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禍の腐臭



 京海からの寄付を確かめ終えた後、再び悪霊の話になり、そこから悪霊の(にお)いの話になった。


「独特の腐臭ですよね。

 でもそれを確かに感知できるのは取り憑かれた経験のある者だけだそうです。

 祓い屋さん達は訓練? 修行? して覚えるそうですけど。

 その経験がなければ、感じられたとしても『なんだか臭い?』くらいにしか思えないとか」

京海は前夜に彩桜から報告と共に聞いた話を思い出しながら話した。


「あんなに臭いのに……?」

「そんなに臭いんですか!?」


「ですから十万さんも、これからは見つけてあげられる側になったんですよ。

 それも昨日、彩桜君から聞いて。

 それで私も少し元気になれたんです」


「見つけたら、どうすれば?」


「私にでも輝竜常務にでも連絡してください」

連絡先を交換。



「なんだか氷垣さんも十万さんもカッコイイですぅ♪」


「「そんな……」」苦笑×2。


「カッコイイですよ~♪」


「あっ、私、長々と……では、今日のところは これで失礼いたします」

京海は恥ずかしくなって逃げようとした。


「あっ、あの……民間オークションとは……?」


「もしかして十万さんも副産物をお持ちですか?」


「はい……マンションに……。

 もう見たくもありませんが、向き合わなければなりませんよね……」


「お手伝いします。出品しましょう」

「それじゃ今から行きませんか?♪」


「億野さん……」


「まぁ、今日は金融機関も休日だから、もう明日まで何もできないよ。

 片付けに行ったらどうかな?」


「所長まで……」


「女性の部屋だから私は行かないけどね。

 それじゃあ片付けて、今日は終業にしよう」


「はい♪」

億野はサッサと湯飲みを片付け始めた。



―・―*―・―



【ねぇ~、エィムってばぁ。教えてよぉ~】


【ウルサイ!!

 今日はもう帰って修行してろ!!】


【エィムぅ……】ぐすん。


【僕の姿なら誰でもいいんだろ。

 もっと見えるように修行しろ】

チラリと睨むとチャムと繋がる結婚の絆がキラリと見えた。


 あ……そうか!

 微かに見えていたのは結婚の絆だ!


【それってぇ、つ~ま~り~、ヤキモチね♪】


 どうしてそうなる?

 いや それよりも、繋がる あの気は……

 社にいらっしゃる黒猫の大神様では?


【ねっ♪ ヤキモチでしょ♪】


エィムはチラッと睨んで消えた。


【ちょっとエィム!?】


チャムが慌てて捜していると、少し離れた宙にエィムが現れた。


「あ♪」


 エィムが社に現れたので代わりにラピスリが来たのだが、見えていないチャムは大喜びで寄ろうとした。

が、ソリューダンに先を越されてしまった。


「あ~あ……な~んか楽しそ~」


さっきまでとは大違いに談笑している。


「修行……ねぇ……」『せぬのか?』「きゃっ」


リグーリが姿を見せてニヤリ。


【リグ兄ちゃまぁ、エィムが怒るぅ~】


【ま、結果的に浮気したのじゃからの♪】


【だってエィムだったんだもん!】


【見えておらぬからエィムを怒らせたのが、ま~だ分からぬのか?】


【さっきのエィム、リグ兄ちゃまだったの?】


【違うぞ】


【誰なのよぉ~】


【じゃから鍛えて見えるようにせよ】


【あのエィムはエィムなの?】


【さぁのぅ♪】消えた。


【もうっ!】宙で地団駄!



―◦―



【これが獣神秘話法……】


【よく出来ている。更に励め】


【ありがとうございます、今ピュアリラ様!】


【後でエィムと共にルロザムール様に会い、この鏡と筒を観測域に届けたいと話してみればよい】

縁も何も付いていない小さな丸鏡と、両端の径が違う掴み易い太さの筒を見せた。


【それは……?】


【神の作。それだけは確かだ。

 観測用の神物らしいが部品。

 人世で見つけた謎の物だと説明すれば観測域に行けるだろう】

紅火に依頼し、術で数千年経過させた神物を渡した。


【同志に会えるのですね?

 ありがとうございます!

 ところで……あの……】


【ん?】


【チャム様が……】ずっと睨まれている。


【私をエィムだと思っているのだろう。

 兄に頼ってばかりの甘えん坊なのでな。

 奮起させる為にも昇格試験を受けて追い抜いてくれぬか?】


【ええっ!?】


【エィムよりも歳上なのだから格上となっても問題無かろう?

 エィムの相棒の座はチャムと決まったものではないと知れば、少しは変われるだろうからな】


【そのような大役、私なんぞに――】【頼む】

【僕からもお願いします!】


【エィム様まで……】


姿を消したままのエィムが寄った。

消しているとはいえラピスリだけでなく、ソリューダンにも微かに、少し離れて見ているリグーリにはハッキリと見えている。


【このままではチャムは封じて人世に残すしかありません。

 今も僕の姿は見えていないでしょう。

 ソリューダン様、どうかお願い致します】


【頑張ってみますが……同じように1段ずつ昇るだけですので、追い越せませんよ?】


【僕が手助けしなければ、チャムは合格できませんよ。

 中位試験は格段に難しくなりますから】


【そうですか。では私も心して掛かります】


【ありがとうございます!】

【試験勉強の指導も私に任せてもらおう。

 そろそろチャムが爆発しそうだぞ】

エィムに視線で行けと示した。


【ホント、困ったヤツ……】

ラピスリエィムと入れ替わり、チャムの方へと飛んだ。


ラピスリの方は、今来たかのように自身の人姿を見せてソリューダンに指導を始めた。



―◦―



【修行しろと言った筈だけど?】


【ソリューダンと話してたの、ちゃんとエィムだったのね♪】


【ハズレ。僕は ついさっき戻った。

 そんな神力じゃあ連絡係すらも頼めない。

 僕の相棒はソリューダン様にお願いするよ】


【そんなぁ】


【だから修行して】


【するけど、その前に教えて。

 今日、何してたの? 代わりのエィムは誰?】


【昨夜、ソラから頼まれた事をしていた。

 そういうのだけじゃなく僕には離れないといけない事がある。

 相棒には僕の分も死司の管理職神として働いてもらわないと困るんだ。

 僕をしてくださる方は、その時その時だから、今日 誰だったのかなんて問題じゃない。

 見えないのが問題なんだから、修行して早く見えるようになって】


【はぁい】


【これからは本当に厳しいんだ。

 危険なんだよ。

 チャムは一緒に居たがるけど、僕は連れて行きたくないんだ。

 明るくて無邪気なチャムのままでいてほしいし。

 連れて行くのなら融合して、とも考えてる。

 そうするにしても、お互い、底上げしないといけないから修行して】


【だったら一緒に――え? エィム泣いてる?】


【これは僕の覚悟だよ。早く追い付いて。

 リグーリ様、チャムをお願い致します】

泣き顔を見せないように深く頭を下げた。


頷いたリグーリはチャムを連れて瞬移した。



――廃教会。


「エィムは今のままのチャムが好きなんだよ。

 だが今のままなチャムを連れて敵神の懐に入れば何をされるか知れたものではない。

 それを考えれば人世に残すのが最善だ。

 だが解っていても離れたくないんだよ。

 エィムの気持ち、解ってやれよ。

 さっきの涙は、変わってもいいから連れて行けるようになってくれという覚悟を込めた願いだよ」


「エィム……」


「解ったのなら修行を始めるぞ」


「……私達って相思相愛なのね♪

 やっぱりヤキモチだったのね♪

 エィムったら~♡」


「チャムがエィムだと信じて疑わずジャレていたのをあのエィムが妬くなんぞ有り得るか!

 見えもせず、違いすらも感知できぬ事に苛立っただけだ!

 無駄口叩いてないで瞑想しろっ!!」


「は~い♪」るんっ♪


「俺の言葉、聞いていなかったのだな?」


「瞑想しま~す♪」るんるん♪



―・―*―・―



〈此処が祓い屋の間じゃサイオンジ公園と呼んでる拠点だ。

 俺は南の渡音港(とねこう)緑地公園に居るがアンタは家の近くの方がいいんだろ?

 だから修行は此処に通えばいい。

 俺も通うからな♪


 ただ1つだけ気を付けてくれ。

 あの交差点にだけは近付くなよ。

 引き寄せられて地縛霊になるからな。

 あ! お師匠様! オヤッサン!

 イイ新人ユーレイ、見つけましたよ♪〉

巡回を終えて戻ったサイオンジ達に紹介しようと、連れて飛んだ。


〈カケル ショウと同じ交差点の多重事故でユーレイになったんですけどね、死神が返してくれたんですよ。

 なかなかにイイ原石ですよ♪〉


篠宮(しのみや) 沙都留(さとる)と申します。

 宜しくお願いします〉


〈家からの通いなんですよ。

 ですから俺も通わせてくださいね♪〉


〈ナンジョウも鍛えてやる〉〈ナンで!?〉

キンギョがニヤリ。

〈宜しくお願い致します〉〈ホウジョウ!〉

現れた弟が頭を下げる。


〈そんじゃあまぁ話が着いたところで、サトルよぉ、引き上げてやっからよぉ。

 基礎から始めるぞぃ〉


〈お願い致します!〉



【キツネ殿よぉ、ど~したんだぁ?】

茂みの向こうに神眼を向けた。


【エィムから、近い気を感じたと聞いた。

 それを確かめに来ただけだ】


【その猫の女神様のかぁよ?】


【小さな欠片だが、確かに夫だそうだ。

 お目覚めなさるとは思えぬ小ささだが大神様だ。世話を頼む】


【任せろよぉ】〖目覚めさせてやる〗【お】

〖アヌビス様はガイアルフの師だが、俺も随分と世話になったのでな〗


【お願い致しますフィアラグーナ様】

深々と礼をしたオフォクス(キツネ)とバステトは、ゆっくりと姿を消した。







禍の臭いを獣神達は『禍隷臭(かれいしゅう)』と呼んでいます。

獣神にとっては とんでもなく臭いらしいです。



エィムは沙都留(さとる)を連れて降りた時に知っている気を感じていたようです。

欠片が小さいので、気も絆も微かなものです。

思い至れたのはエィムの神力の強さと大神アヌビス・バステト夫妻の強さとの相乗効果です。

エィムって本当に凄いんです。



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