ピカピカのDIY道具
彩桜とサーロンの朝は早い。
黒瑯とリーロンには及ばないが。
「サーロンおはよ~♪」「彩桜おはよ♪」
夜中まで大騒ぎだったので短時間しか眠っていないのはお互い様だが、各々の区画から出たとたん、彩桜はサーロンを回復治癒光で包んだ。
「瞑想しよ~♪」「ありがと♪」
共有スペースで向かい合って座る。
魂の深くへと集中――
『ええっ!?』「ほえ?」「行こ!」
――2人は部屋から飛び出した。
「山勢さん!」「どしたのっ!?」
『助けて彩桜君サーロン君!』
「開けていいの!?」『お願い!』
「失礼するねっ!」
襖を開けると、布団の上に座ってスマホを握り締めて泣いている美雪輝が居た。
「どしたの!?」「何あったですか!?」
「お母さんからピィちゃん動かないって!」
「ピィちゃん?」「ペットですか?」
「セキセイインコ! 助けて!」
「俺、青生兄か瑠璃姉 連れてく。
サーロン、山勢さん家に先 行ってて!」「ん!」
「彩桜君 消えた!?」
「美雪輝ぃ、ど~したのぉ?」寝ぼけ眼。
「ピィちゃんピンチ! 先 帰る! ゴメン!」
「そんなら私も帰るからっ!」
「とにかく行くです!」2人の肩に触れて瞬移!
――「きゃあっ!」「お母さん落ち着いて!」
「え? 美雪輝……」「ピィちゃんは!?」
「リビング!」
一緒に向かおうとした母の目の前に彩桜と瑠璃。
「誰!?」
「失礼致します。獣医師の輝竜です」
「あ、ああ、そうなのね……」
驚きの度が過ぎてボ~ッと歩き出した。
そして居間の鳥籠の前に。
覗き込んだ瑠璃の表情が柔らかになる。
「助かります。
ですが大勢の視線にインコが緊張しては助けられませんので、部屋の外にお願い致します。
彩桜、補助を頼む」「うん」
「お母さん行こ」「え、ええ……」
【サーロン、軽く説明お願い~】【うん】
【お腹に卵?】
【詰まっているだけだ】
【出したら元気?】
【そうだな。しかし時間が経ち過ぎている。
速やかに出さねば命に関わる。
彩桜、浄化と治癒を同時に頼む】【任せて!】
―◦―
廊下では――
「急いだので驚かせたです。
ごめんなさい」
「謝らないでよぉ。
アタシが朝っぱらから叫んじゃったんだし~」
「すっごい大声だったよねっ♪」
「愛綺羅は寝てたじゃない」
「起きたけど眠気に負けた~♪」あははは♪
「ま、いいけど~」
「ま、ど~でもだけど~「カッコイイよね♪」」
同時にクルッとサーロンに笑顔。
「えっ、、、と~」と~~っても困り顔。
「誰にも言わない。約束するよ」「だぁね♪」
「ありがとございます。
常識の中の人達には知られたくないです。
危険になるだけ、ですから」
「アタシ達は?」
「外がある、知ってます。
だから護ります」ニコッ。
「あ~~」「ナンかキラキラ~」
真っ赤になった顔を手でパタパタ扇ぎながら、サーロンを直視できずに視線をウロウロ――
「お母さん?」
「おばさん、いないね……」
「台所、行ったです。
聞かれたくない、から、いいです」
「常識から出られないオトナだもんね~」
言いながら様子を見に台所へ。
「あれぇ? 寝てる~」あはっ♪
「朝ごはん、すっごい豪勢~♪」
「兄さん、来てたみたいです。
たぶん見られて眠らせたです」
「じゃあフツーに帰ってきたってしよ~♪」
「だぁね~♪ テレポート~は夢の中~♪」
初冬に浴衣でだが慌てて帰宅したと有耶無耶にするつもり満々だ。
「ありがとございます♪」
【卵、出たけどピィちゃん抱かないのぉ。
だから育てたいなら瑠璃姉が預かるって~】
「えっと、ピィちゃん無事です。
卵、育てたいですか?」
「「卵!?」」
「卵、詰まって命危なかったです。
だから出したです。
育てるだったら動物病院で孵化させるです。
安定したら後は育てて、です。
彩桜、言ってます」
「モチ育てるよ!」
「ピィちゃん、キューくんの卵、2つです」
「どーしてキュー知ってるの!?」
「名乗ったです。彩桜、動物と話す、得意♪」
「ホントすっごいねっ♪」
「ハイパースーパー彩桜君だ~♪」
「何ソレ、言ってます♪」
笑い声で美雪輝の母が起きた。「えっ……」
「お母さんオハヨ♪ ピィちゃん復活~♪」
「えっ? って!? それにこれ!」
「急いで帰ったから~、サーロン君のお兄さんに朝食もらったのよね~♪」
「サーロン君が並べてくれた~♪」
「そ、そう……ありがとう。
お兄さんにも宜しく伝えてね?」
「はい♪」「ナンかお母さん、変?」
「夢よね……うん」
「ヒトリで納得~♪」あははっ♪
「もうっ、変な夢を見ただけよ。
変だけどリアルな――え?」
皆で母の視線を追うと、台所の入口で頭にセキセイインコ達を乗せた彩桜がニコニコしていた。
「台所には入りませんけど、ピィちゃん元気で~す♪
キューくんとピィちゃんの卵は、きりゅう動物病院で孵化させま~す♪
いつでも見に来てくださいねっ♪
それじゃケージに戻しときま~す♪
サーロン帰ろ♪」「うん♪」
美雪輝と愛綺羅が追って廊下へ、リビングへ。
「もう帰った?」「いないね~」
すぐに追ったのに、ケージの中に仲睦まじいセキセイインコ達が居るだけだった。
「ま、学校で会えるしねっ♪」「だぁねっ♪」
ケージに背を向ける。
コトッ。
「「ん?」」振り返る。「「ああっ!」」
風呂敷包みが2つ。
駆け寄って開けた。
「あ、着てた服だ」「あ~~見たくないヤツ!」
「ん? でも空っぽじゃない?」
服の上に乗っているトートバッグをツンツン。
「ホントだ……何が入ってたんだろ。
けっこう膨らんでたよね?」
「記憶、ぜ~んぜんなの?」
「お父さんのDIY道具ガサガサしてたかな~?」
「それでカナヅチね~。
あ、コトッて音しなかった?
アタシの固いのなんてないよ?」服だけ~。
「ん~と……スマホ?
ポケットの中だから大丈夫だろーけど」
「ま、彩桜君なら『置いたよ』って合図だけでしょ」
「だぁね♪」
「ねぇ、その『だぁね』って……?」
「昨日ね、私の中の真っ黒オバケが出てった後、お兄さん達とか私を囲んでる人達いっぱいが話してるのが聞こえてたのよね。
で、『だぁよ』とか『だぁなぁ』とか男の人が言ってたのよね。
なんか~、気に入っちゃって♪
私なら『だぁね』かなって♪」
「ま、カワイイよね~」苦笑。
「でしょ♪
でもホント美雪輝にも迷惑かけちゃった……マジごめん!」
「も~いいよぉ。
やったの真っ黒オバケだし~。
でもホント……」
「ん?」
「……助かって良かった!」ハグ!
「美雪輝……ありがと!」ハグ返し!
『ねぇ、朝ごはん食べないの?』
「あ~、行こっ♪」「だぁね♪」
美雪輝の父も加わり、美味しい美味しいと連呼して食べた後、親友に戻った二人は愛綺羅の家へと外に出た。
「「あ……!」」
道の向こうを犬の群れが横切ったと思ったら――
「「彩桜君とサーロン君!♪」」
――が、走り抜けた。
「もしかして犬の散歩?」
「散……走じゃない? 犬と爆走♪」
「あ~、だぁね♪
でも……時間なくなって走ってる?」
「アタシが騒いだからだぁ。
後で謝らなきゃね」『愛綺羅、か?』
「ん? お父さん?」門扉へ。「何してるの?」
「錠を壊したのは愛綺羅だろ」ムッ。
身を低くして修理していた。
「あ~~ゴメン!」手を合わせた。
「あれ? カナヅチある……凶器イロイロも?
ね、愛綺羅」ツンツン。
「ホントだ。お父さん、道具全部あった?」
「揃ってるが、どうした?」
「あ~~~えっとぉ、ナンかピカピカ?」
「そうなんだよな。
綺麗になってて、使い易いんだよ。
よく気付いたな」
「だって宝石箱みたいだし~♪」
金属部分や色とりどりのプラスチック部分が朝陽を受けて煌めいている。
「確かにな。さてと、もう壊すなよ?」
道具箱の蓋を閉めて立ち上がった。
「は~い♪ 美雪輝♪ また後で♪」
「じゃあ後でねっ♪」各々、家に。
「錠を壊してまでの忘れ物って何だ?」
「ええっとぉ~、、コクりに行った♪」
「それは、、大事だな……」父ショック。
「でしょ♪ でも彼女いるってフラれた♪
ずっと護るのは揺るがないんだって~♪」
「おいおい……喜んでるのか?」父フクザツ。
「友達になってくれたよ♪
あのね、私、勉強する♪」
「は?」
「大事なイロイロ教えてもらったんだ♪」
「そうか……頑張れよ」父ホッとした。
「うん♪」
愛綺羅の父のDIY道具を使い易くして片付けたのは紅火しかいませんよね。
早朝に騒いでも全力で対応してくれる彩桜とサーロンへの恋心が更に膨らんでも、もう生霊騒ぎは起こさないと二人は決心しています。
だからこその親衛隊なんです。
道具が元通り箱に戻り、美雪輝と愛綺羅が元通りの親友に戻り、そのどちらも以前よりずっと良くなったところで、この章は終わります。




