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小さな恋のライバル?



「サクラお兄ちゃん♪」

渡り廊下を歩いている彩桜を見つけた陽咲(ひなた)は声を掛けながら駆け寄った。


「あ、ヒナちゃん……」「だぁれ?」

彩桜の向こうから女の子と男の子が顔を出した。


「サクラお兄ちゃんの妹と弟?」


「じゃなくて……」


「親戚の子?」


「じゃなくて――」「コイビトだもんっ!」

幼くても女のカンは鋭く働く。


「スズ、サクラお兄ちゃんのコイビトなんだもんっ!」

先手必勝とばかりに畳み掛ける。

「サクラお兄ちゃんのお部屋にお泊まりしたんだもんっ!」

飛鳥も一緒に、なのだが。


と言うか、彩桜と飛鳥が寝ているところに紗が押し掛け、飛鳥の布団に入った為に飛鳥は彩桜の布団で一緒に寝たのだった。


「なっ、なんなのっ!?

 ヒナの方がフサワシイんだからっ!

 ピアノ弾けるんだからっ!」


「スズ、フルート吹けるもんっ!」


「ランちゃんもヒナちゃんも落ち着いて――」


「「サクラお兄ちゃん!!」」


「ん?」ナンでか俺ピーンチ!?


「「どっち選ぶのっ!?」」


「えっ――」「彩桜、モテモテですね♪」


「藤慈兄~、笑ってないで助けてよぉ」

と言っている間に、飛鳥はタタッと藤慈の後ろに隠れた。


「いいもんっ!

 ヒナ、フジお兄ちゃんにするもんっ!

 フジお兄ちゃんの方がずっとユウガな王子様なんだもんっ!」


「すみません陽咲お嬢様。

 私には妻が居りますので」胸に手を当てて礼。


「ええ~~っ。

 サクラお兄ちゃん♪」くるっ。「あ……」


紗が勝ち誇った顔で彩桜に腕を絡めており、トドメとばかりに『あっかんべー』した。


 そこに紅火に連れられてアトリエに入っていた祐斗が駆け戻り、陽咲の腕を掴んだ。

「何してるんだよ。騒ぐんなら帰れよな」


「イヤッ!!」


「だから騒ぐなって。

 彩桜君、藤慈お兄さん、ごめんなさい」


「謝らなくてもよいのですよ」

「うんうん、だいじょぶだから~」


「ほらヒナも」「いいって言ってるのにぃ」

「帰らせるからな」「ごめんなさいっ!!」



 そんなこんな、ひと騒ぎしてアトリエの2階に行くと、ソラと徹は既に来ていて巧と啓志にジオラマの説明をしていた。


「僕も聞きたかったんだからな」妹を睨む。


「ヒナ悪くないもんっ」


「どう考えてもヒナが悪いだろ」

申し訳なさそうな視線は、警戒全開で彩桜にベッタリな紗に。


藤慈は苦笑しつつ奥で作業している兄達の方へ飛鳥も連れて行った。


「あ♪ そ~だ♪

 下のピアノが弾きたいです♪

 教えてください♪」


「だから邪魔するなって」


「だってヒナ、10時からレッスンなんだもん」


「だったら来るなよなぁ」


「その前に教えてもらいたいんだもん♪」


「ったく~」「いいよ。下に行こう」

いつの間に来たのか、青生が笑っていた。


「はい♪ お願いしま~す♪」

青生の腕に ぶら下がるように絡んで下りて行った。



「やっと静かになったな……。

 彩桜君、それと――」「スズ♪」

「――スズちゃんもゴメンね。

 妹、ただのキリュウ兄弟ファンだから。

 彩桜君を取ったりしないからね」


「ん♪」


微かにピアノの音色が流れてきた。


「意外と聞こえないんだね」


「外には全然だよ♪」


「ちゃんと聴きたいな。

 ヒナの音じゃないから」


「ここ開けたら聞こえる~♪」

明らかに向こうが外ではない窓を開けた。


とたんに明瞭になった音色が滑らかに部屋を満たした。


「その窓は?」


「向こう吹き抜けなの~♪」


曲が終わり、拍手が聞こえ、そして――


「ヒナの音だ」窓を閉めた。「ったく迷惑なヤツ」


「でも昨日は すっごく心配してたよね?」


「それは……あんなヤツが3日も閉じ籠ったら心配してトーゼンだろ?」


「そぉだね~」にこにこ♪


「とにかく始めようよ」ジオラマを指す。


「ん♪」「彩桜、これが新たな情報だ」


「あ♪ 金錦兄ありがと~♪」


「柱の数、位置を照合するように」「ん♪」


「私は青生の代わりの作業をする」「ん♪」

祐斗に微笑んで奥へ。


「輝竜、教授?」


「うん♪ 歴史学だから情報源♪」


「歴史学なんだ♪」「うんっ♪」

一緒に徹達の所に。



『お~い彩桜ぁ、2回目の朝メシどーすんだぁ?」

声が上がって来た。


「もっちろん食~べる~♪」


「あ、昨日のヤツ。笹城(ささき)だっけか?

 藤慈と話したんだな?

 それとお前、岐波(きわ)つったか?

 お前は紅火と話せたんだな?」


「はい。ありがとうございます」

「っと……はい、少しだけ……」


「そっか。笹城、これからヨロシクなっ♪

 まぁ紅火は見た目サイアクに恐いからな♪

 けど怒りゃしねぇから仲良くしろよな♪」

皿を置いて両者の肩をポンポン。


「はいっ♪ 宜しくお願い致します!」

「ありがとう、ございます……」

「ね、黒瑯兄、何があったの?」ご~はん~♪


「笹城はオレの改装担当なんだよ。

 あの倉庫をレストランにするヤツな。

 昨日が初めての打ち合わせでな、顔合わせしたら顔面蒼白だったから、体調悪いなら日を改めるぞ? つったらイキナリ腰直角に折って謝りやがったんだ。

 で、話聞いたら藤慈と間違えたんだと。

 だから謝るんなら本人に謝れつったんだよ。


 その帰りに公園のベンチでベソってる岐波と目が合っちまったんだよ。

 で、今度は紅火と間違えられたんだ。

 藤慈ならいいが、あの仏頂面に間違われるなんてなぁ、サイアクだよ。

 んで岐波にも、そんなに謝りたいんなら本人にって言ったんだよ」

「仏頂面で悪かったな」「うわっ!?」


「紅火君ゴメンッ!」


「何事も無かったと言った筈だ。

 もう謝るな」


「でもっ、あの手応えと、目の前で呼吸に合わせて揺れるコンパスは忘れたくても忘れられないんだ」


「セーターに引っ掛かっていただけだ」


「でもっ――」「ま、いいじゃねぇかよ」

黒瑯が啓志の肩をまたポンポンとした。


「紅火なら象に踏まれてもピンピンしてるよ。

 コンパスなんて蚊みたいなモンだよなっ♪」


「黒瑯……」それは流石に、と睨む。


「だから怖がられるんだぞ?

 若菜さんに向けるみたいな優し~い目してろよなぁ。

 ってナンで更に睨むんだよっ」


「岐波、手伝え」「えっ――」

「ジオラマ好きなのは知っている」

有無を言わさず連れ去った。



「だから『コンパス啓志』?」

「若菜姉ちゃん目撃者だから~」

「そうなんだ……」

「前から順に輝竜、岐波、銀虎って並んでたから後ろからずっと見てたんだって」

「今の彩桜君と僕と同じなんだね?」

「うんうん。男女混合五十音順♪」


「ピアノのレッスン行ってきま~す♪」


「わざわざ宣言しに来るなっ」


「ヒナすぐにお兄ちゃん追い越しちゃうもんね~♪」


「早く行けっ」



 そしてようやく皆揃っての作業が始まって直ぐに微かな足音が上がって来た。

「今日も頑張っていますね。

 私も加えて頂けますか?」


「あっ♪「教頭先生♪」」

白儀(しらぎ)先生、おはようございます」

口々の挨拶が飛び交う。


「どうして教頭先生が?」「顧問なの~♪」

バッと立ち上がった祐斗が駆けて行った。


「教頭先生! 僕、サッカー部を辞めて歴史研究部に入りたいです!

 お願いします!」


「サッカー部には?」


「月曜日に! サッカーよりもずっと面白そうなので、お願いします!」


「では、月曜日に退部届けと入部届けを」


「はいっ♪ 僕、藤原京が終わったら安土城を作りたいです!♪」


「工作部ではありませんよ?」


「分かってます♪

 歴史の勉強も頑張ります!

 謎に包まれた安土城をシッカリ勉強して作りたいんです!」


「そうですか」にこにこ。


巧と啓志が恐る恐る寄って来た。

「あの……白儀先生」

「部外者が勝手に……すみません」


「既に大勢 参加しておりますよ?

 父兄、卒業生等、歴史に興味のある方には学外部員として私は認めておりますよ。

 勿論、校長の許可も得ております。

 岐波君、笹城君。此方に氏名を。

 それだけでもう部外者ではありませんよ」







すっかり元気になった陽咲(ひなた)が少々引っ掻き回しましたが悪気は全く無く、ピアノのレッスンに行ってしまいました。


巧と啓志(ひろし)が謝ろうと踏み切ったキッカケも判明しました。

ソックリ兄弟を見間違えた。

一気に罪悪感が膨らんで爆発したんでしょうね。


金錦 白久 青生は手出しさせませんでしたし、黒瑯は上手く世渡りしましたので怪我まではさせられませんでした。

なので謝りに来る同級生は、ここまで――ではなく、彩桜には近所にまだ他にも同級生が居るんです。


その前に、祐斗 巧 啓志に嘘を教え込んだ母親達を解決しないといけませんね。



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