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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団外伝  作者: みや凜
第三部 第2章 人として生きるには
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心咲の実家で



【お~いジョーヌ、今日もムリなのか~?】


【えっと……無理です】


【飼い主さんが離してくれねぇか?】


【……はい】


【ま、いっか。

 そのうち会えりゃいいよなっ♪】


【そのうち? 誰とです?】


【会ってのお楽しみだ♪

 んじゃ、またなっ♪】


【あ、はい……】【オニキス師匠?】


【どーした彩桜?】


【主役なのに、誰とお話ししてるのぉ?】


【ジョーヌだよ。虹香姫様も姉だからな】


【そっかぁ。

 でもジョーヌ師匠、人してるからムリだと思うよ?】


【人してるってぇ!?】


【うん♪

 学校 終わって徹君と青生兄トコ行ったら、藤慈兄から事務 習ってた~♪】


【ナンで人して働いてるんだ?】


【たぶんね~、心咲さんと結婚するんだと思う~♪】


【ミサキさん!? 人なのかっ!?】


【うん♪ フェレットの飼い主さ~ん♪】


【あ……そっか。納得だ。

 ジョーヌは人を選んだのかぁ】



―・―*―・―



 心咲の実家に着くと、父は既に帰宅しており、レンチンした夕飯をもそもそ食べていた。


「お父さん♪ 心咲も連れて来たのよ♪」

母とっても上機嫌♪

「それにしても早かったのねぇ」


「ま、もう引き継ぎも終わって、仕事らしい仕事は無いからな」


「そっか。お父さん、もうすぐ退職なのね」


「ああ。心咲、お帰り」


「うん、ただいま。

 それでね――」「心咲の彼氏よ~♪」

話を切り出そうとした時、母がジョーヌを引っ張って来た。


「彼、氏、、だとっ!?」


「はじめましてっ!

 ジョーヌ=アレンソワと申しマスッ」


「外国人!?」「おフランスよ~♪」


「そーなのっ! フランス人なのっ!」


「はい。フランス出身デス。

 ですが……両親は亡くなりました。

 この国で心咲さんと生きていくつもりデス。

 そう決心して、心咲さんとお付き合いしていマス。

 どうか、結婚をお許しください」礼っ!


「あ~、いや、驚いただけでな、その……反対とかではないんだ。

 心咲が、まさか彼氏を連れて来るなんて思っていなくてな。

 その……トラウマがあるからな。

 だから、な……心咲を頼む。

 心咲を幸せにしてやってくれ」

立ち上がり、同じくらい深く頭を下げた。


「お父さん……ジョーヌも、頭を上げてよ。

 私、ジョーヌだけは大丈夫なの。

 あと、ジョーヌの職場の皆さんも♪」


「そう言えば仕事は? 外資系とかか?」


「いえ、動物病院で事務と受付をしていマス」


「それじゃあキィちゃんがキューピッドになったのね~♪」

母、作りかけを仕上げて盛り付けて来た。


「あ、私も運ぶわね」


「ほらほら座って~♪

 ジョーヌ君はこっちねっ♪」


「ありがとございマス」


「お父さん、ビール飲む?」


「そうだな。ジョーヌ君は?」

「おフランスならワインじゃないの?」

いつの間に? な、てんこ盛り唐揚げを持って来た。


「お母さん、ワインなんてあるの?」


「料理酒なら~♪」「あのねぇ」


「あっ、ビール、大丈夫デス」


 飲んだ事なんてないけど……と、不安に思っていたジョーヌだったが、ハイになっているらしい父のピッチが速く、()ぐ係になったので殆ど飲まずに済んだ。


「それじゃ~あ、今夜わぁ、泊まって~いきなっサイッ」


「お父さんたら、すっかり ぐでんぐでんじゃないのよぉ」


「も~~、寝るっ、からなっ」

立ち上がったが、グラリ――

「お父さん!?」

――サッと動いたジョーヌが支えた。


「お父さんてば!」「んん……寝る」グガゥ~。


「運びマス」「じゃあ、こっち!」


ヒョイっと父を横抱きに抱えたジョーヌが重さを感じさせない足取りで心咲について行った。


「カッコイイわぁ~♪

 細いのに力持ちなのねぇ~♪」



―・―*―・―



 瑠璃が夜間診療をしている きりゅう動物病院にはサイオンジが来ていた。


〈そぉかぁ、黄色い龍神様は昼間なら来てるのかぁ。

 そんなら午後の休診時間がいいんだなぁ?

 オイラの龍神様がお目覚めなさってる日に来るとするかぁよ〉


〈此方の都合ばかりで申し訳ありません〉


〈い~や い~や、なぁんもだぁよ。

 ああそ~だぁ、渡しそびれるトコだったなぁよ。

 コイツをキツネ殿に渡しといてもらいたいんだぁ〉


〈この袋……特殊な物ですね。

 中身を移しますので少々お待ちください〉


〈頼むなぁよ〉



 瑠璃は頷いて診察室を出ると、仮眠室に置いている水晶玉に袋の中身を移した。


 神の欠片か……回収 出来るとは

 流石、サイオンジ殿だな。


 この欠片……知っているような……?

 そうか。ラピスラズリ兄様の記憶だな。

 後で確かめよう。


軽い保護封印に留め、護衛結界の内に水晶玉を置くと、袋を浄化した。


 袋の方は紅火様の作だな。

 父様の手も、やはり凄い。

 誰か父様の手を継げた兄弟は

 居るのだろうか……?


己ではない事に少しだけ寂しさを覚えたが、嘆くよりも己が受け継いだ力を鍛え、全て出し尽くすのみと気を取り直して診察室に戻った。



―・―*―・―



 心咲は父の部屋で轟音(イビキ)を聞きながら

「ビールとか、大丈夫なの?」

心底心配して尋ねた。


「少しなら」にこっ。


「無理しないでね?

 お調子者の両親なんだから」


「大丈夫ですよ」にこにこ。


「勝手にフランス人にしちゃったけど……」


「ゆっくり考えましょう」


「そうね。それで、泊まる?」


「心咲さんは? どちらがいいですか?」


「マンションに帰って考えたいわね」


「そうですね。

 では、キィちゃんが心配だからと帰りましょう」


「そうね♪

 そういえば来る途中の外国人さん達と何語で話してたの?」


「フランス語で話し掛けられましたが、話しているうちにスペインから来たと判りましたので、そこからはスペイン語で」


「スペイン語!?」

『スペイン語がどうしたの~?』ガチャッ。


「「あ……」」父のイビキが盛大に響く。


「えっとね、来る途中の。

 何語だったのか聞いてみただけ」


「フランス語じゃなくてスペイン語だったの!?」


「だったの。

 フランス語からの~、スペイン語」


「スペインにも行ってみたいのよね~♪

 お父さんの退職金で欧州周遊とかもいいわよね~♪」


「お父さんが泣くわよ?」


「お父さんが言い始めたのよ♪

 ジョーヌ君♪ 案内してねっ♪」


「あ、はいっ」それも勉強しないと!


「それじゃ、キィちゃん ほったらかしだから帰るわね」


「そうねぇ、仕方ないわよねぇ。

 それじゃ今度はキィちゃんも一緒にね♪」


「あ、うん」どうしよう!


「ご馳走さまでした。

 とても美味しかったデス」


「心咲ヌキでも、いつでも来てねっ♪」


「え?」「もうっ、お母さんっ!」


「もう息子だと思ってるのよ~♪」


「あ……ありがとございマス!♪」


輝竜家も心咲の実家も、とてもあったかい場所だと、しみじみ思っているジョーヌだった。



―・―*―・―



 エィムは観測域に行っていた。


【テイム、聞こえる?】


【今なら大丈夫だよ】


【誰が居るの?】


【ポポムと僕の彼女のアクアローズだけ。

 今日はクァムは来てないんだ。

 クァム、週2くらいだから】


【それならクァムに偽装して入るよ】


【服、淡い新緑色だからね。

 けっこう目立つから気をつけて】


【ありがとう、テイム】



 姿を消して観測域の門前に居たエィムは、誰かに見られた時の為に魂生域のクァムに偽装してからテイムへと術移した。


【意外と すんなり来れるんだね。

 結界も形ばかりだし】阻まれると思っていた。


【エィムってば、開口一番それなの?

 ま、研究と観測は重要視されてないから、こんなものだよ】


【なんか変だと思ったらエィムなのね?

 クァムかと思って喜んじゃったぁ】

奥からポポムが飛んで来た。


【ポポム、せっかくの結婚の絆を無視しないでよ。

 絆に触れたら すぐに分かる事だよ?】


【ホントだわ……絆って凄いわね♪】


【可能な限り色々試して、知っておくべきだよ。大切な相手との絆なんだから。

 クァムが来た時にシッカリ確かめてね。

 それで鏡って?】


【ちゃんと話したよ】「ローズ♪」


奥の机で書きものをしていた女神がふわふわと飛んで来た。


「エィム、大丈夫だから姿を戻してよ」


「そう?」聞きつつ戻す。


「同代長子のエィム。

 死司だから普段は真っ黒なんだ♪」


「僕が真っ黒みたいに言わないでよ」







ジョーヌは順調に人として受け入れられています。

サリーフレラには会えていないままですけど。



エィムの方は早速 観測域を訪れました。

観測域は夜勤として起きている人神も多いので警戒して行きましたが、緩さに拍子抜けしてしまいました。


この夜のお話は、ジョーヌとエィムの2本立てで進めます。



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