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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団外伝  作者: みや凜
第三部 第2章 人として生きるには
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心咲のトラウマ



 ジョーヌは受け入れてもらえた嬉しさを隠す事なく、笑顔で心咲を抱き上げると上空へと瞬移して、背に乗せると同時に自然な大きさに戻した。


「ジョーヌって大きいのね♪」


「龍としては小柄で、細長いって よく言われるんだ」


「もしかしてコンプレックス?

 龍の国でイジメられたの?

 そんな国には戻らないでね♪」


「イジメられてなんかないよ」あははっ♪


「じゃあ……いつかは帰っちゃうの?」


「帰るけど――」「ダメッ!」


「友達とか従兄弟達に僕の……その頃は僕の妻かな? を自慢したいんだけど?」


「妻……」ぽっ♡


「嫌?」「じゃないっ!」


「うん♪ 行こうね♪」「うん♪」


「その為に……仲間達も一緒に空の上の国に戻れるように……僕は戦わないといけないんだ」


「戦う? ジョーヌが?」


「うん。順を追って話すね?」


「うん……」


「空の上には、地上の人には見えない国があるんだ。

 龍だけじゃなくて、人も、いろんな獣も、地上には居ない鳳凰とかも居るんだ。


 少し前から悪者が空の国を支配してしまったんだ。

 国を動かす人達を操って好き勝手して。

 龍みたいに大きくて強くて、攻め込まれたら怖い獣は戦力にならないような動物にして記憶も力も封じて落としてしまうんだ。

 僕はフェレットだったけど、犬とか猫とか、もっと小さな動物にもされているんだよ。

 だから……みんなで帰る為に、龍に戻れた僕は戦わないといけないんだ。

 帰る為だけじゃなくて、この地に悪者が来ないようにもね」


「戦う理由は解ったけど……ジョーヌは戦うとか似合わないと思うの。

 とっても優しいから」


「ありがと。

 でも悪者が来てしまったら大変だから。

 心咲さんを護りたいから。

 僕は戦いたいんだ。

 だから……その指輪の使い方を教えるね。

 部屋に戻ろうね」


街の上をゆっくり1周して、ちょうどマンションの上に戻っていたので、少し降下した。


「このまま屋上とか?」


「ううん。こうするんだよ」瞬移。



――室内に戻ったと同時に人姿になって心咲を横抱きにした。


「一緒に ただいま♪」ストッ。


「ジョーヌ……スゴい……カッコイイ♡」


「えっと……ありがと」真っ赤っか~。


「それにカワイイ♡」ぎゅっ♡


「ええっと……さっきの続き……」


「これも戦う為だったのね……」


「ちょっと違う」

〈ずっと心咲さんを感じていたいから〉

「って……嫌かな?」


〈きゃあ~~っ♡〉


〈あ……説明してないのに使えてる……?〉


「ええっ!?」「あれ?」


「こっ、こっ、心の歓喜がっ」焦っ!


「大丈夫だよ。だだ漏れにはならないから。

 伝えたい時だけ想いに言葉を乗せるんだよ。

 さっきのは偶然だと思う」


「ええっと……」


「声に出さずに心の中だけで僕に話し掛けてみて?

 その『石』が僕に伝えてくれるから」


「こ、、」〈こう、かな?〉


〈もっと聞きたいな♪〉


〈これで、いいのかな?〉〈そうそう♪〉


〈何を話したらいいの?〉〈何でも♪〉


〈ジョーヌ?〉〈ん?〉


〈ジョーヌって、この話し方の方が元気で楽しそうね♪〉


〈そう? なのかなぁ……〉う~ん……。


〈ね♪ 私に『さん』付けないで呼んで?♪〉


「えっ?」


〈言葉は崩してくれたのに、ずっと付いたままなんだもん。

 私達、今日、私の両親に認めてもらって婚約したのよね?

 よそよそしいのは嫌よ〉


ジョーヌは照れながらも心咲と目を合わせ、決心したと頷いた。


「心咲……」じんわり じんわり――


「ジョーヌ♡」ほっぺにチュッ♡


「あ……」――真っ赤っかっか~!



「戦いに行くのは止められないみたいだから仕方ないけど……帰ってきてね」


「僕が帰りたいから必ず心咲の所に帰ってくるよ」


【お~いジョーヌ~】【あっ、はい!】

【邪魔して悪ぃが1つだけな】【はい】

【獣神狩りは終わったぞ♪】【えっ?】

【昨日な、その話で集まったんだよ♪】

【それじゃあ――】

【ま、第一歩だ♪ 巡視は頼むが、もうそんなに呼ばねぇよ♪】

【そうですか♪ あ、今日は?】

【祝宴してただけだよっ♪】

【そうですか♪ 良かった……】

【そんじゃあなっ♪】【はい♪】


「ジョーヌ?」


「従兄から、一歩前進したと連絡が入ったんだ。戦いに行くのは減るかも」


「良かった~♪ ん? イトコ?」


「僕、従兄弟姉妹(イトコ)が多いんだ。

 空の国にも地上にも居るんだよ。

 あ、姉も地上に居るよ。人してる。

 心咲も会った事あるよ♪」


「いつ!? どこで!?」


「何度か輝竜さん家のお庭で♪

 僕を迎えに来た時♪」「えええっ!?」


「大丈夫だよ。普通に挨拶してたし。

 青生先生のご兄弟にも♪」


「ご兄弟?

 青生先生と藤慈さんじゃ――あ、男の子も居たわよね……」


「七人兄弟なんだよ♪ 他にも会ってる♪」


「ええっ、皆さん青生先生だと思ってたぁ」


「休憩時間に やっと藤慈さんに気づいて驚いてたもんね♪」


「だってソックリなんだもん。

 眼鏡 外したら区別なんて無理よぉ」


「他のご兄弟もソックリなんだ♪

 彩桜くんも、もう何年かしたら区別できなくなると思うよ」


「ソックリなんだ……私だけが区別できないんじゃないのね?」


「うん。心咲だけじゃないよ。

 そんな目をしなくても大丈夫だよ。

 揶揄うような言い方して ごめんね。

 トラウマ、、だったね」


「うん……大丈夫。

 青生先生と話すまでは大人の男の人って、お父さんと その他で、顔なんて同じにしか見えなかったの。

 それが、お父さんと青生先生と その他になって……ジョーヌとお父さんと青生先生と その他になったの」


「ごめんね」抱き締めて頭を撫でた。


「あの時も……知らないお姉さんがこうしてくれたわ……助けてくれて……」


「辛かったら話さなくていいよ?」


「ううん。出してしまいたい」


「それじゃあ、もう遅いし、横になろう」

照れ混じりに微笑んだ。


「……うん」


「安心して眠れるまで聞くからね」


「うん」


 横抱きにしたままだったので、そのままベッドに運んで横になり、向き合って包み込むように優しく抱きしめた。



―◦―



 ジョーヌは思い出そうとしている心咲を静かに見守っていた。


「ジョーヌ?」


「ん?」


「寝ちゃったのかと思った……」


「待ってただけだよ」


「それじゃあ話すわね。

 中学受験の為の夏期講習で、その日は特別授業にも参加したから遅くなったの。

 途中までは友達と一緒だったんだけど、私だけになって、すぐに足音が聞こえたの。

 なんとなく怖くなって駆け足になったら後ろの足音も走って来て。

 助けを呼ばないと、って思っても声も出なくて、後ろも見れなくて、ただ必死に走ってたの。

 たいした距離じゃなかった筈なのにとてもとても遠くて。

 何度も躓いて、とうとう転んでしまって、追いつかれて腕を掴まれたの。

『来いよ』って耳元で聞こえたの。

 終わった、って目をギュッと閉じたら、怖い手が離れて……足音が去って行ったの。

 足音が いっぱい響いて……それも怖かった。


 だから動けずに、そのまま踞ってたら『怖かったな。だがもう大丈夫だ』って起こして支えてくれて、さっきのジョーヌみたいにギュッてして撫でてくれたの。

 それでも私、動けなくて。

 お姉さんが抱き上げてくれて……家まで運んでくれたの。

 とっても優しい手だった。

 私が覚えてるのは、あったかくて優しい手と、ちょっと低くてカッコイイ声だけ。

 両親にも名乗らなかったって。

 だから、お礼も言えてないの」


「その女の人、犯人を捕まえてくれたんじゃない?

 だから足音が複数で響いて、少しして戻って来て起こしてくれたんじゃないのかな?

 でも、警察でも名乗ってなさそうだよね」


「両親に聞いてみるわ。なんか私……乗り越えられそうな気がする。

 だから、ちゃんとお礼を言いたい」


「うん。探してみよう。

 心咲、家までは道を教えられたの?」


「えっ……何も話せなかったけど……」


「だろうね。うん。

 それなら、家まで送れるくらい心咲を知ってる ご近所さんだろうから、きっと すぐに見つかるよ。

 だからもう安心して。おやすみね」







ジョーヌは神だとは話しませんでした。

ですが隠したと言うよりも、心咲の性格を考えて伏せたのではないでしょうか。


心咲を助けた女性。

もうお分かりですよね。



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