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質問ばかり



 ティングレイスがソニアールスの元で修行を始めて10日が過ぎた。


 しかし修行と言っても、額の一点に神力を集めて保つ。最初に習ったそれを続けるよう言われただけで、ソニアールスの姿すら見ない毎日だった。


 こんなのして何になるんだろう?

 出来ているのかすらも分からないのに。

 これじゃあ指導じゃなくて放置だよ。


『放置? ずっと見てるんだけど?』


「えっ!?」キョロキョロッ。


『相変わらず見えてないよね?

 ま、ちっとも捗ってないから見えるまでに高めるには千年くらいかかるんじゃない?

 真面目にするって言ったよね?


 あ、そうか。

 獣神の真面目と同じだと思ってしまったよ。

 人神の真面目って、そうなんだね?

 これからは踏まえて指導するよ。

 じゃあ続けてね』


「額に力を保てるようになったら何ができるんですか?」


『何がって?』「術とか……」


『何も』「えっ?」


『それだけで そういう何かが出来るとか思えるなんて不思議で仕方ないよ。

 どうしてそうも楽したがるの?

 修行はそこからだよ。

 そのくらい出来なくちゃ基礎修行すらも始まらないんだからね。

 だから早くクリアしてね』


「そんなぁ……」


『よくそんな気構えで最果てまで行けたね。

 そっか。運だけは飛び抜けていいんだ。

 ふぅん……天性の強運ね。

 修行なんてツラいよね?

 その強~い運に委せて生きた方が幸せなんじゃないかな?』


『たっだいま~♪

 あ~、ラナキュラスったらイジメてるの?

 父様が人神には優しくね、って言ってたでしょ?』


『僕の方が兄なんだけど?』


『でも父様は双子だって言ったも~ん♪』


「あっあのっ!」『『ん?』』


「さっきから話してたのって……?」


『ボクの双子の兄でラナキュラス♪

 ボクが神王殿に呼ばれちゃったから、お願いしてたんだよね』


『ソニアールスがそんな話し方だからナメられるんだよ。

 甘やかしてたらコイツいつまで経っても卒業できないだろ。

 心話だと聞き辛くて聞き取ろうとしてお喋りが止まらないのかと思ったら、声を出しても同じだし』


『ん~、でもねぇ、急いだって焦ったってムリなんだから仕方ないでしょ』


『ったく人神ってのは――』

『違うんだから仕方ないでしょ♪』


「人神を馬鹿に――」『『してないから!』』


『そうじゃなく根本的に違うんだよ』

『うんうん。それも知らないよね?』


「根本的……に?」


『あ~あ、また集中できないモードだ』

『ま、説明してあげようよ』『ったく』


『獣神と人神の違いは姿だけじゃないんだ。

 力の傾向が全く違うんだよ。

 考え方とかもね。真反対みたく違うんだ。

 だから相容れないって思ってるのは人神。

 ボク達は補え合えるって思ってるんだよ』


『野性の有無とも言えるのかもね。

 人神は姿を晒して生きるのを自然だと信じてる。

 獣神は隠しているのが自然なんだ』


『ボク達、イジワルで姿消してるんじゃないんだよ?

 これがフツーなんだ。

 お互い ぶつからないように見えるのもね。

 生まれてすぐに会得するんだよ。

 禍を生むのは試練の滝だけじゃない。

 どこでも自然発生しちゃうからね』


『都と大きな街だけは発生したら即転送するように父様達がしてるんだけどね』


『うん。

 それだけは特別に禁忌が許されてるんだ。

 でね、都や街の外で生きるフツーの獣神達は姿を晒してちゃ、禍に狙われて下手したら滅されちゃうんだよ。

 危険と隣り合わせで生きてるんだ』


『だから強運だと言ったんだよ。

 そんな力で最果てに辿り着けたなんて、ホント奇跡としか言いようがないよ』


『うんうん♪ ソコは凄いよね~♪』


『で、もういいかな? 再開しない?』


「えっと、その……どうして獣神は都とかに、みんな住まないの?

 安全に暮らせるのに」


『『住みにくいから』』「え?」


『まず、獣神を相容れない者と考え、見下してる人神だらけだから気疲れする』


『それにね、何もかもが人神サイズでしょ。

 窮屈なんだよね~』


「本当は、どのくらい大きいの?」


『『この家 壊れちゃうよ?』』「え……」


『父様達の大きさ見たでしょ?

 ボク達も成神(せいじん)だから同じだよ』


『そんな大きさで暮らしてたら』

『あっちこっち破壊しまくっちゃうよね~』

『それに恐れられてしまうよ』『うんうん』


「あのっ、どっちが話してるのか――」


『『それも区別つかないの?』』


「うん……」


『区別つかないのは単純に力不足』

『修行もまだだから仕方ないよね~』

『でも区別つかなくて何か問題ある?』

『内容が分かれば何も問題ないでしょ?』


「確かに……あ! さっき禁忌って――」


『言ったよ♪

 さっき神王殿に呼び出されたのも禁忌を使う為だよ。

 都は禁忌で護られてるんだ』


「でも禁忌って――」


『使っちゃダメって決められちゃったから禁忌だよ。それだけ~』


『禁忌には2種類ある。

 神としての正義とかの理由で禁じられている本来の禁忌と』


『獣神だけが使えるから怖いって理由で禁じられちゃったのがあるんだよ』


「どうして……?」


『人神と獣神は真反対。

 だから人神しか使えない術も当然ある』


『でもね獣神側だけ禁忌にされちゃったの。

 獣神が知らないうちにね』


『そもそも神の王なんてのを定めたのは人神なんだ。

 都を作ったのもね。

 で、その外で暮らしてる獣神と話し合う事すらせずに、獣神が生きていく上で必要不可欠な術――例えば禍と戦う為の術とかまでも、勝手に禁忌と決めてしまったんだ。

 神に向けるなんて有り得ないのに』


『だから試練の滝も、選別の森も~』

『消す(すべ)が無いんだ』

『許されてる範疇で戦うしかないんだよね』

『残念な事にね』


「消せるの? 滝と森って」


『人神が作ったものだからね』

『真反対な獣神なら消せちゃうよ~』

『ま、だからこそ脅威と感じるんだろうね』

『うんうん。知ろうとしてくれないから~』


「あんな最果てに人神が作った!?」


『驚くトコってソコなの?』

『人神というのは……』


「だって――」


『あ~、もういい。説明するから。

 先に作られたのは滝。

 目的は禍対処の練習場として。

 だから王都から最も遠い場所に作った』


『でも、ちょ~っと失敗しちゃってたんだ。

 あの地のことも知らずに、獣神に相談もせずに作っちゃったからね』


『獣神が協力してたら、あんな凶悪な滝にはならなかったろうね。

 あの地は獣神も住まない、避けて通る場所。

『禍の墓所』と呼んでいた場所だから』


『地に封じられた古からの禍が出口を見つけちゃった形になっちゃったんだ』


『作った人神達は、滝に喰われたか』

『禍に滅されちゃったんだろうね~』

『都から練習せよと派遣された軍も』

『だ~れも帰らなかったんだって~』


『帰らないどころか禍が都に到達したんだ』

『次々と、たっくさんねっ』

『だから何度も調査隊が派遣された』

『それも全滅したんだよ。全隊ね』


『滝からの禍の殆どが都に行ったんだ』

『来た人神の痕跡を辿ったんだろね~』

『獣神の領域にも禍が到達して』

『やっと事が明らかになったんだよ~』


『で、父様の爺様達が行って』

『禍を少し離れた場所に封じたんだ』

『もう禁忌が定められた後だったからね』

『滝は凍結させるしか出来なかったんだよ』


「凍結させたのに、どうして今も?」


『森を作っちゃったから~』「へ?」


『性懲りもなく、また作ったんだよ』

『滝が静かになってたからね』

『まだ戦ってた四獣神諸共に』

『封じようとしたんだろうね』


『きっと人神の王にとっては』

『禍を生む滝も、四獣神も~』

『同じように脅威だったんだろうね』


『だから滝と、新たな禍の墓所を』

『囲む森を作ったんだ』

『禍を喰らう森って名目でねっ』


『でも、またしても失敗作だったんだ』

『禍を喰わずに、神を喰って~』

『滝にその力を注ぐように』

『出来上がっちゃったんだよね~』


「どうして……そんな……」


『一番は、その地の凶悪さを』

『まだ理解してなかったこと~』

『獣神達の言葉に耳を貸さなかったんだ』


『次に、作った当時のままの滝だと』

『勝手に思っちゃってたこと~』

『完全凍結されるのを待って』

『調べればよかったのにね~』


『地の影響を受け、人神を喰らって』

『すっごく凶悪化していた滝は~』

『新たに作られた無垢な森を』

『配下の如く従えちゃったんだよ』


『森は神を喰らい、神力を滝に注ぎ』

『凍結を解いちゃったんだ~』


『獣神達は何度も都の王に会い』

『禁忌の使用許可を申し出たけど』

『今もあの通りだよ』


「どうして……?」


『許可なんてしちゃったら四獣神が自由になっちゃうから~』

『ま、ある意味 作戦としては成功だよね。

 滝も四獣神も封じ込められたんだから』

『確かにね~』


『もういいかな?

 そろそろ集中できない?』


「あっ、えっと――」


『コイツ、修行する気ないんじゃない?

 質問ばっかでウンザリだよ』


『だね~』


『しかも教えを乞うって態度じゃないよね』


『だよね~』


『歳上だとも思ってなさそうだし』


『うんうん』


「あっ、あのっ、修行させてくださいっ!

 お願いします!」


『って口ばっかり~』『態度で示したら?』


「は、はいっ!」




〈ソニアールス……僕、嫌われ役なの?〉

〈ラナキュラスってば好かれたいの?♪〉

〈いや、そうじゃないけどぉ〉

〈好かれたいんだ~♪〉

〈嫌われるよりずっといいじゃないか〉

〈うんうん♪ でも甘やかせないから~♪〉

〈仕方ないなぁ……〉チェッ。



 えっと……僕に聞かせてる?


『うんっ♪』『えっ? ソニアールス!』







疑問が尽きないティングレイスに手を焼いている双子龍神のお話でした。



神世の都のうち最大の王都で暮らす龍神兄弟は、ドラグーナの最初の子供達です。


生まれの近い子供達の集団を『代』と呼んでいます。

ですので王都の兄弟は初代です。

偵察に来た人神に見つかり連れて行かれてしまったんです。


その後、2代の子供達は副都に。


滝で修行していたチビッ子達は3代目です。

成長すると大都に連れて行かれてしまいます。


そうして次々と子供達を連れて行かれてしまったドラグーナは仕方無しに生み続け、千子にもなってしまったんです。



前話では長子サンダーリアと初代末子ソニアールスが登場し、今回はソニアールスの双子の兄ラナキュラスが登場しました。


このふたり、普段はソニア・ラナンと呼び合っていますが、ティングレイスに覚えてもらいたくてフルで呼び合っていたんです。



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