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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団外伝  作者: みや凜
第三部 第1章 初めての友達
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結婚ラッシュ



 瑠璃の提案にジョーヌが考え込んでいると、待合室の方から嗚咽が聞こえてきた。


【ジョーヌ、今日のところは身体を保ち、ゆっくり考えてみるか?】


【僕としては、そうしたいのですが……。

 そうすれば心咲(みさき)さんは僕が生きている限り泣いてばかりになると思います。

 それに、いくら考えても堂々巡りになって決められそうにもありません。

 ですので……一か八か、やってみます!】


【そうか。

 では身体と切り離してもよいか?

 離せば戻れぬぞ?】


【お願い致します】


【ふむ】


 瑠璃は光を纏うと、その光を両手に集めてフェレットへと放った。

光はフェレットの身体を包み、吸い上げるようにジョーヌの魂を出して浮かせた。


ジョーヌは龍の身体を成した。

【今までより飛び易いです♪】

フェレットの魂を抱いて撫でている。


【フェレットの身体を偽装し、其処に】

亡骸を布で包んでケージに隠した。


【はい!】処置台に横たわる。


【人姿の具現化も保てるな?】


【はい。何度か……試しました……】


【試したのならば良い――ん? 何故、顔を隠している?

 不自然ではないか】


【あの、ええっと……】モジモジ。


【夢見ていたのなら、どう切り出すのかも考えていたのだろう?

 落ち着いて頑張れ】


【あっ、あのっ――】【来たぞ】【ええっ】


 ジョーヌが落ち着く前にドアが開いた。

青生に支えられて、どうにか歩いている心咲が入って来た。


「ジョー……ヌ……嫌……私を独りにしないでっ」

処置台に駆け寄り、ジョーヌに覆い被さった。


【ええっと、、この状態は、想定外で……】


高階(たかはし)さん、ジョーヌはフェレットとしては大往生ですよ。

 一緒に居たくて頑張って生きていたんです。

 もう眠っていいと、見送ってあげてください」

青生が言葉を掛け、瑠璃がそっと起こした。


「ジョーヌ……ありがとう。

 いつか、また……天国で会いましょうね」

流れる涙はそのままにジョーヌの小さな手を取って、その身体を撫でていると――


「え? 光っ、た?」


――ジョーヌの身体は光に包まれ、力ないままに ふわりと浮き上がり、キラキラと光の粒となっては昇って消えていった。


「ジョーヌ!? ジョーヌ!!

 イヤッ! 消えないでっ!!」


最後の一点は少し大きく、別れを惜しむかのように瞬いて留まった後、少しだけ昇って心咲の後ろへと飛んだ。


「ジョーヌ……?」後ろって……?


「はい。僕は消えませんよ。

 ずっと心咲さんと一緒です」


背後から聞こえた柔らかな声に戸惑いながら心咲が振り返ると、恥ずかしそうに頬を染めた細身の青年が困ったような微笑みを浮かべていた。


「心咲さん……僕、ジョーヌです」

金よりも黄色に見える髪が揺れた。


「本当に? ジョーヌ?」

少し首を傾げた姿は、話し掛けた時のジョーヌそのものだと思いつつ。


「はい。あの……フェレットじゃなくなってしまいましたけど……その……僕と、結婚したいって……言ってくれましたよね?」


「だから? なの?

 ちゃんと聞いてたのね?」


「はい」こくん。


「うん……うん……その仕草、やっぱり、間違いなくジョーヌだわ。

 ジョーヌ♡」「あっ――」


抱きつかれて真っ赤になったジョーヌが、遠慮がちに心咲の背に手を回した。


「頑張って生きます。人、します。

 また、よろしくお願いします」


「よろしくお願いします♪」ぎゅっ♡


「あ……はい」



「青生、受付係を雇わなければならなかったな?」


「ああ、そうだったね。募集しないとね」


「大型犬を誘導したり押さえたりも頼まねばならなかったな?」


「そうだね。

 そうなると若い男性がいいかな?」


「受付係なのだから人当たりの良い、優しい感じが好ましいと思うのだが?」


「確かにね。

 それに藤慈とも気が合うといいよね」


抱き合う二人に背を向けていた獣医夫婦が振り返って微笑んだ。


「ちょうど良さそうな青年が居たね♪」

「そうだな。求職中ならば良いのだが」


「無職です! お願い致します!

 人も初心者ですけどっ!」


「明日からの1週間は藤慈の助手で、来週から本格的に研修って事でいいかな?」


「「ありがとうございます!♪」」

一緒に腰直角の礼!♪



「それで、名前はジョーヌのまま?」


「「あ……」」


「外国人で良いのではないか?」髪色的に。

「そうかもね。

 経歴全部を考えるのは大変だからね」


「そっか……人として生きるって大変なんですね……」


「ま、職場は此処なのだから深く考えずとも何とかなるだろう」

「そうだね。遅くなったけど、今夜は ゆっくり休んでね」


「はい♪」「ありがとうございました♪」



―◦―



 手を繋いで、寄り添って帰る二人を見送った青生と瑠璃は、急いでキツネの社へと瞬移した。


「あ♪ ラピお姉様~♪」

チャムが元気に手招きしている。


犬猫その他諸々の動物が犇めく中央に立っているロークス ラナクス ハーリィが説明していた真っ最中だったらしく、3神も微笑んで『どうぞ』とチャムの方を手で示した。

しかし、とてもではないが通る道なんて見当たらないので瞬移すると、チャムの後ろでは梅華(メイファ)桃華(タオファ)が微笑んでいた。


 その並びに腰を下ろすと、話が続けられた。


「つまり、最高司に次ぐ地位の我々がモグラの浄滅は阻止すると約束します」

「特別魂として神魂同様に保魂し、必ず再生へと渡します」

「人として再生は出来ませんが、皆様は現状を嘆いていらっしゃいますか?」


『そんな事はない』『けっこう楽しんでいる』

といった内容の言葉が飛び交う。


「では、その方向で、記憶は消さずに再生致します」


オフォクスが立ち上がった。

「職神経験者ならば解るであろうが、現職が此処に来るのは命懸けと言えよう。

 儂とドラグーナの友であり、皆の友であるモグラの為に然うまでしてくれのだ。

 納得したのならば各々の場所に戻り、修行せよ」


歓声に近い返事が上がり、集まっていた者達は楽し気に立ち上がった。

瞬移できる者は消え、まだ出来ない者は扉へと向かう。


「ドラグーナ様ん家の庭には送ってやる。

 走って帰ってもいいが、社の前で待ってろよ!」

楽し気な後ろ姿の集団にオニキスが声を掛けて、追って飛んだ。


軽い吠え声が あちこちで上がる。



―◦―



 そして社は静かになった。


〖ラナクス、1つ聞きたいのだが?〗


「その声、アーマルか?」


〖尾だけなのだがな〗


「保魂されていたとは知らず、大変な思いをさせてしまったな」


〖最高司とて継いでいるうちに忘れたのだろう。

 それは致し方の無い事だと思うのだが、何故、僕が浄滅されるに至ったのだ?〗


「それは私から話そう」

ロークスがラナクスの肩をポンポンとした。

「調べたばかりなのだが、アーマルの半分が二度目の門前逃走をした事で浄化の門神達が恐れを抱き、保魂の友神(ゆうじん)に相談したらしい。

 その話は若干 拡がり、危険な獣神魂は双方の最高司、最高司補には知られぬ内に浄滅してしまおうと企てたそうだ。

 そうして調べている内にアーマルの尾が保魂されていたと知った。

 これは真っ先に、と実行に移そうとした時、アーマルが暴れだしたそうだ。


 魂を扱う職神として、あってはならぬ事だ。

 故に企てに関わった者、全てを厳罰に処さねばならぬのだが……」


「ただでさえ職神は不足している、か?」

ハーリィが呆れたように言った。


「獣神を採用してくれさえすれば何の問題も無いのだがな」


「職域を獣神に返してくれれば、もっと問題が無い」


「「確かにな」」


〖僕としては、今後そのような事さえしなければ何も処さなくてもよいのだが?

 ま、ロークスとラナクスの拳骨一発ずつで十分な厳罰だろう〗


「そりゃ頭が胴にメリ込むなっ♪」


「「オニキス……」」睨む。×2。


「ゲ……」ジリジリ下がり……逃げっ!


「「待てオニキス!」」追う!×2。


「戻って来た途端に これだ」

ハーリィが肩を竦めた。


〖オニキスは相変わらずなのだな♪〗


久々に集まれた喜びも溢れ、キツネの社は明るい笑い声で満たされた。



「して……絆を結ばぬのか?」フン。

奥で背を向けて座っている大狐(オフォクス)が振り返って鼻を鳴らした。


「あっ!」「父様!」ラナクスと桃華、慌てて父の前へ。

「「お願い致します!」」


「ほらほら、この際だからハーリィも♪」

オニキスが背を押して行く。

「ロークスとチャリルも早く来いよなっ♪」


「オニキスも、なのだろう?」

〖如何にもじゃ♪〗「姫っ!!」



「クァムとポポムも、なんだよね?」

振り返ったエィムは微笑んでいた。


「えっ――」「あ♡」「――エィムが気づくなんて……」


「どういう意味?」「なんにもっ!」


「早く行ったら?

 勿論ミュムとリリムもね」「「えっ」」



「テイムは?」


「今、僕の彼女が僕達と一緒に観測中って事にしてくれてるんだ。

 だから出て来られたんだよ」


「彼女って?」


「人神の女の子♪ 可愛いんだよ♪

 ピュアリラ様って龍狐の女神様を先祖代々信奉してるんだって。

 だから僕が龍なの大喜び♪」


「ピュアリラ様を……今度、その女神様の話を聞かせてもらえないか?」

【私も聞かせてもらいたいのだが?】


少し離れた所で梅華 桜華(インファ)と話していた瑠璃がチラリと微笑んだ。



―◦―



 順に結婚の絆を結んだオフォクスが睦まじい各々に視線を巡らせ、そろそろ疲れたから休んでおこうと消えようとした時、姉の水晶玉を手にシャイフレラが頭を下げた。


シャイフレラが口を開こうとしたその時、解っているとオフォクスが頷いた。

「然うだな。皆、幸せにならねばな。

 此れ程の神力が集まっておれば叶う筈だ。

 術は儂とラピスラズリが唱える。

 オニキス、サリーフレラと共に中央へ」


「はい」〖お願い致しまする〗

注目を浴びている恥ずかしさもあって渋々なオニキスが魔法円の中央に立ち、シャイフレラから受け取った水晶玉を掲げた。


「皆の神力を頼む」「はい♪」一斉。


オニキスの同代、エィムの同代、輝竜兄弟と妻達が魔法円を囲んで気を高めた。


「姉上、気張るのじゃぞ♪」〖あぃなっ♪〗


瑠璃が光を纏い、ラピスラズリに変わる。

そして龍狐女神ラピスリの姿へと変わった。


【瑠璃姉すっご~い!♪】

【ラピスラズリ様だよ】

【でも、すっご~い!♪】

【そうだね。美しいね】

【うんうん♪】


【ピュアリラ様だ……】

【テイム? 知ってるの?】

【うん。鏡に光を当てたら浮かぶんだよ】

【それも見たい!】

【うん。頼んでみるよ】



 サリーフレラの身体を成す為の長い術の詠唱が終わり、オニキスごと包んだ光が横に分離して胸の高さの一点に吸い込まれた。


「皆々様、(かたじけの)ぅ御座いまする♪」

虹色に煌めく艶の金龍が浮かんでいた。


「姉上っ♪」

虹色に煌めく艶の銀龍が抱き付く。


「うむ♪」ひしっ。


「オニキス、姉を宜しゅうお頼み申し上げる」


「あ……うん。まぁ、気が合うよなぁ。

 言い合うのは面白ぇし。

 可愛いトコもあるし。

 嫌いにもなれねぇし……うん。ま、いっか」


(しか)と求婚せよ】

ラピスリの波動が後ろからオニキスをブッ飛ばした。


「ってーなっ!」


女性達の視線が突き刺さる。


「あ……」【早くしろ】「……うん」


黒龍が虹金龍と向かい合う。


「サリーフレラ様。

 オレと、結婚……してくださいっ!」


「うむ♡」


「姉上、良かったのぅ♪」

もう一度ハグして魔法円から出た。


「では続けて結婚の絆を結ぶ」


「お願いします!」

「お頼み申し上げまする♪」

並んで手を繋いだ。







章タイトルに合うお話は最初の1話だけとなってしまいましたが、彩桜と徹との話は、これからたっぷりと用意していますので、二人が友達になった夜の出来事を連ねました。

『モグラを助けたい!』と集まった件も落着しましたので、この章は終わります。


その騒ぎの裏でフェレットだったジョーヌが人になりました。

次章はその延長線上で『神やユーレイが人として生きる為には?』というところに瑠璃や彩桜が巻き込まれます。



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