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真夜中の襲撃



「ただいま♪ って、どうして廊下?」

【ん? なんだか不穏?】

響が眠ったので、部屋で瞑想している筈の彩桜へと瞬移したサーロンが首を傾げた。


【サーロンお帰り~♪

 この向こう見て】


【また来たんだね。何しに来たんだろ?

 だから閉めてるの?】渡り廊下の戸。


【勝手に閉まるの~。

 店と玄関の間の勝手門トコに人 来たり~、庭から勝手門に向かってるの感知したら、廊下、真ん中から分かれて引っ込むの。

 1/4ずつ重なって短くなるの~。

 だから落っこちないよぉに閉まるの~】


【言われてみれば渡り廊下も、門から庭に行くのも、いつも すんなり通ってたよ。

 店から狐儀様と紅火お兄さんが見てるね】


【黒瑯兄とオニキス師匠、お庭なの~。

 白久兄と藤慈兄、道に居るの~。

 青生兄と瑠璃姉、空なの~】



―◦―



「愛綺羅ってば!

 夜中に勝手に入っちゃダメ!」


「美雪輝なんかにカンケーないっしょ。

 触らないでよ!」

腕を掴んだ美雪輝の手を振り解こうとしたら、持っていたトートバッグが飛んで中身が散らばった。


愛綺羅が慌てて拾おうとしたのを押し退けて美雪輝が幾つか掴み取った。

「何すんのよ! 返してよ!」

「何しようとしてるのよ!?

 ロープとナイフって何!?」


「返せ!」何かを振り上げた。


「何それカナヅチ!? ジョーダンでしょ!?」


美雪輝は避けながら手当たり次第に次々と拾い、愛綺羅も拾いながら追って襲い掛かっていた。


「そこまでだ、嬢ちゃん」【彩桜は来るな!】


「手の物、預からせて頂きますよ」


白久と黒瑯が愛綺羅の前後を挟み、藤慈とリーロンが左右から手首を掴んだ。


「彩桜君がいっぱい……♡」

すんなりと武器を回収された愛綺羅は正面の白久に抱き着いた。


「おいおい」バンザ~イ。


ギリギリと腕の力を強め、顔を寄せていく。

背の高い白久の顔には到底届かないのだが。


「こりゃあ女の子の力じゃねぇな……」


まだまだ締め続けている。


【だな。ヤバそうだから気絶させていいか?】


【リーロン頼む!】いくら俺でもアバラ折れる!


正真正銘リーロン(オニキス)は神なので、お茶の子サイサイに気絶させた。

が、気絶したと同時に、また生霊が愛綺羅から分裂するように現れた。


【ったく~】とりあえず白久は愛綺羅を横抱きに。

【お~い狐儀(フェネギ)、得意だろ?】リーロンはニヤリ。


【またですか】呆れ顔だが繋がりを探っている。


 紅火が既に堅固で結界を成しているので生霊は捕獲されたも同然だったが、膨らみつつ逃げ場を求めている。


【彩桜、サーロン。

 正気な方の女の子を保護してくれ】


【ん】【はい!】現れて美雪輝を連れて消えた。



【見つけました!】サッと手刀で断った。


【あと任せて!】

声は彩桜だけだったが、浄破邪光は2筋だった。

庭の2点から飛んだ光が宙を走ってクロスし、生霊は消滅した。

【【勝手に出てゴメンナサ~イ!】】


【ソッチの嬢ちゃんは無事かぁ?】


【うん!】【はい!】


【そんならいいよ。祓い屋コンビ♪】



―◦―



 廊下に戻った彩桜とサーロンが部屋の襖を開けて、安心させようと微笑んだ。


「愛綺羅は!?」


「大丈夫~♪」「気絶してるだけです」


「彩桜君を殺そうとするなんて……」


「たぶん、ですけど違う思います」


「でも凶器だらけだったし……」

「ねぇサーロン、どゆコト?」


「殺すじゃなく、捕まえるだった思います」


「俺、そんな簡単に捕まらにゃいよ?」


「だからイロイロ持ってた思います。

 ところでナゼ一緒だったですか?」


「愛綺羅の家、隣だから。

 夜中なのに愛綺羅が出かけたのがアタシの部屋から見えたの。

 それで尾行して……入っちゃったから止めようとして……」


「そうですか。

 根本的解決しないといけません。

 山勢さん、送ります。

 銛矢さん、お泊まり連絡、狐松先生にお願いします」


「アタシも愛綺羅と一緒にいたいけど……今のケンアクさじゃダメだよね……」


「お父さん、お母さん、心配します。

 朝には親友、戻れます。

 生霊、ちゃんと祓いますので」


「また生霊なんだ。

 真っ黒オバケ、シツコイんだぁ」


「祓いますよ。ですから――」

「あ~、どっちの家も大騒ぎだぁ~」

「居ない、見つかったですか?」「みたい~」


「だから窓から出たのになぁ。ん?

 彩桜君、見えてるの?」


「あ~~~どぉしよ……」


「もう驚かないって~。

 なんだかんだってスゴいね♪」


ぽすぽすぽす。

『忘れ物を取りにいらしたという理由で、時間が遅いので二人共、泊まりとしておきましょうか?』


「大騒ぎしてるからぁ、ソレで早くお願いしま~す。

 山勢さん、銛矢さんが出てったの見て追っかけたの~」


『そうですか。伝えておきますね』

足音が去った。



「こんな時間に狐松先生?」


「うん。ウチに住んでるから~」


「あ、そっか」


【彩桜、今ラピスラズリ様に解呪してもらってっからな。

 もう少しだけ起きててくれ】


【いいけど、オニキス師匠は解呪してないの?

 何してるのぉ?】


【ナンだよ?

 オレも彩桜の兄貴達も、悪ぃモンが飛ばねぇように見張ってるんだぞ】


【俺も見るぅ~】


【その子、護っててくれよな。

 絡んでるんだから生霊が飛ぶ可能性大なんだからなっ】


【そっか。うん】【はいっ】


【飛んだらソッコー動けるよーに神眼コッチに向けてろ】


【ん!】【はい!】頷き合う。


「やっぱカッコイイねっ♪」「「あ……」」



―◦―



 解呪は和館の2階で(おこな)っていた。

愛綺羅の枕元に瑠璃、足元に青生が立ち、解呪術を唱えている。

四方の壁に沿って彩桜とサーロンを除く輝竜家で暮らす面々が並ぶ中に、ちょうど寛いでいたサイオンジとトクも加わって囲んでいた。

 ただ、その囲みは1箇所だけ隙間を空けていた。

それは彩桜の部屋に最も近い箇所だった。


【――って伝え方でいいのか?】


【ありがとうオニキス】詠唱しながら。


【で、んなユルユル解呪でいいのか?

 ガツンと浄破邪しねぇのか?】


【強い浄化や破邪で弱禍を浄滅したならば、禍が膨れて浸透し、呪鎖で雁字搦(がんじがら)めな この娘の魂も生きてはいられぬ】


【ふぅん】


【理解が及んでおらぬようだな。

 この弱禍は既に弱禍と言えぬ程に肥大化しており、呪鎖を延ばしている。

 だから先ずは根を張るように絡む呪鎖を解呪し、弱禍を魂から浮き上がらせねばならぬ】


【この隙間って、彩桜の部屋に弱禍を逃がすつもりなのか?】


【彩桜とソラを信用しての策だ。

 最終的に、飛んだ弱禍を通じて娘の本音を親友と彩桜とに吐露させると同時に次段階の術を唱え、浸透分をも浄滅するつもりだ】


【やっぱラピスリってスッゲーなっ♪】


【オニキスも修行しろ】ポコッ。


【ってーなっ! 何したんだよ!】


【掌握で殴った】【ソレ何なんだよ!】

【たまには己で調べろ】【そーかよ!】


【ラピスラズリ様、瑠璃。そろそろだよ】

〖【ありがとう青生】〗



【【間も無く出ます!】】



―◦―



「えっ?」「捕縛網!」「具現化!」


 唐突に現れた黒い小さな塊を彩桜が放った神力封じの網が捕え、魂らしく感じたので網目から抜け逃げないようにサーロンが具現化して留めた。

空かさず彩桜が浄破邪剣を成す。


【待って彩桜! まだ繋がってる!

 話を聞いて説得だよ!】


【そっか】剣を消した。



 網の中で精一杯 暴れている黒塊が静まるまで弱い浄化を当てて待った。


『彩桜君……?』


「うん。ちゃんと話してくれる?

 何がしたかったの?」


『彩桜君の……彼女になりたい……』


「友達じゃダメ?」


『彼女じゃなきゃイヤ!』


「って言われてもねぇ……」

【兄貴達ぃ~、俺どしたらいいのぉ?】


【もしも約束したなら、魂に直接 伝わってしまうそうだよ。

 だから別の話を――】『黙るな!』


「友達しか無理。ね、他には?」


『彩桜君を持って帰る。

 一緒に暮らすの。

 結婚するの!』


【兄貴達ってばぁ、助けてよぉ】


【いやぁ~口説くのなら得意なんだがなぁ~】

【白久兄様、こちらを見ないでくださいよ】

【モテた覚えなんか無ぇもんなっ♪】

【黒瑯兄様、喜んでいる場合ですか】


【もおぉ~、兄貴達ってばぁ~】







またまたまたまた生霊、シツコイ真っ黒オバケです。

根本的な解決=説得をしなければなりません。


幼い頃から疎外されていた兄達はアテに出来ません。

どうするモテモテ彩桜!? です。



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