まるんだよ、心配だから。

 今週はコッチ連続にしたくて昨日にしたんだ。

 でね、1時間くらい見てたよ」


「そっか……」


「昨日、休み時間に言い合ってるの見たけど、仲直りできると思うし、みんなとも友達になれると僕は思ってるよ」


「うん。きっと、な……」


「元気出してよ。大丈夫だよ」

「私も……私も そう思う」


そうかと気付いた恭弥が場所を譲り、勉強道具を用意し始めた。


「空沢君、大丈夫よ……」


「うん。俺も白竜を信じる。勉強しよう」


「うん♪」



―◦―



夢結花(ゆいか)、ナンか燃えてる?」

「だぁね♪ 茉那実(まなみ)もね♪」


「うん。親に認められないと進めない。

 認められるには今は勉強しかないって、よーーく! わかったから。

 私達、芸大 目指すの。

 今の成績じゃ大学なんてムリだって親も思ってる。

 高校もムリじゃない? ってくらい。

 だから頑張って認めてもらうの。

 夢は そこからスタートなんだから」

夢結花と茉那実が真剣な顔で頷き合う。


「じゃアタシ達もガンバロー♪」「だぁね♪」



―・―*―・―



「そんじゃ桜瀬(さくらせ)さん、お願いしますね。

 明日の夕方には迎えに来ますんで。

 コレ、青生先生からの手紙です」


「ああどうも。

 輝竜先生に宜しくお伝えください」


「はいはい♪

 そんじゃあ鞍木さん、あの馬の世話、お願いしますねっ」

すっかり馬の運び屋が板に付いた荒巻が楽し気にサクラ牧場のゲートを抜け、トラックに向かって行った。



〈ね、白桜。僕どうなるの?〉


〈今日と明日はストレス解消♪

 好きに駆けて、草食べてて♪〉


〈のんびり? いいの?〉


〈いいんだよ♪ のんびりしてて♪〉


〈白桜とローズちゃんは? 一緒に、ここ?〉


〈僕達はデートだよ♪

 夜は一緒に泊まるよ♪〉


柵を挟んで竜牙と話した人姿の白桜は笑顔で手を振って近くの木に隠れ、ウィンローズが待っている浜へと瞬移した。



【彩桜、コッチはいつでもOKだよ♪】


【うん♪ 竜牙をお願いねっ♪】







茉那実(まなみ)夢結花(ゆいか)に残っていた弱禍は目標と希望を得た事で すっかり消えたようです。


銀河(さらら)が盲腸で入院していたとした期間、実は別の事で学校に行けなかったんです。

その話は もっと後で、ですけど。



どうやら馬白社長は屋敷で働く者達にカメラやらを渡して竜騎の様子を見ているようですね。

走屋が鞍木からの音声データを得て編集し直すのは、前日に社長から頼まれた映像なんでしょう。


鞍木と竜牙はサクラ牧場に居るようです。

青生と彩桜の策のようですが、何が起こるのでしょう?



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