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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団1.5  外伝その1 ~探偵団の裏側で~  作者: みや凜
第三部 第14章 嫌われ者の白竜と馬龍大神
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竜騎と鞍木



「スノコのベッドがいいとか言うから鞍木の為に買ってもらったのに……」


そう呟くと竜騎は、布団がなくなり(すのこ)だけになったベッドに寝転んだ。


「約束したのに……どこ行ったんだよ……」



―・―・―*―・―*―・―・―



「とーちゃまと かーちゃまは?」


「お仕事なのですよ。

 坊ちゃまは私ではダメですか?」


「くらき、ずっといる?」


「はい。ずっと居りますよ」


「だったらいい♪ ゆびきりゲンマン♪」


「はいはい♪ 約束ですね♪」



―・―・―*―・―*―・―・―



「クビとか、俺が雇ってるワケじゃないのに。

 ウソに決まってるじゃないか……」グスッ――



―・―*―・―



 輝竜家の居間は夕飯真っ最中だった。


「えっ、銀河(さらら)ちゃん、私の家に泊まるって来たの?」

夏月が驚いて箸を止めた。


「うん……ダメ?」


「今日、みんなで合宿なの~♪

 期末テスト前の勉強合宿♪

 お泊まり、ウチでいい?」

お茶を配っている彩桜が笑顔を向けた。


「宿題しか持って来てないの……」


「み~んな同じ教科書だよ♪

 なんとかなるなる~♪」


「それじゃあ、お願いします」



 そして彩桜が離れてから、夏月が銀河の腕をつついた。

「もしかして空沢君を追いかけて?」


銀河が頬を染めて頷いた。

「馬白君がキツいこと言うから……」


「私と沙都莉ちゃんね、黒瑯お兄さんからお菓子の作り方 習うの。

 一緒に習わない?」

祐斗と堅太に聞こえないように小声で。


「私もいいの?」


笑顔で頷く。「2月に間に合わせましょ♪」


「ぁ……」

お菓子教室の意味を理解して、どんどん頬が熱くなる銀河だった。



―◦―



 その頃、鞍木の部屋では金錦と青生が話を聞いていた。


「坊ちゃまは本当はお優しいのです。

 表現が不器用なだけなのです。

 執事として雇われた私が、最初にお任せ頂けたのは坊ちゃまのお世話だったのです。

 ずっと一緒でした。

 住み込みでしたので、四六時中ずっと」


「それでチビッ子の扱いに慣れていたんですね」


「そうかも知れませんが、大したことはしておりませんよ。

 坊ちゃまと散歩していたら、見かけない男の子が大型犬に乗っていたのです。

 驚きましたが、男の子も犬も楽しそうでしたので、その点には触れずに、名前や家の場所を尋ねたのです。

 そして坊ちゃまも乗せて頂いて、男の子が指差す方に歩いていただけなのです」


「感謝しかありませんよ。

 3歳になったばかりの彩桜が栂野原(つがのはら)なんて迷子以外の何ものでもありませんので」

「青生が言う通りです。

 お連れくださり ありがとうございました」

兄達は揃って頭を下げた後、微笑み合った。

「もしかして、その犬に乗った記憶から乗馬を?」


「そうなのです。

 最初は犬にまた乗りたい、でした。

 馬を知ると、犬が馬になりまして。

 ですので私は馬のお世話もできるようにと勉強を始めたのです。

 坊ちゃまが小学校に上がられますと、昼間は時間に余裕ができましたので、牧場に通いました。

 実際に馬に触れ、プロの皆様から学ぶ為に。

 あ、坊ちゃまが公立校を選ばれましたのは、空沢君と一緒に通いたいという理由からでした。

 空沢君は近所の少年で、今朝も坊ちゃまと一緒に居りました」


ぽすぽす、ぽすぽす。

『竜牙が鞍木さんに会いたい言ってるのぉ』


「あっ、はい只今!」


襖が開く。

「も~っと、の~んびりしていいの~♪」

にこにこで連れて行った。



―◦―



〈ほら来たよ♪〉

〈あんなに急いで……優しい方ですね〉


〈うん♪ 鞍木さんホントに居た♪〉


〈だから心配しなくても一緒に暮らすって言ってたろ♪〉


「竜牙、友達ができたんだね?」

ブラッシングを始めた。

「お友達も後でね。

 彩桜君、この子達は?」


「茶色が清楓お嬢様の涼楓♪

 白の女の子が彰子お嬢様のウィンローズ♪

 白の男の子が俺の白桜なの~♪」

彩桜もブラッシングを始める。


「やはり先日の優勝者だったのですね」


「やっぱり来てた?」


「はい♪ 竜牙を運ぶのも私の仕事ですので」


「だからお嬢様達 知ってたんだ~♪」


「はい♪」


 犬に乗っていた男の子の成長をとても嬉しく思うのと同時に、その時の別れ際に離れたくないと男の子の腕を離さず大泣きした坊ちゃまにも大切な事に気付いてほしいと切に願う鞍木だった。



―・―*―・―



「鞍木って、なんでも真に受けるんだ。

 あの時も……それっきり馬と毎日 楽しく暮らしやがって……」



―・―・―*―・―*―・―・―



「コソコソ牧場に行ってたんだってな!

 そんなに馬が好きなら出て行け!」


「かしこまりました」


「練習してる浜の近くに厩舎が建った。

 隣に小屋を建ててやる。

 それで十分だよな!」


「ありがたき幸せでございます」


「今から俺の執事じゃなく馬の世話係だ!」



―・―・―*―・―*―・―・―



「なに言っても怒らないから、よけいにカッとなったんだ。

 どうして俺に牧場に勉強しに行くって言ってくれなかったんだよ。

 この家が建つまで厩舎で暮らすとか、どうかしてるよ……」


誰も居ないのでポロポロ零れる涙は、もうそのままにしていた。



―・―*―・―



走屋(そうや)か。竜騎は?

 部活では足りず走りに行っただと?

 こんな時間にか?

 夏ならば兎も角――いや、相も変わらず我が儘放題なのだな。困ったものだ。

 今朝の件もだが、叱らねばならない。

 あの録画を拡大しておいてくれ。

 ……ああ。完了次第の送信で構わない。

 明日の午後は家に留めておいてくれ。

 ……ふむ、それでいい。頼む」


受話器を置いた馬白社長は、息子には届かない溜め息(おもい)を落とした。



―・―*―・―



「こんなにも俺が待っているのに!

 どうして戻らないんだ!?

 鞍木のウソつき!!

 ずっと俺と一緒に、居ると……約束……約束したじゃないかっ!!」


《そんなにも憎いのならばその手で(ほふ)ればよい》

低い轟きのような声が魂の内に響いた。


「誰だっ!? 住居不法侵入だぞ!!」

スマホを取り出したが、そこで動けなくなった。


《私はお前の内に居る。

 何をしようとしたのかは知らぬが無駄な事だ。

 お前が望む通り、お前が憎んでいる者達を、お前の手で葬らせてやろう》


望んでいないと叫びたかったが、声すら出せず、身動きひとつとして出来なかった。


『少年の内成る大神様!

 どうか おやめください!』


《何奴だ》


小さな白狐が宙に浮かんで頭を下げた。

「四獣神トリノクスの子、フェネギと申します!

 その少年は素直に話せぬだけで御座います。

 心とは反対を口にする病なので御座います。

 未熟な人を正しき道に導く事こそ神としての道で御座います。

 道を外させず、どうか正しき道へとお導きくださいませ」


《病か……ならば此度は何もせぬ。

 フェネギよ、手並みを見せてもらおう。

 半月の内に我が器を正しき道に導け》


「半月、で御座いますか……」


《居心地の悪さが、最早、限界となっておる。

 これ以上は私が大禍を生んでしまう。

 既に何度か生じた禍と戦うたのでな。

 ひと月……いや、やはり無理だな。

 半月だ。それ以上は私が保てぬ》


「然様で御座いますか。

 では仲間と共に神力(ちから)を尽くさせて頂きます」


《仲間か……それは良い……。

 その大切さ。我が器に、(しか)と教えてやってくれ……》


「はい!」


竜騎の魂内の大神に狐儀は龍と馬を感じた。


 本来は正しき道を重んじる大神様。

 生じた禍から呪を受けているのでしょう。

 お姿すらもお見せ頂けない現状では

 解呪は叶いませんが――


「禍魂浄破邪雷!!」


浄破邪で包み、約束は(たが)えないだろうとキツネの社へと瞬移した。



 狐が放った光が消え、動けるようになると、竜騎はガタガタ震えながら急いで家に帰った。



―・―*―・―



 金錦が部屋に戻ったのでリーロンはサーロンを連れて訪ねた。


「オレ達、イトコってコトで本当にいいのか?」


「問題ありません、オニキス様」


「いや、リーロンにしてくれよな。

 この家で神扱いは居心地悪いんだよ。

 あ~そっか。金錦兄と呼んだらいいのか?」


「そうですね。

 その方が従兄弟としては自然で、私個人としては嬉しく思いますので」


「そんで、イトコで(シィァン)姓のままで、マジでいいのか?」


「はい。梅華様の養父母様には養子として受け入れて頂いております」


「へ?」「え?」いつの間に!?×2。


「お稲荷様と桃華(タオファ)様のお世話になりました。

 父方祖父には短い期間でしたが漢中国人の妻が居たそうなのです。

 父も知らなかった その方と死別した祖父は、邦和人の後妻を迎えたのです。

 その後妻が私共の祖母です。

 祖父と先妻の間に子は記録されておりません。

 しかし昔の事です。

 父には異母兄が居たとし、その子としてお二人の籍を取得しております」


「言ってくれよなぁ」


「そのつもりでした。

 全て整いましたのは昨日ですので」


笑顔の金錦、呆気にとられているリーロンとサーロン。

しかしすぐにリーロンが笑い出し、金錦もサーロンも声を上げて笑った。


「そっかぁ。オレ達、ちゃんと人として存在できたのかぁ」


「嬉しいです。……とっても嬉しいです♪

 天海 翔として、翔 颯龍として。

 ボクも二足の草鞋、頑張ります!♪」







この後リーロン・サーロンは、梅華とは養子としての姉弟であって血の繋がりはないとも金錦から聞きました。

瑠璃の双子の妹なのは確かなんですけど、この謎は……平和になるまで放置かな?


オニキスとしてはホッとしたのと同時に、この真面目に悪戯っ子みたいなところも父様そっくりだと思っていたりします。



幼い竜騎と世話係の執事だった鞍木。

頼りきっていたのに反抗的だった竜騎が鞍木を捜せば合格なんでしょうけどね。



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