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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団外伝  作者: みや凜
第三部 第2章 人として生きるには
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ジョーヌ=アレンソワ



 夕刻。仕事を終えたジョーヌは、前日に心咲(みさき)には巡視当番だと話していたので、きりゅう動物病院の事務室から上空へと瞬移した。


【オフォクス様、お世話になります!】


【作りものの記憶を大量に覚えるだけだ。

 ま、獣神には何の問題も無かろう】


【はいっ♪ ありがとうございます!】


【気負わずにな。行くぞ】【はいっ!】


何を言われようが、どうしようもなく嬉しくて、過ぎる程に張り切っているジョーヌだった。



―・―*―・―



 響は茶畑探偵事務所を訪れていた。


「それじゃあキツネ様とショーちゃんからの連絡を纏めて話すわね」

「国籍に関してはキツネ様、大学院の手続きとかはショーちゃんね」


「その『ショーちゃん』って……?」


「東京に行けば そのうち会えるわよ。

 今のところは気にしな~いの♪」

「そうそう、絶対 会えるから♪」


「うん……」


「それじゃ、これがソラ君の情報ね」

紙を渡した。


「え? バルバドス?」


「此処よ」パソコンの画面を向けた。


「中米? 南米?

 って、スペイン語とかポルトガル語なの?」


「ううん。英語よ。

 アメリカと同じで英国領だったの」


「英語ならソラも大丈夫……かな?

 Sora Okasakiって……天海じゃないの?」


「でも受験願書の邦和名を天海 翔にしてるから、試験の時は邦和名でいいって言ってたわ」


「願書も出してもらってるの?」


「仮でね。御榊(みさかき)教授推薦だそうよ♪」


「あ……だから聞いたの?」

言われてみれば電話でも騒いでいたような……と朝の忙しない時に掛かっていたのを思い出した。


「その通り♪ って、ショーちゃんから聞かれただけなんだけどね♪」


「それでね、本申請に代理人でもいいから来てほしいって言われてるから、私達が弁護士として行くわね」

「手続きは平日のみだから響ちゃんは学校に行ってね」


「すみません、お願いします。

 このアメリカでの大卒資格試験って?」


丘前(おかさき) (そら)という青年は、もう亡くなっているの。

 二度も海で遭難してね。

 一度目は幼い頃で、孤島で暮らしてた丘前(おかさき) 邦男(くにお)という老人に助けられて育ったから学校には全く行ってなくて、漁師をしてたそうなの。


 二度目の遭難で命を落としてしまったのよ。

 亡くなったばかりで、まだ籍としては死亡になっていなかったから、死んでなかったことにしたみたい」

「無学歴だから大学院に留学するには大卒資格が必要だったのよね」


「誰が受けたんですか?」


「それは教えてくれなかったのよね。

 たぶん現地の青年を雇ったんでしょ」

「青年ユーレイかもね♪」「そうかも♪」

「とにかく、無学歴の天才青年ってことになってるからソラ君には頑張ってもらってね」


「それは大丈夫だと思います。

 夜も寝なくても平気だからって勉強ばかりしてますので。

 勉強大好きなんですよね~♪」


「それならいいわ♪」「そうね♪」

「後の国内での処理は私達に任せてね♪」

「たまに呼び出しちゃうと思うけどね♪」


「はい♪ お願いします♪」



―・―*―・―



【国籍取得の手続きは進んでおる。

 ジョーヌを必要としておるのは、ID登録の為の写真を撮る程度だ。

 このスザクインの案内でフランスを巡り、ジョーヌ=アレンソワの過去を作ってゆけ】


【はい♪】


【スザクイン、頼んだぞ】


【お任せくださいルナール様♪

 ショーコも楽しかったと申しておりましたよ】

ふわりと巻いた金髪で青い瞳、透き通るように白い肌の女性が嬉しそうに目を細めた。

実際、ユーレイなので透き通っているのだが。


【ふむ。ソラは受験 出来るのだな?】


【はい♪】


【ふむ。

 では儂は南米に行く。

 ソラの方で動かねばならぬのでな】


【昨日も今日も行ったり来たりですね♪】


【全て次代の為だ】ニヤリとして消えた。



【では、まずは自己紹介からかしら?

 スザーク=マリノフスキーよ。

 だからコードネームはスザクインなの♪

 欧州の纏め役をしているのよ。

 孫娘のショーコは東京で纏め役をしてるの。

 表の職業は煌麗山で音楽の教授なのよ♪】


【それでソラ君の……あっ、僕はジョーヌです。

 龍なんですけど、人と結婚したくて、ジョーヌ=アレンソワというフランス人になりたいんです】


【ちゃんとジョーヌ=アレンソワでフランス籍を得てあげるわね♪

 それじゃあ、生まれてから大学に入るまで暮らしていた地、故郷の記憶を作りましょ♪】


【はい♪ お願いします♪】



―◦―



 上空に留まって眺める。


【まずは此処ね。

 ほぼスイスなんだけど、緑豊かで景色の良い所でしょ?】


【そうですね。のどかでホッとします♪

 僕が育った龍の里に似ています♪】


【アルプスから流れてくる雪融け水、低く広がる葡萄畑、石や煉瓦の美しい建物。

 あの美しい湖の畔に広がる街の外れでジョーヌ少年は育つのよ♪

 学校は、あの建物と向こうの建物ね。

 ワインで有名なんだけど、お家はチーズを作っていたの。

 もう建物すらも無いんだけどね】


【もしかして、何方かの人生をなぞっているんですか?】


【そうよ。でも気にしないで。

 既に全てがジョーヌ=アレンソワに置き換わっているんだから。


 両親は他界。親族も互いを全く知らないくらい遠い存在だけよ。

 友人達は元となった彼とジョーヌ様との繋がりに気付く筈もないし、フランスに来るのは観光程度なら何も問題なんて起こりようがないわ。

 もしも何か起こっても私が消火するから気にしないでね】


【そうですか……すみません】


【どうして謝ってるのかしら神様♪

 それじゃあチーズ作りを見学して、街の中心部の高校を見たら、リヨンの大学に行くわよ♪】


【あっ、はいっ!】


グッと引っ張られてジョーヌは慌てて飛んだ。



―・―*―・―



「またソラってば行方不明なんだからぁ」


茶畑・嶋崎に礼を言って出、遠回りだがサイオンジ公園に寄ってから帰宅した響は、ベッドにポスッとダイブした。


「図書館とか?

 ホント、ユーレイって自由よねっ」



―・―*―・―



 そのソラは、響が気を揉み、オフォクスが動き、彩桜が身代わりになったなどとは知らず、彩桜の部屋で歴史書を読んでいた。


「ソラ兄♪ ソレどこの歴史?」


「フランスのアルザス・ロレーヌ地方。

 国境に絡む戦争ばかりなんだけどね。

 現地のユーレイと話したいなぁ。

 彩桜クンは?」


「正史三國志♪」


「それってツラツラ並んでる年表みたいなのだよね? って原文!?」


「うんっ♪」


「読めるんだ……」


「うんっ♪ ソラ兄も読む?」


「読めるようになるからね。負けないよ」


「ソラ兄シッポおっきいから、すぐだよ♪」


「え? シッポ?」


「うんっ♪ 魂の中に~、お稲荷様♪」


「何 言ってるの?」


「ホントだからぁ」


「彩桜クンには?」ミュム様から聞いたけど。


「ドラグーナ様って龍神様♪

 時々お話しもするんだよ♪」


「目覚めたんだ……」「ん?」「なんでもっ」


〖彩桜、ソラの神様が自然に目覚める迄、呼び掛けてあげてね。

 オフォクスとトリノクスの父様でガイアルフ様だよ〗

【うんっ♪ だから握手したよね♪】

〖そうだったね〗くすっ♪


「あのね、ガイアルフ様だって♪

 ガイアルフ様~♪ 起・き・て~♪」


「ボクの神様、寝てるの?」


「うん。

 だからソラ兄も呼び掛けてあげてね?」


「うん。そうするよ。

 ガイアルフ様ね、うん。

 でも……中に居るの?

 彩桜クンが龍神様じゃないの?」


「違うよ~。

 ドラグーナ様が戦う時は俺、中に取り込まれちゃうもん。

 前は眠っちゃってたけど、こないだは起きてられたんだ♪

 気を高めて支えられたんだよ♪


 えっとね、キツネ様から聞いたんだけどね、前は神様の魂を人の身体に そのまま入れてたんだって。

 でも悪い神様が変えたんだって。

 神様を分割して、人の魂の中に入れてオニギリみたくしてから、人とか動物とかの身体に入れるよぉになったんだって。

 ソレ最近やっと分かったんだって~」


「そうなんだ……だからボクにも入っているんだね?」


「うんっ♪」


「サイオンジにも?」


「祓い屋さん、み~んな入ってる~♪」


「そう、なんだ……」







ジョーヌの戸籍取得も動き始めました。

というか、ほぼ終わってそうですけどね。



何も知らないソラは彩桜と仲良く歴史書を読んでいます。


カケルを目覚めさせようと手を繋いだ事でガイアルフは目覚めかけています。

ソラが知った事で加速しそうですね。



人世生物魂の中に込められた獣神魂。

『堕神』と呼ばれる初回のものも、丸ごとだったり分割されていたりで、『欠片持ち』と大差ない場合も多かったりします。

なので降臨神達は輝竜兄弟やサイオンジには全て同様に『欠片持ち』として説明しています。



『邦和名』は『ほうわな』でも『ほうわめい』でも構いません。

地星では、アルファベット語圏でない国は、その国での名前も持てるようになっています。

邦和国や漢中国などが採り入れていて、邦和なら邦和系人が多く得ています。



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