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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団外伝  作者: みや凜
第二部 第9章 激戦の翌日
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最果て視察を終えて



〖ルロザムール殿、クウダーム様なのでしょう?〗

疑問形だがアーマルの声には自信が窺えた。


【それが……クウダーム様にはカイダーム様という双子の兄神様がいらっしゃるのです。

 ですのでクウダーム様から抜き取った神力や記憶の一部なのか、カイダーム様の欠片なのかは私では判らないのです】


〖兄神様がいらしたのか……ふむ。

 カイダーム様は今は欠片なのですね?〗


【はい。小さな欠片です】


〖そうか。

 ではクウダーム様は兄神様を捜しているうちに禍に触れてしまったのか。

 禍の影響は祖父達が滅したが、ご記憶が欠けているようだと仰っていたのだ〗


【そうでしたか。

 私が支配から目覚めた頃の話ですので、もう3ヶ月程前となりますが、月でも日々 思い出そうとなさっておられましたが難しいご様子で、皆様が励まし、神力を注いでいらっしゃいました。

 カイダーム様の欠片は、保護魂と、神力を保護魂の如く集めたものに包まれておりました。

 再誕を目指しているのですとか】


〖では、古のお話は伺えなかったのですね?〗


【はい。伺えていれば今、有利に動けると思うのですが……】


〖それは どういう……?〗


【順を追ってお話し致しましょう】



―・―*―・―



「そろそろ1周し終えますが、この後は如何なさいますか?」

半周は早々に通り抜けたのだが、残り半周は速度も落としたし、説得したり、ザブダクルに説明したりと時を要したので、夕の気配を漂わせ始めた陽を見つつマディアが尋ねた。


「神王殿に」


「畏まりました」

今朝 出発した王都の真北に戻ると、南へと方向転換した。



―・―*―・―



 きりゅう動物病院の休憩時間。

響は狙って その時間に訪れ、受付カウンターの呼び鈴を鳴らすと男性獣医が出て来た。


「ショウは引き取れますか?」


「ええ。眠っていますが、もう元気になっていますよ。

 犬用ミルクもお渡ししますね。

 移動用の――あ、バスケットですか」


「ピクニック用じゃダメですか?」


「まだヨチヨチですから大丈夫ですよ」

にこにこと奥に行った。



 抱き上げられて撫でられても眠っているショウに響は少しだけ不安を感じたが、バスケットに敷いた柔らかいタオルに気持ち良さげにモソモソもぐったのを見てホッとして手を伸ばした。


「あっ、撫でてもいいですか?」


「もちろん大丈夫ですよ」

受付カウンターにミルクのパックを並べた。

「店の方にも置いていますので」


「えっと、おいくらですか?」


「これはサービスですよ。

 与え方はパックに書いていますので、よく読んでくださいね」


「ありがとうございます♪」

タオルを寄せてバスケットに並べた。


「では、何かあれば何時(いつ)でも遠慮なくいらしてくださいね。

 何もなくても1週間後に健康診断させてくださいね」


「はい♪」



 響が帰ってすぐに彩桜が駆け込んで来た。


「青生兄、ショウは?」


「さっき紗桜さんが連れて帰ったよ。

 今日は遅かったんだね」


「部活あったのぉ。

 瞬移したかったのに先輩が一緒に帰ろうって離れてくれなかったのぉ」


「初めての友達?」


「違うと思う~。

 廃墟が好きなんだって~。

 ウチ、廃墟じゃないもん。

 だからコッチ来たの~」


「そう、廃墟ね。

 紗桜さんのお宅なら知っているよね?

 会いに行ってみれば?」


「知ってるけどぉ」


「来週また健康診断に来るよ」


「ん♪ それじゃ店番しに帰る~♪」


「あ、犬用ミルク、持って帰ってよ。

 紗桜さんに店にも置いてあるって言ってしまったんだ」


「ん♪ でもミルクだけ?

 哺乳瓶とか離乳食とかは?」


「ショウだからね、哺乳瓶は要らないと思うんだ。

 すぐにパピー用の餌になると思うよ」


「そっか~♪ 黒瑯兄のクッキーだねっ♪」



―・―*―・―



「ぜんぜんできな~いっ!」再び大の字。


「チャム、その程度の事が出来ず、短時間で諦めようとしておるのか?」


「父ちゃま助けてよぉ」


「此れ程までとは……」掌に水晶玉を出した。


「え? 何するの?」


「ラピスリが話した通りだ。封じる。

 エィムも人世に残して行くと言っておった」


「ええっ!? イヤよ!!」


「今のままではエィムの邪魔にしかならぬ。

 ま、昇格試験にも合格出来ぬ様では下位職神として人世で働くより他に道は無かろうがな」


「勉強くらいするわよ!!」


「エィムは次々と受験し駆け上るつもりだ。

 最近日の試験から始めるのであろう」


「そんなぁ」


「大人しく此処で修行するのならば封じはせぬが、エィムの気持ちも解らず、努力も足りぬ現状では封じるより他に手は無い」


「エィムの気持ちって……?」


「チャムとの絆を結んで貰った際にマディアの心の涙を垣間見てしまったそうだ。

 酷な事を頼んでしまったと言っておった。

 もしもチャムが敵神に捕らえられてしまったなら、マディアの様に耐え、仮面の裏でのみ泣くなんぞ出来ぬ、平常心を失うは必至だと。

 故に今は心を鬼として冷たくあしらい、チャム自身が離れてくれる方向に行動すると言っておった」


「そんなぁ……私、捨てられちゃうの?」


「未だ解らぬか。

 エィムはチャムを護りたいが為に無理をしておるのだ。

 チャムをあ――」天を仰ぐ。


「あ? 父ちゃま『あ』って何?」


「一時 封じる」「えっ!?」

短く唱えると、チャムは水晶玉に吸い込まれた。


【オフォクス様、失礼致します】

エィムの声がした直後、ルロザムールと共に現れた。


「保魂域から獣神魂を回収しました。

 水晶か何かに移させて頂けますか?」

オフォクスの手の水晶玉を見ている。


「ふむ。用意する」

手の水晶玉は棚に置き、奥へ。


「その水晶は?」


「呪を封じたものだ」

水晶玉が入った木箱を抱えて戻った。

「魂は多いのか?」


「はい。50魂程です」

「それとカイダーム様かクウダーム様の欠片も御座います」


「!?」驚きで目を見開いた。


「僕が抱いているのはアーマル兄様の尾です」


「尾だと!?」


驚くオフォクスの横にフェネギも現れた。

「姿を成した時には尾もありましたよ!?」


「僕もショウの内の兄様に尾を見ていました。

 ですが、尾のみでも兄様は全身を成せるんです」


「ふむ。

 アーマル程であれば可能であろうな。

 ドラグーナも各々が全身を成せるのであるからな」


「兄様に尾を合わせられますか?」


「今は眠っておる。

 目覚め、神力が確かとならねば無理であろうな」


「では兄様も水晶にお願い致します」


「ふむ」



―・―*―・―



 ナターダグラルなザブダクルは神王殿の廊下を足早に歩いていた。

後を追うマディアは人神姿のエーデラークになっている。


 飛ばないんだよね~。

 飛んだ方が早いのに。

 これも人神のプライドなのかな?


 あれ? あの人神様……第1位公爵様?

 なんか……会わせちゃいけない気がする。

 カンだけど。


「ナターダグラル様、助言の間にどうぞ」

すぐ近くだったのでサッと扉を開けた。


「王は謁見の間であろう?」


「此方でしたらナターダグラル様も座って話せます。

 その……お身体が心配なのです」


「そうか」

なんだか嬉しそうに入った。


「王をお呼びして参ります」


「宰相も呼べ」


「はい」



 謁見の間へと進む途中、第1位公爵と礼を交わして すれ違った。



 やっぱり会わせなくて正解だったね。

 ザブダクルは、たぶん誤解だろうけど

 カイダーム様とクウダーム様を

 憎んでいるもんね。


 これだけ似た気なんだから

 どちらかの御子だよね。


 それに第1位公爵様って――


「おお、エーデラーク様」

揉み手しそうな愛想笑いを浮かべて宰相が近寄って来た。


「宰相様、突然 申し訳ございません。

 死司最高司様が陛下と宰相様とにお話しなさりたいと助言の間でお待ちなのでございます」


「ではではすぐにっ!

 陛下をお連れ致しますのでっ!」

大慌てで飛びながら走って行った。


 飛ぶんだったら走らなくても~。


苦笑するマディアだった。







夕方になりましたので、ここからは本編も絡みます。



月に居た頃にルロザムールが見たカイダーム・クウダーム兄弟のその後も気になりますが、道が滅されてしまいましたので、分からないまま進むしかありません。

せっかく回収した欠片も保管するしかありません。

(私が忘れてしまいそうです)



さて、父に封じられてしまったチャムは、どうなってしまうのでしょう?



その前に神王殿の方を片付けますけど――


〈そんなの許さないんだからっ!〉


――ええっと、両方とも片付けます。



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