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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団外伝  作者: みや凜
第三部 第1章 初めての友達
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古屋先輩



 彩桜が紗と友達になった翌朝――


 ガタガタギシッ!


「おはようございます!

 彩桜君、居ますか?」「古屋(ふるや)先輩!?」

戸の隙間から叫んでいたので、彩桜が慌てて行って戸をガッと開けた。


「あ♪ おはよう!」


「おはよ~ございます~。

 昨日すっごく待たせてしまって、すみませんでしたぁ」


「僕が勝手に来ただけだから気にしないで。

 それより――」「お~い彩桜、2回目の――」

「黒瑯お兄さん、おはようございます!」

「は?」


「そのヒト、リーロン。親戚なんです」


「親戚……」双子としか思えない。


「黒瑯兄お仕事。

 で、弟子のリーロンがご飯作ってくれてるんです」


「へぇ~♪」お弟子さんまでいるんだ♪


「彩桜が敬語? どーなってるんだ?」


「部活の先輩だから~。

 古屋先輩、一緒に食べます?

 リーロン、おにぎり専門ですけど」


「いただきます♪」


「んじゃ2人分、持って来るからな」



「古屋先輩?」


「あ、途中だったな。

 僕、古いものが好きで将来は考古学者を目指してるんだ。

 歴史学も本気で好きなんだ。


 昨日、黒瑯お兄さんに離れとか案内してもらって、昭和初期のパイプオルガンも聴かせてもらったんだ。

 感動の連続だったよ。

 家に帰って調べものしてたら煌麗山(ヤマ)大に輝竜教授って見つけて。

 ……もしかして彩桜君、知ってるのかな? って……」


「一番上の兄貴、です」「彩桜、この――」

渡り廊下から古めかしい本を手にした金錦が現れ、来客だったかと立ち止まり、引き返そうと――


「もしかして輝竜教授ですかっ!?」


金錦は彩桜をチラリと見た。「そうだが?」

【歴史研究部の先輩なのぉ】【ふむ】

【金錦兄のファンみたい~】【ふむ】


「あ、あのっ、僕!

 古いものが好きなんです!

 オススメの歴史書とかありますか!?」


「ふむ。待っていなさい」引き返した。



「キンチョーしたぁ」地べたに座り込んだ。


「あっ」椅子を運ぶ。「どーぞ」


「ありがと。教授、東京じゃないのか?」


「週末は帰って来るんです」「そうなんだ♪」


身を乗り出して彩桜の次の言葉を待っている古屋を見たリーロンは、おにぎりの皿を置いて無言で逃げた。


【オニキス師匠!】【ナンか苦手なんだよっ】


【ねぇねぇ紅火兄、助けてよぉ】 【む……】

【昨日も来てたんでしょ?】【黒瑯に任せた】

【ねぇナンで隠れるのぉ?】【俺には無理だ】


金錦が戻った。


「入門書としてならば欧州史は中世、邦和史は古代が面白いのではないかと思う」

分厚い2冊を差し出した。


「ありがとうございます!!♪」


「興味のある年代、地域を指定して貰えれば、適したものを考えよう」


「来週、紙にまとめて来ます!」


「そうか」【彩桜、この本の続きは?】

最初に持っていた本を渡した。

【後で持ってく~】【ふむ】

「では」渡り廊下へ。


【あ、ソラ兄ここのぜ~んぶ持ってったよ。

 もぉ読んじゃったかも~♪】


【入れ換えねばならぬな】【ん♪】


「彩桜君!」興奮して瞳キラキラ☆


「はい?」


「凄いお兄さんばかりなんだねっ!」


「うん。そぉですね」「お~い彩桜ぁ♪」


 凄くない兄貴 来ちゃった!


「あれ? またお兄さん?」「どぉしたの?」


「お♪ 友達できたのかぁ♪

 そんじゃリーロンに頼むかぁ」


「なぁに?」


「犬達が彩桜待ちしてるんだよ。

 ま、リーロンで大丈夫(イケル)だろ♪」


「あのっ! お兄さんのお仕事は!?」


「俺かぁ? ただのサラリーマンだ♪」

笑いながら住居の方へ。


「・・・え?」


「ホントは支社長です」「やっぱり!♪」


「でもヒラの営業マンもしてます」


「なんかカッコイイ!♪

 あ、この前、動物病院に帰ってったよな?」


「兄夫婦がやってますので」「あっ!」


 渡り廊下から来て、奥の襖を開けて紅火が隠れている方へ行こうとしていた藤慈が振り返って首を傾げた。


「藤慈兄。薬学博士、です」


「カッコイイ~♪」


照れた藤慈は奥へと逃げた。


「彩桜君って何人兄弟なの?」


「兄貴ばかり6人います」


「教授と支社長とシェフと薬学博士……あ、獣医さん。あと1人?」


「このお店の物、作ってます」


「そうか……作ってるんだ。

 やっぱり凄いお兄さんなんだね」


「もしかして……何か感じますか?」


「なんとなく、だけどな」

慎重に頷いてから続けた。

「僕は古いもの、特に建物が好きで、よく廃墟に行くんだけど、オカルトとかが好きなワケじゃないんだ。

 そういうのは建物を正当に評価してないって思ってて。だから嫌いだった。

 幽霊も妖怪も見たことないし、信じてもなかったし、、やっぱり嫌いだったんだ。


 でも、昨日ここで気配を感じたんだよ。

 嫌とか怖いとかじゃなくて、、何だろう、清らかな感じ? なんかそんなの。

 今日は それも確かめたいと思って来たんだ。

 今、確かに周りにある物達から感じてる。

 作ってるって聞いて納得したよ。

 凄いお兄さんだ」


真顔で一生懸命に言葉を探しながら話す古屋に、彩桜は生まれて初めて他人に心を開いてもいいのかも、と思えた。

物に『達』を付けてくれたのも素直に嬉しかった。


「俺――」「彩桜クン、昨日はありがとう」

「あ♪ ソラ兄♪」「ええええっ!?!?」


 店の戸を抜けて入って来たソラは姿を隠すつもりがなかったらしく、物達との相乗効果もあってか古屋にも見えてしまったらしい。


「「あ……」」「戸を抜けたよなっ!?」


彩桜とソラ、顔を見合わせる。


失敗したな、と肩を竦めたソラが、

「ボク、ユーレイだから♪」

笑って言った。


「幽霊だ……初めて見た……本物なんだ……」

視線を彷徨わせながら ぶつぶつ。


「古屋先輩? だいじょ~ぶ?」

「あ♪ キミも歴史が好きなんだね?♪」


「えっ? あっ、はいっ!

 ふ、フツーに、喋ってる、、僕にもシッカリ聞こえてる、、凄い……凄いよ!」


「ソラ兄も歴史研究部、入る?♪」


「いいの!?♪」


「もっちろ~ん♪

 此処でなら古屋先輩にもソラ兄見えるし、ちゃんと聞こえてるし、古い本い~っぱいあるから~♪ ね、先輩、いいでしょ?」


「勿論!♪ 一緒に!♪

 お願いします!♪」




 おにぎり(ソラは霊体おにぎり)を食べながら興奮している古屋を落ち着かせ、改めて彩桜は話し始めた。


「俺、ちっちゃい頃、普通は物とか動物とは話せないなんて知らなくて、他人(ヒト)の目なんて気にせずに話してたんです。

 そしたら気味悪がられて、イジメられ始めて……家、こんなだし、親は外国だしってのもあって、ずっとイジメられてました。


 だから小学校に入る直前に、大学生だった兄貴の鞄に入って東京に逃げたんです。

 東京では誰とも話さずに静かにして、学校から帰ったらヒキコモリしてました。

 兄貴の開業でコッチ戻ったけど、ずっと友達なんて作る気なくて、目立たないよぉにしてました。

 歴史研究部 選んだのも月1だし、部員が先輩だけだったからなんです。

 古文書とかは好きですけど……」


すっかり俯いてしまった彩桜の肩をソラと古屋がぽんぽんとした。


「ありがと、ございます……」


「僕も友達いないんだ。

 歴史と廃墟が好きってだけで変人扱い。

 理解してもらえないのって苦しいよな」


「先輩……」


「彩桜クン、徹クン。

 慰め合うのもいいけど、生きているんだからシッカリ前を向いてね」


「「あ……」」


「そんな顔しないでよ。

 ボクは彩桜クンから貰った具現環を使って、もう一度 生きるつもりなんだから。

 響と一緒に大学院に行って、結婚して、その先もずっと生き人しようと思ってる。

 だから、これから生きていく為の友達として よろしくね」


「うん♪」「はい!♪」  【彩桜様】


【あ♪ 狐儀師匠~♪

 俺、友達できた~♪】


【そうですか】にこにこ♪

【後程、社にお願い致します】【うんっ♪】


「狐!? 小さな白い狐が浮いてる!!」

ソラは狐儀が現れた時点で気付いていたが、ようやく古屋にも見えたらしい。


「はい♪」狐儀は古屋の前に行って、ジーッ。


【師匠なぁに?】【神の欠片があります】

【どんな神様?】【強い神です】【ん♪】


【とても小さな欠片なのですが、とても重要な欠片です。

 頂きたいのですが……】


【取れるの? 何ともないの?】


【ご本人が許してくだされば、ですが、この欠片の小ささでしたら可能です。

 空いた穴には神力の写しを込めますので】


「先輩の魂に、神様の魂の欠片が混ざってるそぉなんです。

 狐さんソレ欲しいみたいで~。

 穴には神様の力のコピー入れるから先輩には問題ないみたいなんです。

 抜いてもいいですか?」


「よく分からないけど問題ないならいいよ。

 ただ……」


「ん?」


「尻尾、触っても大丈夫かな?

 それだけでいいから」


【師匠いい?】【構いませんよ】ふふっ♪


「いいって~♪」「ありがとう!♪」



 古屋(ふるや) (とおる)、中学3年生。

歴史好きで、廃墟好きな歴史研究部の部長。

もふもふ好きでもあったらしい。



―◦―



 金錦から借りた本を広げて3人で楽しく騒いでいるうちに午後になっていた。


「彩桜ぁ、姫が昼メシ抜きかって怒ってるんだが、リーロン知らねぇか?」


「あ♪ 黒瑯お兄さん、お帰りなさい!」

「庭で犬達と遊んでにゃいのぉ?」

喋っているうちに古屋から先輩後輩ではなく友達として話そうと言われて、彩桜は すっかり崩してしまっている。


「あ、友達になれたんだなっ♪

 で、腹減ってねぇのか?」


「楽しくて忘れてた~♪」


「彩桜がメシ忘れるとはなぁ。

 明日は天変地異かぁ?」


「ヒドいコト言ってにゃいでお昼ごは~ん」


「ん。3人だな、待ってろ♪」


「「「あ……」」」


「ま、いっか~♪ 俺が食~べる~♪」

「僕にも分けてよ」「うんっ♪」


「ボクはお兄さん達を見分けられなかったのに、徹クンは見分けられるんだね」


「あ、そぉだね~♪ なんか嬉しい~♪」


「言われてみれば同じ顔だよな……」


「でも黒瑯兄とリーロンは間違えた~♪」


「本当は双子なんだろ?」


「違うよぉ~♪」にゃはははっ♪



―・―*―・―



〈サイ様、お帰りなさいませ〉

サイオンジ公園で待っていた狐儀が微笑み、丁寧に礼をした。


〈狐儀殿よぉ、ど~かしたのかぁよ?〉


〈サイ様の龍神様の欠片を見つけましたので込めさせて頂きます〉


〈そ~かぁ。頼むなぁよ〉

《俺の尾じゃないか!♪ 早くしろ♪》


〈お目覚めでしたか。では――〉


狐儀が飛ばした小さな光はサイオンジの胸に吸い込まれた。


《おおっ♪ 術の庫だ♪

 また一歩、俺らしく戻れたぞ!♪

 ありがとうフェネギ!♪》


満足気な笑みを浮かべて礼をすると、狐儀は社に戻った。







彩桜は前日にソラ・響・紗と友達になっていましたが、徹は学友として初めての友達です。


徹に入っていた小さな欠片は、ドラグーナの父フィアラグーナの尾の一部でした。

だから輝竜兄弟の区別がついたんですね。

でも、子と孫を間違える辺りはフィアラグーナらしいのかも。


オニキスが逃げたのも、修行大好きな祖父を感じたからかもしれませんね。

紅火は? 人付き合いが苦手なだけです。



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