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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団外伝  作者: みや凜
第二部 第10章 激戦の翌々日
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悩み迷う



 一緒に居るところを他の職神に見られないように現世の門を過ぎて以降、姿を消しているエィムとミュムは街の結界のすぐ上に着いた。

地上に神眼を向けたが、ブランコには彩桜は居らず、オニキスも戻っていなかった。


【何処に行ったんだろ……?】


〖反対側だよ。

 アパートの窓の下で聞いているんだ〗


【【父様!?】】


〖エィム、もう狐を使い(こな)しているんだね。

 ミュム、久し振り。立派な職神になったね。


 今、その女性の夫が此処に向かって来ているんだ。

 ラピスリは青生と話しているから、先に縁者と会わせてあげられないかな?〗


【【はい!♪】】


〖ありがとう。それじゃあまた……〗



【父様?】【たぶん眠ったんだ】【そう……】


【で、どうやって会わせるか、だね】


【結界の中には僕が入るよ。

 眠りも解かないといけないしね】


その時、ソラが飛んで来てアパートに入った。


【彼に渡そうか?】


【それが良さそうだね】



 小夜子の魂を受け取ったミュムは、ユーレイとの接触も見られないように姿を消したまま少し降りた。


〈ソラ、聞こえるかな?〉

ソラが響に何か手渡したタイミングで声を掛けた。


〈はい! ミュム様ですか?〉


〈想いの欠片を見せてあげよう。

 内緒で借りて来たのだよ。

 昇って来て〉


〈あっ、はい!〉



 数分後に目覚めるように眠りを解き、姿は見せられないが位置だけは分かるように淡く光を纏い、昇って来て探しているソラへと飛んだ。

〈はい、これ。後で返しに来てね〉

小夜子の魂を残して纏う光を消した。


〈ミュム様!?〉


〈僕は頼まれただけ。

 それが『想いの欠片』だよ。

『協力し合うと言ったろ』と言っているよ。

 恥ずかしがりだから許してあげて。

 借りものだからね、早く降りてあげてね〉

【僕は何も言ってないけど?】


〈はい! ありがとうございます!

 ミュム様! エィム様!♪〉

【大声で呼ばないでよね】


〈『大声で呼ばないで』って真っ赤に――〉【ミュム!!】

〈――ああ、ごめんごめん♪

 それじゃあ、また後でね〉


〈はい♪〉小夜子さんだ♪


ソラは嬉しそうに降下した。



【勝手な事を言わないで】


【でも思っていたよね?】


【……そうだけど】


【あ、彼女の夫かな?】


【みたいだね】


【ちゃんと見ていようよ】


【……そうだね】



―・―*―・―



 仮眠室に瑠璃が戻った。


【で? 修行は一朝一夕にはゆかぬが、これ以上 私に何を?】


【この姫様の事じゃねぇよ。

 よく聞けラピスリ。

 友達、見つかったぞ】


【!? ……小夜子が、か?】


【だよ。だが――いや、まずは会うべきだな。

 行こうぜ】


茫然としている瑠璃の手を取って瞬移した。



―◦―



 街の結界上端へと瞬移したオニキスは瑠璃を背に乗せて姿を消し、エィムとミュムに近付いた。


【遅くなって すまねぇ】


【あ、今アパートに――】【小夜子!!】


【お~いシッカリしろよな。

 その人偽装のまま飛ぼうなんてラピスリらしくねぇぞ。

 降ろしてやっからアッチの話が終わるのを待ってやれよ】


【……そう、だな……小夜子は、もう……】


【成仏を望まれていましたが、浄化のリリムに見せかけの浄化をして、想いの欠片に偽装してもらいました。

 これからは保魂のプラムに保護してもらいます】


【そうか……ありがとう】


 下では小夜子が楽しそうに話しており、小夜子の夫は泣いてはいたが会えた事には喜んでいるようだった。


【そうか……荒巻は生きていたのか……ん?

 利幸が見舞いにだと?】【えっ!?】

利幸(ウンディ)を保護しているエィムが驚きの声を上げた。


【ああ、それな。

 どうしてもって騒ぐから行かせたんだよ。

 またボコボコになんてされたくないからな】


【リグーリか。それでウンディは?】


【また『賽子(サイコロ)』の中だよ】


【次に騒いだならば私を呼べ】


【そうするよ】

【ラピスリ、落ち着いたみたいだな。

 下りるか?】


【オニキス、ありがとう。行ってくる】瞬移。



 下に現れた瑠璃はアパートの門柱に身を隠した。



 話して満足したらしい小夜子が深く頭を下げて消えようとしたので、ソラは具現化を解いた。

泣き崩れた夫・真実(まこと)に視線が集まっているうちにソラは小夜子を回収して飛ぼうとした。


〈小夜子は成仏したのだな?〉


どう声を掛けようかと悩んでいたが最適を見つけられず、そう言うと、驚いて見回しているソラに姿を見せ、湧き上がる想いを押し込めて微笑んだ。


〈輝竜先生……お知り合いでしたか?〉


〈友だ。

 姿が見えなくなったので心配していた。

 そうか。ご主人に会わせたのだな?

 それならばよい〉

最初の言葉に合わせて何も知らなかったように話したが、今一つだと感じて視線を逸らした。


 ソラは瑠璃がアパートの方を向いたのは小夜子と会いたい一心からの涙を隠したのだろうと思い、もう一度 具現化して数歩離れた。


 小夜子が嬉しさを見せたのは一瞬で、すぐに視線を落としてしまった。

〈瑠璃……ごめんなさい。

 せっかく治してもらったのに……死んでしまって……〉


〈何故謝る? 不可抗力だ。

 飛翔の子達同様、小夜子の子達も見守ると約束する。心置き無く眠れ〉


〈ありがとう……瑠璃には本当にお世話になるばかりで――〉

言葉の途中で瑠璃が抱き締めた。

〈瑠璃……?〉


〈気にするな。友なのだから当然だ。

 ……助けられず、すまなかった〉


〈そんな……事故なんだから――〉


〈否……すまなかった……〉


〈そういうトコも瑠璃らしいか。

 うん。とにかくありがとう。

 それじゃあ行くわね〉


瑠璃が離れると、小夜子は笑顔を作って小さな光球に戻った。


〈邪魔をしたな。では――〉


〈あの――〉〈ん?〉

〈先生も祓い屋なんですか?〉


〈茶畑殿と嶋崎殿の手伝いならばしていた〉


〈過去形、ですか?〉


〈そうだな〉〈ルリ~♪〉〈ショウか〉


〈ショウも知り合い!?

 あっ、さっき飛翔さんって――〉


〈飛翔、澪、利幸は幼馴染みだ〉

2階の一室から出てきた奏と紗からは見えないように瑠璃は再び門柱に隠れ、奏に抱かれているショウに微笑み、小さく手を振った。


〈そうだったんで――〉

『お~い』〈あ……〉『助けてくれよな――』


〈荒巻が呼んでいる。

 小夜子を返しておいてやろう〉


〈えっ? ですが――〉


〈ミュムだろう? 任せろ〉ふふっ。

笑って光球を受け取り、瞬移した。



 姿を消したラピスリは中空で留まり、小夜子を眠りで包んで神力を注いだ。


【いずれ迎えに行く。待っていてくれ】


小夜子には届かないのは分かっているが囁いて微笑むと、上で待っている弟達へと飛んだ。



―◦―



 ショウに声を掛けたい彩桜は、その一歩が踏み出せないままに、楽しそうに話している奏と紗を追っていた。


 紗ちゃん家、すぐ近くだから

 もぉ着いちゃう~。


 どぉしよ……あ! いつもの塀の穴に!


 ああっ! 玄関 入っちゃった~。


 どぉしよ どぉしよ どぉしよぉ~っ!


〖彩桜、大丈夫だから声を掛けてごらん〗


【ドラグーナ様?】


〖うん。ランマーヤとも友達になれるよ〗


【ランマーヤ?】


〖こっちでは紗、だったかな?

 俺の孫が入っているんだよ〗


【へぇ~♪】


〖俺もランマーヤと話したいから仲良くなってね?〗


【うんっ♪ ドラグーナ様のお孫さんで、ランマーヤ様だったら~~、ランちゃんでいい? 神様だからダメ?】


〖いいよ。

 まだ眠っているから呼び掛けてあげてね。

 目覚めたら喜ぶと思うよ〗


【じゃあ紗ちゃんに『ランちゃん』?】


〖紗、ラン……鈴蘭ならランマーヤの親のアーマルが大好きな花だよ。

 ランマーヤの母はミュゲステラ。

 ミュゲの花から名付けられたと話していたからね〗


【ミュゲ……そっか♪ 鈴蘭だねっ♪】



―・―*―・―



【リグーリ様、ウンディ兄様の無茶なお願いに、あの怪我で頑張ってくださった彼にお礼がしたいのですが】


【治癒でも当てるのか?】


【はい】


【……私が行こう。

 奴を出した責任があるからな】


【僕の兄なんですけど……】


【私の同代だ。これを預かってくれ】

エィムの前に現れて死司衣を押し付けた。

【行ってくる】ニヤリとして瞬移。



―◦―



 リグーリが総合病院の正面玄関に着くのと、響の車が敷地内のロータリーに入るのは同時だった。


 病室に戻るまで待つか。


祓い屋達には見せるつもりで利幸に偽装し、玄関横の壁に凭れて待つ事にした。


 おいおい、また包帯が緩んでいるぞ。

 動き過ぎだ。

 流石ウンディの類友だな。


と、感心するくらいに、車から降りてもなかなか入ろうとせず、まだ話している。


「そうなのかっ!?

 そんならトシに会わせてくれ!

 昨日の約束、果たしたんだからなっ!」


「トシ兄ならそこに居るわよ」

「壁にもたれて笑っています」


「ええっ!? 見えねぇぞ!?」


「姿見せる気ないんじゃない?」「だよね」


「おお~いトシ~、俺は約束――」

〈分かったから早く病室に帰れよなっ♪〉


「お……聞こえたか? 聞こえたよなっ!?」


「トシ兄が言うように早く戻ったら?」

「看護師さんが駆けて来ていますよ?」


「ゲッ!」「荒巻さんっ!!」


ソラがサッと乗り、「「お大事に~♪」」

「おい待てっ――」発進した。


「乗せてってくれっ!!」「荒巻さん!!」

「うわっ!!」「死にたいんですかっ!?」


看護師に説教され、引きずられるように連れて行かれる勝利には見えないだろうと、リグーリは その後を追って行った。



 処置が終わるのを病室の隅で待ち、静かになったところで姿を見せた。


「トシ!!

 居たんならサッサと出やがれっ!!

 メチャクチャスッゲー怒られちまったじゃねーかよ!!

 それも聞いて笑ってやがったんだろっ!!」


「まぁな♪ なんせユーレイだからなっ♪

 ま、礼と言っちゃナンだが、痛み消してマシにしてやるよ」


「んなコトできるのかよ?

 トシユ菌のクセに」


「ま、ユーレイだからなっ♪」治癒♪


「ゲ……マジかよ……トシユ菌効果か?」


「ナンとでも言ってろ」治癒を強める。


「全部 痛くなくなっちまった……」


「だろ♪ 後は大人しくしてろよ♪

 じゃあなっ♪」スゥ~と消えた。


「無茶したのは お前のせいだろーがよ!!」


〈だから治してやったろーがよ♪

 頑張って生きろよなっ♪〉



「利幸……ありがとな……」ぐすっ――


乱暴にティッシュを取って涙を拭うと利幸が消えた場所を睨んだ。


「……迷ってないで成仏しやがれっ!!

 シブトイんだよっ!! トシユ菌!!」


また視界が滲んだので窓の向こうの空を見上げた。

「ったく……トシユ菌だよな……」あはは――




 窓の外のリグーリは泣き笑いな勝利を慰めるように治癒光を放って包み、上昇した。



 奴が神に戻れたならば、また会わせてやる。


 いや、わざわざ会わせなくても

 ウンディならば行くのだろうな。







リグーリの治癒でほぼ完治した勝利ですが、退院はもう少し後になります。

仕事復帰したら、また登場します。

けっこう真面目に働いているんですよ。



この日、エィムとチャムをしたり、利幸をしたりと忙しく世話焼きばかりのリグーリですが、そろそろ自分の事をしたら? とか思ってしまいます。

まだハーリィが幸せに浸っているなんて知らないからこその余裕なんでしょうけど。



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