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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団外伝  作者: みや凜
第三部 第2章 人として生きるには
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心咲を助けた女性



 次の日、心咲(みさき)は晴れやかな笑顔で自分の職場に出勤した。


 午前の診療が終わり、事務処理の時間になってすぐにジョーヌは瑠璃に呼ばれた。

 処置室に行くとサイオンジが待っており、目覚ましく復活したフィアラグーナに記憶を見せる続きをした。


〖ジョーヌ、ありがとな。

 さて、ここからはジョーヌを預かるより ずっと前の話だ。

 フェネギが持って来てくれた尾の欠片に入ってた予備の記憶だ♪

 ある程度はクウダームの記憶にも入ってるだろうからジョーヌも聞いとけ。


 確かにクウダームはアミュラ様を探していた。

 アミュラ様から『ピュアリラ』を継いだ龍狐神や子孫も含めてな。

 そもそも友と成ったのは俺達が龍と狐だったからだ。

 ガイアルフと一緒に岩壁の上で修行を楽しんでいたら現れて、イキナリ『ピュアリラ様の御子孫様でいらっしゃいますか?』と言いやがったんだ♪

 他にもカイダームという双子の兄と、ザブダクルという主を捜していたな。

 そっちも、子孫とかも含めてな〗


【カイダーム様は小さな欠片で見つかり、今は月で再誕を目指しているものと考えております。

 ザブダクルは死司最高司ナターダグラルとして生きており、神世の滅亡を目論んでいるようです。

 ピュアリラ様、アミュラ様についてご存知の事をお教え頂けますか?】


〖相変わらずラピスラズリは堅っ苦しいなぁ。

 月の話はチラッと前にも言ってたよな?

 記憶の不安定さが甚だしかった頃だったから、今 聞けてストンと収まったがな♪


 初代ピュアリラ様は神世の崩壊を命を賭して防いだそうだ。

 で、娘のアミュラ様にピュアリラを継いだ。

 2代目ピュアリラ様が崩壊を免れた神世の地を人神のと獣神のとに分けたんだ。

 間は雲海(うみ)で埋めてな。


 分けた理由か?

 崩壊寸前に至らしめたのが人神だったからだよ。

 次は半分崩壊しても半分は残るようにな♪

 その後アミュラ様は暫くは人神の地に住んでいたらしい。が、消息を絶つ。

 で、クウダームが王の執事をしていた頃に老婆神として現れたそうだ。

 まだ王子だったザブダクル、シャルダクル兄弟を何度も助けたらしい。


 一度は父から王を継いだザブダクルだが、その父で前王のオーロザウラに追い出され、追手を放たれて逃げ回っていたらしい。

 カイダーム、クウダーム兄弟は王に返り咲いたオーロザウラではなく、王はザブダクルだと国を捨て、ザブダクルを護ろうとした。

 だがザブダクルは兄弟の言葉を信じず、拒絶したそうだ。

 ザブダクルの妃ルサンティーナはオーロザウラの妃にされ、支配を受けて手足とされていた。

 どうやら その支配をアミュラ様が解いたらしく、オーロザウラに反旗を翻したルサンティーナにアミュラ様が付き添っていたそうだ。


 クウダームがアミュラ様を最後に見たのは、ザブダクルを追い詰めたオーロザウラをルサンティーナが雷で串刺しにして消えたところだったと言っていた。

 アミュラ様はルサンティーナを追った。

 以降、アミュラ様もルサンティーナもオーロザウラも見ていないそうだ。

 ザブダクルの方は、その後、初代四獣神に囲まれていたところまでは見たそうだ〗


 ラピスリはフィアラグーナの話を聞きつつ、以前マディアから貰ったザブダクルの睡夢を繋ぎ直していた。


【これで合っているでしょうか?】

サイオンジ、ジョーヌと手を繋いで流した。

【マディアの首輪に伝わったザブダクルの睡夢です】


〖ふむ……この順番で合っていそうだな〗


【クウダーム様は何処を探そうとしていたのですか?】


〖神世の全てを、だ。

 岩壁の上や中、古の人神の地――はカナリ難しくて、ほんの少しらいしがな。

 上下の空、獣神の地の地下で下空までの部分、そんな全てだ。

 俺達も面白そうだから加わった。

 で、友と成った♪〗


【ザブダクルは善王だったのですね?】


〖そうらしい。

 だが全てを奪われて追い掛け回され、何度も滅されかけて変わったのかもな〗


【どういった風の吹き回しか、何かを企んでなのか、獣神狩りを終わらせたそうです】


〖ふむ……マディアを従えているんだろ?〗


【はい】


〖マディアと友に成りたいのでは?♪〗


【孤独からの脱却、か……ふむ】


〖おいおい、冗談を()に受けるなよなぁ。

 何を企んでやがるのやらだから気を抜くなよ?〗


【【はい】!】


〖あ~、喋った喋った♪ 俺は寝るぞ♪〗


【はい、お休みなさいませ】

【あっ、お祖父様お休みなさい!】〖おう♪〗



―◦―



 サイオンジが帰った後――


「瑠璃先生。少し、いいですか?」


「ん?」


「僕、昨日 心咲さんのご両親に会いました。

 婚約者として認めていただけたんです。

 今後の生活、大丈夫だと……その……雇い主として……」


「ふむ。外国人という設定なのだな?」


「はい。成り行きでフランス人です」


「ま、ご両親も不安だろうな。

 そのくらいなら言ってやろう」


「ありがとうございます♪」

手を取って瞬移♪




――心咲の家の前。


「この家……」「あら、ジョーヌ君♪」

買い物帰りらしい心咲の母が駆けて来た。


「あら? 心咲じゃなくて……ええっ!?

 あの時の! 心咲を助けてくださった!」


「やっぱり~♪」にこにこ♪


(はか)ったな、ジョーヌ】

【何の事でしょう?♪】


「お父さんはまだ帰らないわよねぇ。

 どうしましょ~」


「僕の雇い主、動物病院の輝竜先生デス♪」


「あら、そうなのね~♪

 それなら日を改めて伺えるわね♪」


「ジョーヌ君の生活は保証しますとお伝えしに参りました次第ですので、そのようなお気遣いは……とうに時効です」


「大切な娘の命を助けていただいたことに時効なんてありませんよ。

 助けていただけなければ娘は……どこかの遠い国に売られていたんですから。

 でもね、その組織♪

 翌日に一網打尽にされたそうなの♪

 良かったわ~♪」


【ラピスリ姉様、もしかして、それも?】

【放っておけるものか】【ですよねっ♪】


「とにかく伺いますからね♪

 キィちゃんの健康診断も一緒にお願いしようかしら~♪」


【死んだ事は?】

【ついフェレットになってしまって~】

【ふむ。存命となっているのだな?】

【はい】


「キィちゃんでしたら、いつも診ております。

 診察の合間ですので私は これにて」

サッと礼をして去った。


「あっ、瑠璃先生、待って!

 それでは、また参りマスっ」ペコリ!

ジョーヌは心咲の母から逃げるように走り去った。



「あの声、話し方♪

 颯爽としたカッコ良さ♪

 それに素敵に美人よね~♪

 あの時のままねっ♪

 あ♪ 今日も心咲のマンションに行っちゃいましょ♪」


心咲の母は大喜びスキップで家に入った。



―◦―



【ラピスリ姉様っ、待ってください!

 怒らないでっ!】


【怒ってはおらぬが?】スッスッスッ――


【だったら どうしてっ?】速っ!


心咲の実家を後にした瑠璃は普通に歩いているように見えるが、とんでもなく速かった。


【彩桜が見えた。

 学校から家までの道とは、かなり離れている】


【声、掛けたら?】瞬移して追い付いた。


【やはり彩桜だな】【彩桜くんも速っ!】

【普通だが?】【とんでもないデスッ!】


瑠璃が吹き出した。

「その話し方っ」はははっ♪


「あ……つい……」赤くなる~。


その間にも どんどん近付く。「彩桜」


「あ♪ 瑠璃姉とジョーヌ師匠~♪」


「何故、此処に?」


「徹君のお家、教えてもらったの~♪

 瑠璃姉、野良ちゃんの回診?」


「そうだ。古屋君は?」


「後で自転車で来る~♪

 その前に店番の準備するの~♪

 ソラ兄も来るから~♪

 それじゃ、夜に瞑想しに行くねっ♪

 ヒトいな~いない♪ ヨシ♪」瞬移♪



「すっかり……使い(こな)して、るんですね」


「ジョーヌは身体を鍛えるべきだな」フッ。


「が、頑張り、マスッ」まだ具現化体 練習中。


また瑠璃が吹き出す。


「あ……」


「ま、外国人の振りを続けねばならぬのだから慣れておくべきだな」


「それ、なんですけど……」


「どうした?」


「心咲さんと結婚するには、、その、人として、きちんと結婚するには、どうすればいいんでしょう?

 えっと、戸籍とか……瑠璃先生や僕の姉様は、どうしてるんですか?」


「私も静香殿も胎児から人を始めたのでな。

 人の両親の子として戸籍は得た」


「そうですか……」


「相談してみるとしよう」連れて瞬移。



――「え?」誰に? それに何処!?


「知り合いの弁護士だ」マンションに入る。


「って!?」急に曲がらないでっ!


茶畑(さたけ)殿、今よろしいか?〉


〈あら輝竜先生♪ どうぞ~♪〉


エレベーターを待つ間に声を掛け、茶畑探偵事務所に向かった。







心咲(みさき)に龍でも受け入れてもらえてホッとしていたジョーヌですが、人として結婚するには? と、まだまだ悩みが尽きないようです。


オニキスとサリーフレラのように他人とは関わらずに人をするのならともかく、人と結婚して、人と接する仕事をするのは……どう考えても大変そうです。

中渡音(なかとね)市は地方都市ですので運転免許なんてのも必要でしょうしね。



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