表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団外伝  作者: みや凜
第二部 第8章 門前逃走した裏側で
163/870

無事に再生完了



「エィム! 目を覚ましてっ!

 大好きだからっ! エィム!」

倒れてしまったエィムの胸元でチャムは叫び続けていた。


見かねた梅華が屈んでチャムの肩に手を当て、囁いた。

「チャムさん、愛は大きな力です。

 回復に込めれば早く目覚めますよ」


「あっ!」

ただ叫んでいたと、やっと気付いたチャムは想いを込めて回復光を当てた。



 色を失い、弱々しく薄れていたエィムに(たちま)ち生気が戻った。


【そうですか、愛し合っているのですね】


【そうですよ】ふふっ♪


フェネギと梅華も微笑みを交わして手を繋ぎ直した。


「クッ……あっ!!」ガバッ! 「きゃっ」


「チャム……」「ごめんなさい!」拝む!


「オフォクス様、ミュムが呼んでいますので先に行かせてください。

 トリノクス様の再生を頼んでいたのです」


「行けるか?」


「はい。ありがとうございました。

 後程、改めて伺います」

ペコリとして瞬移した。


「ちょっとエィム!?」追って消えた。



「騒がしい奴だ。

 ふむ、浄化は完璧だな。社に戻る」


「「「はい」」」一斉に瞬移した。



―◦―



【ミュム、何かあった?】


きりゅう動物病院の庭木に腰掛けていたミュムが驚いた後で微笑んだ。

【無事に終わったと伝えたのだけど?】


【あ……ごめん。気絶してたんだ】


【気絶? 何をしていたの?】


【チャムが全力で浄化を発動したんだ。

 僕の浄化をね】


ミュム大笑い。


【ごめん! 笑って ごめんね。

 あ、ほら。エィムを探しているよ。

 気を消しているの?】


【また邪魔をしそうだからね】


【そう?

 それじゃあ簡単に説明しておくよ。

 今回はショウフルルしか(メイン)に出来ないから、また犬にしたよ。

 無事に生きている。

 ラピスリ姉様が保護しているよ。

 だから奥様の所に行ってあげてね。

 あ、エィムの友達なら、ついさっき出て行ったよ】


【友達?】


【歌が上手な生き人の女の子とユーレイの男の子の祓い屋ペア】


【ああ……あの二人か。

 友達なんかじゃ――】【エィムほら】


チャムが先に その二人を見つけたらしい。


【それじゃミュム、また!】チャムへ!



―◦―



 話しながら歩いている二人に声を掛けようとしているチャムを無言で掴み、エィムは結界の外に瞬移した。


【無闇にユーレイと接触するなっ!!】


【また怒るぅ】


【僕達は死司神。

 接触すれば導かなければならなくなる。

 解るよね?】


【今は真っ黒なんて着てないもん】


【口を尖らせるな。頬を膨らませるな。

 他の神達が見ているから黒に変えるよ】


【ええ~~】あ~あ真っ黒……。


【煩い。

 入れると知られたら、次は どんな結界に化けるか知れたものじゃないだろ。

 顔を見られたんだから少しは考えて】


【はぁ~~い】

〈二人だけで結婚式しよっか♪〉   【えっ?】

              【静かに。聞こう】

〈えええっ!?〉           【うん】

              【声を出すなよ?】

〈廃墟な教会があるの♪   【ウチじゃない?】

 あ、でも結界の外かな?    【そうかもね】

 紙を仕入れたらソラも入れるようにするね♪

 ユーレイには廃墟が似合うよね♪〉


【ええっ!?】〈そこはダメっ!〉

〈チャム、声を出さないでよ〉言ったよね?

〈私達が住んでるんだからっ!〉


〈あ! 響、上!〉〈あら、死神さん♪〉


【ったく……】

【だってぇ、結界されたら住めなくなっちゃう~】


また接触する羽目になってしまった。



―・―*―・―



「瑠璃、その子犬……」


「ああ。神様だ」

ゆっくり撫でながら治癒光を当てている。


「なら俺も頑張るよ」

瑠璃の向かいに椅子を引いて来て座り、治癒光を重ねた。


「もう大丈夫なのか?」


「たっぷり眠ったからね。

 瑠璃は寝ていないよね? 替わるよ。

 あれ? 神様って……ショウ?」


「見えたのか。

 ショウも神の子だとラピスラズリ様が仰っている」


「不思議な犬だとは思っていたけど、神様だったんだね。

 半年前の事故で重なったユーレイ青年が意識を戻したのが つい最近だったよね?

 もう生まれ変われたの?

 あの青年は? 飛翔さんは?

 他の神様は?」


「経緯は分からぬそうだ。

 しかし皆、ショウの中だそうだ」


「そう……彩桜が喜ぶね」にこっ♪


「大喜びするのだろうな」ふふっ♪



 まだ穏やかな晩夏の朝陽を浴びながら小さくなってしまったショウを撫でていると――


【あ……瑠璃と青生さん……じゃあ病院?】


「目覚めたか、飛翔。

 紗桜さんが保護してくれたのだ。

 記憶は確かなようだな」


【そうみたいだね。

 生きていた頃の事も、ショウと生きた間の事も、ユーレイ探偵団の事も、探偵団をしていた頃よりずっと確かに覚えているよ。

 ショウもトリノクス様も見えるし、アーマル様は僕の中で眠っているよ。

 あれ? 赤ちゃん?

 男の子……カケル君なのかな?】


「門前逃走犯だからな、遣り直さねばならぬのだろう。

 だが犬だからな、人より成長は早い。

 直ぐに話せるようになるだろう。

 記憶の封印が解ければ元通りだ」


【そうか……ミュム様が仰った細工って、この事なんだね?

 1年 我慢したら元通りだから楽しんでいてと仰ったよ】


「そうか」【あ♪ タカシ~♪ ルリ~♪】


「ショウも目覚めたのだな」【うんっ♪】


「記憶は?」


【ちゃんとある~♪

 あ♪ アオせんせ~♪】尻尾ピヨピヨ♪


「うん。元気そうで良かった」


【うんっ♪ あれれ? 身体ある~♪

 ん~~、でも立てな~い?

 んしょっ! 立てた~♪

 そっか♪ 生きて、もっかいユーレイになるんだったね~♪】


【そう仰っていたね】


【うんうん♪

 ね、サクラは? サクラどこ?

 スズちゃんとアスカは?

 ママは? トシ兄は? ――あ……トシ兄、成仏したんだった~】


「まだ朝が早い。彩桜は寝ている。

 飛翔の家族には落ち着いたならば会わせよう。

 利幸は……いずれ会えるだろう」


【ん? トシ兄に会えるの?

 って、あれれ? 眠……】くぅ……。


【ショウ? 寝たの?】


「生まれたばかりだからな。

 飛翔も寝ておけ」


【また子犬か……うん。寝ておくよ】




「青生、皆が出勤する迄は一緒に居たいのだが?」


「大切な友人だから治癒を当てたいよね」


「ん? そうではない」

視線を外しただけでは足りなかったのか、椅子の回転を利用してクルッと後ろを向いた。

「……青生と一緒に居たい……」


「うん♪」

立ち上がって背凭れごと ふわりと抱きしめた。

「一緒に居ようね」


瑠璃は逃がしたくない幸せの代わりにショウを抱いて、コクンと頷いた。



―・―*―・―



 ん?

 ザブダクルの中に結婚の絆が見えない?

 また人神にしか見えなくしてるのかな?


 それとも……

 ルサンティーナ様は婚約者だったとか?

 なんて聞けないけどね。


「ルサンティーナ……」


 幸せだった頃の夢と

 追い詰められた時の夢、

 いつも交互に見てるんだよね。


 捜しに行けばいいのに。


 ルサンティーナ様は生きてる。

 ただのカンだけど

 僕には そうとしか思えないんだよね。


 きっと……

 アミュラ様とかピュアリラ様とかって

 凄い女神様が護ってくれてると思うんだ。


 神世を滅ぼすとかってより

 古の人神の地を元通りにして

 ルサンティーナ様を捜すべきだよね。


「ルサンティーナ! 何故っ!?

 ……待ってくれ! ルサンティーナ!!」


 捜しに行こうよぉ。

 会いたくて会いたくて会いたくて~な

 夢ばっかり見てないで行こうよ。

 ソレだったら喜んで協力するからぁ。


「エーデ……」


「はい」起きた~、ビックリ~。


「ずっと当ててくれておったのか?」


「はい。お加減は?」


「良くなった。ありがとう。

 今日の予定は?」

起き上がって身形(みなり)を整えている。


「特には。平常日です」


 他職域には行かせない方が良さそう

 だったから視察とか延期したんだよね♪


「そうか。少し……飛んでくれるか?」


「はい」龍に。「どうぞ」


「ふむ」


乗って座ったのを確かめ、外に。

「どちらに?」


「最果てとやらを一周してくれ」


「はい」







メインはショウな一団は、ショウが目覚めましたので無事に再生完了です。

ただしアーマルとトリノクスは、この先暫く眠ったままになってしまいますが。



ザブダクルの方は、また何を考えているのやら。

今度は『最果て』巡りがしたいようです。


ユーレイ探偵団 本編では特に何事も無く夕方まで空白だった激戦の翌日ですが、外伝では気紛れで謎行動なザブダクルの行動を中心に追ってみます。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ