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やっと再び禍の滝へ



 ティングレイスが書庫に入りたいと望んだ本当の理由は、上級解呪などの術をソニアールスに教えてもらったとバレないようにと考えた為だった。

試験では警戒して中級までしか見せていなかったので、今ここで上級の解呪や浄化の術を得たと言えるよう、術に関する本を片っ端 机に運び、開いて見ては せっせと紙に書いていった。


 ふと手を止め、ペン尻で帽子のつばをツンツンと突いてみ、暫く様子を窺ってから脱いでテーブルに置いた。


 この違和感……何だろう?

 ソニアと話せたらいいんだけどな。


 ま、今なら何か言われても

 書くのに邪魔だからって言っていいよね?

 本当に邪魔なんだもん。


「紙は足りておりますか?」


「えっ……はいっ」ビックリしたぁ!


「ですが、もう少し足しておきますね」

司書の老神は微笑み、紙束を置いて去った。


 帽子のコト言われるのかと思ったよぉ。

 ここじゃ少しも気を抜いちゃダメだね。


 あのおじいさん、山羊神様じゃないよね?

 ソックリだけど……神王殿には人神しか

 居ないハズだよね?


老神の背を神眼で追っていたが、ただ席に戻っただけだったので、術を写すのを再開した。



―◦―



 昼になったのも、その老神が教えてくれた。

書庫の外で待機していた執事に連れられて神王殿の外門に行き、待っていると、宰相が若い兵士を2人伴って来た。


「道案内も兼ね、副都まで護衛を付けると決まってな。

 不要であろうが、まぁこれも務めと思うて手合わせでも楽しんでくれ」


「はい。お心遣い感謝の極みで御座います」


内心うんざりゲッソリだが礼儀は礼儀と、そう答えた。



―◦―



 前日の見張り兵士達も、ごく簡単な術である瞬間空間移動(瞬移)すら出来ないどころか知らなかったので、置き去りにすると厄介だと思ったティングレイスは、先導する兵士達同様に歩いて王都を出た。


「そろそろ、せめて飛びませんか?」


「飛ぶ?」「だと?」


「では瞬移しますか?」


「シュンイ?」「だと?」


「僕と一緒に旅なんて不本意なんですよね?

 でしたら早く終えましょうよ」


「お前、ナマイキだぞ」

「男爵ゴトキで指図するな」


「へ?」ぱちくり。


「ソッチは男爵、コッチの父様は子爵様だ」

「だから指図するな。従えよな」


「僕が男爵?」


兵士達、あからさまに言わなきゃ良かったな顔を見合わせる。


「お父様が子爵様、、で、キミ達自身は?」


「くっ……侮辱するのかっ!」「決闘だ!」

――はい。無爵位です。


「手合わせしか許されてないよね?」


「だったら手合わせ中の事故に!」


 ソレ堂々と言う?


「怪我しても治してあげるね♪」


「「ウルサイ!」」


内ひとりが前に立った。「勝負だっ!」


「足止めなんて時間もったいないから、ふたり同時でいいよ?」


「またナマイキ言ったなっ!」

「ソッチが言ったんだからなっ!」


「うん。始めようよ」


 ティングレイスが剣を構える前に、とでも考えたのか、兵士達は『始め』も何も言わず襲いかかってきた。


2剣が宙に舞う。


――が、気づいていないのか、2神は腕を思いっきり振り下ろした。


「えっ!?」「あっ!!」


見事に空振りしたその場にティングレイスは居らず、宙で2剣を取って降りた。


「はい」返すねっ♪


「もう一度だ!」「おとなしくしろ!」


「手合わせなのに おとなしく?」


「「そこを動くなっ!」」


「うん。いいけど。

 それじゃあ、せめて飛んで来てよ。

 その鎧、重さなんて無いよね?」


「だからウルサイ!」「指図するな!」

2神は半身をティングレイスに向けるような格好で離れ――るのかと思いきや襲ってきた。


2神には、ティングレイスが全く動かなかったように見えていたが、またしても剣はフッ飛んでしまった。


「「何をしたっ!?」」


「剣を抜いて弾いただけ。怪我ナイよね?」

言いながら神力を手に集め、投げ縄の如く落ちた剣を引き寄せた。


「「なっ!?」」


「はい」返した。「まだやるの?」


「コノッ!!」「引き下がれるかっ!!」

その場で斬りかかる!


「防壁」


 2神は剣を振り上げた前のめりの格好のまま、ほぼ透明な壁に捕らえられた。

壁の前に顔と両肘と片膝、残りは後ろの状態だ。


「剣を仕舞うね。

 僕は早く最果てに行きたいんだ。

 悪いけど このまま副都に行かせてもらうよ」


 2神ごと壁を背負って瞬移を繰り返し、ものの数分で副都の門が見える場所に着いた。


「これが瞬移。

 僕は こうやって移動するんだ。

 だから副都には寄らずに向かうからね。

 防壁解除。道案内ありがとね」


「待てよ!」


「まだ手合わせしたいの?」


「いや……ここで手合わせしてたら門番に咎められるだろ。

 そうじゃなく、俺達が今 引き返したら早すぎるから任の途中放棄と見なされる。

 だから5日間の宿を取ってくれ」


「僕が? どうして?」


「お前、何も聞いて――」

「俺達が道中で説明するハズだったろ」

「あ、そうだったな」


「説明、お願いします」にこにこ。


「その帽子の紋章。

 それを見せれば宿屋も飯屋もタダなんだよ」


「飯屋? 神には不要だよね?」


「美食は貴族の嗜みだ。

 だからお前が宿屋と飯屋を確保してくれ」

「場所は俺達が指定する」


「うん、いいよ」手を繋いで門前に瞬移した。



 門番達は一瞬だけ驚きの表情を見せたが、帽子を見て『どうぞ』と門を開けた。



「ふぅん……この帽子、凄いんだね」


「分かったならコッチだ」


「ね、どうして飛ばないの?」


「と、飛ぶなんぞ下賤の者がすることだっ」


「そうなんだ……」飛べないんだね。

「あれ? こっちにも神王殿?」


「お前、初めて来たのか?」


「うん」前回は門すらも見てないんだよね。


「あれは貴神殿(キシンデン)

 王を経た御方や、現王様の御子達が住んでいる」

「もっと近づけばよく分かるが神王殿よりずっと広くて高さもある」


「へぇ~♪」


「この宿だ」「飯屋は隣だ」



 帽子効果で すんなりと5日間の宿と飯が確保できた。


「それじゃあ僕は行くね」


「門だけは くぐれよ」


「ありがと♪ お礼に回復♪

 気をつけて帰ってね」消えた。



「……ムチャクチャ強かったな」

「ああ……全く見えなかったよ」

「それに、あの壁」「うん……」


「何をボーッとしておる」


「え?」「あ……「申し訳ございません!」」

紋章を見て敬礼!


「次の任を伝える」

「ティングレイス男爵を追え」


「「はっ!」」


「如何した? 直ぐに行かぬか」


「5日間の……」宿を見る。


「無駄にはせぬ。安心して行け」

「俺達が滞在してやるよ」

副都の騎士達はニヤニヤしながら飯屋に入って行った。



「仕方ない……」「行くしかないよな……」


「でもアイツの移動じゃ……」シュンイってヤツ。

「とにかく最果てに向かうしかないよ」

「だよな……」溜め息×2。



―・―*―・―



 その頃、ティングレイスは順調に瞬移を繰り返していた。


〈ティングレイス、聞こえるよね?

 その帽子なら位置を知らせるだけだから考えは読まれない。安心していいよ〉


〈ドラグーナ様ですねっ♪〉


〈そうだよ。頑張って修行したんだね。

 君の到着を待っていようと思っていたんだけど、君を追っている者達が居るからね。

 話したいから空間ごと引き寄せるよ〉


〈あ……向こうの街近くの兵士達ですね?〉

斜め後ろの街に神眼を向けた。


〈そう。それと副都からもね。

 近くの兵士達は帽子からの位置情報を得ている。

 副都からの兵士達は最果てを目指しているだけみたいだね〉


〈どうして2組も……?〉


〈何やら思惑のある上級某かが複数居るんだろうね。

 それじゃあ引くよ〉



 強い力を感じたのは一瞬で、見覚えのある森の前に、微笑む金龍が浮かんでいた。


〈ドラグーナ様っ〉

飛んで寄ると、ドラグーナは抱き止めて背をポンポンとしてくれた。


〈息子達が世話になったね〉


〈お世話になったのは僕の方です!〉


〈君が頑張ったんだよ。

 だからほら、森も静かだ。

 森を抜けて滝の方に行こう〉







サクサクッと最果てです。


グレイを追えと命じられた兵士達、飛ぶことすらできないのに最果てなんかに辿り着けるのやら……です。



人神の『劣化』が著しくなった頃から貴族達の間では、子の健やかな成長を願い、思いを込める為、次第に名が長くなっていったようです。

この頃には単なる流行りになってしまったようですが。


そういう訳で、この貴族のボンボン兵士達の名も(いずれ登場しますが)少々長いんです。


そうなると『ティングレイス』というのも、かなり長いので……ですよね?



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