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唐突な爆発



 ナターダグラル(ザブダクル)は人世の上空で死司神達の働きを眺めつつ、マディアの姉が飛んで来るのを待っていた。


 いつもならば降下しておる間に

 迫って来るのだが……どうしたと言うのだ?


首を捻りつつも、もう暫く待ってみようと留まる事にした。



―◦―



 エィムとチャムは東の街の上空から最高司の様子を見ていた。


【何しに来たのかな~?】


【向こうに顔向けないで。

 僕達は死魂待ちしているんだからね】


【オジサンちょっと優しくなったぽい?】


【そうだね。本気で改善してくれそうだよね。

 マディア兄様が魂を浄めているのかもね。

 だから早く手伝える者にならないとね】


【マディアお兄様が暗くなるのって、エーデお姉様を封じられてるからよね?

 堕神とかじゃないわよね?

 オジサン勘違い?】


【堕神の事も気付いてなかったくらいだから気付くの難しいんじゃない?】


【恋愛とか知らないとか~?♪】


【ルサンティーナ様という奥様をとても愛しているらしいよ。

 だから誰にとっても妻は大切な存在だと思ってエーデリリィ姉様を封じたんだ。

 王妃様なユーチャリス姉様もね】


【そっか~♪

 だから僕は弟してるんだったね♪

 エィムの大切な妻だから~♪】


【そろそろ静かにして】


【オジサン動かないのに?

 何か待ってる? ほらキョロキョロしてる】


【何かじゃなくて誰か、かもね】


【もしかして~、ラピお姉様を待ってるとか?

 ラピお姉様も龍狐だって見えちゃったとか?

 ね、エィムってばぁ】


【可能性は否定できないけど……】


【黙っちゃったぁ~。

 いつものブツブツは?】


【あのね。

 とにかく今は見ているしかないから】


【は~い】



―・―*―・―



 勿論、輝竜兄弟も妻達も、狐儀サーロンもザブダクルが人世に来ているのは気付いており、神力の高いザブダクルに気付かれないように弱く神眼を向けていた。


【瑠璃、ドラグーナ様も起きているから、すぐに行けるからね】


【ありがとう青生。

 表彰式が終わる迄、じっとしていてくれと願うばかりだが……】


【そうだね。

 彩桜が落ち着かないからね】くすっ♪


【笑い事か】


【そうだけど彩桜が可愛くて】くすくす♪


【ま、余裕ならばよい】


【それはそうと、彼女らの負の感情が膨らんでいるのが気がかりだね】


【ふむ。7人が3人に減ったが、強さは増したようだな。

 青生、また宥めに行くのか?】


【今は何が起こるか分からないからね。

 動くのは、あの黒装束の神が動くか、あの負が爆発してからかな?】


【ドラグーナ様は短時間勝負だから、それも已むを得ぬな】

【青生兄 瑠璃姉! 置いてかないでねっ!】


【うん。飛ぶ時は一緒だよ】【うんっ!】



―◦―



 彩桜が待ちかねている大障害Aの表彰式は最後で、今は中障害Bが終わり、中障害Aの表彰に移ったところだった。


「あれ? 1位、4組の、、誰だっけ?」

「陸上部のヤツだよな? 見覚えはある」

「親が社長だとか聞いたような……」

「誰に?」「体育祭で母さんが寄って来て」

「わざわざ?」「まさか。他の話のついで」

「ふ~ん。で、誰だ?」「「さぁ……」」

祐斗と堅太と凌央が1位の台に上がった少年を見て首を傾げた。


馬白(ましろ) 竜騎(りゅうき)だよ』


また後ろから声か聞こえて、そういえばと思い出して振り向いた。


「あ、空沢(からさわ)君だったんだ」「ヨォ」


「恭弥、知り合い?」


「うん。空沢(からさわ) (さとる)君。

 お祖母ちゃん家の隣に住んでる。

 この前、泊まりに行った時に会ったんだ」

「じゃあそこそこ近所なんだ」「うん」

「けど小学校で見た覚えねぇぞ?」


「引っ越して、ちょうど1年くらい。

 だから小学校は栂野原(つがのはら)のまま卒業したんだ。

 けど俺のコトより白竜(はくりゅう)のコトだろ?」


「ハクリュウ?」


「アイツの名前の中2文字とって白竜。

 馬白(ましろ)海輸(かいゆ)の社長の子。

 俺と一緒で陸上部。走る方な。

 で、歴史研究部も部対抗に出るんだろ?」


「出るよ♪」「陸上部も出るのか?」


「陸上競技はナイからな。

 優勝するつもりだ」


「優勝は俺達だからなっ」エヘン♪


「そう思ってると思ってたよ。

 だから全て対決したい。

 何に出るんだ?」


「言ったところで決定権は2年生にしかないんじゃない?」

凌央が冷ややかに言った。


「意見くらいは言える!」


「予選で当たるかどうかも、エントリーした部が多ければ くじ引きだけどね」


「決勝で当たるだろ!」


「空沢君、落ち着いて。

 凌央も逆撫でしないでよ。

 僕達はバレーと野球とサッカーだよ」


「そうか。ありがとう!

 正々堂々勝負だ!」


「それはいいけど静かにね。

 馬達が驚いて見てるよ」


「あ~、終わって気が抜けてたっ」



―◦―



〈皆! 龍神様の結界内の普通霊を連れ出すぞぃ!

 神力盾を前にしてりゃあ出入り自由だが、ズレたらビリッとくるからよぉ。

 気ィつけろよぉ!

 周囲ぐるっと、中心に向かって進め!〉


一斉に返事して散開し、ぐるりと結界を囲んで狭めていった。




〈ソラ! また生霊化しそうよ!

 気をつけて!〉


〈トウゴウジさん了解です!〉


〈ソラ、生霊って? また、って?〉


〈あの負の感情を膨らませているのは彩桜クンのクラスの女の子達なんだ。

 少し前にも生霊騒ぎを起こしたんだよ。

 ヒビキは授業中だったから呼べなかったんだ〉


〈ソラが退治したの?〉


〈ボクだけじゃないよ。

 コギ様とトウゴウジさんも一緒に。

 サクラクンも協力してくれたんだよ〉


〈ホントに、すっかり仲良しなのね~♪〉


〈親友だって言ったよね?〉〈ん♪〉



―◦―



 ようやく大障害Aの表彰式になったが、何やら審判席が(ざわ)めいていて進まなかった。


「どうする? 想定外なんだが……」

「まさか2位が2人になるなんて……」

「メダルは各1しか用意していないぞ」

「しかもどちらも財閥のご令嬢とは……」

「どちらかに銅メダルという訳には……」

ヒソヒソと審判員達が顔を寄せて話していると、その輪にスッと箱が差し込まれた。


「え? この箱……」「メダルの箱?」


「使えばいい」

声は箱を持っている手の主だと、寄せていた顔を離して見ると、優勝者そっくりだが無表情な男が立っていた。

「今回のメダルは俺が受注した。使え」


一番近い審判員が受け取り、蓋を開けると、この競技会の銀メダルが陽を受けて煌めいた。

「ありがとうございます!」一斉♪


「銅メダルも使ってくれ」

サッと背を向け、大股で歩き去った。


「あっ! 名前!」「聞き忘れてしまったな」

「発注書に書いていないか?」「そうだよな」

「それより表彰式! お嬢様がお待ちだっ!」



『大変お待たせ致しました。

 大障害Aは第2位が同点、お二方となりましたので、協議の結果、第4位の競技者を第3位に繰り上げると決定致しました。

 第3位は牧丘(まきおか) 歌音(かのん)さんと爽灰(そうかい)号です』


「歌音さん、おめでと~♪」

〈やったね爽灰♪〉


「ありがと彩桜君♪」

〈ありがと白桜♪〉

彩桜とハイタッチ――ではなく、低い位置で軽く手を合わせて、歌音と爽灰は台に上がった。



『第2位は、秋小路 清楓さんと涼楓号、松風院 彰子さんとウィンローズ号です』


 手を繋いで、両側に馬な2人が前に。

「また負けてしまいました~♪」

「彰子さん、そんな楽しそうに♪」

「清楓さんも楽しそうですよ~♪」

「彩桜君、次こそ負けないわよ♪」

彩桜に笑顔を向けて一緒に台へ。


〈白桜♪ 早く上がりなよ♪〉

〈まだ呼ばれてないからぁ〉

白桜は涼楓に苦笑を向けた。


〈コッチ見てないでローズちゃん見なよ♪〉


〈〈あっ……〉〉目が合って同時に俯いた。

〈また照れてる~♪〉〈〈もうっ〉〉


『第1位、優勝は、輝竜 彩桜さんと白桜号です』


控え目な歓声が届き、彩桜が向くと、祐斗達が小さく手を振っていた。


『ありがと~♪』と口パクで返して、彩桜と白桜も軽い足取りで台に向かった。



―◦―



 3位から順にメダルを掛けてもらい、記念品と花束を貰った。


「では、記念撮影しますので、中央寄りにお願いしま~す」

三脚をセットし終えたカメラマンが、両手で寄るようにジェスチャーしている。


「広いから真ん中台に集まっていい?」


「それ、いいですね♪」


「み~んな1位の台~♪ 上がって寄って♪」

「いいわね♪ 騎乗しましょ♪」「そうね♪」


「メダルを前に突き出してください♪

 何枚か撮りますね♪」


「「「「はい♪」」」」


〈白桜♪ 逃げちゃダメだよ~♪〉〈ん?〉


〈ローズさんもですよ♪〉〈え?〉〈はい♪〉


〈〈あっ!〉〉触れて慌てた。


メダルを掛けてもらった時には白桜の隣には涼楓が居たのだが、ウィンローズと入れ替わっていた。


〈はいはい♪ くっついてね~♪〉〈彩桜!〉


〈また照れてる~♪〉〈涼楓どーして外!?〉

〈トーゼンでしょ♪〉〈困ってるからっ!!〉

〈嬉しいよね? ローズちゃん♪〉〈ええ♪〉


〈本当に? いいの?〉〈はい♡〉

〈だったら僕も、、いいかな……〉えへっ♪


〈やっぱり照れてる~♪〉〈もうっ!〉


「馬達、いい表情ですね♪ 皆さんも笑顔で♪

 ラスト1ショットです♪

 ハイ♪ おめでとうございま~す♪」


〈へぇ~♪ 白桜の彼女なんだ~♪〉

〈爽灰までっ! しかも今頃っ!?〉

〈よく見えてなかったんだよな~♪〉

〈もうっ! 言わなくていいから!〉

〈あれ? 雪桜チャンじゃないか?〉

〈そーだけど何!?〉〈そっか~♪〉

〈だから何!?〉〈皆に言っとく♪〉

〈ヤメて!〉〈サクラ牧場にもな♪〉〈もうっ!〉


「ね、白桜も爽灰も、もぉ降りにゃい?」

皆、台の下で笑っていた。


〈あっ! 降りよう!〉〈だな♪〉


どうにか無事に終われそうに思えた。が――


〈急に膨らんだ!!〉〈どーして!?〉


――同様の叫びが複数 響いた。







馬白海輸――次の渡音フェスの総責任社でしたよね。

総責任社は地元企業で持ち回りなので引き継ぐまでですけど。

その馬白社長の御曹司・竜騎が前回イライラしていた少年です。


表彰式が終わった直後の負の感情らしい爆発は誰のものなのか?

それともザブダクルが何か仕掛けたのか?

最高司が来ているからと死神が動いたのか?

まだ支配が揺らいでいるとか?


いや……ザブダクルが起きたから揺らいでませんよね。



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