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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団外伝  作者: みや凜
第三部 第2章 人として生きるには
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龍鱗の婚約指輪



 エィムは笑っている弟妹に、まぁいいかと苦笑を向けた。


「で、お願いしていい?」


「「ローズ♪」」


「ええ。

 ピュアリラ様を信奉している人神は、けっこう多いの。

 でも隠れ信奉なの。

 王様以外の神様を信奉してはならないから。


 小さな手鏡に朝夕の光を当てて、そっと祈りを捧げるの。

 遥か昔、神世をお救いくださって、善良な人神をお救いくださった獣神様に感謝を込めて。

 だからピュアリラ様を忘れていない人神は修行もしているのよ。

 獣神様を嫌うなんて有り得ないの。

 獣神狩りには皆様、涙を流していたわ。


 あ、年に数回、地下で下空との境にある隠し祠に集まるのよ。

 一番大きな礼拝神殿には、とっても大きなピュアリラ様の像があるの。

 もっと熱心な方々は毎日その礼拝神殿に(かよ)っているそうなの。

 とっても遠いのに。


 修行をしているから職神にも多い筈なのに。

 祠で見知った方もいらっしゃるのに……どうしてだか何方も、その記憶がないみたいなお顔で……」


「それは敵神の支配を受けて、記憶を封じられて操られているかららしいよ。

 修行して神力を高めていて徳が高い程、別神(べつじん)みたいに愚かにさてれいるらしい。

 神力を抜かれているとも聞いたよ」


「そうなのね……」


「でも、オフォクス様やラピスリ姉様が支配を解いていってるから、解けた方々はオフォクス様のお社で修行してるんだ。

 記憶も少しずつ戻ってるらしいよ」


「早く前みたいに皆様と祈りを捧げたいわ。

 ピュアリラ様がお救いくださらなければ人神は絶えてしまっているんですもの」


「最果ての向こうに在った人神の地が灼熱と化して、獣神の地だった今の神世に移動して来た時、ピュアリラ様は?」


「えっ? 最果ての向こう? 人神の地?」


「最初の崩壊を防いだ後、ピュアリラ様は神世の地を2つに分けて、間を雲海(うみ)で埋めたんだよね?」


「救ったとしか……分けたとか雲海が間にあったとか、知らないわ」


「そう……その、二度目の崩壊を当時の四獣神様が救ったそうなんだ。

 灼熱の地を風雪で鎮めて、干上がった雲海だった場所に高くて分厚い岩壁を成して封じたらしいんだ。

 その頃に、ピュアリラ様らしいアミュラ様って龍狐の女神様がいらしたみたいなんだ。

 僕は、そのアミュラ様も四獣神様を手伝ったと思ってるんだ」


「私が知っているアミュラ様は、ピュアリラ様の娘神様で、ピュアリラ様を継いだのよ?

 ピュアリラ様は神世の崩壊を防いだけど力尽きて消えてしまったの。

 だから復興の頃は、アミュラ様のピュアリラ様なの。

 そう教わったわ」


「最初の崩壊から、二度目までが30億年くらい……二度目の頃のアミュラ様は再誕なのか、何代目かなのか……か」


「今はピュアリラ様いないの?」

「継いだり再誕したりなら今も居そうだよね?」

ポポムとテイムがアクアローズとエィムをキョロキョロと見る。


「両親なら何か知ってるかもだけど……」


「いらっしゃるとすれば……古の人神の地としか思えないな。

 今、神世と言われている囲みの内なんかには、いらっしゃらないと思う。

 地じゃなくて、向こう側の下空かもしれないけどね」


「そっか。雲地って職域とその周りだけとは限らないんだね?」


「神世の地が球体なんだから、雲地も たぶんね」


「最果ての壁の延長な見えない壁が下空にもあるのかしら……?」


「それだ! きっと そうなんだ……。

 だとすれば……うん。行ける筈だな」


「ひとりで納得ぅ~」「エィムだもんね」


「人世の空を飛んで、僕が配属された島国の真反対から下空に行けばいいと思っただけだよ。


 アクアローズさん、ありがとう。

 アミュラ様がピュアリラ様の娘神様だったとか、ピュアリラ様を信奉している人神様が多いとか、大収穫だったよ」


「「エィムがお礼 言ってる~♪」」「あのね」


「四獣神様信奉も多いのよ?

 皆様のお父様を信奉してるの。

 人神を禍からお護りくださっていたって水面下で拡がって。

 ピュアリラ様もドラグーナ様も、って方も多いの。

 私の両親も そうだから、テイムのこと本当に大歓迎なのよ」


「ホント!?」

「でも父様なら~♪ 信奉されるのも~♪」

「うん。有り得そうだよね」



―◦―



 人世に戻ったエィムは、その記憶をラピスリに流した。


【ありがとうエィム。

 私も観測域を訪れると約束する。

 反対側の雲地は、いつ探しに行くのだ?】


【休みを取らないと行けないので、早くても2、3日後になります】


【私も行こう】


【はい♪】


【ところでチャムは?】


【お社でタオファ様に鍛えて頂いています。

 なんだか使い勝手の悪かった尾も調整してくださるそうです。

 チャムは僕と潜入する為だと言ったら張り切っていて。

 だから今日一日、死司として導く時は分身してチャムを作って連れていました】


【分身? ああ見つけた。

 狐のみの術なのだな】


【チャムが見つけたんです。

 慌てて僕も探りました】


【幸せそうで何よりだ】ふふっ♪


【あ……そんなんじゃ……】外方向いた。



―・―*―・―



 ジョーヌは顔を離すと、

「僕は心咲とずっと一緒に居るよ。

 そうしたいから人として生きると決めたんだ」

もう一度、想いを込めて言った。


そして不安で言葉が紡げなくなっている心咲の涙を消し、落ち着くまでと背をぽんぽんと宥めて暫く。

見上げてきた心咲に微笑み返すと、背の手に愛しさを込めて抱き締めた。


「ジョーヌ……」「うん……」


溢れそうになる想いは込めたけれど触れるだけに留めたキスを落として、

「言葉で伝えるの、得意じゃないって言うか……とにかく、ごめんね」

話そうと決心した眼差しを向けた。


「どこにも……行かない?」


「うん。行かないよ。

 言い方が悪かったよね。ごめんなさい。

 信じてもらえそうにない話だから不安だったんだ」

また溢れてきた心咲の涙を浄化で消した。


「時々フェレットな婚約者の話なら摩訶不思議に決まってるわよね?」ふふっ♪


「婚約者……指輪……まだ無一文だから……」


「ああっ、お父さんが言ったのなんか気にしないでっ!

 婚約者だって認めてくれただけだからっ!」


「ううん、そうはいかないよ。

 大切な事なんだから。

 まだ買いには行けないけど、暫くは――」

身体を離して、心咲の左手を掬うように胸の高さに上げた。


「えっと、、何を?」


「この指でいい? よく知らなくて……」

空いている方の人差し指で そっと触れる。


「うん。一般的に その指だけど……?」


触れていた指先を少し上げると、光の滴が心咲の薬指に落ちてリングを成した。


「キラキラ綺麗……」


「買いに行けるまで、これで我慢してね?」


「行かなくていい。これがいいわ♪

 ね、この石は何?

 埋め込まれてる黄色いキラキラは真珠とか貝とか?」


「僕の魂の欠片と、鱗」


「鱗!? ジョーヌお魚なの!?

 それより魂の欠片って何!?

 命を削ったの!?」


「そうじゃないよ。

 大丈夫だから心配しないでね。


 僕はフェレットでも人でもない。

 この地で生まれたのでもないんだ」


ジョーヌは光を纏うと浮き上がり、少し大きく膨らんだ。


「飛んでる……?」


光が吸い込まれるように消えると――


「龍……なの?

 綺麗な黄色……透き通ってるみたい……」


「部屋の中だから小さくしてるけど……乗ってみない?」


「うんっ♪」



―・―*―・―



〈さてオニキス。神眼を他者に向ける時は、先ずは少しだけ、薄目を開けるかの如くで相手方の気のみを見るのじゃ〉


〈薄目? どーやって?〉


〈仕方のない奴じゃの。

 ならばワラワが手本を致そぅぞ♪

 共有せねばの♪〉んちゅ♡


〈ナンでイキナリ!?〉ジタバタッ!


〈逃げるでない!

 ワラワの手本を(しか)と見るのじゃ♪〉


〈お……おう……〉見るどころじゃねぇよぉ。


〈此の状態、見られたくはないじゃろ?〉


〈とんでもねーよっ!〉


〈じゃろ? 皆、同じじゃ。

 以後、気をつけるのじゃぞ?

 ではワラワに合わせ、練習するのじゃ〉


〈合わせる?〉


〈全く仕方のない奴じゃの。

 ワラワが合わせてしんぜよぅぞ♪〉


〈うっ……〉〈何じゃ?〉〈何でもっ!〉


〈分かったかの?〉


〈お、おう〉


〈よぅ分かっておらぬのじゃな?

 (しか)らば――〉〈うわわわわあっ!?〉


(うるさ)い奴じゃ〉


〈どーしても こーしなきゃ いけねぇのかよっ!〉


〈否♪ 面白いからじゃ♪〉〈ナンだとっ!〉


〈ま、其れは冗談じゃが。

 如何なる状況であろうとも、平常心を保ち、正確に術を為さねば成らぬであろ?

 其の修行も兼ねておる〉


〈そ、そーかよ……〉


〈ま、集中せよ♪〉


それどころじゃねぇよ、と心の中で溜め息をつく、気が散りまくりなオニキスだった。







オニキスとサリーフレラの部分は会話のみでお届けしましたが~、『んちゅ♡』以降、虹香姫様が何をしていたのかは、ご想像にお任せします。



エィムの方は収穫を喜び、ジョーヌの方は飛びながら話そうと決めたようです。



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