おてて繋いで仲良しさん
【ね、エィム♡
死司衣は? このまま仕事?】
【先に確かめたい事があるんだ】降下。
【ん♪】腕に絡まった。
【外ではベタベタしないでよ】
【真っ赤っか~♪】【煩い】【怒った?】
【本当に僕の弟なんて出来るの?】
【演技なら任せて♪
女優できるなんて嬉しくって♪】
【男なんだけど?】
【そういう意味じゃないのっ】
【それにしても何時何処で人世のドラマなんか見てるんだよ?】
【仕事しながら~♪ 神眼で~♪】
【ったく……】呆れ溜め息。【此処で待ってて】
【ええ~っ】【待ってろ】【はぁ~い】むぅ。
深夜の道をピクニックバスケットを抱えて歩く響と、並んで飛んでいるソラが話しているのが見えた。
ショウはバスケットの中で静かにしており、楽し気にその話を聞いていた。
エィムは姿を消して背後から近付き、ショウの内に神眼を向けた。
トリノクス様もアーマル兄様も
深く眠っているんだね。
これは……暫く目覚めそうにないな。
せっかく尾を見つけたのに……。
【神様?】
【あ……話せるんだ】人神なのに獣神秘話法。
【うんっ♪
トリノクス様が教えてくれた~♪
仲間の話し方なんだって♪
ね、僕ってヒビキとソラの お邪魔虫?】
【それは……まだ ぎこちないから、もっと近付けてあげたら?
そうすれば邪魔だなんて思われないよ】
【ん♪ でも ど~やって?】
【手を繋いで一緒に学校に通いたかった、とか話してたよ。叶えてあげたら?】
【神様ありがと♪
おてて繋いで仲良しさん作戦だね♪
始める~♪】【待っ――】上に逃げた。
〈ね♪ 探偵団は続けるよね?♪〉ぴょこ♪
ショウがバスケットの蓋を頭で押し上げるのと同時に、エィムは結界の外に浮かんで神眼を向けた。
〈もっちろん♪〉
〈僕……お邪魔?〉
〈何言ってるのよぉ。
みんなで探偵団でしょ♪〉
〈ソラは? イヤじゃない?〉
〈本気で結婚してくれるみたいだし、夫婦がペット連れてるのってフツーだよね〉
フイッと外方向いた。
〈ソラ、顔――〉〈真っ赤っか~♪〉
〈ショウ!!〉
〈なんで僕だけ?
『響!』って叫ぶの恥ずかしいんだ~♪〉
〈違っ! もうっ!!〉〈具現化~♪〉
〈またっ!?〉〈おてて繋いで帰ろ~ねっ♪〉
〈〈どーしてソレ知ってるのっ!?〉〉
〈ん?〉〈〈トボケないのっ!!〉〉
〈神様が教えてくれた~♪〉
【ショウ!?】【ん?】
〈〈いつ!?〉〉【僕の事は言わないで!】
【も~言っちゃった~♪】〈さっき~♪〉
〈〈え?〉〉見上げた。
【ったく……】【えへっ♪】エィム溜め息。
〈僕達の家を結婚式場にしてくれたからね〉
〈怒っ、、た?〉
〈いや……予約だけは忘れないで〉
ま、これはこれで面白いかもね。
エィムは微笑みを浮かべて姿を消すと周りを確かめ、ショウが他の死司神に狙われていない事に安堵して、そのまま瞬移して廃教会に戻った。
――着替えは一瞬。死司杖を手に首を傾げる。
「何か忘れているような……」「エィム!」
あ……忘れてた。「ヒドいじゃないの!」
「死司衣を持って行こうと思っただけだよ」
「ホントに~?」疑いの眼でジ~ッ。
「僕が忘れるなんて有り得ないだろ」
「そうね♪
かけがえのない妻ですものねっ♪」
「そういう意味じゃ――まぁいい。
それより、そのドレスは置いて。
仕事するよ」
「人用にできる?♪」
「当然。でもチャムがしないとね。
教えるから上に行こう」
「うん♡」手繋ぎ術移♪
――東の街上空。
【こっち?】【なんとなく来ちゃった♪】
【ま、いいか。
まずは偽装の術を教える。
と言っても尾に入っている筈だから、見つけて発動するだけ。
神力が足りていれば、それだけだから】
【足りてなかったら?】
【不発になるだけ。修行して高めて。
他の術も同様だし、知識も そうやって引き出すんだ。
チャムは どうにも手伝わないといけないらしいから手伝うけど、本当は自力で その方法を見つけるべきなんだよ。
尾の扱いは個々で若干違うからね。
で、試験の申請はチャムの分もしてる。
朝からだからね、今夜中に引き出し方は完璧に覚えて】
【ええっ!?】
【一緒に潜入するんだよね?
それなら頑張って】
【頑張るわよっ!!
偽装よね? 偽装……偽装……あった♪
こんな長いの!?】
【最初は唱えて。
慣れれば短く出来る。
ただし唱えて発動するのの5倍以上の神力が必要になるからね。
……僕の欠片を利用して】
【うん♡】またエィム真っ赤っか~♪
―・―*―・―
マディアはザブダクルに回復光を当て、ベッドに横たわったザブダクルは静かに それを受けていた。
「マディア、執務も残っておるのだろう?」
不意に言葉を向けられたマディアは、また『エーデ』ではない事に少し違和感を覚えたが顔にも思考にも表さず、穏やかな微笑みを保った。
「はい。ですが常の事ですので明日でも構いません」
「儂を優先してくれるのか?」
「はい」
「その……エーデラークの姿は術か?」
「はい。偽装の術です」
「この姿にも成っておったな」
「はい。術ですので何にでも」
「獣神だけの術か?」
「そうではありませんが獣神は得意です」
「そうか……」
禁忌について頼むなら今かな?
でも続けては嫌な顔されるかな?
「マディア」
「はい」
「ひとつ……頼んでもよいか?」
「はい」
「今朝の話、ルサンティーナは生きていると本当に思っておるのか?」
「はい。
証拠も何も無い、ただのカンですけど」
「そうか……少し考えたい。
……ルサンティーナの姿を……見せてはくれまいか?」
掛布から手が出ていた。
躊躇いつつもマディアが その手を取ると、やわらかく微笑むルサンティーナの姿が流れて来た。
あれ? 今、一瞬――
過ったものは慌てて思考から追い出した。
「では――」
立ち上がり、見えたままの姿に変える。
「――これでよろしいですか?
ザブダクル様」
声も変えてみた。
「ルサンティーナ……声までも……」
驚き見開いた瞳から幾筋も続けて涙が流れた。
―・―*―・―
【エィムそっくり? できちゃった?♪】
【そうだね。今の僕の姿にね。
ちなみに――】偽装を解いた。
【え……】兄ちゃま? カッコイイ♡
【――こっちが僕の本当の姿だよ。
僕はチャムに合わせて、常に偽装を保っているんだ。
チャムはオフォクス父様の偽装で、いつもの姿に固定されてるんだ。
戻したらチビッ子だよね】
【今 私、偽装に偽装を重ねてるの?】
【そうだよ。
難しくないって分かった?】
【うん♪ カンタンねっ♪】
【でも保つのは容易じゃない。
他の術を唱えたら偽装が解けてバレるとか最悪だからね】
【そっか。ずっとなのよね……】
【ま、その点は完璧でないと意味が無いから、オフォクス父様に固定し直してもらうけどね】
【それじゃ何の為に練習したの?】
【尾の扱いに慣れる為。
それと、ドレスを人用にする為】
【あ♪】
【具現化に偽装を重ねるんだ。
ただし、人という物質を知らないと無理。
だから――】結界の外の地に瞬移した。
【――今度は人に偽装する練習だよ】
【うんっ♪】
―・―*―・―
ザブダクルが、ルサンティーナ姿のマディアへと伸ばしていた手は無意識だったのか、跳ねるようにピクンと止めると掛布の中に戻した。
「すまない……ありがとう。
考えたい……執務に戻ってくれ」
もそっと背を向けた。
「失礼致します」執務室へ。
「ルサンティーナ……」
窓の外で輝く青い星を見詰める。
「オーロザウラに何をされたのだ……?」
帰ってくる筈の無い答えを待っていると、また涙が流れてしまった。
―◦―
さっき一瞬だけ赤い瞳のルサンティーナ様
見えたよね? 怒ってたよね?
そういうコトもあったのかな?
だとしたら……でも黒ローブの赤い瞳とは
違ってたから、それとこれとは別?
閉ざした心の内で悩むマディアだった。
獣神狩りを終わらせた事でルサンティーナには許してもらえたと思っているザブダクルですが、マディアにも その姿が流れてしまったようです。
そうとは知らないザブダクルは会いたさを募らせています。
エィムとチャムの方は順調に仲良しさんになれたようですね。