犬で人で龍
エーデラークはエィムとチャムを従えて飛び、イーリスタが成した月からのカモフラ道の2本目に着いた。
「周辺を確かめます。お待ちなさい」
「「はい♪」」
父様やラピスリ姉様達が住んでる街の近く。
あまり人は住んでなさそうだけど
とても強い結界だね。
何重にも被せてあって……父様のも姉様のも
重なってるね。
イーリスタ父様の道は結界の中に伸びてる。
だから此処も『扉』を残せるね。
「崩壊の危険が多分にある古い悪道が残っております。
間違って入れば滅されてしまうでしょう。
下の結界にも触れてはなりません。
貴殿方の力を見ます。
この道をお断ちなさい」
【この道、崩壊なんてするの?】
【嘘に決まってるだろ。
教会に現れたのと同じだよ。
敵神にとって邪魔な道なんだ。
兄様と同じように出口だけを残すよ】
「その姿では無理ならば獣姿になってもよいのですよ」
【バレてる~】
【当然だよね。僕の兄様なんだから】
【敵神にバラさなくても~】
【敵神にも見えてるんだよ】
【じゃあ龍狐?】
【そうだね。変えるよ】【ん♪】
その必要は無いのだが演出として光を纏い、さんざん練習した龍狐姿に変えた。
「龍狐神……」
ナターダグラルが目を見張っている。
「では断ちます!」
兄弟揃って両手を前に突き出すと、道は手の前から上下に光粒と化して消えていった。
「これでよろしいですか?」
「ふむ。十分だ。
二神は未だ下位であったな?」
「はい。昇格試験は月に一度しか御座いませんので」
エーデラークが答えた。
「ならば下位のうちはルロザムールの下で導きを主として励むがよい。
その働きを見、中位に昇格した時点で正式な配属を考えよう」
「「ありがとうございます!」」
「ひとつ……尋ねてもよいか?」
「「はい。何なりと」」
「ピュアリラまたはアミュラという神を知っておるか?」
「初代ピュアリラ様と初代アミュラ様は、尊敬し、信奉しております御先祖様で御座います」
「子孫、なのか?」
「はい。親から、そう教えられております。
初代アミュラ様の末子の子孫だと」
「初代……?」
「『アミュラ』という神名も『ピュアリラ』と同様に継がれていると聞いております。
末端な僕達には今現在のピュアリラ様とアミュラ様が何方なのかは、残念ながら教えてもらえていないのですが……」
「その『ピュアリラ』と『アミュラ』の神名は同一神が持つ事もあるのか?」
「御座います。過去に何度も」
「そうか……ふむ。
またの機に、ゆっくり その話を聞きたい。
早く昇格せよ」
「「はいっ!」」
「では、導きに お戻りなさい。
ルロザムール様には、私の方から お伝えしておきますので」
「「ありがとうございます!」」
―・―*―・―
そのルロザムールは街の結界近くで隣街の上に浮かんでいるリグーリの話を聞いていた。
結界の内には、輝竜兄弟と飛鳥を背に乗せて敵神が放つ禍と戦っていた龍達が浮かんでおり、同じくリグーリの話を聞いていた。
【伯父様なぁ……。
ルロザムール、マジなトコ来た理由はナンだと思うんだ?】
彩桜と黒瑯とショウを乗せていたオニキスが首を傾げる。
【道を確かめた、というのは確かに有り得ますが……】
【父様でしたら、月から脱走したとしか思えませんけど……】
飛鳥を乗せていたジョーヌが苦笑。
【【如何にもじゃな】】
早朝に若菜の買い出しに付いて市場に行き、大量に買った手作り菓子を完食して昼寝をしていた為に出遅れたシャイフレラとサリーフレラまでもが苦笑。
【それで近況と言うのは?】【聞きたいわ】
藤慈を乗せていたウィスタリアと紅火を乗せていたナスタチウムは、月に居る兄姉が心配でならない。
【それは教会では聞けなかったんですが、後でフェネギから、すこぶる元気溌剌で修行しまくっているとだけ聞きましたよ】
リグーリも苦笑。
【良かった……シアンスタ兄様も無事……】
金錦を乗せて戦ったカンパニュラは龍に戻れたばかりで、ハムスターだった頃に世話になったシアンスタを案じていたのだった。
【で、道はマディアが壊したよな?】
【だが教会には出口が残っている。
だから意図して壊した可能性がある。
次はもっと多くの道を成し、マディアが破壊している最中に、その何れかを通って押し寄せるんじゃないかと俺は考えている】
【そうなるといいんだがなぁ……】
昇ったばかりの昼間の月に目を向けた。
【そうなりますよ。
希望を持ちましょう】
皆、丸みを帯びてきた白い月に目を向け、祈りと希望を込めて微笑んだ。
【して……父上様は今、何処に?】【じゃな】
【オフォクス様は、ドラグーナ様の残る1/7を目覚めさせると仰ったよ。
だから、あの家だろうな】
【【ぅげ……】】
【姉様、頑張ってくださいね♪】
【【ジョーヌぅ~】】
―・―*―・―
〖兄さん、また会えましたね〗
【おいドラグーナ】
【この身体、何とかならんのか?】
〖現状、最善だと思いますよ♪〗
【【笑いながら言うなっ!】】
〖最後の封印、開ける手助けをどうかお願いします〗
【今度は改まりやがった】
【けど、どーすりゃいいんだ?】
〖神力、特に龍神の力を浴びていれば目覚め易く、解き易くなります。
ですので白久に くっついていてください〗
【【しゃあねぇなぁ……ったく】】
〈なぁ彩桜、そろそろ教えてくれよな〉
〈にゃにを~?〉黒瑯兄シツコ~イ!
〈トボケんなよ。
オニキスとリーロンだよ。
ついでに聞くけどな、あのチビ犬達、フツーの犬じゃねぇだろ?〉
〈仕方ないなぁ。
えとね、順番にね?〉
〈ああ。頼む〉
〈ドラグーナ様はキッツイ封印の中で眠らされてるの。
だから目覚めさせて、封印を緩めないとダメなの。
緩めた封印を内側からドラグーナ様が破らないといけないの〉
〈そこまでは聞いてたよ〉
〈それを手助けする力が他の龍神様の力なの。
子供とか親兄弟とか、近いほどいいの。
でね、さっき乗ってたのがドラグーナ様の子供のオニキス様。
子供だから手助け力が強いの。
だから犬なって黒瑯兄に くっついてたの。
それでも目覚めないからリーロンなって弟子なったの〉
〈じゃあ……犬のオニキスもリーロンも同じ龍神様だったのかっ!?〉
〈うん。
でも騙したんじゃないの。
言ったら封印がガッチリガチガチなって開かなくなっちゃうから言えなかったの。
で、最後に残った白久兄のドラグーナ様を目覚めさせる手助け役が、あの豆チワワなの。
豆チワワ達も龍神様なの〉
〈犬オニキスにもリーロンにも世話になったんだから怒ったりしねぇよ。
アレも龍神様かぁ……〉
〈白久兄に話しちゃダメだよ?〉
〈ああ。解ったよ。
けどオレのレストラン、リーロンと一緒にしたかったんだけどなぁ……〉
〈してくれると思うよ♪〉
〈けど神様なんだろ?〉
〈だいじょぶだよ~♪
黒瑯兄のコト双子みたいで楽しいって♪
人世も料理も楽しいって♪
リーロン戻って来たから聞いてみたら?〉
〈あ、ホントだ。
バレたと思ってねぇのかな?〉
〈とっくにバレたと思ってる~♪
でもねドラグーナ様は まだまだ寝たり起きたりだからサポートするって♪〉
〈そっか♪
んじゃあ一緒に晩メシ作っか♪〉
〈ん♪〉
〈あ。あの豆チワワ、誰なんだ?
またドラグーナ様の子供なのか?〉
〈ん~~~、姫姉ちゃんに聞いて~♪
近い匂いする~♪〉
〈はぁ?〉
〈姫姉ちゃんの龍神様の父ちゃんかも~♪〉
〈マジかよ……〉
〈マジ~♪
あ、そ~だ♪
飛鳥が乗ってた黄色い龍神様、フェレットのジョーヌだよ~♪〉
〈ええっ!?〉
〈でねっ♪
藤慈兄と仲良し犬のウィスタリア、藤慈兄が乗ってた藤色の龍神様♪〉
〈神様だらけかよっ!?〉
〈だらけなの~♪〉
〈あ……そっか。
考えてみりゃあオレ達、狐だったり人だったりなお稲荷様と狐儀に育てられたんだったな。
だったら犬で人で龍もアリだよな。うん〉
〈うんうん♪〉
―・―*―・―
エィム・チャム兄弟と離れた後、エーデラークは島国ではない場所に伸びた道と道モドキを全て断ち、神世へと昇り始めた。
「姉は追って来ぬのだな」
「そうですね。
もしかしたら禍が掠めたのかも――あっ、いえ何も」
「心配、か?」
「いえ、そのような……ただ、あの強さに憧れが湧いたのかもしれません」
「そうか……」
―・―*―・―
月から全てを見届けたイーリスタがポテッと倒れた。
「「イーさまっ!?」」
「ん~~~、疲れただけ~~~」
「月の位置」「無視して」
「「頑張るんだからぁ」」治癒!×2。
「お嫁ちゃん達あっりがと~~~」
今日はもう寝ようと目を閉じた。
イーリスタのカモフラ道・2本目は、ソラの家が在る西海村に伸びていました。
他には漢中国にオフォクスと桃華が成していた結界にカモフラ道、欧州・北米・南米本部のオフォクスの痕跡に向けて、マディアには一目瞭然な偽装した道モドキを工事中に見せかけて伸ばしていたようです。
オニキスはリーロンしているのを気に入っています。料理も楽しくなっています。
黒輝鱗ドラグーナが目覚めたので犬になっての添い寝は終わりましたが、黒瑯と一緒にレストランするのが楽しみなので、もう犬はヤメでいいと思っています。
さて、敵神が来ての大騒ぎが挟まりましたが、そろそろ祐斗達に話を戻します。
今ですか? 落ち着きを取り戻してジオラマ作りに楽しく没頭していますよ。




