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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団外伝  作者: みや凜
第二部 第9章 激戦の翌日
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保魂域の騒ぎ



 ルロザムールとエィムは姿を消したまま保魂域の門をくぐった。


【あ、やっと見えるようになりました。

 もっと神眼も鍛えないといけないんですね】


【見えないのは強い結界が在るからです。

 ですが鍛えておくに越した事はないのでしょうね】


【それも頑張ります。

 それで……騒がしくなっているは、何をする場所なのでしょう?

 部屋の中も見えないのですが……】


【あの辺りは鎮魂エリアだと思います。

 ですので獣神様の魂が暴れているのではないかと……】


【このまま入りますか?

 獣神の魂なら僕が話せば落ち着かせられると思います。

 出来れば連れて出たいのですが……】


【そうですね。

 では正面から堂々と入りましょう】


【えっ?】


【私にお任せください】



 門前に瞬移して戻って姿を見せると、慌てた様子の保魂中位神が飛んで来た。


「死司域にまで聞こえてしまいましたか!?」

『鬼のルロザムールが来てしまったぁ!』と書いているかのような表情だ。


「はい。何事なのです?」


「50年近くも静かだった魂が突然 暴れだしてしまい……最高司様も不在で……」


「死司も最高司様は不在なのです。

 ですので、双方お戻りになられる前に」

イミシンな笑みを浮かべた。


「エーデラーク様も?」


「はい」


「此方のラナクス様も不在なのです」

合点したと頷いた。


「入ってもよろしいですか?」


「どうぞ! お願い致します!」



 スキップしそうな喜びようで先導していた保魂中位神が鎮魂室前の神集(かみだか)りを見て止まった。


「まさか誰も残っていないのか!?」


一斉に振り返る。

「居られませんよ。なぁ?」


そうだそうだと皆が頷く。


「他の魂に連鎖したら如何にする!?」


皆、ビクンと首を竦める。


「まぁまぁ此処は私共に」肩とんとん。


「お願い致します!」腰直角の礼!


「皆様、この事は此処だけに留めて頂けますね?」

ルロザムールは穏やかに尋ねているが、有無を言う余地は皆無と皆に伝わった。


口を押さえてコクコクと頷く集団が左右に捌けた道をルロザムールとエィムは進み、扉を開けずに抜けて入った。


「皆、よく聞け。

 この事が知られれば処分されるのは間違いない。

 下手をすれば、浄魂された上、この部屋に保魂されるぞ。

 肝に銘じて口を閉ざせ。よいな?」


口を押さえている集団、激しくコクコク!



―◦―



 鎮魂室内では既に連鎖反応が起こっており、多くの獣神魂が目覚め、侵入者に対して威嚇している状態だった。


【目覚めているのは廊下の皆様では手に負えそうにない強い獣神様ばかりですね。

 それを理由に全て回収してもよろしいでしょうか?】

エィムは落ち着いてくださいと思いを込めて浄化を放った。


【それでは室内の魂が激減してしまいますね……では、似たようなものを具現化して頂けますか?】


【あっ、はい!】


【それに持ち出す数も多い……偽装の力もお持ちですか?】


【はい。オフォクス様に狐の力を頂きましたので】


【でしたら取り込めるだけ取り込み、無理な分は別の何かに偽装して持ち出しましょう】


【やってみます!

 あの……取り込む、とは?】


【良い機会です。お教えしましょう。

 高位再生神の得意技です】


【はい♪】


この間、睨み合いを保っていたが――


【動きましたよ!】【首謀者ですね!】


エィムは龍に戻り、突進して来た魂を抱き止めた。

【もう大丈夫です。

 安全な所にお連れしますので落ち着いてください】


〖エィム……か?〗


【えっ?】


球状の魂が長く伸び、形を成した。


【龍の尾……この鱗色……アーマル兄様?】


〖やはりエィムか!♪〗


他の箇所も淡く形を成し、微笑んだ。

〖再び会えて嬉しいぞ♪〗

仄かに紫を帯びた特徴的な銀鱗の龍尾が喜びを露に揺れた。

揺らす毎に全身が確かになっていく。


【アーマル兄様……まさか尾を切られていたなんて……兄様らしさに欠けていると感じたのは、そのせいだったのですね】


〖長過ぎて人魂に入らなかったらしいな。

 僕の他の部位は?〗


【人世に。

 再生したばかりで眠っていますけど】


〖無事ならば、それで良い〗


【でも どうして暴れるなんて兄様らしくない事をしたんですか?】


〖静かにしていれば如何な形であろうが此処から出られるだろうと思っていたが、長く放置された挙げ句、危険過ぎるからと浄滅が決まったと聞こえたのだ。

 この結界から出さえすれば、希望は残っていると踏んで暴れてみたのだ〗


【残っていましたね♪

 では、人世のオフォクス様の社に行きましょう】


〖そうか。頼む〗


【アーマル様。

 ハーリィの相棒、ルロザムールです】


〖懐かしいな! ルロザムール殿とは!〗


【閉じ込められていた獣神様を可能な限り取り込むつもりなのですが、アーマル様にもお願い出来ますか?】


〖勿論だ! 今に限っては都合の良い事に僕は尾のみ。しかも魂だ。

 かなり入るぞ♪〗


【そうか……尾は器。身体という限りも無い。

 そういう事ですよね? 兄様♪】


〖そうだ。やはりエィムは賢いな〗


【では急ぎましょう】【はい!】〖うむ〗



―・―*―・―



「マディア」


「はい」


狐の里を過ぎて以降、黙り込んでいたザブダクルに呼ばれたマディアは、現実に引き戻されたかのような気分で気を引き締めた。


「あっ、忘れていました。不通甲、解還(カイカン)


「この光は?」


「防壁を解きましたので、代わりに甲でお護りしただけです。

 何か不都合がありましたか?」


 ホントは強破邪で滅さないように♪


「いや。不都合なんぞ無い。

 そうであったか。ありがとう。

 ……マディアの父は王であったのだな」


「あ、さっきの、ですよね?

 父を王と呼ぶ獣神は多いのですが、父は王ではありません。

 あの『王』は愛称なんです。

 大袈裟な愛称で父も困っていました。

 だからこそ皆様、面白がって呼ぶのだと思うんです。


 龍は小動物神様から恐れられていました。

 見た目も力も大きくて厳ついので。

 それを変えたのが父なんです。

 父は小動物神様の里も護っていたんです。

 禍が現れたら滝に転送させたり、大型獣神様が よく見ずに走っていたら声を掛けて止めたり。

 滝に居ても沢山の里に、ずっと神眼を向けて護っていたんです。

 鳳凰の里を護って以降、そんな優しい父ですから『王』なんて愛称が付いてしまったそうなんです」


「そうか……」ほっ。


 ん? どうして安堵?

 あ、『王』が大嫌いなんだよね?

 王子を配下にするのも嫌なんだね?


もしもザブダクルに聞こえていたなら、『そうではない』と拗ねそうな事を考えているマディアだった。



―・―*―・―



「静かになって随分と経ったよな……」

「威嚇も感じられなくなったよな?」

「そうだな」


廊下の保魂神達がコソコソ話していると鎮魂室の扉が開いた。


「連鎖が起こり、多くの獣神魂が目覚めて騒いでおりましたが、その全てが眠りに戻りました」


「ありがとうございます!」一斉!


「ただ……」

エィムが抱えている魂に目を向ける。

「この魂だけは再び暴れ兼ねません。

 一先ずお預かりして封印し、落ち着きましたならば死魂として浄化域に運んでもよろしいでしょうか?」


「お願い致します!」また一斉!


「では、この事は無かった事に」

威圧感たっぷりの視線を巡らせる。


「はい!!」またまた一斉!


ルロザムールとエィムは微笑みを湛え、堂々と保魂域を後にした。



 現世の門を通り、降下を始めてようやくエィムは疑問を口にした。


【獣魂に包まれている眠ったままの人神魂を取り込みましたよね?】


【はい。月でお会いした方ではないかと感じましたので。

 オフォクス様でしたら お判りになるのではと取り込みました】


【月、ですか?】

見上げると、昼間の白い月が淡く浮かんでいた。


【はい】〖月にも四獣神様がいらっしゃる〗


【月にも!?】


〖そうだ。

 滝から転送した禍と戦っておられるのだ。

 つまり月にも神は住んでいる。

 それと、その人神様は僕も知っている方のように思える。

 エィムも知っている筈だ。

 僕を追って来て、話を聞いたのだからな〗


【あっ!】







飛翔の中のアーマルが賢神アーマルらしくなかった原因が暴れていました。


アーマルの半分が二度目の門前逃走をしたので、鎮魂中の半分を滅してしまおうとしていたようです。


保魂域での『鎮魂』とは、堕神にする前の魂を落ち着かせることで、強い獣神魂を時間を掛けて眠らせようとしているんです。

ま、劣化した人神の神力では、そう易々と眠らせられませんけどね。


という事で、鎮魂中の獣神魂をゴッソリ回収したエィム達はキツネの社に向かっています。



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