デュークの快気祝い
輝竜家の居間に通された近所の子供達は、祐斗がデュークを連れて庭に行ったので居心地悪そうにしていたが、運ばれてきた料理の匂いに負けて先に手を付け、一口頬張って目を見張った。
「ウマッ! どーして!?」
「カラアゲがベツモノ!♪」
「ポテサラ食ってみろよ♪」
普通に見える料理の別格な美味しさにシッカリガッチリ胃袋を掴まれていた。
―◦―
その頃、先に来ていたクラスメイトは彩桜の部屋でデザートを食べていた。
「キラキラ光っててキレ~イ♪」
「と~っても♪ おいし~い♪」
ひと口大の透明度の高い淡い色彩のゼリー玉の中にはダイスカットした果物が入っており、ガラスボウルの中で輝いていた。
それを小鉢に取り、好きなトッピングを添えて食べるスタイルになっている。
「ころころスポンジだけでも美味しいよ♪」
「それにホイップ乗せたらケーキになる♪」
「しましまチョコのリボン乗せて完成~♪」
トッピングだけでも楽しめている。
「これも お兄さんが作ったの?」
「お兄さん、パティシエ?」
「シェフしてる~」照れ照れ~。
「お兄さん、6人なんだよな♪」
「ソックリなんだろ?♪」
「シェフの他は?」
「教授と常務と獣医と――」
「彩桜君♪ それ後で紹介するからね♪」
「あ♪ 祐斗君お帰り~♪
デューク、ちゃんと食べてた?」
「うん♪
犬用ケーキ、みんなで食べてたよ♪
ありがと、彩桜君♪」
「紹介するって、金錦兄いないよ?」
「帰ってたよ♪ さっき会った♪」
ので文化祭のパンフレット用の絵も頼んだ。
「白久兄も帰ってた?」
「うん♪ 青生先生もね♪
紹介できるように話してくるからね♪」
―◦―
祐斗は彩桜の部屋を出て居間に。
「庭から戻らないからカラアゲなくなったぞ」
「ポテサラもカラだな」「なんかのフライも」
「味見させてもらったからいいよ」
「先に食ってたのかっ」「いいな~」
「ちょっと庭に出ない?」
「あ~、だな」「もう少し食べたい」「うん」
「じゃあ食べてからね」
大皿に少しだけ残っているエビマヨを確保して座った。
「あ、ナッツが絶妙に美味しい♪」
―◦―
「彩桜君てゲームとかしないの?」
「うん。したコトない」
「持って来てるからしよっ♪」
「彩桜君がするの見た~い♪」
「見たい見たい♪」「うん♪」
「ナンで???」
「それじゃカンタンなシューティングね♪
十字のボタンで機体を動かして、丸いボタンで攻撃するだけ♪
アイテムが浮かんだら取る♪
分岐はテキトーに選んで大丈夫♪
で、面ごとのラスボスをひたすら撃つ♪
それだけ~♪」と、操作しながら説明♪
「って、ええっ!?」
「彩桜君カワイイ~♪」「やってやって♪」
「ほぇ~」「はいスタート♪」「ふえっ!?」
どの丸ボタンで何が出るのかなんて分からないまま始まってしまった。
しかし直ぐに軽く息を整えただけで落ち着いたらしく、画面をジッと見詰め、敵機が少ないうちに全て試して頷くと、真剣な眼差しで的確にボタンを弾き始めた。
―◦―
祐斗の方は、テーブルの上をデザートに切り換えるタイミングで皆を連れて庭に出た。
「なぁ祐斗」ちょんちょん。
「ん?」立ち止まって振り返る。「堅太、何?」
「このまま仲良くしててくれないか?」
「うん。そのつもりだけど?」
「なんつーかなぁ、も~どーでもよくなったんだよなぁ」
「てか、また来たい!」「僕も!♪」
「うん。来ていいと思うよ」
「は? いいって……」
「この後『パーティー』なんだろ?」
「パーティーしてるじゃない?
他に何のパーティー?」
「え?」「って、つまり」「まさか……」
「フツーのパーティー?」「ってコト?」
「だから他にどんなパーティーがあるの?
デューク♪ ショウ♪
みんな連れて来て♪」
ワサワサと犬達が集まった。
〈ユート♪ みんな来た~♪
ケーキ頼んでくれて ありがと♪〉
「ショウも来てくれて ありがと♪」
しゃがんでショウとデュークを一緒に撫でた。
「聞こえた、よな?」「うん、聞こえた」
「犬、喋ったよな?」「うん、喋ったよ」
「犬も喋るんだよ。
オウムとかと同じらしくてね、よく喋るのから全くなのまで個体差があるみたいなんだけどね。
それに人の側も聞き取り易さに個人差があるんだって。
だから全く聞けない人には信じてもらえないけど、彩桜君みたいに どんな動物とでも話せる人は居るんだよ」
〈僕、ショウ♪ 喋る犬~♪
あっ、デューク、大丈夫だよ~♪
デューク見て固まったんじゃないから♪
僕が喋ったからなんだよ~♪
あのね、デュークは姿が怖いの ごめんなさいって言ってるの~。
噛んだりしないから撫でてあげて~〉
「あ、うん」「行こ」「だな」
最初は恐る恐る。
しかしデュークが皆の手を楽しんでいるのが伝わり、子供達も楽しくなってきていた。
「ホントおとなしいヤツだな」
「カワイイなっ♪」
「賢くて強いんだ。
身体もだけど精神的にね。
妹を護って車に撥ねられて大怪我しても騒がずに我慢してたんだ。
母さんが犬嫌いだったから。
迷惑かけられないって。
それを彩桜君が聞き出してくれて、お兄さんが治してくれたんだ。
もちろん、あの時のは謝ったよ。
シッカリ、ちゃんと謝ったんだ。
だから本当に友達になったんだよ。
フリとかじゃないんだ。
何度でも来てよ。みんな友達になってよ」
「友達になるのは、いいんだけどなぁ」
「問題は母ちゃんだよなぁ?」「だよ」
「内緒で来るしかないよな?」「うん」
「でも、そこを何とかできない?
僕も大変だったから解るけど」
「お兄ちゃん達、見~つけたっ♪」
「ったく~、タイミング悪いヤツ」
「ど~して?」「悪いから悪い!」
『お~い、デザート出したぞ~♪』
「ヒナ間に合った~♪ 行こっ♪」
「だな。食って考えよう」「そうしよう♪」
ぞろぞろと居間に戻った。
―◦―
「すっご~い!
全面クリアしちゃった~♪」
「ホントに初めて?」
「カンタンなゲームなんでしょ?」
「それでも初めてでソレは凄いよ♪
じゃあ次は得点対戦モノねっ♪
そのテレビに送るから~、はい♪
これで2対2ねっ♪
僕、彩桜君チームねっ♪」
「ええ~っ!」「私も彩桜君チーム!」
「僕も彩桜君!」「誰が対戦するの?」
「えっとぉ、順番?
俺のフォロー役さんは順番ね?」
「いやいや「フォローなんて!」」一斉!
「ん~~? じゃあ何???」
「やったら分かるから始めよ~♪
この棒がコントローラーね♪
剣だと思ってね♪
もう片方は身体を動かすヤツ。
で、怪物を斬って、人は助ける。
どっちも得点♪ 逆したら減点。
斬る時は赤、助ける時は青を押して振るだけだから始めよ~♪」
「あ、青 押したら棒になる~♪
差し出したら掴んでくれるんだ~♪
赤だと? 剣だ~♪
うん、大丈夫そう♪」フォン♪
「なんか……振るのサマになってる……」
「ダメ?」
「ううん! おもいっきりねっ♪」
「うんっ♪ あ♪ お帰り~♪
じゃあ対戦相手は祐斗君チームねっ♪」
「え? 何?」「ゲーム♪」「いいよ♪」
「じゃあ僕、祐斗君チーム♪」
「それじゃスタート♪ うわ速っ!」
彩桜と祐斗のアバターが剣をブン回しながら、とんでもない速さで疾走して行った。
「じゃあ後方支援で弓にする!」「僕も!」
パパパパパッとアバターが持つ武器が変わる。
「武器、変えられるの?」「緑!」「ん♪」
「どうして速く走れるの?」「振ると走る」
「ホントに走ってるから?」「だと思うよ」
「走らなくてもいいのよね?」「そうだよ」
「大きく振らなくてもいいよね?」「うん」
「でもカッコいいから♪」「そのままで♪」
後ろで話している声は聞こえていないのか、本当に戦っているかの如くな彩桜と、同じように大きく動いて楽しんでいる祐斗を見て大喜びなクラスメイト達だった。
―・―*―・―
「ああっ! そうそう!」
「姉さん、唐突に何?
それにしても美味しいわね♪」
華美は雅美ではなく母の方を向いた。
「お向かいさんから頂いたのよ」
「って輝竜さん?」
「そうよ。よく持って来てくださるの」
「へぇ~♪」「って華美ったら私のを聞いてよ!」
「ん? 姉さん何?」
「電話でも話そうとしたのに切るんだからぁ」
「急いでたんだもん。それで?」
「ウチの向かい3嫁が来てたの!
地元コミュに入りたい、文化祭で彩桜君を持ち上げたいって!」
「それ早く言ってよぉ」
「言おうとしたら切ったんじゃないの!」
「でも、それなら安心して乗り込めるわね♪」
「アンタってホント……昔っからだったわね。
これでも行くの?」
「行くわよ♪
お母さん、あのタッパーなんでしょ?
返しに行ってあげる♪」
他小卒グループを彩桜に任せて祐斗は行ったり来たり。
大変そうですが、これも今後の彩桜の為と頑張っています。
その効果はもう現れていて、百合谷小卒グループも彩桜と友達になりたいと思っています。
パーティーはまだ続くようですが、食べるのは終わったようですし、他小卒グループとは顔を合わさないままなのか? とかありますが……祐斗はどうするつもりなんでしょう?




