ホントに父様?
根気よく丁寧に教えているエィムと、それを素直に聞いているチャムを離れた宙で見守っている者達が居た。
【やはり好き合っているのですね】
装束を黒に偽装しているミュムが微笑む。
【ま、エィム自身その気持ちに気付いていなかったのだろうな】
姿は老神のままだが、リグーリは普通に話している。
【素直じゃないからではないのですか?】
【それも、だろうな】
【ミュムも結婚したくなったのか?】
黒衣のハーリィが弟子に微笑みを向けた。
【それは……ですが互いに忙しいので……】
【相手は居るのだな?】【居る】
【僕の事は今は……】とっても困り顔。
【私が最高司補に成れたのでな、浄化域にも使いに出してやろう。
ロークスにも伝えておく。会えばよい】
【……ありがとうございます】
【そうか、リリムか。
それにしてもハーリィまでもが着実に出世していたのか……】
【リグーリの位置も必要だ。
比較的自由にオフォクス様とも話せるのだからな。
ま、弟子達が卒業したのだから、これからを考えるのも良いのかもな】
【だがディルムの位置には弟子達が入る。
俺は……このままが気楽だ】
【そういえばディルム様は?】
【月だ】【修行しているよ】
【そうですか……】
視線はエィムとチャムに向けたまま、今は見えない月に思いを馳せる3神だった。
―・―*―・―
マディアも月の皆の事を考えていた。
ティングレイスへの手紙を書類に込めたかったのだが、ザブダクルが居室からは出て来そうにはないものの眠らないので、迂闊な事は出来ないと判断した為だった。
カーマイン兄様達、元気にしてるって
言っちゃったけど会えてないんだよね。
会いたいな……。
イーリスタ様、あれから道
作ってないのかな?
また来てくれないかなぁ。
最近はよくザブダクルが読書をしている談話用のテーブルを見ていると、はしゃいでいたイーリスタの姿が浮かんで涙と溜め息が零れそうになったが、どうにか止めた。
ホントは僕、イーリスタ様
大好きなんだよね。
近づくと遊びたくなっちゃうから
仕事してる時とか困ってたけど……
一緒に飛びたいなぁ。
〖うんうん♪ そのうち行くからねっ♪
一緒に飛ぼ~ねっ♪〗
えっ!?
〖心閉ざしてるんでしょ?
マディアの声、反響してるから~♪〗
どうして!?
話してたらマズ――〖くないから~♪〗
???
〖これは~、マディアの心の中だけに届いてるんだよ♪
閉ざしてるんなら大丈夫♪
この前、んと、オフォクスが人世に行った時♪
首輪 見えたからソコんトコは、ちゃ~んと漏れないよ~にしてるからね♪
で、道 作っても壊しちゃうでしょ?
だから~、マディアの中の僕の欠片に絆 伸ばしてたんだ♪
コッチ繋がったから~♪
道 作るの再開するねっ♪〗
ありがとうございます!
〖もしかして泣いてる? ど~したの?〗
嬉しくて……。
〖そっか~♪ 僕も話せて嬉し~よ♪
ね、エーデちゃんは?
みんな心配してるんだ〗
エーデは……ザブダクルに封じられて、
その封珠は隠されてしまって……。
〖そっかぁ。
だからマディアは従ってるのか~。
じゃあ頑張って道 作るからね。
みんな強くなってるから取り返そうねっ〗
でも道は壊さないといけなくて――
〖だから今度はニセモノも作るからね♪
ホンモノは僕がこうして教えるからニセモノだけを壊してねっ♪〗
はい!♪
〖マディア寂しくない? 大丈夫?
父様が よしよししてあげよ~か?〗
え……?
〖僕の欠片に絆 繋いだって言ったでしょ?〗
それって、まさか――
〖そ♪ ドラグーナの次に大っきな欠片♪
ソレ僕の欠片だよ♪
初めてマディアが月に来た時、ソレ感じて行ったんだよね~♪〗
ホントに父様……?
〖うんうん♪ 父様だよ~♪
よしよし♪ 元気出してね~♪〗
はい♪ 父様♪
って……もしかして僕、
鳳凰と兎になれるの?
〖入ってるのは鳳凰が強いね~♪
本来、なれる程には混ざってないんだけどマディアなら修行 大好きだから鳳凰になれちゃうかも~♪
あ♪ 半々にならなれると思うよ♪〗
半々? ラピスリ姉様みたいな?
〖そ~そ~♪ 龍メインで~♪
鳳凰の頭や尾の飾り羽とか~♪
翼とか付いてるの♪〗
なんだかソレって……ちょっと……。
〖派手派手カーニバル♪〗
うっ……なれなくていいです。
〖鳳凰ダメ?〗
じゃなくて派手派手カーニバルが
ダメなんです! 目立つでしょっ!
〖そっか~、今はダメだよね~。
平和になったら なってねっ♪〗
イヤです!
〖ちょっと元気になったねっ♪〗
あ……その為に?
それじゃあ半々の話も?
〖半々なれるのはホントだよ♪
一緒に飛ぼ~ねっ♪〗
ああ~もうっ! あはははっ♪
〖派手派手カーニバルで飛ぼ~ねっ♪
音楽なら任せてねっ♪〗
イヤだってば! あはははっ♪
―・―*―・―
【ミュム、今夜は特に予定は無い。
リリムに会いに行くといい】
【いえ……今夜は……】
【ん? どうかしたのか?】
【あの……この事は、エィムには話さないでくださいね?】
【ふむ。約束しよう】【俺もな】
【リリムはきっとプラムを慰めているでしょうから……暫く会えません】
【ん?】
【それって、まさかプラムはエィムが好きなのか?】
【はい。ですからプラムがエィムをただの兄だと思えるまで、僕はリリムには会わないようにします。
プラムも可愛い妹ですので】
【だがプラムはミュムとリリムの事を知っているのだろう?
変な遠慮は、かえってプラムを苦しめるのではないか?】
【そうかも知れませんが……】
【ま、今夜は様子見でいいんじゃないか?
こればかりは俺やハーリィでは分からぬ事だろうからな】
【ふむ……ではミュム、エィムを頼む】
【はい】【何処か行くのか?】
【ひとつ思い出したのでな。
昼間、敵神を乗せたマディアが最果てを飛んでいたらしい。
その件で虎と獅子の里から呼ばれていた。
飛んでいた理由を調べねばならぬ】
【保魂域での騒ぎと絡んでいるのかな?
敵神を離す為に飛んだとか?】
【騒ぎとは?】
【ラナクスも知らなかったそうだがアーマルの尾が保魂されていたそうだ。
それが騒ぎを起こして、ルロザムールとエィムがアーマル他諸々を連れ出したらしい。
最終的には皆、オフォクス様が保護したそうだ。
マディアは勘が鋭い。
何かを察知して敵神を連れ出したのかもしれんぞ。アーマル大好きだからな】
【ふむ。それも理由に加えておこう。
だが調べてもみる】
【そうしてくれ】
―・―*―・―
ひとつだけ府に落ちてない事が
あるんですけど?
〖ナンでも聞いて~♪〗
共鳴を感じてないんですよ。
ただ……
近づくと無性に遊びたくなるんですよね。
〖あ~ソレね~♪
僕が揺らしてたんだよ~♪
共鳴よりも ずっと大きくねっ♪
あ・そ・ぼ~♪ って♪〗
どうしてそんな事を?
〖マディアと遊びたかったから~♪〗
……ウソですよね?
〖あ~今、じと~って目してるでしょ♪
伝わるんだよ~ん♪〗
誤魔化そうとしてますね?
〖んもぉ、マディアってばぁ〗
もう遊びませんよ?
〖仕方ないなぁ。
なんかさ~、ドラグーナに悪いな~って思っちゃってね~〗
悪い? どうして?
〖ホントに父なのはドラグーナでしょ。
ちゃんと育てたんだし~。
なのにヒョコっと僕も父だよ~♪
な~んて言えなかったんだ……〗しゅ~ん。
わっ、分かりましたから
落ち込まないでっ。
もう揺らさなくても遊びますからっ。
〖ん♪ マディア♪〗
はい?
〖大好きだよ♪ いいこいいこ♪〗
あ……なんか頬が熱いんですけど~。
〖照れなくていいんだよ~♪
父様に甘えてね~♪〗
はい♪ ありがと、父様♪
〖うんうん♪
派手派手カーニバルで飛ぼ~ねっ♪〗
それだけはイヤです。
〖引っ掛からないね~♪〗あははっ♪
トーゼン僕ですから♪ あははっ♪
―・―*―・―
マディアと楽しく話した後、イーリスタはポテッと伏せた。
「イーさま?」「大丈夫?」治癒!×2。
「マディア、元気になったから……僕は大丈夫だよ~~~ん……」
「「大丈夫じゃないでしょっ!」」
「だって~、繋がった途端マディアが寂しいって~。
僕に会いたいって~。
そんなの伝わっちゃったらムリしちゃうよ~」
「マディアと話したら」「また倒れちゃう?」
「次からはマディアにイッチバン近い時に話すから大丈夫だよ~。
執務してるマディアの背中が見えたら話しかけるからね~」
「執務?」「限定?」
「マディアがイッチバン落ち着いてるから~」
「「そっか~♪」」
「僕、ガンバルからね~♪」ぴょこんと座った。
「「うんっ♪」」ぴとっ♡×2。
久しぶりにイーリスタと話せたマディアは嬉しくて楽しい時間を得ました。
イーリスタが凄い大神だからこそ成せたんです。
それでも大変だったようですが。
マディアは派手派手カーニバルを断固拒否していましたが、イーリスタなら派手派手カーニバル兎を大喜びで しそうですよね。
リリムとプラムもエィムの代です。
リリムは浄化神です。
キメラ魂を連れた死司神達を案内していましたよね。
プラムは保魂神です。
エィムが好きだというのはエィムを除く同代全てが知っていました。
今どうしているのやら……ですので、そろそろ日付けは変わりますが延長戦です。