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曲芸ピザ作り



 イベントは陽暮れが早くなった事も考慮して17時閉場としていたが、ギリギリまで居て、急いで出ようとした車で酷い渋滞を起こしてしまっていた。

そこで急遽、牧場から離れた臨時駐車場から順にと決めたので、近い駐車場の客達は夕食も此処でとフードコーナーに集まっていた。


「渋滞必至だから早目に出ろって何度も放送入れたのにコレだからなぁ。

 どんだけイベントに飢えてるのかってのが、よ~く分かるよなぁ。

 おっ♪ 紅火、急に頼んじまってすまなかったな」


ブツブツ独り言ちながら貴賓室用ログハウスを掃除していた白久の前に紅火が瞬移して来た。

〈照明の設置と虫除け結界の拡張は完了した〉


「ありがとなっ♪」


〈明日の分を作る〉瞬移。


〈カチューシャかぁ?〉


〈明日は市外からの客も来る。

 今日よりも増える〉


〈んな遠くのなんか受注しねぇぞ?〉


〈事業拡大だな〉フッ♪


〈おいおい……〉


〈19時から特番が組まれたらしい〉


〈はあ?〉


〈先程、夕のニュースで告知していた〉


〈んな勝手に!?〉「常務♪」


「順志どーしたぁ?」紅火の笑い声が聞こえる。


「白久がショーのアンコールしてる間にテレビ局と打ち合わせて大きく宣伝してもらえるようになったんだよ」


「お前の仕業かぁ。

 で、特番ってか?」


「社長も喜んでたよ♪」


「馬の中身はシークレットだろーな?」


「バレてたよ♪」


白久、ガックリ肩を落とす。


「けど放送では言わないように強く口止めしておいたよ。

 放映条件としてね。

 で、これ」

白久の視線の先、つまり俯いた顔の下にボードを差し出した。


「んん?」


「展示室の投票結果♪」


「やっぱ北欧――ナンだぁ?」


 良かったと思うブースにシールを貼るように作ってあったのだが、その端に何かの箱を破ったらしい段ボール板が、箱から剥がしたらしいガムテープで乱暴に追加されており、『馬頭雑技団』とマーカーで手書きされていてシールだらけになっていた。


「いつの間にか付け足されていたんだよ」


よく見ればボールペンやらでメッセージも書かれていて『また見たい』『明日も来る』の周りにシールが集中している。


「ほら、賛辞が沢山。

 ヘイトなコメントは皆無だよ。

 良かったな」


「まぁな。けど……ど~すっかなぁ~」


「ん? 何が?」


「俺が静かにサラリーマンしてられなくなっちまったら後は頼む」


「何言ってるんだよ」縁起でもない。


「世界に羽ばたいちまったら華々しく見送ってくれ」


「泣きそうな顔するなよなぁ。

 白久らしくもない。

 その辺りは巨大グループの社長さんやら会長さん達が何とかしてくれるよ。

 白久は随分と気に入られてるからな」


「そうか……不本意だが利用するっきゃねぇよな。

 俺はともかく彩桜は護ってやらねぇとな」


「彩桜君を? って?」


「アイツは可能性の塊だからな。

 これからも目立ち続ける。

 道を塞がれねぇように護ってやるのが兄の務めだ」


「そうか。確かに思いっきり羽ばたいてもらいたいよね」


「順志も啓志とシッカリ話せよ?」


「え? 啓志と?」


「わざわざ このイベントでリフォームを依頼したらしいぞ」


「ウチの?」


「じゃなくて家を借りて住むそうだ。

 お前に話せば どっちが出るって揉めるだろ。

 だから他人に相談したんだよ」


「そうか……うん。帰ったら話し合うよ」



―◦―



 フードコーナーの巨大モニター前では広いテーブルを囲む形で瑠璃と狐儀と黒瑯が、藤慈が奏でる陽気なエレキバイオリンの音色と、客達の手拍子に乗って、曲芸ピザ作りで場を湧かせていた。

 大きなベレー帽みたいな平たいコック帽とマスクで目しか見せていないコックコートの3人がピザ生地をクルクル回して遠心力で拡げては同時に投げ、ピッタリのタイミングで受けてはまたクルクルと回している。

 十分に広く薄くなったところで、投げ即、テーブルから巨大なパーラーを手に取り、隣から飛んできたピザ生地を受け止めた。

歓声が湧く中、ソースを塗り、具を乗せていく。


〈次、入れられっか?〉〈右側OK~♪〉


 大きな石窯は馬ダンスの直後に紅火に頼んで設置してもらっている。

 その石窯の前では、黒瑯達と同じ格好の青生と彩桜が焼きムラが生じないようにピザを回転させる為のパーラーを持って焼き上がるのを見ており、食いしん坊な彩桜の美味しそう基準での良い頃合いに取り出して仕上げては、お渡しカウンター上の電光掲示板を見て来ている客の元へと運んでいる。


〈左側の出してカット~♪〉

パーラーで掬って運んだピザは仕上げ用テーブルの木製皿(パドル)へ。

向かい合った二人も息ピッタリの動作で両手に持ったピザカッターを器用に素早く操り、客達からの拍手喝采を浴びている。

〈運ぼう〉〈うんっ♪〉


 こうなると注文はピザに集中するので、材料が少なくなった厨房は大助かりだった。

リーロンは次に注文が多くなったパスタを主に、妻達は飲み物やデザートを作り、相変わらず慌ただしいがキッチリこなせていた。


〈お~い黒瑯、俺も腹減った~。

 ランチまだ出来っかぁ?〉


〈オレに聞かれてもピザの注文しか見てねぇよ。リーロンに聞いてくれ。

 だいたい今頃ランチって……何時だと思ってるんだよ?

 つか白久兄ナニしてるんだ?〉


〈後片付けだよっ〉


〈駐車場は? お客様が減らねぇんだが?〉


〈営業に任せっきりだったな……見とくわ〉


〈ん。出て来たついでにピザ食えよっ♪〉


〈ピザピザって黒瑯こそナニして――お♪〉


〈顔出したまま走って来るなっ!〉


〈っとぉ。厨房に隠れねぇとな♪

 ピザ作りショーありがとなっ♪〉


〈おう♪〉


〈あと2人って?〉


〈狐儀と瑠璃さんだ♪〉


〈へぇ~♪〉


〈あ、営業のヤツが来たな。

 第5駐車場が出られるそ~だ♪〉


〈まだまだハケねぇな……〉


〈市長と知事も残ってっから、道路事情よ~く分かったんじゃねぇか?♪〉


〈そっか♪ お♪ 出来立て生ハム♪〉


〈〈ピザ用だっ!〉つまみ食いすんなっ!〉

〈チーズと生ハム運ぶわね♪〉〈〈頼む!〉〉


みかんが運んで来たチーズは作業テーブルに。

生ハムは後乗せ用なので彩桜に渡された。


〈コレ白久兄に♪〉〈ありがと♪〉

〈生ハムも乗せてあげる~♪〉〈お♪〉


〈次の生地、発酵完了だ♪

 切り分けたぞ♪〉


〈は~い♪ 運ぶわね♪〉



―◦―



「お父さん、お母さん、大丈夫?

 まだ帰れそうにないんだけど……」

掃除道具を持ったままの京海が両親の様子を見にログハウスモドキに来た。


「大丈夫よ♪

 私ね、コスモス畑まで歩いて行ったのよ♪

 でも全然しんどくないの♪」


「あんな遠くまで歩いて!?」


「そうなの♪

 これも女神様のおかげね~♪

 今日、何度も治療しに来てくれたのよ♪」


「これから暫くご厄介になるんだよ。

 あの病院は退院してね」


「ええっ!?」


「治るって断言してくれたのよ♪」

「必ず治すとね」


「だから治ったら私、スーパーでパートしようと思ってるの♪

 コスモス畑でお友達できちゃったのよ♪

 吾倉(あくら)さんって輝竜さんのご近所さんなの♪

 息子さんが荷馬車のお客さんのお世話を頑張ってるのをコスモス畑から見てたのよ。

 一緒に眺めて、お話しして♪

 お向かいのお家が空き家なんですって♪

 そこに住めたらいいな~って思ってるの♪

 生きる気満々よ、私♪」


「お母さん……」


「どうして泣いてるの?

 お父さんも働く気満々よ?

 性格的に合わない漁師して、お酒に溺れちゃったの反省してるって。

 だから今度は合う仕事探してシッカリ働くって♪」


「これまで世話になるばかりだったけど……。

 京海の負担になるばかりだったから早く死なないとと思ってばかりだったけど、もう大丈夫だから。

 心配せずに結婚して幸せにな」


「うん……うん、良かった……」



―◦―



 金錦は紅火と共に馬耳カチューシャを作っていた。


〈金錦兄、笑っているが楽しいのか?〉


〈兄弟揃って何かを成すのは楽しくて仕方ない〉


〈ピザに行ってもよいが?〉


〈それは……それよりも、これが重要だと思うのだが?〉


〈……ありがとう〉フッ。


〈これはこれで楽しいと思う〉フフッ♪



〈冬の公演は?〉


年末(クリスマス)年始(カウントダウン)かの二択に絞られている〉


〈彩桜がクリスマスに(そり)をと言ってきた〉


〈ならば年始に決まりだな〉


彩桜の幸せを願って止まない兄達だった。



―◦―



「あ♪ 祐斗 見っけ♪

 外にピザ運んだから食べてね♪」


「ありがと♪ 彩桜、毛布とかない?」


「ん? あ~、飛鳥 寝ちゃったんだね~」


サクラ牧場の馬達用の臨時厩舎に作った兎区画の敷き藁の上で飛鳥が丸まっている。


「うん。兎達が集まってくれたけど寒いかなって思って」


「ん、借りて来るねっ。

 お馬さんのブラッシングも ありがと♪」


「楽しくてやってるんだけど?」


「それでも ありがと♪」走って行った。



「みんな~♪ ピザが届いたから食べよ~♪」


わらわらと歴史研究部員達が集まる。


「手を洗いたいんだけど?」


「凌央君てば真っ先にそれ?」あははっ♪


「大事なことだと思うけど?」

「アッチだ♪ ピザが冷めちまうから急げ♪」


「堅太はもうっ」「凌央君も行こ♪」


「ほら恭弥も♪」「わわっ」

「ソラさ~ん、早く~♪」


「え? ボクもいいの?」


「何言ってるんですか~♪

 早く食べましょ♪」「あ、ありがと」


ソラの背を押して行こうとすると物音が聞こえて振り返った。

「あれ? 河相(かわい)さん!?

 他の女子と帰らなかったの?」


「えっと……うん……」


ソラは笑みを浮かべて厩舎から出た。


「もしかして服直してくれてた?」


「うん。ほころびてたから……」


「ありがと♪

 ね、一緒にピザ食べよ♪」駆け寄る。


「……ありがとう」俯いた。


「行こ?」覗き込む。


逃げようとしたので思わず手首を掴んだ。

「恥ずかしがらなくても、もう仲間だよ?

 彩桜が忙しくて居ないから来たくない?」


「そんなのじゃ……」


「じゃあ行こっ♪」


少しだけ強引に引っ張って行った。


「あれ? 飛鳥と兎達が消えた?

 彩桜、来てたんだ……」いつの間に?



―◦―



 金錦と紅火が居る事務所に運ばれた飛鳥がパチッと目を開けた。


〈やはり起きていたのだな〉フッ♪


〈うん♪〉両手に兎で紅火に近寄る。


〈兎用のリュックを作ってやろう〉


〈ありがと♪

 でも、しばらくは抱っこしとくね♪

 リポップル様が目覚めたらリュックね♪〉


〈ふむ。二分割な兎神様なのだな?〉


〈ん~とね、双子のリップル様とポップル様が融合してリポップル様してたの。

 でも魂を出されちゃった時に融合が解けたみたい。

 だから今はリップル様とポップル様かなっ♪〉


〈そこまで見えているのか……ふむ〉


〈ウサ耳ないの?〉


〈作ってやろう〉


〈ありがと♪〉


ふれあい広場用の兎耳カチューシャの量産も始めた。







往復とも渋滞が起こってしまったものの、1日目は無事に終わりました。


さて、フェネギとリグーリが気にしていた不穏とは?


お話は2日目に移ります。



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