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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団1.5  外伝その1 ~探偵団の裏側で~  作者: みや凜
第三部 第7章 なんでもスーパープレイヤー
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庭にバスケコート



 彩桜達が家の大門に着いた時、白久が角を曲がって来たのが見えた。

「白久兄もお帰り~♪」


黒瑯と紅火は軽く手を上げて大門をくぐった。

先に庭にバスケコートを作るつもりらしい。


「スケボーの大会、行けなくて悪かったなぁ。

 青生なら優勝したんだろ?♪」


「彩桜も優勝したんです♪」

照れている彩桜を祐斗が前に押し出した。


「出たのか♪ そっか♪

 ん? 青生、ソイツらは?」


「白久兄さんの後輩達ですよ」


「後輩? 高校生かぁ? そっか、グレ高か」


「「「うっ」」」後退る。


「俺は櫻咲だからな」


「睨まないであげてくださいね。

 今日から俺の生徒達ですから♪」


「ま、更正する気ならヨシだ♪

 あっ、勝利サン!? 勝利サンですよね♪」


高校生達の後ろに隠れていた荒巻が照れ笑いしつつ姿を見せた。

「久しぶりだな白久。今日も仕事か?」

そして白久に近寄る。


「社長の息子のお()りですよ」苦笑。


「へぇ♪

 そんなん任されるんなら係長くらいにはなったんだろ? 課長か?」


「白久お兄さんは常務で支社長です♪」

祐斗が誰よりも誇らし()に言った。


「常務!? マジかっ!?」


「運が良かっただけですよ。

 勝利サンの会長様にもお世話になってます」


〈青生、少々狭いがコートが出来た〉


「そろそろ入りませんか?」


「だなっ♪ ボロ屋敷ですがどーぞ♪」



 ぞろぞろと門をくぐった。

「文化財かぁ?」「ボロいだけですよ」


「デカっ!」「広っ!」「何なんだ!?」

後ろの方から高校生達の声が聞こえた。


「静かにしやがれっ!」「「「はいっ!」」」


 店と和館の間にあった木が移されており、広くなった場所に立つポールの先にバスケットリングが付いた板が見えた。

地面は綺麗に平らで深緑色。ラインもクッキリなコートに仕上がっている。


「誰がバスケなんかするんだぁ?」


「誰でもいいんですけどね、今日のところは小学生。中学生もかな?」


紅火が堅太にボールを渡した。

指導するつもりらしく去ろうとしない。


「秀飛、やろーぜ♪」「はい♪」


「君達は俺と一緒にね」「「「はい!」」」


「勝利サンどーします?」「白久と一緒だ♪」

「それじゃ居間に」「そーいや瑠璃サンは?」

「病院の方に歩いて行きましたよ」「そっか」


「あれれ? 祐斗は? あ♪」


祐斗は引き返していたらしく、母と叔母の手を引いて来た。

「彩桜、アトリエに行きたいんだけど」


「うんっ♪」先導~♪


「バスケ、いいの?」したいよね?


「もぉ待たせるの無理でしょ」おばさん達。


「やっぱり気づいてたんだね」


「心配そぉに見てたから~。

 拓斗君、行こっ♪」


「拓斗、大丈夫だよ。行こう」「うん」



 アトリエに入ると彩桜と祐斗は拓斗を連れて離れた。

 聖水と智水は絵を掛けたままの小ホールで座って待つように言われて入ったものの、所在なく立ち尽くしていた。


「このまま黙っていなさいね。

 智水(さとみ)は口を開けば失礼なことしか言わないんだから」


「失礼なことしかって、それこそ失礼じゃないのよっ」


「そんなこと言ってないで絵をご覧なさい」


「絵なんて見ても――」「ご覧なさい」


「この絵……姉さんが集めてるのに似てるわね?」


「同じ方の絵ですからね――触らないの!

 常識も何もないのね。

 少しは智水も勉強したら?」


「私は全力で拓斗を育ててるのっ!」



―◦―



 彩桜達は弦楽器の部屋に居た。


「拓斗君、バイオリンを構えてみてね♪

 弾き易いの探してねっ♪」

手慣れた様子で次々と調弦している。


頷いて、拓斗は並んでいるバイオリンを中程から順に構えてみる事にした。


「ね、彩桜。これって少しずつ大きさの違うバイオリン? 何するものなの?」


「うん、バイオリン♪ 子供用なの~♪

 だから どれも小さなバイオリン♪」


「成長に合わせていくんだね♪」

自分達に背を向けて真剣に選んでいる拓斗をチラリと見た。


「そぉなの~♪ 兄貴達も使ったの~♪」

彩桜も拓斗を見てニッコリ。


「彩桜は?」


「半分くらいかな~?」


「あっ、東京……」


「俺が青生兄の鞄で寝ちゃっただけだからぁ、そんなお顔しないでぇ~。

 でねっ、だから拓斗君に使ってもらいたいの。

 使ってくれたら嬉し~の~♪」


「そっか。もう使う子がいないのに手入れだけしてるんだね?」


「そぉなの~。将来、兄貴達の子供が使えるよぉにしてたの~♪」


「毎日この数を!?」


「音出してるよ♪」「彩桜クン♪」具現化♪


「あ♪ ゴウちゃん師匠~♪」

「もしかしてユーレイさん?」


「ユーレイよ♪

 ね、彩桜クン。怨霊化を防ぐ破邪の強さを教えてもらえるかしら?」


「出してみたらいい?」


「ええ、お願い♪」「うんっ♪」


 彩桜は拓斗の様子を確かめてから、その場に座って目を閉じた。


 祐斗にも彩桜が桜色の光と舞う花弁を纏ったように見えた。

桜色の光が炎のように立ち昇って明瞭になり、煌めく花弁が舞う範囲を拡げた。

「キレイ……」


「そうね、とても美しいわね。

 これは彩桜クンの浄化の力なんだけど、魂の清らかさが見えているとも言えるのよ」


「彩桜って……凄い……」


「そうね。

 これほどの強さだったなんて……弟子達には無理そうね。私も修行しなきゃ」


「ゴウちゃん師匠、強い? 強過ぎ?」

彩桜が目を開けていた。光も消えている。


「あら、大丈夫よ♪

 私は出せるようになってみせるわ♪

 ホント早く高校生になってもらいたいわぁ」


「えへへ~♪」


彩桜が一瞬だけ向けた視線をトウゴウジは見逃さずに追った。

「あら、もう1人 居たのね。あの子……」


「ん? 知ってるの?」


「よく私の公園に来るのよ。ほぼ毎日ね。

 バイオリンを持っていてね、練習しているみたいなんだけど弓は持っていないのよ。弓だけエアーなの。

 弦を押さえる練習だけしているのかしらね。

 ただ、気になるのは表情が暗くて、いつも泣きそうな顔で帰る事なの。

 負の感情は拡がらずに内に籠っているみたいだから、今のところ怨霊化には繋がっていないのだけれど……」


 心配なのは生霊化なのよね……。


「ありがと、ゴウちゃん師匠。

 俺……頑張ってみる♪」


「お願いね。

 それじゃあ私は――修行スイーツを頂いて帰りましょ♪」

彩桜と祐斗に華やかな笑顔を向けたままスッと消えた。



「怨霊化って……拓斗が?」


「んとね、生きてるヒトの負の感情にフツーの幽霊さんが触れたら怨霊なっちゃうかもなの。

 だから俺、さっき高架下で破邪してたの。

 祓い屋さん達も高校生が出してる負の感情を警戒して来てたの。


 ゴウちゃん師匠は東の街でイッチバン強いユーレイさんなの。

 東の中央公園に住んでるの。

 だから来てなかったけど、この街のユーレイさんから聞いたみたい~」


「東の中央公園かぁ。

 拓斗の家、すぐ近くのマンションなんだ。

 そっか。

 さっきも僕達は彩桜に護られてたんだね。

 ありがと彩桜♪」


「怖くない? 大丈夫?」


「うん。もう分かったから大丈夫。

 ごめんね彩桜」


「もぉ謝らないでぇ」「やっぱりコレ!♪」


「「あ……」」忘れてた!


「最初から持ちやすいって思ったけど、ぜんぶ持ってみなくちゃ、って試したの。

 でも、やっぱりコレがいい♪」


「拓斗のは大きいの? 小さいの?」

嬉しそうな拓斗の頭を祐斗が撫でる。


「大きい? かな……?」


「それじゃこれから使えるねっ♪

 暫くはソレ使っててね♪」


「いいの!?」


「持ってるのが構え易くなるまで、順に使ったらいいよ♪」


「ありがと! 彩桜お兄さん♪」


「お兄さんとかヤメてぇ~」テレテレテレ~。


「それじゃ練習しない?」祐斗、笑いながら。


「祐斗、ピアノお願いねっ♪

 あっち行こっ♪」

彩桜も自分のバイオリンを出して、ピアノが並んでいる場所へと駆けて行った。


「待って彩桜! 曲は!?」追い掛ける。「拓斗も早く!」


「うん!」



―◦―



〈なぁ紅火、さっきのナンだ?

 庭の木、ゴソッと動かしたろ?

 瞬移させたのか?〉

台所の黒瑯が店の作業部屋の紅火に話し掛けた。


掌握(ショウアク)


〈って?〉


〈神の手〉


〈オレにも出来るのか?〉


〈黒瑯は神眼が強い。

 故に神眼を極めれば掌握にも繋がる〉


〈んん? ま、神眼を鍛えろってコトか?〉


〈そうだ〉


〈よーし! オレはヤルぞ!〉







実は紅火がイチバン凄いのかも。

あっという間に庭にバスケコートを作ってしまいました。

いつの間に鍛えたのやら『掌握』という神力も使い熟しているようです。

ま、『ドラグーナの手』なら当然でしょうか。



輝竜家の子供用バイオリンは特製です。

金錦と白久が幼かった頃、トレービが来る度に置いて行ったんです。

もちろん教えたのもトレービです。



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