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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団外伝  作者: みや凜
第三部 第3章 黒瑯の龍神と兄達の過去
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兄達の過去②



 青生は彩桜の頭を撫でながら話し続けていた。


「黒瑯のドラグーナ様を目覚めさせた後、彩桜が話し始める前に紅火は藤慈を連れて離れたけど、怒らないであげてね?」


「うん。

 なんとな~く俺に聞かれたくないのかな~って思ってた。

 ちょっと寂しかったけど。

 でも……うん。藤慈兄には聞かないよ。

 嫌どころじゃない、殺されるかもってくらい怖かったと思うから」


「そうだね。

 小さな子供達がした事じゃなかったら犯罪だからね。

 大人達は全く取り合ってくれず、子供な俺達は何も出来なかった。

 藤慈の心の傷は、とてもとても深いと思うんだよ。

 そういえば紅火とは先に話していたよね?」


「うん。中途半端に手抜きしたら引きずり下ろされるぞ、って」


「敵意を(あらわ)にする者は必ず現れてしまう。

 それは経験から否めないんだけど、それでも俺は……そういう者も含めて友達候補だと思って見るようにしたんだ」


「友達……候補……」


「理解し合えれば友達になれるかも。

 敵ばかりだなんて思わずに味方を、仲間を増やしていけば……そう考えるようにしたんだよ」


「でもブッチギリトップだったんでしょ?」


「それはそれで作戦だったんだけどね。


 金錦兄さんは非の打ち所が無い完璧なエリート。

『王』のような威厳を纏った不可侵な高貴さって力で俺達弟を護ろうとしてくれたんだ。

 あの兄弟は別格だと思わせるようにね。


 白久兄さんは別の方向からの攻撃を防ごうと考えたんだ。

 向こう見ずで粗暴な者達からは金錦兄さんみたいなのは鼻につくからね。

 暴力にも無敵。そう示したんだよ」


「でもソレって、金錦兄が築いたの壊すんじゃない?」


「だから自分からは決して攻撃しない。

 ひたすら躱すのみ。

 それでも全く攻撃が通らず、立っている場所からは全く動かずに不敵な笑みを浮かべていれば、相手には白久兄さんの実力が嫌でも分かる。

 そうやって圧倒的な強さを見せつけたんだ。


 そうすると粗暴な取り巻きが勝手に出来て、どんどん増えてしまったんだ。

 白久兄さんは『誰かを怪我させたら即刻クビだっ』って言ったそうだよ。


 俺は白久兄さんの行動を見て、仲間を作れるって学んだんだ。

 安直だけど、趣味や目標の頂に居れば勝手に集まるんだな、って」


「ソレでナンでもブッチギリトップ?」


「黒瑯から見れば、そうだったのかもね。

 勉強もスポーツも、遊びでも。

 とにかく負けない、を貫いたよ」


「遊びって?」


「けん玉とかヨーヨーとかスケボーとか。

 あやとりや折り紙まで」くすっ♪


「もしかして藤慈兄に折り紙 教えた?」


「うん。一緒に大きな作品を作って美術展の部門外特別賞を貰ったよ」


「部門外?」


「絵画とか彫刻とかの、当時 設定されていた部門には入れないけど凄い作品だって。

 だから翌年には自由部門って出来たんだよ」


「すっご~い♪

 でも どぉして部門ないのに出したの?」


「夏休みの親子工作として提出していたのを先生の判断で出していたんだ。

 きっと先生は藤慈の自信に繋がればと考えてくれたんだろうけどね。

 藤慈にとっては目立って注目を浴びる事、先生に褒められる事はトラウマでしかなかったから……」


「そっか。逆効果だったんだね」


「うん。

 でも今では良い思い出だと、昨日、折り紙で院内を飾りながら話してくれたよ」


「青生兄の病院、藤慈兄の作品いっぱいになってくね♪

 スタッフ紹介とか、譲りますとか♪」


「うん。子供達もよく来るからね、明るくなって感謝しているよ。

 ジョーヌ様と一緒に、あれこれ考えて楽しんでくれているから、これからも自由にって瑠璃も言っていたよ」


「へぇ~♪」



「少し前になってしまったけど……。

 月でお稲荷様が謝ってくださったんだ。

『何も話せず、苦しめて申し訳ない』って。

 ドラグーナ様に掛けられた封印は とても強くて、しかも複数の神様が無理矢理に掛けているから絡まっていて、通常の解除術では誰にも解けなくなっているんだって」


「うん。だから月で解いて、隙間開けてもらったんだよね?」


「うん。月の凄い神様でも小さな隙間をもう少し大きく開く事しか出来ないんだ。

 内からなら破れるらしいんだけどね。

 そんな強い封印だから、ドラグーナ様がお目覚めになる前に俺達が中途半端に知れば、その封印が二度と開かなくなるそうなんだよ。

 そういう罠でもあるんだって」


「だから話せなかったんだね?」


「そう。

 悪い神はドラグーナ様を滅したいんだ。

 でもドラグーナ様は易々とは滅されない。

 だから封印の内で眠っている間に俺達が成仏すれば、ドラグーナ様を容易に浄滅 出来ると考えたんだよ。

 眠っているし、身動き取れないんだからね。

 俺達を自殺に追い込めれば、その魂は不適と見なされて完全浄滅される。

 だから――」「イジメられたのっ!?」


「……うん。そうらしい。

 悪い神は直接 操ったんじゃなくて、潜在意識に敵対心とかを込めていたみたい。

 だから兄さん達が盾を成したのも、俺が理解を深めようと踏み込んだのも、どちらも正しい行動だと仰ったよ。

 理解すれば縛りが消える。

 そうすれば普通に接する事が出来るようになる。

 黒瑯は、そんなに深くは考えずに行動していたんだろうけどね、友達は多いんだよ。

 俺よりもずっと成功したんだ」


「黒瑯兄もブッチギリしたの?」


「黒瑯だからね、違う方法。

 胃袋を掴んだんだよ」


「黒瑯兄らしいねっ♪」


「しょっちゅう お菓子を作って学校に持ち込んでいたよ。

 それを各部活にお邪魔して皆で食べていたんだ。

 女子にモテてはいなかったみたいだけど、お菓子教室の生徒としてなら大勢 家に来ていたよ」


「モテないトコも黒瑯兄らしいねっ♪」


「うん。ま、紅火は見たままと言うか、彩桜が想像しても分かるよね?」


「たぶんね~、何言われても何されても『む……』ってチラッって睨んで終わりでしょ?」


「その通り。

 動じない、を徹したんだ。

 でも、そうしたらエスカレートしてね。

 休み時間に女の子に呼ばれて紅火の教室に行ったら、紅火の背中にコンパスが刺さっていたんだ。

 紅火は平然と読書していたんだけどね。

 それを見た瞬間に、光が走ったような感覚がして、俺の治癒が開いたんだよ」


「紅火兄、痛いの耐えてたの?」


「紅火は堅固だからね、痛くなかったそうだよ。

 上着を捲り上げながらコンパスを抜いたら血が出て。

 慌てて手で押さえたら、手が光って傷が治ってしまったんだ。

 俺を呼んでくれて、一部始終を見ていた女の子が若菜さんだよ」


「そっか~♪ で、コンパスは?」


「紅火は当時2年生。

 危険なコンパスなんて誰も持っていない筈だよね?

 消えかけている名前を指でなぞったら上級生だと何故か分かったんだ。

 だから6年生の教室に行って、呼び掛けて出て来てくれたお兄さんに渡したよ」


「もしかして血が付いたまま?」


「流石に それは悪趣味だから浄化したよ。

 それも初めて出来たんだけどね。

 でも白久兄さんが問い詰めたって。

 まぁ、弟が勝手に持ち出したみたいで、お兄さんは何も知らなかったそうだけどね」


「その弟には?」


「ツンツンしてみても紅火は無反応。

 思いきって刺したものの無反応。

 抜こうとしていたらしいけど抜けなくて、授業中ずっと目の前にコンパス。

 休み時間になったとたん泣きながら教室から飛び出したって若菜さんから聞いたから特には何も。

 自業自得だけど怖かっただろうからね」


「同じクラスの子達は?

 トラウマなってない?」


「冬だったからね、セーターに引っ掛かっていただけで紅火には刺さっていなかったと俺が言ったら、遠巻きにしていた子達はホッとしていたよ」


「そっか……。

 兄貴達、最初から強かったんじゃなくて耐えて越えて強くなったんだね。

 俺、頑張る。強くなる。

 もぉ逃げない」


「うん。でも いつでも頼ってね」


「うんっ♪

 あ、白久兄と黒瑯兄って勉強できたの?」


「白久兄さんの勉強嫌いは手強かったけど、出来ない訳じゃないんだ。

 やる気が問題なだけでね。

 金錦兄さんと俺が教えはしたけど、問題の やる気を出させてくれたのは、みかん義姉さんなんだ。

 みかん義姉さんは金錦兄さんと同学年。

 つまり白久兄さんより1学年上。

 白久兄さんの憧れの先輩だったんだ。

 みかん義姉さんが金錦兄さんと同じ櫻咲高校に入ったのが白久兄さんに火を点けたんだよ。

 金錦兄さんに取られまいとしてね。

 まだ彼女でも何でもなかったんだけどね」


「金錦兄と牡丹姉ちゃんって?」


「何処に接点が在ったのか知らないんだよ。

 いつからか、とかもね。

 俺が瑠璃と入籍したのを金錦兄さんにだけは話しておこうと訪ねたら、牡丹義姉さんが居たんだよ」


「『近々結婚する』とか?♪」声真似~♪


「本当に よく似せられるよね。

 その通りだよ。

 話が逸れたね。

 黒瑯は……マークシートなら無敵だよ」


「ほえ?」


「数学でも計算式を書かないんだ。

 消したとかじゃなくてね。

 解答欄だけが埋まっていて正解なんだよ。

 その要領でマークシートは無敵」くすっ♪


「黒瑯兄って謎……」


「そうだね」くすくす♪



―・―*―・―



「お~い、そろそろ帰ろうぜ。

 邪魔でしかないんだぞ?」


驪龍(リーロン)だけで帰ればよいのじゃ」ムッ。


「ったく~。

 静香は黒瑯を支えなくていいのかよ?」


「もぅ寝ておる。今は弟と話したいのじゃ」


「ジョーヌ、追い返していいんだぞ?」


「いえ……」苦笑。


心咲(みさき)さん、ホントすみません。

 こんな遅くに押し掛けちまって」


「お気になさらずです♪

 あの~、皆様、龍さんなんですよね?」


「「如何にもじゃ♪」」「おいおい」


「見せていただけますか?♪」


「「うむ♪」」「壊す気かっ!?」


「屋上とか……どうでしょう?」上を指す。


「「参ろぅぞ♪」」纏めて瞬移♪



――マンションの屋上。


「「ほれ♪」」

ポンッと、虹を纏った金龍と銀龍に。


「キレイですねっ♪」「「じゃろ♪」」


「ジョーヌも♪」「オニキスもじゃ」


「真っ暗に真っ黒じゃ見えねーだろっ!」


「光ればよいのじゃ」「のぅ」


ジョーヌは苦笑しつつ姉達に並ぶ。


「「ほれ早ぅせよ」」「わぁったよ!」


渋々オニキスは虹香の隣に。


「黒って素敵ですねっ♪」


「え? マジかよ……」


「夜にシルエット的なのもカッコイイです♪

 虹色金銀も、とってもキレイです♪

 ジョーヌ♪ 素敵なお兄様とお姉様ね♪」


「「良い嫁じゃのぅ♪」」







彩桜はようやく本気を出すと決心しました。

近い学校行事は体育祭と中間テストです。


その前に両親のコンサートを聴きに瞬移でニューヨークですけどね。



ジョーヌは輝竜家上空でサリーフレラと会ったようです。

で、夜中に押し掛けられてしまいました。


オニキスも大人の男性なのに心咲は大丈夫――あ、そっか。輝竜兄弟と同じ顔でしたね。



大まかにですが兄達の過去が判明したところで、この章は終わります。

m(_ _)m



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