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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団外伝  作者: みや凜
第二部 第8章 門前逃走した裏側で
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最強の絆



 エーデラークの詠唱の終わりと共にエィムとチャムを包んで『ひとつ』とした光が二神(ふたり)に吸い込まれるように収束した。


「これにて、あなた方は夫婦となりました。

 神の結婚の絆は、最強の絆です。

 何が起ころうとも、如何なる術でも断つ事は出来ません。

 常に共に在り、支え合ってください。

 どうかお幸せに」


 大木の向こうでは、カケルが職域の境界を越えたところだった。


「では私は これにて。

 リグーリ様、ハーリィ様、ミュム様。

 これもまた(えにし)

 この後は暫し余韻を楽しみ、再生と死司の交流をなさってください」

優雅に礼をしてエーデラークは瞬移した。



「エィム♡」

抱きつこうとしたが、隣に居た筈のエィムはミュムの前に居た。


「急いで話さないといけない!

 アーマル兄様の器は二度目の逃走なんだ!」


「リグーリ様から伺ったよ。

 どうすればいいのかはハーリィ様からね」


「そうか……」ホッ。


「でも少し話したいから枝に行かない?」


「あ……うん」


ミュムは笑ってエィムの手を取り、遥か上の枝へと飛んだ。


「ちょっと! エィムってばぁ」


「さて、チャム。

 何か変化は無いのかのぅ?」


「え? あっ……ああっ!!」


「あったようじゃの。ならば――」姿を戻した。


「ええっ!? リグ兄ちゃま!?

 コギ兄ちゃまは!? 父ちゃまは!?」


「エィムが戻ったならば挨拶しに行かねばな」


「お師匠様がリグ兄ちゃまで、、そうよ!

 父ちゃまはオフォクスよ!

 お山で、お社で暮らしてたのよ!

 み~んな狐で……ドングリで遊んで……毎日が楽しくて!

 ね、どうして!?

 どうして私の記憶に蓋してたの!?」


「オフォクス様の居場所を知られる訳にはいかなかった。

 未熟も甚だしいが、エィムと会わせねばならなかった。

 エィムを補う者として生まれたのだからな。


 エィムの代が職域に潜入すると言い出し、時期尚早とマヌルヌヌ様が諌めても聞く耳を持たなかった。

 だから、まだまだ遊びたい盛りの幼子を職神試験が受けられる年齢の姿にしなければならくなった。

 幼子なチャムでは職神として働けぬ。

 まず試験に合格しない。

 だから記憶を封じた事で眠りに落ちたままのチャムを保護し、私が試験を受けた。


 エィムが すんなりチャムを相棒に選んだのは予想外だった。

 それ故に封印を解く機を逸してしまった。

 ……すまなかったな」


「そっか……私……エィムのお嫁さんになる運命だったのねっ♪

 結婚できて良かった~♪」


「は?」


「リグ兄ちゃま♪

 エィムと会わせてくれて、一緒に居させてくれて、いっぱい指導もしてくれて、ありがと♪」


「怒らないのか?」


「大好きなエィムと結婚する為の花嫁修行だったんでしょ♪

 だからいいの♪ ありがと♪」ハグ♪


「そ、そう、か……」



―◦―



 ミュムはカケルをどうすれば最善なのかをエィムに話した。


「――だから心配しないで。

 僕にとってもアーマル兄様は尊敬している師なのだからね」


「ありがとう。

 何も知らなくて ごめん」


「知らなくて当然だし、リグーリ様は知っていて当然なのだから、もう気にしないでね。

 ほら、もう着いてしまうよ。

 流石アーマル兄様だよね。

 門神に勝ってしまったよ♪」


【エィム、チャムの父に挨拶に行かぬか?】


「行かないとね♪ あ、言い忘れていたよ。

 結婚おめでとう♪」


「それは……マディア兄様を振り向かせない為に絞り出した策で……」


「好きだって顔に書いているよ?」


「えっ!?」両掌で顔をゴシゴシ!


「ほらほら行かないと♪

 奥様が待っているよ♪

 また此処で会おうね♪」


「……そうだね。

 死司と再生の交流の場、ね……」枝を撫でた。


【エィム?】 【うん。行くよ】【うん♡】


「下りよう」一緒に下へ。



「エィム♡」今度こそ抱きついた。


「先ずは教会に戻らねばな」老神に。


「ミュム♪」「おいっ!」「お願いねっ♪」

留まって浄化の門の方を見ているカケルを指してウインクしたチャムは、にっこにこでエィムを引っ張って降下し始めた。


【これからヨロシクねっ♪】


ミュムは少し下まで行って見送った。


「やれやれ、思い出してもアレとは……。

 ハーリィ、また手伝いを頼んでもよいか?」


「いつでも呼んでくれ」


笑みを交わし、リグーリも降りた。


【ミュム、到着するぞ】【あっ、はい!】

ミュムは返事をしたものの、何やら言い合い、じゃれ合いながら小さくなっていくエィムを見続けていた。


「昔から素直ではないのだよね……」苦笑。


 それに……ま、それは後だね。



―・―*―・―



 マディアが執務室に戻るとザブダクルは眠っていたので、目覚める迄と執務を続けていた。


 起こしても良さそうだけど……

 治癒 当てるって言っちゃったからなぁ。

 結婚の絆結びなんて しちゃったから

 今は そんな気分じゃないんだよね。


 なんだか変な情を懐いてたけど、

 僕が心の距離を縮めようとしても

 エーデは返してもらえないんだよね。


悶々としているうちに、つい溜め息が零れ落ちてしまった。


〈戻っておるのか?〉


〈あ、はい。お休みのようでしたので〉


〈ふむ。して、頼めるか?〉


〈はい。入ってもよろしいのですか?〉


〈構わぬ。頼んだのは儂だ〉


〈はい〉



 最高司の居室に入ると、ザブダクルは横たわって目を閉じたまま小さく手招きしていた。


ベッドの横に立ち、治癒光を当てる。


「何か……悩みでもあるのか?」 ソレ聞く?


「いえ」とーーーーっても大アリだけどねっ!


「溜め息が聞こえた」 ソレも伝わるのっ!?


「覚えておりませんが……おそらく1案件 終えて安堵したのでしょう」


「そうか……」



 あれ? また寝ちゃった?

 悩みがあるのか? な~んて

 変なコト聞くよね。

 エーデとユーチャ姉様のコト

 忘れてるのかな?


 あ♪ 今ならエーデの声 聞けるかな?

 何処に封珠 持ってるのか

 さっぱりだけど、探してみよ~♪


 封珠……奪いたいけど……

 触ったら起きちゃうよね?

 たぶん身体の中だよね?


 エーデ……どうしてるのかな?


〖私達、ずっと修行しているわ〗


 えっ!?


翳していた手の位置を動かしていると不意にエーデリリィの声が聞こえた。

マディアの心に答えたかのような言葉に思わず涙が頬を伝った。


 あっ、いけない!


マディアは慌てて涙を消し、もう一度とザブダクルの胸の辺りを探った。


〖――なのよ。

 マディア、会えなくても近くに居るのは感じているの。

 私達は大丈夫よ。

 マディア、無理はしないでね。

 必ず封珠から脱出するから〗


〖マディア、グレイにも伝えてね。

 私達は脱出する為に修行しているの。

 だから心配しないでね。

 グレイにも頑張って神力を高めてと伝えてね。

 私達が出られたら一緒に反撃しましょう。

 神世を護りましょう〗



 ユーチャ姉様も頑張ってるんだ。

 僕も頑張らなきゃ。

 またグレイさんに手紙を書こう。


 エーデ……あ、もしかして――


マディアは己が魂の内に神眼を向け、エーデリリィと繋がる結婚の絆を手繰った。

言葉にすればザブダクルに伝わってしまう。

その もどかしさが悔し涙に変わりそうになるのを堪えて、爆発しそうな想いを絆に込めた。



―◦―



【あ……】


【エーデ姉様?】


【マディアが近くに居るわ】

マディアの想いが其処に在るように思えて愛おしさのままに(くう)を抱き締めた。

【今日も お互い無事ね……良かった……】



 ずっとそうしてマディアを感じていたかったが、ティングレイスがザブダクルに近寄れない事に気付いて手を(ほど)いて顔を上げた。


【さ、修行して脱出しないとね♪

 グレイも一緒に反撃するのだから♪】

明るい声と笑顔を作ってユーチャリスを抱き締め、背をとんとんとして、

【頑張りましょうね。

 会えるように――ううん。必ず会えるから♪】

瞑想に戻った。







まだまだ悩みや迷いを抱えているエィムですが、チャムと結婚してしまいました。


ずっと相棒で同代を纏める補佐をしていたミュムには、何やら他に懸念している事がありそうですが……。


さておき、順序なんてもうバラバラですが、チャムの父オフォクスに挨拶しなければなりません。

またまたエィムが頭を抱えるような事が起こりそうですね。



エィムとチャムの結婚の絆を結んだ事でマディアもエーデリリィとの絆を通じて思いを伝え合えると思い出しました。

辛い中にも光を見出だして、前に進みます。



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