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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団外伝  作者: みや凜
第三部 第7章 なんでもスーパープレイヤー
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音色を楽しむ



 拓斗は彩桜に渡された楽譜を練習し始めた。

1フレーズ毎に彩桜が手本を弾き、攻略ポイントだと説明してから拓斗が弾く。

構え方や指の運び、弓の当て方などの些細な修正も的確で、弾き易くなっていく毎に拓斗は笑顔になっていった。


「それじゃ頭から半分、通してみよ~♪」


「うんっ♪」


 頭出しは祐斗のピアノから。

彩桜が弓で指揮者のように拍子を取る。

『せ~の♪』と彩桜が口パクして二人同時にピアノに重ねた。


「あっ」


『初めてだからトーゼン♪』笑顔で口パク♪


頷いて続けた。



 そして何度か間違えたり、音が抜けたりしたが、前半を弾き終えた。

「間違ってもいいんだよ♪

 知らん顔して続けたらバレないから~♪」


「そうなの?」


「こんな曲なんです。って堂々としてれば、そぉ見えるし聞こえるから~♪」


「彩桜ってば♪ でも その通りだよね♪」


「祐斗君も そうなの?

 間違うと怒られるよ?」


「そゆ教え方あるの知ってるけどね、音楽は音色を楽しむものだから~♪」


「いいの? ホントにいいの?」


「拓斗、毎日 叔母さんが僕ん家に連れて来てくれるって言ってたよね?

 だから ここで練習しようよ」


「したい! 彩桜お兄さんと練習したい!」


「だからぁ、お兄さんヤメてぇ~」


笑って後半に移る。



―◦―



 その頃、小ホールでは――


「この絵……」

智水は1枚の前に30分以上 立ち止まっていた。


「ね? 引き込まれるでしょう?」

他の絵を見ていた聖水が歩み寄った。


「そうね……」


「心の刺が浄化されて消えるでしょう?」


「心の刺……そうね。その通りね……」


「智水も魅了されてしまった?」


「そうなのかも……」

困ったような笑みを浮かべた。



―◦―



 居間では――


「うん。各々が躓いた箇所が判ったからね。

 明日から克服していこうね」


「「「はいっ!」」」うるっ――


「おいおい泣くなよなっ♪」ポンポンポン♪


「嬉しくて……」「感動しちまって……」

「こんなの初めてで……」


「「おいおい」」あははっ♪


玄関側のドアが開いた。「只今戻りました」


「藤慈が礼服? 何処行ってたんだぁ?」


「結婚披露宴ですよ。

 先日の同窓会で招待して頂いたのです♪


 青生兄様、その方々は?

 白久兄様は お友達ですか?」


「今日からの生徒達だよ。高校生なんだ」

「勝利サンは、その保護者ですよねっ♪」


「そうですか♪」にこにこ♪  『只今』


「あ♪ 金錦兄様お帰りなさい♪」


金錦、居間に到着。

「青生、また増えたのだな」フッ♪


「はい。出会いは(えにし)ですから」


「そうだな。中学生達は?」


「今日は模試なんです」


「競技会には間に合わず、すまない。

 聞かずとも優勝なのだろう?」


「はい、彩桜もジュニアの部で」


「その彩桜は?」


「アトリエでバイオリンを教えています。

 後で合奏しますか?」


「ふむ。そうしよう」フフッ♪


「では着替えて参ります」「私も そうしよう」


「荒巻さんと君達も聞いてもらえる?」


「えっと」「何を?」「ですか?」


「音楽だよ」


顔を見合せ、頷き合った。「「「はいっ」」」


「白久、音楽って堅苦しいヤツかぁ?」


「ん~、ま、ど~とでもですよ♪」


「ふ~ん……」


「青生、瑠璃さん呼んでくれるか?」「え?」

「会いたいんでしょ?♪」「違っ、おいっ!」


「呼びますね」くすっ♪   〈行かぬぞ〉

〈そう言わず、ね?〉〈少しの間だけだぞ〉

〈うん♪ お願いね〉〈仕方のない奴だな〉

青生の返事は笑い声だった。



―・―*―・―



 拓斗達が母親達に練習した曲を披露していると、中盤で音が重なり、兄達が弾きながら出て来てピアノを囲んだ。


 その曲を終え、母親達が目を潤ませて拍手していると――


「もっかい弾くから入れ~♪」


――居間と庭に居た者達が入って座った。


 もう一度、同じ曲を奏でた。



「拓斗君、他にも何か弾ける?」


首を横に振る。「覚えてなくて……あの――」


「ん? 何でも言って~♪」


「お兄さん達の聴きたいです!

 音楽教室は楽しんでないから……みんな、ぜんぜん楽しそうじゃないから。

 楽しいの聴きたいです!」


「僕も聴く方に行くねっ♪

 拓斗、行こっ♪」「うんっ♪」

祐斗と拓斗が手を繋いで席へ。


「そんじゃあ最初は、ご婦人方の為に穏やかな癒しの曲を。

 その間に お前ら、リクエスト考えとけよ♪」

白久が話している間に兄弟はピアノの前に並んでいた。


『クラシック界の超新星』を演じているかの如くな真顔での弦楽七重奏が、穏やかに場に満ち、皆を優しく包み込む。



 弦の余韻が消え、拍手が湧く。


「その辺、眠くなってたろ♪」弓でクルクル♪


「えっ?」「寝てなんかっ!」

「俺、ちょっと寝た……」


「寝ていい曲。つーか寝てもらう為の曲だ♪

 癒しの曲なんだからなっ♪

 で、リクエストは?」弓で差す。


「って何ができるンですか!?」


「あ~、確かになっ♪」「ハイ♪」挙手♪


「ナンだよ堅太?」


「こないだのアイドルのヤツ♪

 メドレーでもいいし♪」


「またかよ~。紅火、オケは?」


「完成した」ヘッドセットマイクを配る。


「用意周到だなっ♪ そんじゃヤっか♪」


 兄弟は頷き合うと、楽器を隅のスタンドに置いてピアノを下げると後ろの幕を閉じた。

そして位置に着く。


 オケの音も抜群に良い。

バシッと揃って動き始め、彩桜の伸びやかな高音が響く。



「毎日ずっと一緒なのにマジで いつ練習してるんだろなっ♪」


「ホントだね♪

 金錦お兄さん、週末しかいないのにね♪」


「すっごいね♪ ホントなんでもだね♪

 さっきの、笑うのガマンしてたよね♪」


「してたなっ♪」

「頑張って真面目してたよね♪」


「楽しいって、わかったよ♪

 ボク、バイオリン続ける♪」



「秀飛、大丈夫か?」前の背中をつんつん。


振り返ったキラキラ(まなこ)が三日月に細まる。

「うんっ♪」すぐ前向きに戻った。

秀飛の両側も同じくだ。



「白久サンも、青生先生も……」

「面白ぇなっ♪」「だよなっ♪」

暫く唖然としていた高校生達も笑顔になった。



 3曲続けて歌い踊っても息すら乱れていない兄弟は、要塞(パーカス)3点(・ドラム)セッ(・シンセ)トが乗った台座を引き出し、ギターやマイクスタンド等も出して並べた。


「ずっと踊るのもアリだが、『何が出来るんだ?』に答えねぇとなっ♪

 曲のリクエストは?」


祐斗が手を挙げた。「全世界水泳の!」


「あ~、夏に流れてたイメージソングな♪

 難度高いヤツ選びやがったなっ♪」

兄弟、嬉しそうに楽器を選ぶ。


 耳馴染んだイントロが夏の思い出を連れて鮮やかに流れ、白久の歌声が力強くスポーツ感を醸し出す。

歌って踊っていたアイドル感は何処へやらだ。



「生きてくのに不可欠な水だが、人は水の中じゃあ息できねぇ。

 だから挑む泳者への試練となる。

 逆流なら尚更だ。

 それでも尚、挑み続ける者には試練すらも微笑む、かも知れねぇ。


 つまり、だ。

 世間の風とか他人の目なんかに惑わされず、流されず、己の道を突き進めってコトだなっ♪

 この曲、結構イイコト言ってるんだぞ♪」

歌い終えた白久が語ってニカッと笑った。


「バンド……やってみたいな……」呟いた。

「勉強しろって言われねぇか?」コソッと。


「言うかよ。

 お前らの立ち位置は、まだ道を探してる段階だ。何でもやってみろよ。

 道を見つけたら突き進みゃいいんだよ。

 高校生なんざガキなんだよ。

 まだまだ可能性は無限大なんだからな♪」


「さっすが常務~♪」「ソレ言うなっ!」

逃げる末っ子、追う次男。


「次、どうしようか?」ドタバタ無視な三男。


「管楽器がまだだよな」平然としている四男。


「む」「入れ換えますね♪」五男六男、動く。


長男は、その全てを包み込むように微笑んでいる。



「兄弟って……いいわね」


「智水も もう1人産んでみる?」


「そんな……」


「彩桜君、どう見ても随分と年下でしょう?」


「そうね……」


「私も2人いて幸せ――あ、ヒナ!」思い出した。


バッと扉が開いた。

「ママも お兄ちゃんもヒドい!

 私もファンなのにぃ!」


「ヒナごめん。

 まだ続けてくれるから座って」「ん♪」







演奏者もプレイヤーですので、本領発揮な音楽も挟み込みました。


拓斗も高校生達も笑顔になりました。

そして智水も何かが変わったようです。


金錦と紅火が踊るのが想像できない?

ダンスも芸術ですので真剣に踊りますよ。

前に前にと目立とうとするのは白久と黒瑯ですけどね。



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