貴積姉妹
【狐儀師匠も運べるのにどぉして?】
【この後があるからですよ】
彩桜とサーロンは気絶している2年生を連れて保健室に瞬移した。
「ふえっ!?」「あ……」
誰も居ないと聞いて神眼も向けずに瞬移したら、白衣の背中が見えた。
「いらっしゃい♪
代理の南北よ♪」振り返った。
「ヨシさん……」「師匠だった~♪」
「じゃあ南北 寿ねっ♪」
クルンと白衣を靡かせる。
「白衣も憧れてたのよね~♪」
「授業中に気分が悪くなり、手洗いに行ったそうなのですが、気を失っていたのです。
どうやら発熱しているようですので、お願い致します」
「あらあら。
ではベッドにお願いしますね~」
運ぶのは彩桜とサーロンだ。
「保護者への連絡は致しましたので、間も無くお母様がいらっしゃいます。
校医の先生もいらっしゃいますので宜しくお願い致します」
「はい♪」治癒の御札をベッドに放った。
―◦―
次は和室へ。
【私は近くに居りますので、貴積さんとお話しくださいね】
【謝る、だけじゃないのぉ?】
【地縛を解かなければなりません。
望みや悩みを聞き、叶え、未来に希望を持たせてあげられれば地縛は解けます】
【ん。俺、頑張る。
あの女子軍団は? 俺ん家 行った?】
【今は校長室です。
私も行かなければならないのです】
【お説教しても反省しないよ?
だから浄湯に浸かってる間に魂を破邪したいの~】
【解りました。
協力致しますので、貴積さんの地縛を解いてくださいね】
【うんっ♪】
――と、彩桜と狐儀が話している間、ソラはトウゴウジと話していた。
〈怨霊と生霊の違い、よく分かったわね♪〉
〈生命感のあるキラキラが見えたんです〉
〈強い神眼ねぇ。成長が眩しいわぁ〉
〈それは……頑張るのみです。
響と彩桜クンが目標ですから。
トウゴウジさんは破邪した後、ここに?〉
〈そうよ♪ ナンジョウが嗅ぎ付ける前に保護しないと、と思ってね♪
話を聞いてたら、これは彩桜クンが聞くべきだと思って待ってたのよ♪〉
〈俺が何?〉きょとん。
〈あら聞いてたのね♪〉
〈彩桜クン、狐松先生は?〉
〈校長室~。今、反省会なの~〉
〈お風呂は後?〉
〈だから先に地縛 解くの~♪〉
座卓を挟んで双子の前に座った。
〈そうだね♪〉
サーロンも並んで座った。
―◦―
授業は6時間目に入っていた。
1年2組は数学なのだが、9人も不在なので授業は進められないと、黒板に書かれた復習問題を解く事になった。
「解けたか~?」
パラパラと手が挙がる。
「吾倉、河相、久世、鷹前、田城。
前に出て書いてくれるか~?」
黒板前に並んで書き始める。
「ノート見てもいいんだぞ~?」
「「「「「大丈夫です」」」」」
揃ってしまって笑った。
「そ~いや歴史研究部ばかりか~。
頑張ってるんだな~」
「「「「「はい♪」」」」」また笑う。
書けたので席に戻ろうと振り返ると教室中が笑顔だった。
笑みを返して席に着く。
「5問とも正解だ。次、書くぞ~」
「待って!」「写してるからっ」
「解ってない者~」
けっこう手が挙がる。
「久世~、覚えろ~」「え?」
「後で教えてやれ~」
「算木先生が教えてください!
仕事なんですから!」
「あ~、そ~だったなぁ」
今だけかもしれないが、不穏が消えた安堵も混ざった笑いが教室中に湧いた。
―◦―
和室では、彩桜とサーロンは自己紹介して謝ったのだが、双子の方は黙り込んで俯くばかりだった。
ただし、ずっとチラチラと彩桜とサーロンの顔を見ているのだった。
「俺、何か付いてるのぉ?」顔ゴシゴシ。
「誰かに似てるとか、ですか?」
ピクンと肩が跳ねた。
「もしかして兄貴かにゃ?
20年……金錦兄? 白久兄?」
「そんなにも離れてるの?」
「うん。離れてるの~」
「「白久君……」」「「あ♪」」
続きを待ったが、もっと俯いてしまった。
「ん~~と、白久兄……会社のお部屋でお仕事中♪
ひとりだから連れて来る~んるん♪」瞬移♪
――戻った。「何しやがるんだっ!」ポコッ。
「んとぉ、お知り合いさん?」セルフなでなで。
「んあ? あ……まさか貴積さん?」ぱちくり。
「「本当に、白久君……?」」顔を上げた。
「正真正銘、輝竜 白久です」キリッ☆
〈相手がユーレイでも こうなの?〉
〈美人さんだから~♪〉にゃは♪
「会えて……」「良かった……」
「こちらこそですよ」笑顔キラ~ン☆
と、格好つけているのにジャケットの両ポケットから豆チワワ達が顔を出した。
「「可愛い♪」」
「は? ああっ! 出るなシルコバ!」
逆効果だった。
ニッと笑った豆チワワ達は白久の手を躱すとササッと登って頭の上に。
双子ユーレイは楽し気に笑っている。
「ったく~」諦めて座った。
「それで、貴積さんは俺に何か?
伝えたくて出て来たんですよね?」
心配を滲ませた真顔を向けた。
豆チワワ達を乗せたままなのだが。
「ひとつ、スッキリしました♪」
「過去の話ですし、私達はユーレイ♪」
微笑み合う。
「「ですので白状します♪」」
「白状って……?」
「「白久君は私達の初恋の人です♪」」
「って……白状じゃなく告白にしてほしいなぁ」
苦笑を浮かべようとして吹き出した。
貴積姉妹も一緒になって笑う。
「けど……茜さんも葵さんもクラスが違ったのに、どうして俺なんかを?」
「私は水泳大会」「私は体育祭で」
「「助けてくれたでしょう?」」
「んんっ?」
「無理だとは分かっていたの」
「でも、どうしても参加したくて……」
「普通に生きたくて……」
「でもやっぱり気分が悪くなって……」
「離れて落ち着こうとしていたら」
「追いかけて来てくれて」
「保健室に運んでくれたでしょう?」
「そ~だったかぁ?」
「何か呟いた後」「先生 呼ぶからって」
「でも廊下で先生と会ったのよね?」
「話し声が聞こえたもの」
「あ~、チョイ思い出した。
青生――弟だったら治せるのになぁ、って思ったんだよ。
けどアイツ小学生だから無理だよなぁ、って保健室を出たら2回とも白儀先生とバッタリ。
で、救護テントの養護の先生を連れて来てもらったんだよ」
「「どうして追いかけてくれたの?」」
「いや~、ソレなぁ――」
「美人さんだから、ずっと見てたんでしょ♪」
「彩桜コノッ!」「や~ん」ジタバタッ!
「それで、まだ足は抜けませんか?」
じゃれ合う兄弟は放っておいてサーロンが続けた。
「軽くなったけど……」「まだみたい……」
「白久お兄さんとお付き合いしたかったとか?」
「そうなれたら良かったのは確かだけど……」
「その点は、こうして話せてスッキリしたの」
「他にも何か心残りがあるんですね?」
「普通に生きたかったの……」
「せめて卒業したかった……」
「出来ますよ♪」
「「え……?」」
「ボクもユーレイですから♪
具現環で身体を得ているんです♪
小学生でユーレイになったのに、中学生してるんですよ♪」
一瞬だけ具現化を解いた。
「「まあ♪」」
「ボク達が緑タイの制服姿で見られてしまいましたから、3年生として転校して、卒業したらいいんじゃないですか?
それとも来年入学します?」
「「すぐに転校で♪」」
「卒業したら、高校にも大学にも行けますよ。
狐松先生、行けますよね?」
「はい。戸籍も得られますよ。
急ぐのでしたら外国籍になりますが」
「「サーロン君と同じで♪」」
「では、そのように。
邦和名は貴積 茜さん、葵さんにしますね。
もう抜けたのでは?」
「「あ♪」」ふわりと浮かんだ。
「「ありがとうございます♪」」
「もう病も何もありません。
存分に生き、そして修行をして、サーロン君や輝竜兄弟のお手伝いをお願いしますね」
「「お手伝い、ですか?」」
「彼等は人の世を護っているのです」
「人の世を……」「護る……」
自分達に優しい笑みを向けている3人を見た。
「「お手伝いさせてください!」」
「具現環だ。霊体を」
現れた紅火が差し出した。
「では私がお手伝い致しましょう。
環に触れてください」
そっと触れると、光が指を伝い、手首で環を成した。
紅火はフッと笑って帰った。
「身体が欲しいと望んでください」
「「身体が、欲しいです……あっ」」
パタパタと確かめる。
「「ありがとうございます♪!♪」」
「白久君、彩桜君。
居候が増えますが――」「「ど~ぞ♪」」
「では、手続きはお任せくださいね。
彩桜君、賑やかな皆さんが向かいましたよ」
「ああっ! サーロン行こっ!」手繋ぎ――
「コラ待て彩桜! 俺が先だ!」割り込み!
――塊が消えた。
「少し修行すれば出来ますよ。
ユーレイなのですから」
「「はい♪」」
双子ユーレイ・貴積姉妹も輝竜家で暮らすことになりました。
それはいいとして、彩桜君親衛隊が輝竜家に向かっています。
週末から様子が変にも程がある美雪輝達。
原因を掴み、魂を浄化できるのでしょうか?




