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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団外伝  作者: みや凜
第一部 第1章 ショウと力丸
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想いの欠片だらけ



 すっかり夏が過ぎて秋らしくなってきた飛翔の命日の数日前、瑠璃は利幸がショウを散歩させに来るかと戌井家で待っていた。


〈来ないねぇ。おさんぽ行きたいな~〉


〈仕方ないな。行くとするか〉


〈うんっ♪〉〈ごめんね、瑠璃〉


〈飛翔が謝るような事ではない〉ふふっ。

ショウを連れて出掛けた。



 傾いた日射しにも秋を感じつつ、ショウと話しながら歩いていると――


〈トシ兄だ~♪〉


――ブランコだけしかない小さな三角地の公園を過ぎようとした時、その向かいのアパート裏に見える建物から利幸が出て来たのが見えた。


〈確かにな。寄り道していたのか〉


〈行こっ♪〉〈そうだな〉



 ワン♪ 「利幸、何をしている?」


ドアを開けたままお辞儀していた利幸が、顔を上げて閉めるのを待ってから声を掛けた。


「うわっ!? なんだ瑠璃かよぉ。

 ショウの散歩かぁ?」


「利幸が来なかったからな。

 で、此処は?

 丑寅(うしとら)硝子細工工房?

 何の用だ?」


「いや~、配達員の募集してたからな、飛び込みで面接だ♪」

ドアの貼り紙を指す。


「利幸が?

 万事雑な利幸にはガラスを運ぶなんぞ無理だろう」


「ったく容赦ねぇよなぁ」


「利幸には向こうの運送屋の方が合っていると思うのだが?」


「お♪ あっちも行ってみるか♪」

もう足は進んでいる。


「頑張れ」「おうよ♪」



 楽し気な後ろ姿を見送り、社名が中央に縦並びに表示され、その両側を細長いステンドグラスで装飾しているドアに目を向けた。


〈先程から見ておられるが私に御用でも?〉


〈やはり気づいておられましたか〉


硝子工房から女性が出て来た。

「ここの専務をしております嶋崎(しまさき)と申します。

 そこのマンションで友人と探偵もしておりまして、貴女の力を是非ともお貸しいただきたいのです」


「今のところ生業(なりわい)に忙しく、探偵は無理なのですが?」


「そうですか……」

〈では……裏として祓い屋は如何でしょう?〉


〈其方のお話がメインなのですね?〉


〈今日はイキナリでしたので、後日また改めてお話しだけでも如何でしょうか?

 茶畑(さたけ)探偵事務所と表札を出しておりますので。

 当然ながら此方はいつでも構いません〉


〈では……気が向いたら、という事で構いませんか?

 獣医をしております、輝竜と申します〉


〈きりゅう動物病院の♪

 茶畑の猫もお世話になっております♪〉


〈やはりルンちゃんの――あ、では〉


隣の建屋から男性が出て来たので話しを()め、会釈して背を向けた。


(てる)、帳簿のここだけど――』

『兄さん、中で話しましょ♪』

『ご機嫌だな……』『ほらほら♪』


そんな声を聞きながら離れた。



〈ルリ♪ 祓い屋さんするの?♪〉


〈祓い屋になってほしいのか?〉


〈僕もなりた~い♪〉


〈は?〉


〈タカシ、アーチェリーでカッコイイの♪

 ヒュ~ンなんだよ♪〉


 確かにアーマル兄様ならば

 弓の扱いには長けていたが――


〈それにね♪

 サクラも祓い屋さんになるんでしょ♪

 だから一緒になりたいんだ~♪〉


〈ショウが本気で祓い屋になりたいのならば、その魂の濁りを何とかせねばならぬな〉


〈ソレなぁに?〉


〈ショウが飛翔の力を使い(こな)す為には、魂に紛れ込んでいる『想いの欠片』達が邪魔となるのだ。

 その欠片達の想いを昇華させねば祓い屋は無理であろうな〉


〈欠片? 想い? 昇華って???〉

〈どうすればいいんだい?〉〈タカシ~♪〉


〈ごく小さな欠片ならば、話を聞いてやるだけでも昇華するだろう。

 会いたい者に会わせ、行きたい場所に行く等して叶えてやれば想いは充たされ、欠片は消える〉


〈全国行脚?〉


〈そうなるな。

 欠片から聞き出してくれれば出掛けるのは協力しよう。

 流石に国外は無理だがな〉


〈外国の場合は?〉


〈確か義弟作の魂込(たまこ)めの水晶が有った筈だ。

 全世界を飛び回っている義父母に託そう〉


〈キリュウ夫妻に!?〉


〈驚く程の事か?〉


〈あ……そうだね。

 国内でも遠い場所は誰かに託せればいいんだけどな……〉


〈そうだな……ふむ。良い御方が居られるな。

 頼んでみるとしよう〉



―・―*―・―



 丁度その頃、奥ノ山の社では――


〈狐儀様、力丸なのですが――〉


――狐儀と交替で力丸の修行を見ているバステートが現れ、前日の報告ついでに相談を持ち掛けた。


〈相変わらず集中が続かず散漫なのは、多過ぎる欠片のせいではないかと思うのですが……〉


〈やはりそうですか……では、欠片を処理しなければなりませんね。

 力丸が戻りましたら内を探りましょう〉


〈力丸は――ああ、木通(アケビ)取りに夢中なのですね。

 修行もあのくらい夢中になってくれればよいのですが〉苦笑。


〈甘いものが大好きですのでね〉ふふっ♪



―◦―



 コレもまだ熟れてないなぁ……

 コッチもまだかぁ……

 お師匠様ってば、

 どこで熟れてるの取ったんだろ?


《もう少し山裾の谷なら熟れてる筈だよ》


〈誰っ!?〉


《俺はこの近くで(きこり)をしていたんだ。

 炭焼小屋が気になって仕方ないんだよ。

 確かめたいんだよなぁ》


〈どこから話してるんだよっ!?〉


《キミの内側だよ》


〈えええっ!? チョイ待てっ!

 お師匠様に相談すっからっ!

 勝手に出てけないんだからなっ!〉


《ありがとうな。頼んだよ》



―・―*―・―



〈その、魂込めの水晶とやらに欠片を全て移したら済むんじゃないの?〉


〈繋がりは切れぬ。

 故に昇華させなければ終わらぬのだ〉


〈どうしてもそうなるのか……〉


〈なんか面白そ~♪〉《助けてくれるの?》


〈〈〈あ……〉〉〉


《会いたいんだ……家族に……》


〈早速、欠片からの依頼だな〉


〈さっきの探偵の話、引き受けて手伝ってもらうのはどうかな?〉


〈ふむ……依頼人として関わるとするか〉


〈ありがとう、瑠璃〉〈やった~♪〉

《ありがとう……》



―・―*―・―



〈お師匠様! お師匠様っ!!〉


〈どうしたのです?〉


〈俺の内側からキコリってヒトの声が聞こえたんです!

 炭焼小屋が気になるから確かめたいって!

 行っちゃダメですかっ!?〉


〈行き先は判っているのですか?〉


〈え……? っと、どこだろ……〉


〈内の方に問いかけてごらんなさい〉


〈はい♪ キコリのオッサ~ン!〉


《オッサンはヒドいと思うなぁ》


〈あ♪ じゃあどう呼んだらいいんだ?〉


《そうだな……樵だけでいいよ。

 あ……タカギと呼ばれていたような……》


〈ふ~ん。じゃあタカギでいいか?〉


《それで頼むよ。

 小屋の場所……この山の空気感で近くだとは思ったんだが……》


〈近くに小屋なんてあったかぁ?〉

〈貴方の生きていた時代を探らせて頂きます〉


《ほう、真っ白な狐とは……。

 お稲荷様のお使い様ですか?》


〈そのようなものです〉ふふっ。

〈偉い神様なんだぞっ〉


《じゃあ俺はお使い君の中に居るのか?》


〈俺には様は!?

 ナンでお師匠様もタカギも笑うんだよ!?〉


〈力丸、おとなしくしてくださいね〉

額に手を翳した。



―・―*―・―



〈でも どうして今、急に声が聞こえるようになったんだろうね?〉


〈怨霊退治に関わってきたのだろう?

 程よい修行となり、自然と各々の力が高まってきたのではないか?

 そこに欠片の事を知り、意識が向いた事で欠片からも声を掛け易くなったのだろうな〉


〈どうすればもっと聞けるようになるの?〉


〈心を静め、内に意識を向ければよかろう。

 飛翔もショウに付き合ってやれ〉


〈うん。そうするよ〉

〈修行って楽しそ~♪ 僕ガンバル♪〉



〈あ……〉


〈どうした飛翔?〉


〈瑠璃は利幸に用があったんじゃ――〉


〈! 忘れていた。

 ま、明日でよかろう〉苦笑。







街で犬として暮らすショウフルルと山で狐として暮らすダイナストラ。


その両者と縁のある輝竜兄弟。


街では本編で登場した人やユーレイ達がすれ違ったり、軽く関わったりしつつお話が進んでいきます。



今回は、トウゴウジの息子でアパート・モーガオハイツの大家、ガラス職人の(さとし)と。

その妹で、哲の工房の専務であり、茶畑(さたけ)と共に探偵をしている祓い屋の(てる)が登場しました。



生きている利幸や小夜子の場面は書いていても切ないのですが……。

人には永遠はないので、時の流れと捉えてください。m(_ _)m



って!

ユーレイ外伝 第一部 第1章でメインのショウも、時々通りすがるカケルも、本編ではユーレイですよね!



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