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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団1.5  外伝その1 ~探偵団の裏側で~  作者: みや凜
第三部 第7章 なんでもスーパープレイヤー
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ストリートバスケット



 素行が良さそうだとは言い難い高校生3人に売られた試合を黒瑯が買った3×(on)3のストリートボールは、始める合図も何も無く、高校生の1人が持っていたボールをシュートして始まった。

 しかしリングに弾かれ、リバウンドしたボールは黒瑯が素早く跳んで取った。

楽しんでいるらしい黒瑯はドリブルして離れ、青生にパスをした。

やれやれといった様子で青生がシュート。

 当然のように入ったボールは、高校生の手に。

この攻守交代は高校生達も守ると言ったので輝竜兄弟は素直に再開のパスを待った。

攻撃に転じた高校生達のパスを紅火がカットして、宙で振り返り様にシュート。

スポッと入る。


 そんな調子で輝竜兄弟は高校生達にはシュートの余地すら与えず、次々と得点を重ねていた。

ロングありダンクありで、パスも鋭く、ドリブルは曲芸のように巧みなので、完璧に高校生達を翻弄している。


 対して高校生達は、それなりの技術はありそうだが、輝竜兄弟の動きは全く追えていないようだ。

怪我をさせるのも範疇な妨害を企んでいるのは表情や交わしている隠語のような言葉から明らかなのだが、動きが全く伴っていなかった。

手や足を出しても既に輝竜兄弟は居らず、プレイとしても二手三手遅れになっているのだった。


〈彩桜、高校生達の苛立ちやらが膨れ上がっているから、近くの霊達に影響しないように破邪をお願い。出来るだけ広くね〉


〈うんっ! 誰もソッチ行かないよーに みんなの動きも止めてるからねっ!〉


〈ありがとう。流石、彩桜だね。

 紅火、このコートに霊が入らないように堅固をお願い〉


〈ふむ〉〈青生、オレは?〉


〈この試合の(かなめ)なんだからバスケに集中して〉


〈ソレなら任せろ♪〉


「それで試合時間とか何点先取で終わるとかは?」〈青生♪〉

黒瑯からのボールを見もせずに受けてドリブル。


「20点だっ!」奪ってやる!


「とっくに取っているんだけど?」

スルッと(かわ)し、脚をくぐらせて背後に回し、そのまま後ろ手でポイッとシュート。


リングに吸い込まれるように入った。


「クソッ!」


「もう息も上がっていて足元も覚束(おぼつか)ないのに、まだ挽回できると思っているの?」


「まだまだだっ!」


「そうは言うけど、あれで68点だよ?」


青生が指した先では黒瑯が軽やかにダンクシュートしていた。



―◦―



「彩桜、これは何事だ?」「瑠璃姉~♪」

黒スーツの瑠璃が駆けて来た。

近くまでは瞬移して来たのだろう。

〈青生が戦っていると感じて来たのだが?〉


「ストリートバスケットボール♪」

〈お香の匂い?〉


「それは見れば分かる」

〈今年は軽く拝むだけの内々のものだったが飛翔の命日だ。

 競技は神眼で見ていた。おめでとう。

 破邪を手伝おう〉


〈ありがと♪ そっか……〉

去年はショウもトシ兄も居たと、つい思い出してしまった。

「んとね、この子達が あのお兄さん達に捕まってたの。だから助ける為なの」


「ふむ。ま、問題無さそうだな」「うん♪」


コートの向こうにも全力で走って来る人影が見えている。


「あれは……」「トシ兄のお友達じゃない?」


「そうだな。間違えようもなく荒巻だ」

〈それはそうと、この念縄は?〉皆の腰に?


〈ショウが教えてくれた~♪

 みんなが入らないよぉにしてるの~〉


〈神の欠片を持たぬ者には ただの縄だが?〉


〈うん。足留めだから それでいいの~〉



―◦―



「お前ら! 何してやがる!

 ああっ! 瑠璃サンすんません!!」

フェンスの向こうに到着し、直立不動からの腰直角!!


勝利(カツトシ)サン……」「どーして?」

ぱちくりと止まるとフラフラの足が耐えきれず、へなへなペタンと座り込んだ。


「どーしてじゃねえっ!!

 誰にケンカ売ったと思ってるんだっ!!

 この馬鹿野郎共っ!!」


「「「え?」」」


「櫻咲の白久を知らねぇのかっ!!」


「あの伝説の!?」

「どれが!?」「誰がだろっ」


「白久は俺達の誰かじゃなく兄だよ。

 だから怖がらないでね」


「白久兄にオッサンて言っといてやるよ♪

 伝説になってるくらいオッサンってな♪」


「うわわわっ!」「ゴメンナサイ!」

「スンマセン! スンマセンッ!!」


「白久本人じゃねぇけどなっ!

 戦女神様の旦那なんだよっ!」


「って百人斬りの!?」「「ヒイッ!!」」


「荒巻……」「瑠璃サン!? うわあっ!!」

フェンス、コート、フェンスの向こうからの鋭い視線が突き刺さったらしい。

「スンマセン スンマセンッ!!」ペコペコ!


「瑠璃、怒らないであげてね。

 荒巻さんも怯えないでくださいね。

 彼らを責めるのも、ね?」


「はぁ、青生先生が そう仰るんでしたら。

 ですがイキサツだけは聞かせてもらいたいんですけど……」


「確かにね。

 どうして小学生達を引き留めたの?」


「小学生?」「ほら、あの子達」

「あ~、お前らパシリが欲しかったんだな?」


「はい。まぁ、下が欲しくて……」

「ちょうどいい中坊だと思って……」

「それとバスケの自慢したくて……」


「ったくショーモナイ理由で!

 叩き直してやる!!」


「んでオレ達が連れてこーとしたから試合フッ掛けてきたんだよな♪

 オッサンだから勝てると思ってなっ♪」


「オッサン?

 そんじゃあ俺もオッサンだと思ってやがったんだなぁ? オイコラ!」


「「「ゴメンナサイ!!」」」


「アラフォーは十分オッサンだ」「瑠璃サァン」


「それで試合は俺達の勝ちでいいのかな?」


「はい。「「降参です」」」


「そんじゃオレ達の言う事ナンでも聞くんだな?♪」


「「「はい……」」」


「そんじゃ――」

「うん。(ウチ)に来てもらえるかな?」

「――コイツら連れてくのか!?」


「荒巻さんみたいに大学に行って、ちゃんと就職したいとは思わない?」


「え?」「俺達なんかが大学?」

「行けるンですか?」


「そこそこフェアプレイだったし、行けると思うよ?」


高校生達が荒巻を見ると、荒巻は大きく頷いた。




 黒瑯と紅火が小・中学生達を連れて歩き、少し離れて青生と瑠璃が高校生達を連れて歩き始めた。荒巻も後ろ組だ。


「荒巻は何故 此処に?」


「あ~、ソレなんですけどね。

 トシのアイドルな響チャンの旦那な探偵助手が来て、急いで行けって。

 またトシが現れたのかと思って全力で走ったんですよ」

〈ソラ兄だ~♪〉


「ふむ。利幸ならば、いずれ復活する。

 待ってやってくれ」


「待つって!? 幽霊が復活!?」

高校生達のギョッとした視線が集まる。


「復活する」


「流石トシユ菌だな……」


「トシユ菌か」はははっ♪


「マジでシブトイ菌だよな。

 青生先生、その大きな箱は? 持ちますよ」


青生は縦長の箱とスケボーを持っていて、バックパックからも同じ箱が突き出ている。


「軽いから大丈夫ですよ」

「競技会のトロフィーなのだろう?」

「うん。彩桜のもね」


「競技会? トロフィー?

 もしかして そのスケボーですか?」


「ええまぁ」「流石ですねっ!」


「ボーダーだったのか……」

「子供達のボードかと……」「ああ、だよな」


「青生先生はな、動物の医者なんだよ。

 ヤマ大出の獣医学博士なんだ。

 けど それだけじゃねぇ。

 戦女神様を射止めるだけのスンゲー男なんだよっ!」

ポコポコと高校生達を叩いていく。


「そのくらいにしてくださいね。

 瑠璃も怒らないでね」



―◦―



「ねぇ、不良達まで連れて歩いてるわよ?

 それに あの男、どう見てもヤクザじゃない?

 姉さんてばぁ何とか言ってよぉ」


「不良って言うけど反省してるじゃない。

 それにヤクザなんて この街にはいないわ。

 事務所は とっくに解散したんだから」


「そうは言うけどぉ」


「今日はずっと追いかけるんでしょ?

 静かになさい」



―◦―



「お前ら、いーかげん名乗れよな。

 グレ高の1年なんだろ?」


「あっ、はい。萱末(かやまつ)高校1年、杦下(すぎした) 良太(りょうた)です」

「同じく柗並(まつなみ) 善喜(よしき)です」

柳柁(やなぎだ) 英雄(ひでお)です」


荒巻が手帳を出して書かせ、ページを破り取って青生に渡した。


「お前ら揃いも揃って親が泣くような名前だな。

 名付けたモンの思いをシッカリ受け止めやがれ!」


「「「はい……」」」


「俺達みたいなオッサンと違って、これからが長いんだから頑張って挽回してね」


「いやもうオッサンだなんて……」

「なぁ。言わないでくださいよ」

「ガッツリ反省してますからぁ」



―◦―



〈ソラ兄ありがと~♪〉見~つけた♪


〈あ、彩桜クン。

 怨霊化を防いでくれて ありがとう〉

上を飛んでいる。


〈それで来たの?〉


〈うん。大きな負の感情がどんどん膨らんでいたから〉


〈スケボーは?〉


〈あっ! 見ていたよ!

 優勝おめでとう!〉


〈あっりがと~♪〉



―・―*―・―



 さて、今日も来てるかな?


 白久は真っ直ぐ帰宅するつもりだったが思い直して着替え、先日、営業の途中で考え事をしていた護岸工事現場に営業マンとしての格好で行ってみた。


「やあ輝竜君、余程この現場が気に入ったみたいだね」

すぐに見つかってしまった。


「あ、紗桜(さくら)さん。

 今日も現場監督しているんですね。

 土曜日なのに大変ですね」


「いつもの事だよ。

 僕が来ていない日にも来ているのかな?」


「そうですね、考え事をするのに丁度いいんですよね」照れ笑い。


「営業に行き詰まった時とか?」


「そんなところです」あははっ。

「ですが今日は折り入ってのお話があって参りました」


「僕に?」


「はい。弊社は今、邦和のトップを争う巨大グループからの業務提携の話に困惑しているんです。

 相手は建築のみならず土木も強力です。

 押し潰されるか、吸収されるかと上層部は懸念しているんです」


「ウチならイチコロだね」苦笑。


「ですが土木に関しては流石ご専門。

 弊社なんて足元にも及びません。

 ですので御社に二人三脚して頂ければ、その懸念は払拭されると思うのです。

 私は平の営業マンですが、様々な現場を見てきています。

 ですので直接 上と話して提案書を作成したのです。

 どうかご検討をお願い致します」

鞄から取り出した書類を差し出した。


「ミツケンさんがウチなんかと二人三脚?

 とてもじゃないが信じられないが……」


「先日、此処で紗桜さんが的確に指示しているのを見て閃いたんです。

 栄基(さかもと)土木様と共になら巨大グループとも渡り合えると。

 ですので どうか一度でも目を通して頂きたいんです。

 お願い致します!」深々礼!


「僕は君を気に入っているから読ませてもらうよ。

 でもね、社長に見せるかどうかは内容次第だし、社長が簡単にウンと言うとも思えない。

 何しろミツケンさんは大企業だからね。

 今ミツケンさんが巨大グループを警戒しているのと同じだと思ってくれよ?」


「はい! それは当然だと思っています!

 私も支社長には念を押しておきますので!」


「本当に個人と個人ならね――」『部長!』

「――また呼ばれてしまったな。

 すぐ行く!」『はいっ!』

「1週間、時間を貰えるかな?」


「はい♪ ありがとうございます!」腰直角!


「うん。それじゃあまた」

書類ごと手を軽く挙げて、笑顔で背を向けた。


「宜しくお願い致します!」礼をしたまま!







案の定、輝竜兄弟の圧勝で終わったストリートボール。

高校生達は改心したようですので、めでたし めでたしです。


そして久々の荒巻。

完治したようですので、これから元気にチョコマカします。



常務で支社長でヒラ営業マンな白久。

こちらはこちらで忙しそうです。



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