音楽兄弟
「よーし上出来!♪ ほら食えっ♪」
兄弟と妻達が集まりつつある食卓に大皿ド~ン♪
「黒瑯兄 朝から元気だねっ♪」
「ったりめーだろっ♪ 朝なんだからなっ♪
今朝はトビッキリ爽快だよっ♪
冷めるから早く食え♪」
「いっただっきま~す♪」
「「いただきます」」「む……」合掌。
「「「「いただきます♪」」」」
「おっ♪ 今日も美味そうだなっ♪」
「ったりめーだろっ♪
それよか白久兄 遅刻すっぞ?」
「今日は例の倉庫な事務所に直行なんだよ♪」
「「ナンで?」」
「そ~ゆ~仕事もあるんだよっ。
支社長なんだからなっ」
「黒瑯は今日は?」青生が箸を止めた。
「休み。明日は早出。ナンかあるのか?」
「聞いてみただけ。うん、美味しいね」
〈それじゃあ特訓だね♪〉〈ゲ……〉
〈俺も瑠璃に任せたから〉〈うわぁ……〉
〈彩桜、コンサートのチケットがペアなんだ。
誰を誘いたい? 紗ちゃんかな?〉
〈ん~~~、今回は徹君♪〉
〈飛行機じゃなくて瞬移なんだけど?〉
〈徹君ならナイショ守れるよ♪〉
〈それじゃあ明日は泊まりでね〉
〈うんっ♪ 今日からでもいい?〉
〈いいよ〉〈ん♪〉
―・―*―・―
そして夕方――
「日曜までお世話になります!
勉強とジオラマ、教えてください!」
「そんなに気負わなくていいよ。
気楽にね。どうぞ上がって」
「はいっ♪」
「居間がいいかな?」向かう。
「理解しないといけない事は普通に教えるけど、暗記中心のは少し違う教え方をするからね」
龍尾の神力の写しを持っているので利用しようと考えている。
「少し違う? って……?」ぱちくり。
「実践あるのみ、だよ」
「はいっ♪ あ、彩桜君は?」
「部屋で藤原京を調べているよ。
歴史は得意なんだよね? 数学は?」
「歴史しか……ダメなんです」
「歴史好きなら読解力は十分だろうから、国語はすぐに伸びるよ。
コツを掴むだけだから。
数学も似ているんだよ。
問題文を読解するという意味でね。
だから今日は その2科目ね」
「数学と国語が似てる……」じわじわ笑顔に。
「お願いします♪」
―◦―
「彩桜~、オヤツだぞ~」瞬移して来た。
「もぉ瞬移できちゃったの!?」
「おう♪ 楽勝だっ♪
んで余裕だからケーキな♪
苺タップリだ♪」
「いっただっきま~す♪」ホールケーキ♪
「何やってんだ?」パソコン覗き込む。
〈藤原京のジオラマ作るの♪
文化祭の展示♪〉ぱくモグぱくモグ♪
「へぇ~♪ 紅火に習うんだろ?
だったら人も当時の服装シッカリ再現して生命感タップリにしたらど~だ?」
〈ソレいいねっ♪ ありがと黒瑯兄♪
じゃあ調べる~♪〉
「彩桜ク――」「おわっ!?」「――あ……」
〈黒瑯兄も見えるよぉになったの~♪〉
「って、つまりユーレイか?」
「はい♪ 天海 翔、ユーレイです♪」
「彩桜の友達なんだな?」
「はい♪」
「そんじゃあケーキ食うか?」瞬移♪
「あ♪ はいっ♪」追っかけ瞬移♪
――台所。
「霊体だけ、いただきます♪」
「へぇ~、減らねぇんだな♪
で、ジオラマ作りに来たのか?」
「ジオラマ?」
「あ、違うのか」〈違わないのっ!〉
〈彩桜クン?〉〈お~い怒るな~〉
〈これから説明するのに呼んだのっ!
ソラ兄も歴史研究部なのっ!〉
〈怒るなよなぁ。
んで、作るならアトリエに行くのか?〉
〈紅火兄トコ行こ~かな~〉
〈お~い紅火、アトリエがいいよな?〉
〈ふむ。そうしよう〉〈だとよ〉
〈あ♪ ソラ兄アトリエ初めてだよねっ♪〉
〈アトリエって?〉
〈ウチの離れ♪ 資料 印刷したから行こ♪〉
―◦―
そしてアトリエこと洋館に。
「広いんだね……ホールなの?」ピアノの。
「コッチにパイプオルガ~ン♪」とっとこと♪
「えっ……凄いね……」
「トクさんの お気に入り~♪」
「トクさん知ってるの?」
「うんっ♪ おばあちゃんだったの~♪
聴きに来てくれてたの~♪」
「聴きに、って……?」
「弾く~♪」奏で始めた。
「彩桜クンて……凄いね」
〈そぉかなぁ……〉
〈凄いよ!♪
あれ? 他にも楽器?〉神眼キョロキョロ。
〈うん。いろいろ。世界中のが人数分〉
〈まさか、どれでも演奏できるの?〉
〈友達いなくてぇ、ヒマだったから~〉
〈……ね、ベース、弾ける?〉
〈ウッド? エレキ?〉
〈え? バンドで使うベース……〉
〈エレキねっ♪〉ちょうど1曲終わった。
「コッチ~♪」ぴょんぴょん♪
「あっ」慌てて追う。
彩桜が入った部屋に行くと、彩桜は既に調弦していた。
「コレでいいかなっ♪」弾く~♪
〈彩桜クンて……何でも出来るんだね……〉
〈兄貴達の方が上手なの~〉
〈ベース教えて!
響のバンドのベースさん、これからあまり来れないらしいんだ。
ボクが代わりをしたいんだよ!〉
〈うんっ♪〉
教え始めると、ついそれに夢中になり、ジオラマを忘れて――
〈彩桜、そろそろ――む? 青生か……〉
扉を開けたら居た。
〈うん。古屋君を案内して来たんだ。
紅火はジオラマの指導?
あれ? 藤慈も来たの?〉
〈裏庭に行こうとしたら青生兄様が見えたので……〉
〈兄貴達♪ 俺コッチ~♪
あ♪ 金錦兄お帰り~♪
白久兄も連れて来て~♪〉〈ふむ……〉
ベースを掛けたまま何かのケースをを持った彩桜が紅火達の前を横切ってパイプオルガンのホールに走った。
〈黒瑯兄♪ 聞こえてるんでしょ~♪〉
〈晩メシは!?〉〈後で~♪〉
〈彩桜が後なんて天変地異が起こるだろ〉
〈ひっど~いぃ〉
そして兄達が集まった。
「久しぶりしよっ♪」
「ん♪ オレ、ドラムな♪」取りに行く。
「そんじゃあギターすっか♪」同じく。
紅火は無言でベースを構えた。
金錦はバイオリンにコードを繋いでいる。
「バンド用、特別仕様なの~♪」
そう言っている彩桜はソプラノサックスとフルートを準備している。
「ちっちゃいマイクも付けるの~♪」るん♪
「藤慈」
要塞のようなシンセサイザーの向こうで青生が手招きしている。
「あっ、はいっ」
「この中なら大丈夫かな?」
「はい♪」 「青生兄~♪」「うん」
「どっちがいい?♪」フルートとサックス♪
「彩桜は?」
「どっちでも~♪」
「俺も どっちでもなんだよね」
「早く決めろよなっ♪」
左右からギターが差し出された。
「合わせておいた」
「白久兄、紅火兄ありがと~♪
じゃあ俺、サックスとギター♪」
「で、曲は?」黒瑯もセット完了。
「『虹の絆』と『天駆ける』♪」
「ん♪」スティックをクルクルしながら後ろへ。
紅火はマイクを青生と彩桜の前に立てて後ろに下がった。
青生はフルートを、彩桜はサックスを横のスタンドに立ててギターのストラップを掛けた。
スッと息を合わせたように感じだけで、カウントすらなく、静かだけども伸びやかなイントロが流れ始めた。
青生と彩桜がマイクに口を寄せる――
「今は~遠く~離~れて~るけど~」
「ボ~ク達は~」 「こ~の空で~」
「「繋が~って~る~ん~だ~~」」
楽器音が昇るように高まり、虹色を思わせる鮮やかな彩りを纏ってソラと徹を包み込んだ。
黒瑯は青生にビシッと叩き込まれたようですが、仲間に入れたのが嬉しくて、楽しくて仕方ないようです。
常識外の力を持ちながら ひっそりと暮らす輝竜兄弟。
ソラも徹も驚きの連続ながら、どうして反撃も何もしなかったんだろうと不思議で仕方ありません。




