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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団外伝  作者: みや凜
第二部 第9章 激戦の翌日
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最果てを飛ぶ④:東~北東



 オフォクスが黙って瞑想を続けたので、放置されたチャムは持って来てしまったドレスを人用に変えようと奮闘していた。


「もうっ! どうして!?」イライラ爆発!

ゴロンと大の字になってドレスを放り上げた。



 膨れっ面に落ちてきたドレスをそのままにしていると――


「出来ていないのは分かるのですね」くすっ♪


――上から声が降ってきた。


「あ♪ コギ兄ちゃまとメイお姉さま♪

 今度こそメイお姉さまよねっ♪

 これ、どうしたら人用になるの?」


「簡単な事です」

サッと手を翳しただけで人世物質化した。


「ありがと♪ コギ兄ちゃま♪」


「戻しますね」サッ。


「ええっ!?」


「頑張ってください」ふふっ♪


「そのままで良かったのにぃ~」


「修行なのでしょう? 努力なさい」



―・―*―・―



 あ、そうだ。

 昇格試験を受けないといけないんだった。


エィムは小部屋から出た。


「チャム? ……何処に行ったんだ?

 ま、今 受けても無理だよね」

独り言ちて死司域に向かった。



―・―*―・―



「今度は狐か……」


気が炎と化しそうなくらいに殺気立った狐がマディアの前方に浮かんでいる。


「そうですね。

 獣神狩りが人神嫌いを激しくしましたので」


「しかし下から見ればマディアが飛んでいるだけであろう?」


「人神の気に過敏になっているんですよ」


「気、か……ふむ。

 獣神狩りは廃止させる」


「え?」ホントに?


「皆、マディアの仲間だ。

 マディアの辛そうな気は、その……儂をも巻き込むのでな。

 儂の気を乱すものは廃止させる」


「ありがとうございます!♪」


「そ、そう、か……」喜んでくれたのだな?


と、話している間にも、前を塞ぐ殺気立った狐が増えている。


「あの……それを伝えてもよろしいですか?」


「ふむ……その為の視察とせよ」


「はい♪」

〈狐神様、勝手に上を飛んで すみません!

 獣神狩りを廃止する為の視察なんです!

 どうか通してください!〉


〈お前、人神に飼われている龍だろ?

 騙そうたって、そうはいくかよっ!〉


 声の主らしい灰狐は跳ぼうとしたが、リーダーらしい白狐に尾を引かれて後ろに下げられた。

しかし白狐は攻撃を止めたのではなく、近寄るなと止めただけだったらしい。

視線を流したのが『放て』の合図だったらしく、一斉に炎や雷や氷槍が放たれた。


〈防壁!!〉

攻撃が回り込んで来るのは分かりきっているので、マディアは球体の壁を成した。

〈攻めに来たのではありません!

 どうか攻撃をお()めください!〉


全方位からの攻撃が、激しい雹のように防壁に当たり、弾かれて消える。


「聞かぬならば儂が――」

「いえ、解ってもらわなければ、この先も繰り返す事になります。

 説得を続けさせてください」


「ふむ……」


「我が儘ばかり申し訳ありません。

 ありがとうございます!」

〈此方は攻撃しません!

 どうかお聞きください!〉


狐達からの攻撃は止まず、返事すら無い。


「マディア――」「まだ手はあります」


 これだけは言いたくなかったけど――


〈僕はドラグーナの子です!

 神世の為、獣神の為を第一に考え、動いています!

 どうか お聞きください!〉


〈攻撃()め!

 王の子だと? 証拠を見せよ!〉


〈父から受け継いだ力でしたらお見せ出来ます!〉


〈攻撃は()めておく。

 その結界を解き、確かめさせよ〉


〈はい〉防壁を解いた。「不通甲(フツウコウ)」「何?」


ザブダクルを淡い光が被った。


〈では――〉

気を高めるにつれ鱗が輝き、薄紅色に変わる。

〈――強破邪!!〉

浄破邪は不通甲でもザブダクルに影響があるかもと強破邪にした。


眩しい清風が吹き抜けた。


〈ふむ。確かに王の子だと認めよう。

 私はオフォクスの子、ミルオクス。

 皆、武装を解き、里に戻れ〉


頷くような礼をして狐達は消えた。


〈話を聞こう〉


〈僕はマディアです。

 エーデラークとして死司域で働いています。

 死司最高司ナターダグラル様は獣神も人神も等しく神だとお考えです。

 ですので獣神狩りを廃止しようとしているのです。

 今日は その為に獣神が暮らしている『最果て』と人神が呼ぶ地をご覧になりたいと飛んでいるのです〉


〈本当に廃止なんぞ出来るのか?〉


〈出来ます! 必ず遣り遂げます!

 そうしないと父も神に戻れませんので。

 父が神世に戻れば、オフォクス様もお戻りになられると思います。

 トリノクス様にもマリュース様にも神にお戻り頂きたいのです。

 僕は……その為に踏み出したんです。

 その為に人神の中で働いているんです〉


〈弟の言葉、信じて頂けませんか?

 マディアは、堕神とされていたシアンスタ兄様も神に戻しました。

 私は、マディアの行動は全て獣神の為と信じております。

 志は父と同じなのです〉

マディアの後ろに黄金龍が姿を見せ、話しながらマディアと並んだ。


〈ゴルシャイン兄様……〉


〈大丈夫だ〉

微笑んでマディアの肩をポンと叩いた。

〈ミルオクス様はシアンスタ兄様の同代だ〉


〈そうなのですか♪

 ですが僕はシアンスタ兄様の尾を回収する協力をしただけですけど……〉


〈保魂域から回収したのであろう?〉


〈そうですけど、保魂域に入る協力をしただけですよ。

 頭は父様、胴はオフォクス様が連れていらしたんですよ〉


〈何にしろ関わり、活躍したのだ。

 ミルオクス様に近況を話してくれるか?〉


〈あ、そうですね。

 シアンスタ兄様はネモフィラ姉様と結婚なさいました♪

 カーマイン兄様もプレリーフ姉様と結婚なさいました♪

 皆様、月にいらっしゃいます♪〉


〈そうか。最近カーマイン達を見掛けぬと思っていたが、月で修行とは……〉


〈手強い禍を転送した先が月なのです。

 月の四獣神様と共に禍と戦っているのです〉

ゴルシャインが補足した。


〈そういう事か。カーマインらしいな。

 信じよう。

 マディア、何かあれば何時(いつ)でも来ればよい。

 協力を約束しよう〉


〈ありがとうございます!♪〉



 ミルオクスが浮かんでいる所まではゴルシャインも一緒に飛んだ。


「これからよろしくお願いします♪」


「私達の方こそだ。宜しく頼む」


「はい♪

 ゴルシャイン兄様も ありがと♪」

ゆっくり進み始めた。


 ぎゃ~す♪(〔大好きだよ♪〕)


 クルルル(〔同じくだ〕)


ミルオクスも笑みを浮かべた。


マディアは笑顔で尾を振り、速度を上げた。



―・―*―・―



 その頃、保魂域では――


「何事だ!?」


「急に暴れだしたのです!」


「何故だ!?」


「知りませんよ!!」


――鎮魂室内は、暴れる獣神魂を捕らえる事も眠らせる事も出来ずに騒然としていた。

確認しに来た中位神達は此処で大怪我をするのも、後で責任を取らされるのも御免被るとサッサと逃げてしまい、残った下位神達もお手上げ状態で、壁際に逃げて言い合うしか出来なかった。


「最高司様は!?」


「神王殿だ!」


「ラナクス様は!?」


「同じくだ!」


「プラムちゃんもか!?」


「当然だろ!」


「誰か捕まえてくれぇ!」


「獣神なんか捕まえられるかよ!」


「逃げて部屋を封じるか!?」


「それしかなさそうだよな!」



―◦―



【ルロザムール様、あれは……?】


 昇格試験を受ける為の手続きをしに死司神殿に来たエィムは、ルロザムールを見つけて今後について相談していたのだが、遠くが騒がしい事に気付いた。


【死司域ではなく保魂域ですが……確かめておきましょう】


【そうですね】


頷き合うと、姿を消して瞬移した。







マディアとザブダクルは、もうすぐ1周し終えます。


前半は小動物神やネコ科神の里が多くありました。

下からの警戒している視線を逆撫でしないようにマディアは急いで通り過ぎたんです。

人神には絶対に見つかってはならないマヌルの里もありますしね。


後半は長くなる説明も増えましたので、ゆっくり飛んでいました。

そこにマディアの噂を気にしていた兄達が出て来ましたし、獣神としては好戦的な狐も出て来ましたので、かなり時間が掛かってしまいました。


好戦的と言えば鳳凰は? イヌ科は?

鳳凰の長老はエーデラークがドラグーナの子だと知っていましたので出ようとしていた若者達を止めたようです。


東~北に里がある犬や狼達は、マディアとゴルシャイン・シルバスノーが話しているのを見ていたようです。

通したので出て行かなかったのでしょう。


書くとキリがありませんので、こちらに纏めました。

m(_ _)m



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