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篠宮家の引っ越し



 翌日は祝日『命の日』で、沙都莉は引っ越しの為に早朝から荷造りをしていた。

何もしなくていいとは聞いていたのだが、そうはいかないだろうと暗いうちから起きて始めたのだった。


ピンポ~ン♪


古い市営団地なので古典的な玄関チャイムの音が静かな部屋に響いた。

こんな早くから誰だろうと、少し恐る恐るドアを開けると、

「おはよ♪」

隙間に笑顔の彩桜が見えた。


「あ、チェーン外すから……」

焦り気味に閉めて、開け直すと、彩桜の後ろには兄達と歴史研究部の面々が折り畳み式コンテナを持って並んでいた。


「荷造り、まだなんだけど……」


箪笥(たんす)とか、そのまま運ぶから~♪

 入っていい?」


「どうぞ、散らかしてしまったけど……」


「途中のは河相さんと続けて~♪

 白久兄 黒瑯兄 紅火兄、大物いっくよ♪

 みんなは箪笥とかの上のをお願いねっ♪」

一斉に動き始めた。



 母が弟妹を連れて奥の部屋から出て来た。

「まぁ……すみません」


「いえ、此方こそ朝っぱらからスミマセン」

「台所とか、後にしますから朝メシ食って待っててください」

軽々と箪笥を運び出し中の白久と黒瑯が笑顔で通り過ぎた。

紅火と彩桜も続いて箪笥を運んで行った。


「お母さん、朝ご飯も持ってきてくれたの」

沙都莉が食卓に視線を向けた。

「お布団、片付けるね」

微笑んで、夏月と一緒に奥の部屋に行った。


「サユリちゃん、食べよ~♪」

「サンドイッチおいし~よ♪」

千美(ちはる)と紗が手を引いて食卓へ。



 沙都莉と夏月が奥の部屋の窓から覗き込むと、下に止めたトラックが見えていた。

「5階なのに……」「平気そうね♪」


さっき出たばかりなのに、もう着いている箪笥と箪笥の間に折りコンを積んでいる。

軽々と、楽しそうに。

次に運ばれて来たのは本棚だった。


「本棚、丸ごと真空パック?」

「うん……そう見える」

「一番 後ろに積んで、蓋?」

「みたい……あ……」


放たれてバッと広がったシートが荷物を覆うと、ピッタリと張り付いた。


「荷台 丸ごと真空パックの出来上がりね♪」


神業(かみわざ)……」「そうね♪」



―◦―



 祐斗達には新居での手伝いを頼み、上に戻った彩桜とサーロンは風呂場に隠れた。


「「浄化♪」」あっという間にピッカピカ☆

もちろん風呂場だけではない。


サッサとシャンプーやらを折りコンに詰める。


『サクラお兄ちゃん♪

 朝ごはん終わったよ♪』


「ランちゃん ありがと♪」


「残りはボクが詰めるよ」


「ん♪ じゃあ下にご案内~♪」



―・―*―・―



 その頃キツネの社では、飛鳥(サファーナ)とリップル・ポップル、オニキスと虹香(サリーフレラ)静香(シャイフレラ)、子犬達なルビーナを抱いた瑠璃(ラピスリ)がオフォクスを囲んでいた。


「分割された者を元に戻す術は知っておる。

 しかし……」


「神力不足かな?

 あと少し待ってもらえれば俺も加われるよ」

現れた青生から生えているように浮かんでいる瑠璃鱗ドラグーナが微笑んだ。


「心話でなく話せる程になったのだな。

 儂とドラグーナ、ラピスリ。

 もう1神、大神が必要なのだが?」


「バステト様は?」


「欠片不足だ」


「エィムとチャムでは?

 リップル様、ポップル様。

 融合の術をお教え頂けますか?」


〈〈はい♪〉〉

〈獣神王様にお会いできて〉

〈こうしてお話し出来るなんて〉

〈〈とても嬉しいです♪〉〉


「引き受けていないのになぁ。

 それに若輩者ですよ」苦笑。


「おいドラグーナ」「ん?」

「エィムは兎も角チャムは――」

「鍛えてね、ラピスリ」


「あ、はい……」声を低くした。


「エィムが(メイン)での融合って出来ますよね?」兎達に。


〈〈可能です♪〉〉


「然うか……ふむ。

 エィムを鍛え上げ、ドラグーナが復活し、ルビーナの神力が十分と成った時に決行しようと言うのだな。

 全て、試す事となるがルビーナはそれでよいのか?」


《《《はい!》》》


「ならばルビーナの引き上げはサリーフレラとシャイフレラに任せる。

 確と頼む」


「「お任せあれ♪」」にっこにこ♪


そこにエィムが現れた。遅れてチャム。

「ラピスリ姉様に流して頂いていましたので全て聞いていましたが……僕なんかでよろしいのですか?

 オフォクス父様まで納得なさったみたいに仰るなんて……」


「今後の修行次第だが、素材としては十分となるよう生んでおる」

ドラグーナもにこにこ頷く。


「そ、そうですか。では励みます。

 その事で呼ばれたのですよね?

 あまり長く外せませんので戻ります」礼。


《《《待って!》》》〈〈僕達も!〉〉


「はい?」瞬移しかけて止まった。


ラピスラズリとして瑠璃が子犬と兎達に引き受けたと微笑んだ。

「ルビーナ姉様は禍の滝に、リップル様とポップル様は兎の里にと願われていらっしゃる。

 新たな通路を試す際に頼めるか?」


「はい。では、道の方も頑張ります。

 リップル様、ポップル様。

 姉神様は見つかっていますか?」


〈半分程は見つけました〉〈ユーレイです〉


「そうですか。

 絶滅種保護区域を通りますので、姉神様のお話を管理神様にお願いします。

 ご心配なさっておられますので」


〈〈はい!〉〉



―・―*―・―



 新居の敷地内で止まった車から沙都莉の母が降りて末っ子を出そうとすると、

「お任せくださいね」

運転してくれた彩桜の兄が微笑み、チャイルドシートごと出して、地面に置いた。

――かと思ったらベビーカーに変わっていた。


「え……?」


「ベビーカーとしてもお使いくださいね」

次は真空パック状態の小箪笥を軽々と肩に担いでベビーカーを押して歩き始めた。


「皆さん、力持ちなんですね」


「そうかもしれませんが、コツですよ」

玄関先でベビーカーを持ち上げ、そのまま入って居間へ。


「あっ」


「はい?」

置くと、今度は揺りかごベッドに変わっていた。


「どうして……?」


「背面上部のボタンで切り替えているだけです。

 この小箪笥はどちらに?」


「寝室にお願いします」


「では参りましょう。

 紗ちゃん、お願いしてもよろしいですか?」


「は~い♪ フジお兄ちゃん♪」

同じ車で来て、先に居間に入っていた沙優莉、千美と一緒にニコニコしている。



 寝室に行くと、振り返った沙都莉も嬉しそうな笑顔になっていた。

「タンス、この並びでいい?」


「そうね。ありがとう沙都莉。

 すっかり任せてしまったわね……」


「楽しいからいいよ。

 お兄さん、それ、この低いタンスの上にお願いします」


藤慈が小箪笥を置いて、包んでいるシートの下方を引くと、スルリと剥がれて小さくなった。


「まぁ……」


「食品ラップとしても使えるのですよ。

 強力抗菌シートですので軽く水洗いすれば何度でも使えます。

 小さな出っ張りを持って振ると、振った強さや回数に比例して大きくなります。

 その端を引っかけて伸ばす感じは普通の食品ラップと同じです。

 器よりも広くして、ふわりと被せてもいいですよ。

 外す時は出っ張りを引くだけです」


「お母さん、たくさん貰っちゃった」

小さく縮んだシートが掌に30程あった。

「トラックの荷台、丸ごと包めるの」


「不思議な……でも、とても便利ね」

「お鍋、修理 終わったよ~♪」

戸口で彩桜がニコニコ♪


「え? 修理?」


「台所、来て来て~♪」



 彩桜を追うと、紅火が食卓にフライパンや鍋を並べていた。


「新品……?」


「直したの~♪

 ガタガタなってたのとか、おコゲとか。

 で、改良してピッカピカ♪」


「確かに、この模様……」「ウチのだね……」


「でも当面はウチのご飯、持って帰ってね♪

 篠宮さん毎日ウチ来るんだから~♪」


「そんな迷惑――」


「ナイから~♪

 中学生は勉強しなきゃだよねっ紅火兄♪」


「勉強だけではないが、大切な事は他にある筈だ。

 大いに学び、吸収すべき時だ。

 家事を一番とすべき時ではない。

 料理人になりたいのならば別だがな」


「けど料理も、ってんなら教えるぞ♪

 いつでもなっ♪」

鍋をチェックしに来たらしい黒瑯。


夏月が黒瑯に駆け寄ってコショコショ。


「いいぞ♪ どっちもな♪」


嬉しそうにペコリとして戻った夏月が沙都莉の腕をつんつん。

「沙都莉ちゃんも一緒に。ね?」こそっと。


「いいけど何を?」


「沙都莉ちゃんも鷹前君に……でしょ?」


「え……」一気に頬染まる!


「ね♪」

「お~い篠宮ぁ?」

「タンスや戸棚の上にあった物、元通りに――」


堅太と祐斗が姿を見せ、沙都莉と夏月は顔を伏せて逃げてしまった。


「――戻したんだけど……どうして?」「なぁ」


ぱちくり顔で彼女達が逃げた方を見る堅太と祐斗だった。







普通の引っ越し……ではありませんが、楽しく平穏な引っ越しのお話でした。


平穏なお話が続きましたので、そろそろ何か起こるのかも……?



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