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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団1.5  外伝その1 ~探偵団の裏側で~  作者: みや凜
第三部 第14章 嫌われ者の白竜と馬龍大神
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消えた鞍木



 竜騎(りゅうき)の馬とトレーナーの鞍木(くらき)を動物病院に残して彩桜は登校した。


 馬について幾つか聞かれた後、鞍木は事務室で待たされていた。

そうして、陽もすっかり高くなった頃――


「鞍木さん、竜牙(りゅうが)号の左前脚は完治しました。

 ですが不整脈もあります。

 心因性ですので、暫くお預かりしてもよろしいですか?」


――馬を治療した青生が事務室に来て微笑んだ。


「私はただのトレーナーですので……それにたぶんクビですので……」


「それはどういう? 馬主さんは何方です?」


馬白(ましろ)海輸社長のご子息、竜騎(りゅうき)様です」


「その方は今? お仕事中ですか?」


「学校だと思います。第二中学です」


「弟と同じなんですね。

 未成年ですので保護者の方に――」

「私が支払いますので!」


「どうやら深いご事情がおありのようですね。

 今夜はウチにお泊まりになりませんか?

 溜め込むと鞍木さんも心因性の何かになってしまいますよ?」


「そんな……ご迷惑をお掛けするなんて……」


「ずっと以前、迷子になっていた弟をお連れくださいました執事さんですよね?

 今夜は長兄も戻りますので、その時のお礼をさせてください」


「弟さん? もしかして先程の?」


「はい♪

 迷子になったのは3歳の誕生日でした。

 今は中学1年生です」


「やはり坊ちゃんと同じ……あっ――」


「どうかしましたか?」


「ずっと住み込みでしたので……」


「でしたら尚更です。ウチにどうぞ。

 広いだけの古い家ですが、部屋は余っていますので♪」


「は……?」


「お荷物を運ばないといけませんよね?

 行きましょう」

通常の外来診察は瑠璃がしているので、青生は鞍木が思い浮かべていた厩舎に瞬移した。



――「ええっ!?」


「病院にいらした時と同じですよ。

 ああ、怖いとか思わないでくださいね。

 便利でしょう?」


「確かに……」無理矢理に業務用の笑顔に。


紅火が現れた。

「部屋は用意した。全て運べばよいのか?」


「増えた……双子なのですか?」


「ただの兄弟ですよ。弟の紅火です。

 残さないといけない物はありますか?」


「ベッドや箪笥(たんす)などの大きな物は全てご用意いただきました」


「では中身だけを運ぶ」


 玄関まで皆で下がり、紅火が何やらバッと天井に向かって広げると、その透明なシートは壁を突き抜けており、ゆっくりと床まで下りてからキュッと縮まり丸まった。

風呂敷包みのような塊を抱えて紅火は消えた。


「浄化。うん、彩桜ほどじゃないけど上出来かな?

 どうぞお確かめください」

『中にどうぞ』と手で促した。



―・―*―・―



 窓の外に目を向けている彰子から溜め息が零れた。


「今日、何回目?」

廊下に出た彰子を追った清楓が並ぶ。


「えっと、なんでしょう?」


「とぼけないで。

 猪瀬さんは彰子さんを好いているのよ。

 誰にも反対なんてされていないでしょう?

 どうして溜め息なんかを?

 飛び込めばいいじゃないの」


「そんな簡単に……」どんどん赤くなる。


「逃げてしまったら、それこそ大きな魚よ?

 半年なんて瞬く間なのだから、これからも悩み続けて過ぎてしまうのか、それとも恋人として幸せに過ごすのか、なんて考えるまでもないわよね?」


「それは……そうですけど……」


「結果は分かっている告白なのだから悩まなくてもよくないかしら?

 今日は金曜日。

 お休みにデートできるように今日こそ告白なさいな」


「清楓さんは?」


「私は涼楓と牧場デートするわよ♪

 ローズさんも白桜とデートするそうよ♪

 邪魔しないであげてね♪」


また溜め息をついてしまう彰子だった。



―・―*―・―



「白竜、部活終わったら馬のお見舞いに行くだろ?」


「行かない。

 馬は脚を怪我したら安楽死しかない。

 もうあんな馬なんか要らない」


「そんな……白竜のせいだろ。

 見捨てるなんてヒドイじゃないか!」


「ウルサイ!! もう俺の視界に入るな!!」


「白竜!?」


「輝竜の仲間になればいい!!」


悟が言い返そうとした時チャイムが鳴った。


「俺は白竜を親友だと思ってるから」

席に戻りながらの悟の声はチャイムに掻き消された。



 悟が席に着いて教科書を出していると、隣の席から小さく折りたたんだ紙が届いた。

開けて見ると『大丈夫?』と書かれてあった。


『本心じゃないの分かってる。大丈夫』

と下に書いて返した。



―◦―



 以降、竜騎とは話せまま、視線すらも合わせられないままに部活も終わり、悟は仕方なく帰宅した。


「母さん、今日も勉強会に行くから。

 日曜の夜には帰るけど、テスト週間も通うからね」


「ウチはいいけど、ご迷惑じゃないの?」


「うん。旅館みたいな家だから大丈夫だって。

 あ、父さんお帰り。

 じゃあ行くから」


「ショー君、悟ったらね――」

「悟の前で、その呼び方はヤメてくれ」


「でも将軍様の将でしょ♪

 それより聞いてよショー君♪」


「悟、少し待てるかな?」「うん」


「昨日もお友達のお家に泊まったでしょ?

 今日も明日も泊まるそうなのよ~」


「馬白さんのお屋敷か?」


「違うよ。(百合谷東)7丁目の輝竜さん家」

空沢家は百合谷東4丁目。


「それなら行けばいい」「ショー君!?」


「輝竜さんなら勉強もシッカリ教えてくれるだろう?」


「お兄さん達も奥さん達もヤマ大の院卒で博士ばかりなんだ♪」


「シェフも居るし何も心配要らないよ」と妻に。


「シェフ?」


「ロイヤルグランホテルのシェフだよ」

「春からレストランするんだって♪」


「私もお邪魔しちゃおうかしら~♪」

「何か手土産でも持って行くか?」

「そうね♪」


「恥ずかしいからヤメてくれ!」


父、打ち合わせは後でと目配せ。


「はいはい♪ それじゃ行ってらっしゃい♪」


「ホントに来ないでよ?」


「はいはい♪」


「行ってきます!」



 何度か振り返りつつ外に出た。


空沢(からさわ)君……」


「え? あ、聖良(せら)さん?

 今日は心配してくれて ありがと。

 どうかした?」


隣の席の聖良(せら) 銀河(さらら)だった。

前の家なら近所だったが、今は近所ではないので通りかかるとは思えない。


「えっと……親友なんでしょ?

 あんなふうに言われたら私だったら落ち込んでしまうから……」


「ま、茶飯事? よくあるんだよ。

 白竜は素直じゃないから。

 俺は慣れてるから大丈夫。

 心配して来てくれたんだよな?

 もう暗いから送るよ」


「これからどこに?」


「2組の輝竜ん家。泊まるんだ」


「夏月ちゃんが毎日行ってる家よね?」


「えっと、その子、歴史研究部?」


「うん。河相さん」


「あ、分かった! うん、たぶんまだ居る」


「一緒に行っていい?」


「いいけど、歩き?」


「あ……遠い?」『お~い、悟だろ?』


「え? あ♪ お兄さん!♪」


 家前の狭い道と広い道との交差点に車が止まっており、悟達と対面している運転席と助手席には、街灯に照らされた彩桜そっくりの顔が並んでいた。


「乗ってくかぁ?」「はい!」「来い来い♪」


「行こう! あっ、荷物 貸して」

つい無意識に手を取って駆け出していた。

待たせては悪いので駆けてはいるが、体育を見学がちな銀河を気遣って軽くにしている。

車近くになって、そっと握り返されて気付いたが、今更なので離さずに駆けた。


「彼女かぁ? ま、乗れよ♪」


「ありがとうございます!♪」



―◦―



「白久兄 青生兄お帰り~♪」

「悟君、いらっしゃいです♪」


「直帰途中で拾ったんだ♪」

「今日もお願いします!♪

 で、同じクラスの聖良さん。

 河相さんに会いに来たんだ」


「アトリエに居るから来て来て~♪」

「悟君は庭に来てください♪」


「え?」「あっ」

銀河が悟の鞄の持ち手を掴んだ。


「それじゃ一緒に行こ~♪」

銀河も大きめの鞄を持っていたので彩桜が持ち、庭に向かった。


【青生兄、白久兄と直帰?】

【うん。馬白社長の港屋敷からね】

【ほえ? どして4丁目?】普通、通らない。

【神眼で見つけたからだよ】

【そっか~♪】



「あ……馬?」暗いけど4頭?


竜牙(りゅうが)がね、ぶつかって ごめんなさいって~」


「リュウガ?」


「今朝、一緒に走ったでしょ」「白竜の!?」


「うん♪」「脚は!? 怪我は!?」


「治ったの~♪ 競技も大丈夫♪

 でも心因性の不整脈あるんだって。

 だから入院なの。

 白久兄と青生兄、馬白海輸の社長さんトコに説明しに行ってたの」


「馬もストレス?」


「うん。お馬さん、繊細なのぉ」


「そっか。リュウガ、避けられなくてゴメン。

 早く良くなって、また走ろうな」


小さく(いなな)く。


「嬉しいって~♪」



―・―*―・―



 その頃、竜騎は浜の厩舎に居た。

1人で自転車で来たのだった。

厩舎を覗き、横の小さな家に入る。


「そんな……鞍木……本気だと思ったのか……?」


生活感が消えた暗い家に立ち尽くしていた。







鞍木の居場所は分かっていますが、クビだと言った竜騎にとっては行方不明です。

という意味での副題でした。


鞍木と輝竜兄弟には繋がりがありました。

今も金錦は毎週 帰っていますが、当時、大学生・院生だった兄弟も毎週 帰っていたんです。

瞬移ではなく車移動なので近いとは言えない距離ですが、彩桜が寂しいだろうからと可能な限り帰っていたんです。

彩桜と鞍木・竜騎が出会った日は春休み中でした。


新たな繋がりを得ていく悟に対して孤立を深めていく竜騎。

少し素直になれたらいいのに、と思ってしまいますが、それが難しい竜騎なんです。



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