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生霊+怨霊な悪霊



 少し遡って、彩桜が表彰台でメダルを受けていた頃、観覧エリアでは――


美雪輝(みゆき)、アンタ入部した気でいるの?」

イライラ爆発的な愛綺羅(あきら)が低い声で言った。


「そんなつもりないよぉ。

 愛綺羅達も応援したんだし、嬉しくないの?

 彩桜君、優勝したんだよ?」


「自分だけ入れたらいいんだ……」


「ちょっと愛綺羅? 聞いてる?」


「私だけ、ノケモノなんだ……」


「だから愛綺羅、聞いてよ。

 一緒に親衛隊しようよ。

 彩桜君を応援しようよ。

 一緒に少しずつ近づこうよ。ねぇ?」


「美雪輝だけは仲間だと思ってたのに。

 親友だと思ってたのに……」


「愛綺羅ってばぁ――」

「待って山勢さん。この感じ……たぶん耳に入らないと思う。

 今は逃げた方がいいよ」

祐斗が美雪輝の袖を引いた。


「どういうこと?」


「先週の日曜日、彩桜の家に来たの覚えてる?

 バスから降りた夏月の妹を夏月だと思って怖がらせたの覚えてる?」

話しながら愛綺羅の視界を遮ろうと、美雪輝の前に立って隠した。


「え……? 夏月の妹?」


海月(みつき)チャンの腕掴んで叫んでたんだよ。

『夏月だけ!』とか『ズルい!』とかってな」

堅太も祐斗に並んだ。


「次の日に本当に河相さんを襲ったから、この盲目状態の次は襲撃だと思うよ」

凌央も並びに加わる。


「こうしただけで黙るんだから今日はもう姿を見せない方がいいと思う。

 静かに彩桜のお兄さん達の方に逃げて」

祐斗は振り向かずに言った。


「そっか……愛綺羅達、どーしたら助かるの?

 助けられる? お願い、助けて」


「彩桜じゃないと無理だけど……でも彩桜が戻るまで頑張るから」

「だから早く逃げてくれ」

「大勢を巻き込みたくないから」


「うん、ゴメン。けど、お願い。

 緋怜(ひさと) 晶美(あきみ) 舞香(まいか)行こ」


「「うん……」」「沙都莉と夏月も行こ?」


「そうだね。2人も一緒にお願い」

「直史達も早く離れろ」

「代わりに誰か呼んで」


「「「うん……」」」

「僕、壁になるくらいの協力しか無理だけど」

恭弥は並びに加わった。

「「「だったら僕達も並ぶよ」」」

動きかけていた直史 尚樹 星琉も残って前4人の間を埋めた。



―◦―



 美雪輝達が逃げているとサーロン(狐儀)と すれ違った。

「そのまま逃げて。向こう、任せて」


すぐにその背中は人垣で見えなくなった。



―◦―



 祐斗達を護ろうと輝きを増した六角鱗護(むかどりんご)を目指して進んでいた狐儀は、サーロンの姿では彩桜だと思われて火に油を注いでしまうと考え、狐松に姿を変えた。

「久世副部長」


「狐松先生、来てたんですか?」


「ええ。怨霊と成るか生霊と成るかは紙一重ですが、化するは確定です。

 時間の問題ですから皆さんも離れてください」


表彰台では記念撮影が終わり、彩桜達は台の向こう側に降りたようだった。


「大勢の関係ない人達は?」


「私が護りますよ」


「行こう」「でも」「僕達は戦えないから」


祐斗達が背を向けようとしたその時――


「彩桜君と仲良くするなんて……」

「誰よ、あの女……」「また私だけ……」

負の感情が一気に膨らんだ。



―・―*―・―



【な~んか、ず~っと向こう……怨霊?】

西でも遠くなら向いてもいいだろうと凝視。


【いや、少し違う。でも生霊でもない?

 いったい何だろ――動いた!】

エィムはチャムの腕を掴んで術移で追った。



―・―*―・―



 この怨霊ではない黒い塊は何だ?

 禍には程遠いが……禍々(まがまが)しさの結晶か?

 人が禍を成したならば、こうなるのか?


 獣神の結界を破って出たのか?

 否、即座に塞がったのだから

 追い出したのだな。



〈何の用だ? 乗じて何かしようとでも?〉

瑠璃鱗の龍神が目の前に現れて睨み据えた。


「少し話を――」〈繋がり、断ちました!〉


探り睨んでいた龍神の瞳が少し穏やかになった。

〈すまぬが話は後だ。少し離れてくれ。

 不通防壁(フツウボウヘキ)

くるりと背を向け、間に防壁を成した。


鱗色が薄紅に変わり輝く。

魂縛(コンバク)龍牙(リュウガ)連破邪!!〉

破邪網で捕縛し、浄破邪を連射して重ねて禍々しさの塊を弱らせ、遂には滅した。


輝きが収束し、再び瑠璃鱗に。

「待たせて悪かったな。話とは?」


「下の塊は怨霊なのでは?」


「仲間が大勢 来ている。問題無い」


「そうか。仲間とは堕神か?」


「堕神とされた獣神と、獣神の欠片持ち達だ」


「やはり大勢なのか……」


「祓い屋と成れぬ程の小さな欠片持ちならば、この島国の半数を越えている。

 こうしたのは以前のナターダグラルだが、その『成果』を確かめに来たのか?」


「そうではない。

 この現状、如何にすればよいのだ?

 如何にすれば獣神にとって最善となる?」


瑠璃龍神は言葉の真偽、意味合いを見極めようと無言で見詰めた。


「マディアの為、か?」


「……そうだ。マディアが獣神だからだ」


「ふむ……では、幾つか頼みたい」


「返事は聞いてからでよいか?」


頷いた。

「堕神の浄化を以前の方法に戻し、浄滅を()めさせてもらいたい。

 昇った欠片は浄化域、保魂域に潜入している獣神達が集めている。

 その妨害をしないでもらいたい」


「ふむ。早急に動くと約束する。

 獣神を獣神として職神とせずともよいのか?」


「人神全ての支配を解き、心を変えねば無理ではないか?」


「そうか……それは先の話なのだな。

 では他には?」


「人の魂に弱禍(ジャッカ)を込めるのを()めろ」


「そんな事をしているのか!?」


「知らなかったのか。

 ならば早急に止めさせてもらいたい。

 人神が作った人世と人の為にも」


「解った。同じく早急に動く。

 もしや先程の黒塊は、その禍なのか?」


「私が滅したのは弱禍が引き起こした負の感情が生霊と化したモノ。

 下は生霊が触れた片端から霊を取り込み膨らんだモノだ。

 死魂は保護している。導いてもらいたい」


「解った。

 他に望みは?」


「先ずは、その2つだ。

 改善されたならば次を頼みたい」


「そうか。確かに成すと約束する。

 代わりにと言う訳ではないが、儂の頼みも聞いてはくれまいか?」


「返答は聞いてからでよいか?」


「当然だな。

 手合わせを頼みたい。

 また何を企んでおる、と言いた気な目だが、相手が居らぬだけだ」


「マディアは?」


「忙しくしておる」


「ふむ。いいだろう」



―◦―



 地上では悪霊が暴れていた。


 競技会場の人々は狐儀が眠らせてはいたが、数が多いのと、欠片持ちは術が掛かり難い為に半数近くは半覚醒状態で虚ろな瞳を上に向けていた。

その、そこそこ数が多い人々が怨霊と目を合わせては収拾がつかなくなるので、祓い屋達は怨霊達を会場の結界から出して離しつつあった。


〈御師匠様!〉〈加わりますよ!〉


〈キンギョ、ナンジョウどーやって来たんだぁ?〉


〈死神の〉〈爺様が連れて来てくれました♪〉


〈はあぁ?

 ま、生き人から離せたらコイツを鎮めるからよぉ、囲んでくれやぃ!〉

ブンッと伸びた触手的なモノを避けた。


〈〈はい!〉♪〉



―◦―



兄様(フェネギ)!】

結界の上に現れた狐神が入れるのか否かを確かめている。


【リグーリ、いつもの爺様姿は?】


暢気(ノンキ)な事 言ってる場合かよ?】

術移して背中合わせに現れた。


【そうですね。

 数が多く、手に負えません。

 共に。お願いします!】【合わせるぞ!】


兄弟を中心とした円が拡がるように、半覚醒状態の人々が眠っていった。



―◦―



〈うわっ! 上!!〉


〈ナンジョウ、余裕か? 邪魔か?〉


〈そうは言うけどなっ、ホウジョウも見てみろよ!〉


〈む? 龍神様と……死神か?〉


〈よく見えるなっ♪〉


〈姿までは確かではない〉


〈もンの凄く速いよなっ♪

 あの黒くて禍々しいヤツが街の上に現れたんだよ。

 だからキンギョのオヤッサンと見てたんだ。

 そしたら消えやがってな。

 オヤッサンがコッチだって動いて、街の結界から出た途端、死神爺様に捕まったんだよ〉


〈それで此処に?〉霊道にも入らずに?


〈だよ♪

 霊道は消耗するし時間かかるからなぁ。

 オヤッサンが瞬移を繰り返すって出たんだ。

 万事休す。()の世行きかと思ったが、苦戦してるから手伝えってな♪

 やっぱ死神にも祓い屋は認められたんだよ♪

 嬉しいよなっ♪〉


〈しかし未だ敵も居る〉それと気を抜くな。


〈おおっと!

 ま、味方が増えてるのは事実だ♪〉

ヒョイヒョイと『触手』を避けている。


〈確かにな。ヒビキとソラの友な死神様もいらっしゃっている〉


〈何処に!?〉


〈上の戦いを見ている〉


〈へぇ~♪〉〈そろそろ鎮魂するぞぃ!〉


〈〈はい!〉〉







爆発した不穏は愛綺羅(あきら)達のものでした。


狐儀(フェネギ)理俱(リグーリ)は原因となった愛綺羅達を深く眠らせ、競技会場内の人々をも眠らせようとしています。


祓い屋ユーレイ達は生霊+怨霊な悪霊と戦っています。

響とソラもその中に居るのでしょう。


青生と彩桜と瑠璃は空です。

他の兄弟は? ――次回です。m(_ _)m



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