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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団外伝  作者: みや凜
第三部 第2章 人として生きるには
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神とユーレイに戸籍を



 瑠璃とジョーヌが茶畑(さたけ)探偵事務所がある階でエレベーターを降りると、

「瑠璃さん、どうぞ~♪」

嶋崎がドアを開けて待ってくれていた。


「突然すみません」


「丁度お父様もいらしてるんですよ♪」


「は?」

首を傾げつつ入ると、困り顔の稲荷(オフォクス)と笑顔の女子高生達がソファーに並んでいた。


【何故?】

【絡まれて困っておる。助けてくれ】

【はぁ……】


「稲荷さんの娘さん?」

「すっごい美人~♪」

「祓い屋さんですか?♪」

女子高生達は嬉しそうだ。


「瑠璃さんは響ちゃん、知ってます?」

「響ちゃんのお弟子さんらしいのよ~」

茶畑と嶋崎が助けを求める視線を向けた。


紗桜(さくら)さんは存じております」


「進学――の方向性? の相談なの」

「祓い屋をするのに適した学部は? って~」


「「「オススメありますか?♪」」」


「茶畑殿と同じ方向は?」


「法学は厳しいのよねぇ」「そうねぇ」

「その方面を仕事にするのは、ねぇ?」

「法学部を出るだけならいいけどねぇ」

うんうんと頷き合う。


「厳しくてもいいんです。

 それが祓い屋さん達にとって必要な職なら頑張っていきたいんです」


「それじゃあ、学部の事とか、どんな職に就けるのかだけは話してあげるわね。

 (てる)、瑠璃さんの方、お願いね?」

茶畑は女子高生達の向かいに腰掛けた。


「それじゃあ輝竜先生は此方に」

嶋崎がパーティションで仕切っている場所に入った。


「儂も――」

立ち上がったが着物の袖を掴まれてしまった。

「大学の説明だ。

 儂が聞いても仕方なかろう?」


「稲荷さん、また会えますよね?」


「今後は此処の二人を頼れ」


「ええ~っ」


「必要と感じたならば儂の弟子や娘を向かわせる」


「お父さんの代わり、してほしかったな……」


「儂ならば父ではなく祖父であろう?

 娘にも頼んでおく。離してくれ」


「また会ってくださいねっ♪」離さない♪


「……困ったものだな。

 金輪際とは言わぬが、約束も出来ぬ。

 そろそろ離してくれ」


「ん~~」不満アリアリ。


「あ~、資料が私の部屋だわ~。

 隣なんだけど行かない?

 エクレアも作ったのよね~」

茶畑が助け船を出す。


「行きます!」

(ゆい)も行こうよ。ね?」


「仕方ないなぁ」とうとう離した。


〈恩に着る〉

パーティションの向こうに逃げた。



―◦―



 静かになってホッとして、事情を説明していると呼び鈴が鳴った。


「立て続けなんて珍しいわね。

 少し失礼します」玄関へ。



【今度は響か……】【そうですね】ふふっ。

【あ、彼女が響さんなんですね。

 御札の祓い屋さんですよね?】【そうだ】



―◦―



(てる)ちゃん助けてっ! 考えてっ!」


「どうしたの? そんなに慌てて」


「間に合わないのっ!」


「今、(かおる)は別件だから、、とりあえずこっちに座ってね?」

話しながら女子高生達が居た所を片付けた。

グラスを乗せたトレーを運びながら

「話し始めていいわよ」

振り返ってウインクした。


「えっと、大学院!

 私はユーレイなソラと一緒に勉強できたらって思ってただけなんだけど、ソラは生き人として、ちゃんと受験して入るつもりでっ」


「もしかして、また戸籍?」


「え? また?」


アイスティのグラスを運んで戻った。

「パーティションの向こうで一緒にどう?」


嶋崎はトレーを持ったままパーティションへ。


「待って!」

追い掛けてパーティションの隙間から覗いた。

「キツネ様と輝竜先生!?」


「父娘でいらっしゃったのよ♪

 それで、その向こうの青年も戸籍を必要としてるの。

 響チャンは大急ぎなのね?」


「もう願書の締め切りが……」唇を噛む。


「留学生としてでは?」

桃華(タオファ)が泣くのを見たのがトラウマ的で、女の子に泣かれたくないオフォクスだった。


「何でもいいです! どこの国でも!

 キツネ様、お願いします!」


「ふむ……ならば奴を使うとするか。

 しかし、それでも厄介ではあるな。

 暎、ショーとは繋がっておるか?」


「東京の元締のショーちゃんですか?」


「然うだ。煌麗山(コウレイザン)大学だからな。

 優秀な祓い屋の青年を留学生として大学院に引き込む手筈を整えてくれ。

 儂は動き始めるのでな」


「はい♪ お任せください♪」


「瑠璃。今夜、彩桜を借りる」


「伝えておきます」


「ジョーヌは明日だ。動くのは夜。

 婚約者には出掛けると伝えておけ」


「ありがとうございます!」


オフォクスは、やれやれと肩を(すく)めると

「次代の為だ」

呟いて消えた。



「響チャン、大船に乗っちゃたわね♪

 ちょっと電話するから、お茶しててね♪」

デスクの方へ。



「輝竜先生、キツネ様の……?」


「娘、という事にしておいてくれ。

 両親は、この街で元気に暮らしているのでな」


「あ、、はい……」


「この言葉で納得は無理だろうな。

 キツネ様は私にとって実の父同然の師だ。

 つまり互いに父、娘だと思っている」


「そうなんですね♪

 ジョーヌさんはユーレイなんですか?

 ちょっと違うような気が……」


「ふむ……ま、よいか。

 既にエィムやミュムと友となっているから話すが、他言せぬようにな?」


「はい」大きく頷く。

「あれ? でも神様を呼び捨て?」


「紗桜さんもエィムを呼び捨てでは?」


「あ、そ~でしたぁ。

 じゃあ輝竜先生もエィム達と友達なんですね♪」


「そうだ。そしてジョーヌも神だ。

 人として暮らし、人と結婚したいと望んでいる。

 そんな神を私は雇った。

 次にショウを連れて来たならば受付窓口に居るだろう」


「素敵ですね♪」キラキラ☆


「そうだな。愛だ」

「あっ、えっと~」『響チャ~ン!』


「は~い!」


『響ちゃんをスカウトした先生は何方(どなた)?』


御榊(みさかき)教授で~す♪」


『ありがと♪』再び声を落とした。


「どんな話になってるんだろ……?」


「良い話になっている。

 近道が出来上がろうとしている。

 これからのユーレイにとっても、神にとっても良い流れだ」


「「はい♪」」



―・―*―・―



 その日の仕事を終えて帰路に着いたジョーヌは遠くに心咲を見つけた。


〈心咲♪〉〈あ♪ ジョーヌ♪〉


互いに駆け寄る。


「ただいま、心咲♪」

「お帰りなさい、ジョーヌ♪」

まだ帰り着いていないのに、と笑い合う。


「でも、どうして こっちに?」


「スーパーに行こうと思って」


「晩ご飯、楽しみ♪ あ……」


「ん?」


「心咲のお母さん来てるよ。料理してる」


「またぁ!?」


「そんな言わないの。帰ろ♪

 僕、またキィちゃんするね♪」


「楽しんじゃってるの?」


「まぁね♪」




 玄関ドアを閉めると同時にジョーヌはフェレットになった。


「ただいま~」


「お帰り~♪ 心咲、聞いてよ~♪」

お玉を持ったまま走って来た。


「なんか汁 垂れてる!」あはっ♪


「あら、置いてくるわ♪」くるっ♪



 キィちゃんをケージに入れた心咲は母を追った。

「ね、料理 教えて?」


「ならば一子相伝の秘伝、母の味を教えてしんぜよう~♪」


「お母さんたら~♪」あははっ♪


「ね、昨日も今日もキィちゃんと一緒に帰ってきたわよねぇ?」


「うん。預けてるから」


「へ? 預けるって、どこに?」


「輝竜先生のお家。

 キィちゃん よく脱走するから事故とかに遭わないようにね」


「だから『いつも診て』いるのねぇ。

 それじゃあキィちゃんをダシにはできないわねぇ……」


「何を言ってるの?

 ダシって……?」鍋を見る。


「その出汁(ダシ)じゃないわよぉ。

 キィちゃん食べる気?

 そうじゃなくて、ジョーヌ君が働いてる動物病院にお礼に伺おうと思ってるのよ」


「どうして そこまで お母さんが?」


「今日ね、ジョーヌ君と先生がウチにいらしたのよ♪」


「な、なんでっ?」


「たぶんね、収入面で私とお父さんが心配してると思ったんでしょうね。

 それで、たぶん応診の途中で寄り道してくれたんだと思うの。

 お父さんが居る筈のない時間だったから。

 ちょうど私、買い物から帰っててね♪

 ジョーヌ君の向こうに居るの心咲だと思って走ったら違ってたのよ~♪」


「ってことは瑠璃先生? 女医さんね?」


「そうなの♪ 美人の先生♪

 ん? わざわざ女医さんって確認?」


「あの病院、ご夫婦でしてるのよ」


「へぇ~♪ 男先生もハンサム?♪」


「うん。とってもイケメン」


「美男美女のご夫婦♪ 素敵ね~♪」


「で? 話 途中なんだけど?

 それに料理は説明せずに、どんどん進んでるんだけど?」


「技は見て覚えよ~♪」「あのねぇ」


「ま、料理は これから ゆっくり じっくり教えてあげるわね♪」


「うん。お願いします」


「はいはい♪

 でね、ここからが大事なの。よく聞いてね?

 その先生、心咲を助けてくださった あのカッコイイお嬢さんだったのよ♪」


「えっ……ええっ!?」


「お母さんも、もうビックリ!

 まぁ心咲は泣きじゃくってたし、何も見聞きしてなかったでしょうけどね。

 二十歳くらいのお嬢さんが心咲をお姫様抱っこして運んでくれたのよ。

 随分と後で転んだとか言ってたけど、服もキレイなもので擦り傷も打撲や捻挫も何もなかったのよ?

 塾カバンは朝、玄関先で見つけたの。

 きっと拾い集めて、キレイにして返してくれたんでしょうね。

 だから絶対 忘れちゃいけないと思って脳裏にシッカリ焼き付けてたのよ♪」


「だから担当は青生先生だったんだ……」


「あら心咲、男の人 大丈夫なの?」


「うん……青生先生だけね。

 なんかね、動物の神様みたいなのよ。

 人じゃないから大丈夫なの。

 大丈夫なのはジョーヌとお父さんと青生先生だけ。

 他は会社の人達とも目も合わせられないの。

 だからね……今の会社辞めて、動物病院で働きたいってお願いしちゃった♪

 会社には今日、退職願い出しちゃった♪」


「あらあらまぁ……でも、そんな笑顔で宣言されたら反対なんてできないわね。

 シッカリ頑張りなさいな♪」


「うん♪」


「それじゃあ益々お礼に行かなきゃね~♪

 何を持って行きましょ~ねぇ?」


「そういうの受け取らないって貼り紙してたよ?」


「あらぁ~、困ったわねぇ」


「貼り紙と言えばなんだけど、

『譲ります』な動物の写真も並んでたよ。

 里親になるのがイチバン喜んでもらえるんじゃないかなぁ?」


「それイイわねっ♪

 お父さんが定年退職したら毎朝 一緒に散歩しようって計画してるのよ♪

 だから犬を飼おうかって話してたのよね♪

 タダで貰えるのね~♪」


「そこなの!? もうっ」


「冗談に決まってるでしょ♪

 それじゃあ お父さんと話して早く行かないとね~♪」


〈ね、ジョーヌみたいなフェレットって譲りますコーナーにいない?〉


〈居なかったと思うよ?〉


〈そっか~、キィちゃんの代わりにしようかと思ったのになぁ〉


〈必要ないよ。僕がキィちゃんもするから♪〉


〈だって一緒には――〉〈大丈夫だよ♪〉


ずっと聞いていたジョーヌは、くすくすと笑い続けていた。







なんだかすっかり面倒見の良いオジサンになっているオフォクス様です。

桃華(タオファ)の涙の影響は、結に絡まれ、響の頼みを引き受けるに至りました。



瑠璃の生みの両親は既に他界しています。

同じ街で元気に暮らしているのは瑠璃を育てた両親です。


稲荷(オフォクス)瑠璃(ラピスリ)の父神ですが、茶畑と嶋崎がそんな事を知っている筈がありませんので、稲荷がそう自己紹介したんでしょうね。



青生がキィちゃんの担当医なのは脱走したキィちゃんを拾ったからで、心咲の過去とは無関係です。



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