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再会そして追跡者



 ドラグーナの背に乗せてもらったティングレイスは難なく森を通り抜けた。


「お♪ 久し振りだな♪」

「よくぞ鍛えたな」

鬣を靡かせている虎と、とぐろを巻いている白大蛇が振り返って微笑んだ。


「まずまずだが認めてやろう」

大きな白狐が現れ、フンと鼻を鳴らした。


「500年前は大変失礼致しましたっ!

 たくさんお教え頂き、鍛えて頂いてっ!

 よーーーーく! 分かりましたっ!」

ドラグーナの背から降りて、思いっきり勢いよく頭を下げた。


「もういいよ。なぁ?」


「そうだな」「認めたと言った筈だ」

「だから顔を上げてね。話を進めたいんだ」


「あっ、は、はいっ」


「ここに座ってね。

 それで、ただ会いに来たんじゃないよね?

 話してもらえるかな?」


「王から遣わされたんだろ? ほら帽子」


「え?」頭をパタペタ。「すみませんっ」

頭を下げた時に落ちたらしい。


「そこの木に掛けておいてやろう。

 邪魔そうだからな」

虎がピョイっと跳んで掛けて戻った。

「あの帽子を追ってる輩が居るんだな?」


「そうなんだよ。

 でも到着には10日程かかると思うよ。

 もう1組は早くて半年後かな?」


「その十日の間に入れたとしたいのだな?」


「うん。もう到着は感知されているからね。

 だから話が終わったら交替で更に鍛えてもらいたいんだよ。いいかな?」


虎と蛇と狐が頷いた。


「それじゃあ順を追って話してくれる?」


「はい!

 確かに僕は王様に遣わされました。

 四獣神様の友となって第五の位置に入り、いずれ神世の芯である王都を護れる者となれという任なのです。

 誰か他の人神がするくらいなら僕が行こうと、そう思って志願したんです」


「前の不届き者と同じなのだな」狐。

「しかし今度は友になれ、だとよ」虎。

「その点では既に果たせたのでは?」蛇。


「そうだね。第五の位置については?」


「好きにせよ」「構わねぇよ」「そうだな」


「じゃあ異存無しだね」


「そんな簡単に!?」


「森を通れるのなら仲間だよ。

 その力なら、既に人神の頂に立っているんじゃないかな?」


「え、えっと、あ、ありがとうございます!」

座ったまま伏せるように礼っ!


「友なんだから、そんな事しないで。ね?」

「四ツ足じゃないんだから起きろよなぁ?」

「マリュース、私を見るな。足なんぞ無い」

「では、せめて逃げ仰せる程に鍛えてやる」


「はいっ! ありがとうございます!♪」


「すっかり修行好きになったんだね」


「はい♪ だんだん面白くなって……楽しくて仕方ないくらいになったんです♪

 あ……そうだ。

 前任者さんは何をしてしまったんですか?」


「儂等の子を虐めおったのだ」

「酷い奴だったんだよ」

「神として許せぬ程にな」


「500年前に僕を助けてくれた子達を?」


「その子達は大都とマヌルヌヌ様の所とに居るよ」


「大都に!? どうして……?」


「此処で後継として育てておる子達は、ある程度 育つ毎に、人神に連れて行かれてしまうのだ」


「森が通れるくらいになる度にな。

 だから何度も子を作ってるんだよ。

 どうしても後継は必要だからなぁ」


「だが、子を成せば一時的に神力が落ちる。

 龍を除いて、なのだがな。

 故に、龍神の子は都に行き、数の少ない我等の子はマヌルヌヌ様の元に預け、修行を続けさせているのだ」


「ソニア達は、そのことを知っているんですか?」


「話していないんだ。

 互いに会ってはならないから、悲しむだけだろうと思ってね。

 下の子達にも話していないよ」


「やっぱり変えなきゃ……」


「やっぱり、って?」


「僕、今の神世は間違ってると思うんです。

 神が神を虐げるなんて、どうしても許せなくて。

 だから変えられる者になりたいんです。

 獣神様も人神と同じだと――いえ、もっとずっと上なんだと知ってもらって、禁忌も正したいんです。

 実は……そのための第一歩として、この任に志願したんです」


「そう。そんなふうに考えてくれたんだね。

 話してくれて ありがとう。

 君が来てくれて本当に良かったよ。

 ティングレイス、君は俺達の真の友だ。

 人神と獣神を繋ぐ懸け橋になってね」


「はいっ」うるうるっ――


「泣き虫なのは相変わらずなのだな」

「感動してくれてるんだからいいじゃないか。

 あ♪ オフォクスは照れてるのか♪」

「マリュース……」睨む。


「狐と虎は放っておいて、修行を始めぬか?

 猶予は十日しか無いのだぞ?」


「そうだね。なら俺が基礎をしよう。

 サンダーリア達を引き継いでね」


「ふむ。それが良かろうな」

「あ、あのっ、それでしたら御子達も――」


「それだけは、ちょっとね……」

「虐められた心の傷が癒えておらぬのだ」

「ティングレイスも人神だからなぁ」

「だから暫く近寄らないでくれ」


「あ……そうですね。すみません」


「ティングレイスは悪くない。

 だから謝らないでね。さぁ始めよう」


「はいっ」



―・―*―・―



 10日後――


〈そろそろ着くね〉


〈はい。

 森に近寄らないように、僕が止めます〉


〈うん。お願いね〉


〈はいっ〉森の外へと飛んだ。



―◦―



 あの木が御子達の家だね。

 友達になりたいなぁ……でも我慢しなきゃ。


 あれ? この辺り、草が生えてない……?

 あの向こう……線を引いたみたいに

 草で一面緑色だし

 低い茂みがポコポコしてるのに……?


振り返って森を見、乾いた土しか見えない足元を見て首を傾げていたが、ふと神眼で土中を見てみた。


 あ……コレって根っこ?

 森の木の根っこだ!


 もしかして全ての生気を吸い上げてるの?

 じゃあ森のエリアは根っこの先まで。

 草が生えてないトコなんだね。

 分かりやすいねっ♪


 じゃあ、向こう側も こんなに広く?

 そういえば草なんて無かったよね?

 あ! きっと滝まで届いてるんだ!

 滝と繋がってるのは根っこなんだね!


考えながら歩いていると、木々の根はもそもそと蠢いていて、ティングレイスを避けるように引いたり婉曲したりしていた。


 へぇ……。

 僕を強いと思ってくれてるんだね。

 キミ達とも友達になれるといいな♪


 あ、次の瞬移で着いちゃうね。

 兵士さん達とも友達になりたいな♪


瞬移を繰り返して近づいている兵士達を捉えたティングレイスは、楽し気に草地まで飛んで座ると姿を消した。



「そこで止まって!」

真っ直ぐ帽子へと向かっている兵士達を呼び止め、姿を見せた。

「目的地は僕でしょ?」


上級兵士らしい二人は顔を見合わせた後、ティングレイスに飛んで寄った。


「ティングレイス男爵閣下で御座いますね?」


「そんな御大層に付けないでください。

 グレイだけでいいですよ。

 階級章なんて分かりませんが上級の方ですよね?

 それでも……この先は危険なんです。

 草が生えていない所には入らないでください。森のエリアですので。


 あの森は『選別の森』。

 喰えると判断した神を捕らえ、神力を全て奪ってしまうんです。

 神眼が使えるのでしたら、よくご覧ください。

 木々が貴殿方を狙っています」


上級兵士達は、その言葉で森を凝視した。


「確かに……」

「御忠告、感謝致します」


「それで……遥々こんな危険な地に何を?

 僕に伝言ですか?」


「い、いえ……」


「僕に会うのは想定外でしたか?

 姿や気配を消すでもなかったので丸見えでしたけど?


 見張りの任、なんですよね?

 でも僕は森の向こうで四獣神様と共に居ますので、こちらで修行や鍛練をして森に勝てないと見張れませんよ?

 高く飛んで越えようとか、迂回してとかなんて考えてもダメですよ。

 森は滝をぐるりと囲んでいますし、神が飛べる高さよりも ずっと高くまで枝が伸びるんです」


「では、、此方で鍛練させて頂きます」


「あの高い木の下に水が湧いています。

 滝の影響もなく、聖水並みに浄化もしてますので飲んでも大丈夫ですよ。


 向こうの大きな木は四獣神様の御子達が住んでいますので近寄らないであげて

ください。

 残念なことに僕の前任者が怖がらせてしまって人神を恐れているんです」


「「了解致しました」」揃って敬礼。


「それでは神力を上げる鍛練を始めましょう。

 あ、その前に回復♪」


「あ……」「凄い……」


「僕、医者なんです♪」


「第一上級師団長クラベルスと申します」

「第二上級師団長テブロークと申します」


「ありがと♪

 クラベルスさんとテブロークさんの師団の皆さんは?」


「「副長に任せております」」


「そう。なら心配いらないね。

 肩の力抜いて、ぐるっと周り見て。

 こ~んな広~い場所なんだから、もっとゆったりね♪」







クラベルスとテブロークは前回の兵士達とは別神(べつじん)です。



龍神兄弟の指導を受けたティングレイスは、すんなり四獣神と友達になれました。

そして、どうやら初めての人神の友も得られそうです。



この世界の神の仕事は、政に携わるか、神王殿や貴神殿や貴族の屋敷に仕えるか、職域で働くか、人世と似たり寄ったりか、くらいです。


神らしいと言えば職域の仕事でしょう。

死司神(死神)と再生神の他にもありますので、次章以降で少しずつ書いていきます。



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