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兄弟揃って



 岐波家の前に着いたのは順志だろうと、祐斗と彩桜は門扉に近付いた。


「兄さんこそ、その人は?」


「僕の秘書で恋人の氷垣さん」照れつつ堂々。


「じゃあ兄さんも父さんに?」


「え? 『も』って?」

家は此処だと見せる為に、順志は輝竜家をスルーして京海を連れて来たのだった。


「父さんに、、その、結婚を前提だと、、紹介しようと……」

「はじめまして。

 暁津(あきつ) (まこと)と申します」礼。


「そう。はじめまして、順志です。

 そういう事なら京海さんも入る?」「えっ」


「僕、弟が先って、ちょっと気にしてたんだ。

 兄さんも一緒なら嬉しいからお願いします」


「京海お姉さん♪ 晩ごはんパスって言っとくから気にしないで~♪」


「え? え? それって何だ?

 どういう事だっ!?」

淳がまた久世家の門扉にガシッ。


「ウチで下宿してるの~♪」「私も頼む!!」


「ったく淳は~」門扉から引き剥がした。

「もう入ろうよ。兄さん達も」


「そうだな。京海さん、どう?

 見るだけじゃなく入らない?」


「えっと、はい」躊躇(ためら)いつつ頷いた。


一旦4人が庭木の向こうに見えなくなって、再び見えると、

「じゃあウチでも お祝いねっ♪」

にこにこ彩桜が手を振った。


「いいのかっ!?♪」「淳!」羽交い締め!


「明日? 週末? どの日いい?♪」


「これから決めて電話してもいいかな?」

順志が笑いを堪えて答えた。


「うんっ♪」


「ありがとう。

 世話になってばかりで申し訳ないね」


「気にしな~いで~♪」



「お兄さん達、結婚するんだね……」

ドアが閉まると祐斗がしみじみと言った。


「誰が結婚?」岐波家前で立ち止まった。


「巧お兄さん、お帰りなさ~い♪」

「順志お兄さんと啓志お兄さんです♪」


「え? 兄弟で?」


「じゃなくて~♪」にゃはは。

「順志お兄さんが秘書さんで、啓志お兄さんが先輩さんです」


「まさか部長、氷垣さんと!?」


「あ、そっか。巧お兄さんも同じ会社だね」

「京海お姉さん、知り合い いっぱ~い♪」


同じ会社どころか巧は住環境総合改善課。

つまり順志の部下だ。


「会って2日で……結婚……」とぼとぼ――


「「巧お兄さ~ん元気出して~」」


「いや……今日は、無理……」とぼとぼ――


「お祝い……」「今度にしてあげよ?」「ん」


パタンと笹城家のドアが閉まった。



「サクラお兄ちゃん?」服をクイクイ。


「ランちゃん どしたの?」目の高さを合わせた。


「スズとケッコン……する?」


「うん、するよ。

 まだまだ先だけど約束ね♪」小指♪


「うんっ♪「ゆびきりげ~んまん♪」」



「彩桜って……」「ん?」「何でもっ」

「ねぇ祐斗、何?」「だから何でも!」


「な~んだろ? 変な祐斗」


「それより!

 ショウ連れて戻らなくていいの?」


「あっ! デュークまた明日ねっ!

 ショウ! ランちゃん行くよ!」


「僕も行くからっ!」


「じゃあデュークも一緒ねっ♪」ワン♪×2。


「拓斗も一緒に! 叔母さん先 行きます!」

ちょうど到着した従弟(たくと)も連れて走った。



―◦―



 帰り着いて――


「えっ!? 響お姉ちゃん今から行くの!?」


「今夜 行って泊まって、明日 試験して帰るの。

 お姉ちゃんと交替で運転するのよ♪」


「遅くなって ごめんなさぁいぃ」


「まだ早いくらいだから気にしないで♪」


「そぉいえばソラ兄は?」


「ちょっと向こうに、って。

 だから大丈夫なのよ♪」



―◦―



 そのソラは――


「遅くなって すまない。宿舎の鍵だ」


「ありがとうございます!」


「君達ならば合格するだろうが、落ち着いて頑張って欲しい」


「はい!

 理学部だけは日が違うのも教えてくださって助かりました。

 全体日程だけ見て日曜だと思い込んでましたから」


「学会都合らしい。

 事務局に全て任せておけばよいものを、と私も思う」

口には出せないが、そんな我が儘を言う教授は1人しか思い当たらないとも思っている。


「でも本当に ありがとうございました」


「春に登校したなら私の研究室を訪ねて貰いたい。

 物理学棟の斜め向かいだ」

校内地図を渡した。


「ありがとうございます♪」



―◦―



「奏お姉さん、どぉして東京?」


「お見合いから逃げる為なのよね~」


「ほえ?」


「お兄、ここだから……」

はしゃぎ過ぎて眠ってしまったショウを撫でる。


「だよねぇ。心話環(しんわかん)、急いでって紅火兄に言っておきます」


「ありがとう彩桜クン」


「そ~だ♪」

駆けて行き、奥から持って来たチャームをショウの首輪に付けた。


「水晶?」


「おまじないグッズの覚醒石♪

 たぶん目覚めるの早くなる~♪」


「ありがとう!♪」「響、どうしたの?」


「ソラ兄お帰り~♪」

「お兄が早く目覚めるように付けてもらっちゃった~♪」揺らす。


「彩桜クンありがとう♪」「ん♪」


「それじゃ帰って支度しましょ♪

 車中泊だから、あったかくしないとね♪」


「ちゃんと宿舎を予約してるから。

 お姉さんも一緒なのに車中泊なんてさせないからね」


「流石ソラ♪ ありがと♡」


「いいから帰ろうよ。

 ショウ起きて。帰るよ」ゆさゆさ。


「ほっぺ赤いよ♪」「もうっ」


「ソラ兄、響お姉ちゃん、頑張ってね♪」


「彩桜クンのお守りがあるから大丈夫だよ」

「良いの作ってくれて、ありがと♪」


「えへへ~♪ 行ってらっしゃ~い♪」



 デュークと一緒にソラ達を見送った彩桜は祐斗と拓斗が練習しているアトリエに向かった。

「みんなと遊んでてね♪」 ワフ♪



―・―*―・―



「輝竜君からの提案、読ませてもらって関連部門と検討したよ。

 まぁどうしてもソッチが大きいからね、警戒しているのは どうしようもないと思ってもらえるかな?」


 駅近くの居酒屋の小卓で向かい合う男が差し出した徳利(とっくり)猪口(ちょこ)で受けた白久は、軽く(あお)ってから答えた。

「お気持ち、よく分かります。

 ウチも大きな所から話が来てますから。

 だからこそなんですよ。

 負けないようにも二人三脚できる相棒が欲しいんです。

 一緒に走りたいんですよ」

徳利を差し出す。


「そうか……一度、伺ってもいいかな?

 上の(かた)とも話したいし」


「是非♪ いつがご希望です?」


「そうだな……」手帳を繰る。

「1週間近く詰まってるな。

 来週の火曜か水曜、午後がいいかな」


「此方は どちらでもですが早い方が嬉しいので来週の火曜の午後で如何ですか?」


「では、そうしよう。

 ところで、私的な話なんだが、いいかな?」


「はい、何でも♪」


「輝竜君は、結婚は?」


「していますけど、何でしょう?」


「そうか……残念だな。

 娘と会ってもらいたかったんだよ」


「そうですかぁ、まぁ30半ばですから~」


「そうなのか? 20後半だと思っていたよ」


「ありがとうございます。

 ですが土木でしたら社員の多くは男性なのでは?」


「それはそうなんだがね。

 確かに、会社と会社としては警戒せざるを得ないんだが、個人的には君を高く買っているんだよ。

 次男だと言っていたし、気に入っているからウチに来てくれれば、と思ってね」


「そうですか。光栄の至りです」


「娘達――上の娘は婚約者を亡くして、まだ1年経っていないから当面は そっとしておいてあげたいんだが、僕の妹がね、休み毎に見合い話を持って来るんだよ。

 断っても断ってもね。

 だから可哀想でね」


「そうですか。それは お辛いですね」


「それも困っているんだが、下の娘なんか大学院に行くとか言って、明日は試験なんですよ。東京で。

 結婚する気なんてサラサラらしくてね」

少々愚痴っぽくなっている。


「では、占ってみましょうか?」


「占い? 輝竜君が?」


「はい♪ けっこう当たるんですよ」

卓に置いた猪口に酒をなみなみ()いで、料理から胡麻を1粒そっと乗せた。


その微かな波紋が消えて1拍。

胡麻がスイッと水面を走った。

管楽器も得意な白久がピンポイントで吹き飛ばしただけなのだが。


「出ましたよ。

 お嬢さん、どちらかですがイニシャルがHの(かた)。って、いらっしゃいますか?」


「ああ。下のがHだな」


「ごく近い内……半月以内に、お相手を連れていらっしゃいます。

 好青年ですよ」


「まさか響が……」一気に酔いが覚めたらしい。


「結婚を考えていらっしゃいますよ」


「そ、そう、か……」


「これを反対すれば生涯独身、と出ています。

 喜んで迎えてあげてください、紗桜(さくら)さん」







副題の『兄弟』、今回は岐波兄弟でした。

啓志は淳と婚約して大丈夫なんでしょうか?

どう考えても苦労しそうな……ま、好き好きですよね。


ソラは滅多に会えない金錦とも仲良くなっています。

歴史好きなら当然でしょうか。


明日は祝日。響とソラは入試です。

イカサマ占い師・白久は、その二人にも幸せになってもらおうと、また何やら考えているようですね。



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