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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団外伝  作者: みや凜
第一部 第1章 ショウと力丸
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具現化アーチェリー



 祓い屋ユーレイらしき男を乗せてショウは走り続けていた。


(オジサンユーレイ! 身体あるのっ!?)

(そうじゃないと思うけど。具現化かな?)

(何ソレっ!? 背中ぞわわわわわっ!!)

(なんとなく誰か判ったから話してみるよ)

(走りながらっ!?)(止まってもいいよ)

(ブルブルしてもいいのっ!?)(いいよ)


急停止した。

水を弾き飛ばすようにブルンブルブルッ!


しかしユーレイは乗ったまま笑うばかりだった。


丈一(じょういち)さん、ですか?〉(さ~む~いっ!)


〈だよ♪ やっぱ戌井なんだな?♪

 で、犬に生まれ変わったのかぁ?〉


〈そんなところです〉(背中がイヤぁ~!)


〈どーしてユーレイになって祓い屋してくんなかったんだぁ?

 弟が待ってたんだぞ? 俺もなっ〉


〈どうしても娘を護りたくて……〉


〈そっかぁ。じゃあ次も犬になるのか?〉


〈そうなるかもしれません〉〈降りてっ!〉


〈ん? その犬、生きてるのかぁ?〉浮いた。


〈あ、はい。

 死産だと思って入ったら生きていて、僕と重なってしまったんです〉


〈今回は無事で良かったが次は気をつけろよ。

 重なったと思ったら消えちまった、っての何度も見たからな。

 記憶も力も五体満足なんざぁ、まず無いと思っておけ。いいな?〉


〈はい。ありがとうございます。

 あ、さっき乗れてたのは具現化ですか?〉


〈お♪ 知ってやがったか♪

 破邪の(つるぎ)で怨霊を倒そうって計画でな♪

 今、絶賛修行中だ♪〉


〈体温は具現化できないんですか?〉


〈んなコトできるのか?〉《可能だ》


〈あ……可能だそうです〉


〈そうです、って……?〉


〈僕も具現化できそうなので〉


〈修行中なのか?♪〉


〈はい。この状態ですので少々ですが〉

《やってみよ》(あ、はい)


 ショウの顔の前に光を(まと)った弓矢が現れた。

少し躊躇(ためら)ったものの、飛翔は後ろ足だけで立ち上がり、取って構えた。


〈へぇ~♪ アーチェリーか♪

 なかなかのモンだな♪

 やっぱ祓い屋になってくれよ。なっ♪

 犬のままでもいいからよぉ〉


〈考えては……おきますけど……〉

弓矢を消し、犬らしく姿勢を戻した。


〈う~ん……まぁ、その気になってくれるか

 ユーレイに戻ったら仲間に加わってくれ♪

 それまでは弟には黙っといてやっから♪

 アイツが知ったら間違いなく憑き纏うだろーからなっ♪〉


〈憑き――すみませんがお願いします〉


〈で、また怨霊の力奪いに来たのかぁ?〉


〈いえ……今日は以前あったバス事故の時の子供ユーレイを捜していたんです。

 ……どうしても気になってしまって〉


〈ふ~ん。今頃なぁ〉指折り数える。


〈もう成仏したんですか?〉


〈い~や。あん時唯一の子供ユーレイは、お師匠(サイオンジ)様が保護してるよ。

 ほぼ寝てるけどな。素質あるってよ。

 戌井にもナンか力が見えたのかぁ?〉


〈まぁ……そんなところです〉


〈そっか。あ、怨霊が捕獲されたな。

 そろそろ行かねぇとな。

 あ! 今どこに住んでるんだ? 野良か?〉


〈いえ。妻に飼ってもらっています〉


〈まさか知っててかぁ?〉


〈いいえ。

 偶然、獣医をしている幼馴染みに拾ってもらえて、彼女は見えるから妻に託してくれたんです〉


〈へぇ~♪ スカウトしてみっかな♪

 美人か?♪〉


〈美人ですけど……滅されかねませんので近寄らない方がいいですよ?

 あ、彼女の義弟でしたら祓い屋になりたいと話していました〉


〈義弟? 弟じゃなくて?〉


〈夫婦どちらも強い力を持っているんです〉


〈へぇ~♪〉〈ナンジョウ戻れ~よぉ〉〈あっ、はいっ!〉


〈呼ばれたんですね?〉


〈だぁよ。じゃあまたなっ♪〉消えた。



〈タカシ♪

 オジサンじゃない誰かとお話ししてた?〉


〈ショウには聞こえなかった?〉


〈うん……な~んにも〉


〈たぶん力の声だよ。

 体温も具現化できるって教えてくれて、僕にもできるから、やってごらんって〉


〈タ~カシ♪ もっかいやって~♪〉


〈え?〉


〈カッコイイの、もっかい♪〉


〈さっきのアーチェリー?〉〈うんっ♪〉


苦笑しつつ弓矢を出し、構えた。


〈ソレどーなるの?♪〉


〈そうだな……〉

ぐるりと見渡すと、捕獲用結界の中でまだ抵抗している怨霊が見えたので射った。


〈ヒュ~~~ン♪ ぷしゅっ♪

 タカシすっご~い♪ カッコイイ~♪〉


怨霊は矢から拡がった光に包まれ、動きが完全に止まった。


〈仲間になってくれるのかっ!?♪〉現れた。


〈〈あ……〉オジサンまた来たぁ〉


〈オジサンってなぁ……確かにそうだが……〉

姿を若くした。

〈どーだ?♪〉


〈すっご~い♪ おもしろ~い♪〉


〈カッコイイとか無ぇのかよぉ〉



―◦―



〈ナンジョウってば行ったり来たり何してるのかしら?〉


〈落ち着かぬのは いつもの事だ。

 放っておけ〉


〈ホウジョウったら、兄さんに厳しいのね。

 あ♪ じゃなくて優しいのね?

 好きにさせてあげられるくらいに♪〉


〈言うな〉フイッ。


〈照れちゃって~♪〉


〈トウゴウジ。仕事に集中しろ〉


〈は~い♪

 でも……飛んで来たのは矢だったわよね?

 こんな凄い事……誰がしたのかしら?〉


〈ナンジョウに任せておけ〉


〈そういう事なのね?

 仲間にしようとしてるのね♪〉


〈おそらく、な〉


 この気……戌井は昇った筈なのだが……。



―◦―



 ナンジョウが去り、ショウはトコトコと夜の自由な散歩を楽しみながら帰っていた。


〈コドモユーレイ、あのオジサン達と一緒なんだね~〉


〈そうみたいだね。会いたいよね?〉


〈ん~~~、会いたいけどぉ、タカシは行きたくないよね?

 だったら~、そのうち、でいい♪〉


〈ごめんね、ショウ〉


〈いいからぁ。

 僕がユーレイになったら会う~♪

 友達になれると思うんだ♪

 あれれ? サクラ?〉


〈あ……本当だね。

 こんな夜中にどうしたのかな?〉


〈サ~クラ~♪〉


屋根の上の彩桜は探すでもなくショウを見、笑って飛び降りて駆けて来た。


〈ショウ♪ 首輪は? 脱走?〉


〈うんっ♪ 外して夜のおさんぽ♪

 サクラ何してたの?〉


〈ユーレイさん達 見てたんだ♪〉


〈祓い屋さん?〉


〈うん♪ 怨霊退治♪

 シュッて光の矢が飛んでカッコよかったんだよ♪〉


〈ソレね~♪ タカシがしたの♪〉


〈え?♪〉キラキラ☆


〈タカシ♪ もっかい♪〉


〈え? いや、もう射つものも無いし――〉


〈〈もっかい♪〉〉


〈困ったな……〉〈〈もっかい♪♪♪〉〉


〈構えるだけだよ?〉〈〈うんっ♪〉〉


苦笑しつつ弓矢を出して構えた。


〈〈カ~ッコイイ~♪〉〉


〈もういいよね?〉〈〈ヒュ~~ン♪〉〉

〈え?〉〈〈ねっ♪ ヒュ~ン♪♪♪〉〉


〈射るものなんて――あ、ゴミステーション。

 あれならいいかな? 破れないだろうし〉


遠くに見えるゴミステーションを狙った。


〈いっぱいだね~♪〉

〈明日は不燃物と粗大ゴミの日なんだよ♪〉


〈あのソファーを狙うよ〉パシュッ!


〈〈ヒュン♪ 命中~♪〉〉『わわっ!?』


〈〈〈え?〉〉〉『な、なんなんだっ!?』


 矢の光に包まれた、ほぼ真後ろな1人掛けソファーの向こうで人影が立ち上がった。

キョロキョロした後、此方を見つけたらしくヨタヨタと走って来ている。


街灯に照らされて、やっと姿が見えた。


〈〈あ、同じ顔……〉〉彩桜を見上げる。


「白久兄!?」「彩桜のイタズラかっ!?」

「そんなトコで寝ないでっ!!」「んあ?」

男が立ち止まって後ろを見る。


「粗大ゴミで寝ないでっ!!」〈逃げてっ〉

〈ショウ、走って〉〈あ、うんっ〉ササッ。


「あ~~、酔っ払って、つい、な♪」


「つい、じゃないのっ! 帰るよっ!」

兄を引っ張って行った。



「あ~待て待て、そこに酒が――」「もおっ」

ソファーの近くをガサガサガサ。

「コレだコレ♪」「一升瓶!?」「おう♪」

「没収~♪」ヒョイっと取り上げて走った。


「おいっ! 彩桜っ!」ヨタヨタふらっ――


――踏ん張った。

「っとと~。待てコラ彩桜コノっ!!

 俺の酒! 返しやがれってんだ!!」

頭をブンッと振ると、急にシャキッとして彩桜を追って走った。



〈すっご~い♪ 速~い♪〉

〈そうだね。ある意味、超人だね〉


塀に隠れて見ていたショウと飛翔は笑いながら家に向かった。







思った通り~でしょうが、ショウに乗ったのはナンジョウでした。


ナンジョウが若くしたのがキッカケでホウジョウもトウゴウジも若くしたんだとか。



ここで、このお話での心話(テレパシー)関連の記号説明を。


〈〉:通常心話

():内密心話(内々でコソコソ)

【】:獣神秘話法(かなり後で登場します)


などがあります。m(_ _)m



また、心話だけでなく通常会話の「」も含め、《》『』〖〗などの二重・白抜き括弧は、姿が見えない場合や、どこから聞こえているのかが不明な場合などに使っています。



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