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魔法も使えそう



 残っていた事務処理を終えた藤慈が入院室に神眼を向けると、巧達はまだ動画を見ていた。

苦笑しつつ、それなら今のうちに院の裏庭に置いた犬小屋を運んでおこうと立ち上がった。


 事務室を出ると、ちょうど青生も処置室から出たところだった。

「今日は大変だったのに遅くまで ありがとう。

 早く帰って休んでね?」


「はい♪ では失礼します」裏口へ。


「そっちから帰るの?」


「デューク号の家を運んで、そのまま帰ります。

 あの……今日は ありがとうございました」


「ん?」


「彩桜の所にと声を掛けてくださったからです。

 笹城(ささき)君と仲直り出来たのです。

 謝ってくださって。

 ですので、ありがとうございます♪」


「そう。良かったね」


「はい♪ では――あ、制服は彩桜に浄化してもらいますので」


「それがいいね」にこっ。



―◦―



「ですが……酷い汚れですね……」

犬小屋を運ぼうとしたが、藤慈は掃除道具を取りに戻るべきだと思い直した。


「藤慈兄♪」ぴょこっ♪


「彩桜……ジオラマは?」


「明日♪ 土曜日だから朝から頑張るってソラ兄も徹君も帰ったの~♪

 藤慈兄どしたの?」


「元の場所に戻そうかと。

 ですが、あまりに不衛生ですので――」


「浄化♪ これでいい?♪」


「流石ですね♪」


「俺じゃなくてドラグーナ様の力♪

 藤慈兄、今日は助けに来てくれて ありがと♪ とっても嬉しかった♪

 ホントはソレ言いに来たの~」えへっ♪


「当然ですので。

 彩桜は私の弟ですから。

 私を兄と呼んでくれる、たったひとりしか居ない大切な弟ですから」


「藤慈兄~」ぱふっ。


「彩桜……」よしよし。


「小学校に入ったばかりの私は末っ子でした。

 兄様達は行き帰りだけでなく休み時間も可能な限り私の所に来てくださったのです。

 そうやって護ってくださったのです。

 青生兄様は、けん玉やヨーヨーやスケボーの大会で優勝して、私の同級生にとってはヒーローでした。

 黒瑯兄様はバスケットゴールを破砕して、それ以前にもサッカーボールとバレーボールも破裂させたと、別の形でヒーローになっていました。

 紅火兄様は当時とても流行っていたルービックキューブが得意で、休み時間に同級生がぐちゃぐちゃにしたのを瞬く間に揃えてヒーローに。

 そうやって平和的に私を護ってくださったのです」


「黒瑯兄のボールぱ~ん! って、わざとなの?」


「そうとしか思えません」ふふっ♪


「だから連続ぱ~ん! だったんだ~♪」


「兄様達は、目立っても大丈夫だとも伝えてくださったのでしょうね」


「うんうん♪ 目立ちまくりだもんね~♪」


「兄は弟を護る者。

 私が兄として護る側に立てるのは、彩桜が居るからこそなのですよ」


「母ちゃん、もぉ産んでくれないのかなぁ。

 俺も弟が欲しい~」


「彩桜は下に居なくても祓い屋になって街の皆様を護るのでしょう?」


「そっか~♪ うんっ♪」


「では、運びますので」「俺も~♪」


犬小屋に触れて瞬――『藤慈君?』


「「あ……」」


入院室の窓に巧が居た。


「彩桜君も居た♪」祐斗も並ぶ。

「音楽のお兄ちゃ~ん♪」裏口から出て来た。


〈まだ居たのぉ?

 運んで帰ってから話せば良かったねぇ〉

〈そうですね〉苦笑。


「声が聞こえたから開けてみたんだけど運ぶの? 手伝うよ」

巧と祐斗も裏口から出て来た。母親達も。


〈いらにゃ~い〉〈そうですけどね〉


「社会人になってもピアノを続けているのでしょう?

 怪我をしたら大変ですので、お気持ちだけで十分ですよ」


「それを言うなら藤慈君の方こそだよ。

 世界の宝の手なんだからね」

運ぼうと手を掛ける。


「あのっ、掃除をしていただけですので。

 もう遅いですし、運ぶのは明日にするつもりでしたので」


「そう?」


「はい♪」「うんうん♪」


「でも、掃除道具は?」


「片付けたところなのですっ」「うんうんっ」


「そうなのか……」

「すっごーい! 新品みたいだよ!

 母さんも見て!」入ってもそもそ。


「あれぇ? ママと おばさんは?」

「どこ行ったんだろうね?」

「ええっ!?」犬小屋から出た。「母さん?」


「あっ、どうして隠れてるの?

 出てきなよ」


建物に隠れていた両母親が居心地悪そうに出て来た。


「祐斗、犬小屋なんかに入らないでよね」


「また そんな言い方して。

 こんなキレイに掃除してくれたんだよ?

 お礼とかナイの?」


「そ、そうね。ありがとうございます」棒読み。


「ホント大人って――あ。決めた。

 母さん。僕、サッカー部 辞める」


「えっ? 唐突に何?

 あんなに やりたいやりたいって入ったのに?」


「うん。そうだけど辞める。

 もっと大切な事するんだ。

 見つけたんだよ。

 歴史研究部に入る」


「えっ?

 まさかジオラマが作りたいから?」


「ま、それもあるけど、違うんだ。

 それは文化祭用なんだから。

 僕は彩桜君から学びたいんだ」


「「ええっ!?」」彩桜の方が大声を上げた。


「彩桜君からなら、音楽も、勉強も、他にもいろいろ学べると思うから。

 本気で歴史の勉強もするよ。

 勉強するんだから文句ナイよね」


「もうっ、お父さんに言いなさいっ」


「うん。そうするよ。

 彩桜君、今日はホントに ありがとう。

 また明日ね♪」


「うん。また明日~」にゃはは、は……。


「藤慈君、俺も。ありがとう。

 それじゃまた明日」


「はい。お気をつけてお帰りください」



 祐斗と巧は楽し気に手を振りながら、両母親は申し訳程度に会釈して帰って行った。


「あれれ? ヒナちゃんは?」


「一緒に居ましたよね?」「うん……」


揃って小屋を覗いた。


「居た~」「眠っていますね」

「毛布~」瞬移。「持って来た~」


「運びましょう」「帰り着く前にねっ♪」

犬小屋に手を添えて瞬移した。



――久世家、犬小屋の位置ピッタリ。

犬小屋から伸びるワイヤーの先のロック付きフックを地中のアンカーからのリングに素早く繋いだ。


〈出っ来上がり~♪〉


〈行きましょう〉〈うんっ♪〉手繋ぎ瞬移♪



――したのは、向かいの家と家との隙間。



 少し待っていると足音が近付き、街灯に四人が照らされた。


「「えっ!?」」息子達、門扉に駆け寄る。


「デュークの家だ……」「どうして……?」


「やっぱり気味悪いわね……」「そうね……」


もどかし気に祐斗は門扉を開けて走った。


「うん。さっき見たヤツだ。

 ピカピカだし」

中も確かめようと――「あっヒナ!」


「えっ!?」母も駆け寄る。


「ほら、ヒナが寝てる。

 だから運んでくれたんだよ」



 陽咲が見つけてもらえなかった場合を考えて様子を窺っていた藤慈と彩桜は安心して家へと瞬移した。



「でも、どうやって?」


「彩桜君なら魔法なんじゃない?♪」

「ああ、藤慈君も使えそうだよね♪」「ね♪」


「バカなこと言ってないで陽咲を起こしてよ」


「母さんが頭 突っ込んだら?

 もうぜんぜん臭ってないし」


「そんな……」


「運びますよ」「じゃあ手伝う♪」


 祐斗と巧が毛布ごと慎重に引き出すと、陽咲は目ぼけ眼をこすって、ふにゃっと笑みを溢した。


「起きてたの?」


「ううん。起きたの。

 あのね、ふわっと飛んだの♪」


「「やっぱり~♪」」


「もうっ、夢に決まってるでしょ。

 早く入りなさい」


「入るのはいいけど晩ご飯は?」


「あっ……」


「ウチも、だよね?」


「そうね……」


『何を騒いでいるんだ?』『ウチも、なのか』


「あ♪「父さん♪」」「パパ~♪」


「で、何の騒ぎだ?」


「このままファミレス行こっ♪」

「話したい事が沢山なんだよ♪」

「ウチも一緒に行こうよ。ね♪」


「「あ、ああ」」


「「「決まりっ♪」」」


「取り敢えず、着替えないか?」

「荷物も置いて集まらないか?」


「僕、制服のままだった……」


「ソッコー準備だね♪ 行こう♪」


「うんっ♪ ママも早く♪」







デュークが元気になったのと同時に、祐斗も巧も重く のし掛かっていた過去からも解放された心持ちで明るくなれました。


藤慈もまた、ひとつ乗り越えて強くなれたようです。


ですが母親達は……ですので、この章はまだ続きます。



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