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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団外伝  作者: みや凜
第二部 第7章 激戦の裏側で
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あっけない幕切れ



〈お師匠様、まだやってるわよ?〉


【チャム、獣神秘話法を教えたじゃろ?】


〈あっ! 忘れてた~〉【こうよね♪】


【敵神が近いと言うに……】溜め息。


【どうやって降りるの?

 エィムの所に行ける?】


【今度こそ術移してみよ】


【ええっ!? 私が!?】


【その程度、出来ぬようならばエィムとの結婚は認めぬぞ】


【そんなぁ~】


【狐として出来て当然の最低限じゃ。

 出来ぬのならば、ただの狐にしてしまうぞ】


【えええっ!?】


【先ずはエィムの気を掴め】


【はい♪ それなら簡単よ♪ えいっ♪】


【其処へと術移じゃ】


【エィムの胸に飛び込んじゃお♡

 エィム大好き♡】術移♪



【ほぅ、出来たのぅ。

 少々ズレたが……ま、上出来か】


リグーリもチャムを追って術移し、ウンディを見張る時に使っていた庭木に隠れた。



―・―*―・―



 困り顔で留まっている黒装束達の前にルロザムールが現れた。


〈これは……確かに通り難いですね。

 職務優先と素通りしても叱責、加勢しても邪魔だと叱責されますね。

 では、向こうで騒いでいる者達を連れて参ります。

 申し訳ありませんが、その魂は彼らに渡してください。

 皆様は下で眠らせている魂を連れてゆっくり上昇してください。

 様子を見ましょう〉


〈ありがとうございます!〉一斉。



―・―*―・―



 エィムはチャムの手を引いてリグーリが隠れている庭木の下に行った。


〈チャム、よく聞いて〉


【私も話せるのよ♪ エィムと内緒話♡】


【前にも使ってたよね? 忘れたの?

 それに獣神なら出来て当然だよね?】


【また それぇ?】


【また、って……】


【お師匠様も そればっかり!】ぷんっ。


【言われて当然だと思うけど?】


【エィム……私のこと嫌い?】


【今は そんな話をしている場合じゃない。

 そのくらい解るよね? 後にして。

 解らないようなら結婚どころか相棒も これっきりだよ。

 本職神に成れば新たな相棒を選ぶ事が出来るんだからね】


【エィムぅ~】


【急いでいるから続けるよ。

 ターゲットの内には四獣神トリノクス様と僕の兄が入っている。

 トリノクス様は一度 浄化されている。

 浄化域にも僕の仲間が潜入しているけど、罷り間違って二度目を受けてしまったらトリノクス様としては存在できなくなる可能性が高い。

 だから浄化の門で反転させる。


 祓い屋の彼女には違う理由を話して納得してもらった。

 つまり戦う必要なんて無い。

 (カケル)にも途上で話すつもりだよ。

 だから網を解いて、普通に導こう。

 納得してくれた彼女に対しての信頼の証としてね】


【一緒に? 私もいいの?】


【当然】


【一緒に昇格?】


【そうなるよね】


【昇格したら結婚?】


【……そう、、だね】外方向く。


【こっち向いてよぉ】


【その話は後だと言ったよね?

 行くよ】

エィムは繋いだままだった手に やっと気付いたが、顔には出さず、そのまま引いてカケルの所に戻った。



―・―*―・―



 ザブダクルは、キメラ魂を連れて昇って来ている死司神の集団に気付いた。


「儂の勝ちだ。下を見よ。

 お前の仲間を回収したぞ」

禍を盾として成し、勝ち誇った笑みを浮かべて距離を取った。


『確かに仲間だが、お前の所為(せい)で浄魂するより他に(すべ)の無くなった者達だ。

 (ゆえ)に渡した。それだけだ。

 このような事、二度と繰り返させぬ。

 モグラは……私達の仲間であるモグラが望む通りに浄化域に送ったのだからな。

 つまり此方の勝ちだ』


「なっ――」

目に見えぬ何かを引き寄せようとしている。


手繰(たぐ)っても無駄だ。

 浄化域は特別な場所。

 絆であろうが無効の場。

 そんな縛りなんぞが効くものか!』

手繰る為に隙を見せたザブダクルの眼前に瞬移し、強い浄破邪で包んだ。


ザブダクルの絶叫が響き渡る。


その中で――


〖マディア、グレイ。私達は無事よ〗


――女性の声が耳を掠めた。


『何処だっ!?』「マディアは渡さぬぞ!!」


ラピスラズリは封珠を奪おうとザブダクルを掴もうとしたが、女性の声が聞こえていないザブダクルはマディアとの繋がりを探られているのだと思い込み、その手の寸前で姿を眩ませてしまった。



【兄様、死司神達が――】

〖そうだな。今は退――限界か……〗

【替わります!】


〖俺も……眠ってもいいかな?〗


【はい、父様】


ドラグーナが眠ると同時にラピスリの背に輝竜兄弟が現れたが、静かなものだった。


 皆、疲れて眠ったか……。


ラピスリは輝竜兄弟を起こさないよう、ゆっくり降りるべきと考え、死司神達を遣り過ごそうと姿を消して留まった。



 操られている死司神達が通り過ぎ、少し遅れてルロザムールが昇って来た。


【ピュアリラ様、追い返してくださり ありがとうございました。

 実は皆、下で困っていたのです】


【ですからピュアリラ様では――】


【私にとりましては偉大なる龍狐神ピュアリラ様ですよ。

 では、この魂達の事はお任せください】

小さく目礼して上昇を続けた。



 ルロザムールに続いて支配が解けている死司神達が昇って来、口々に礼を言って通り過ぎる。

最後に昇って来た死司神がフードを少し上げてニッと笑った。


【ハーリィ……そんな事までしているのか?】


【手伝いの延長だな】フッ。


【そうか……】


【では、またな】


やけに楽しそうだと少し羨ましくも思えたが、これも希望かと思い直してラピスリは降下を始めた。



【あっ、ラピスリ姉様】


【エィム、その魂は……そうか。

 トリノクス様とアーマル兄様を頼む】


【はい。

 後をミュムに頼んでいますので】


【そうか。考えていたのだな】


【はい。それでは】礼。



―・―*―・―



 死司装束を庭木の枝に残したリグーリは兄そっくりな小さな白狐の姿になって、今にも発進しようとしていた車のボンネットに降りた。


「あ♪ 狐さん、久しぶりね♪」


「響おね――、知り合いなの?」


「小さい頃、困ってたら来てくれてたの♪

 お店を教えてくれたり、斎さんに会わせてくれたり、ね♪」


「お店、ね……」


「ま、気にしないで~♪

 それで狐さん、何か用?」


「ええ。

 ユーレイが見える(ゆい)という女の子――高校生でしょうか? ――をご存知でしょうか?」


「1人 知ってますよ♪

 東の街の~、えっと、こういう時は手を繋いだらいいのよね?」降りようと――


「降りずとも」

響とソラの真ん中に浮かんで尾を差し出した。

「掴んでください」


「ふっかふか~♪」頬擦り♪


「ありがとうございます。

 では、お礼として祝福を」

やわらかな光で二人を包み込むと、微笑みを浮かべて姿を消した。



―◦―



 響から得た情報の家に行き、結を探すと、小型犬ユーレイと一緒に眠っていた。


渡竜(どりゅう)さん、お目覚めください〉


〈渡竜……私ですか?〉


〈はい。息子さん――澄也(とうや)さんがお待ちですよ〉


〈澄也……あっ!〉


〈記憶の蓋が開きましたか?〉


〈はい! 澄也は何処に!?〉


〈成仏を待つ場所です。

 貴女を待っているのですよ〉


〈澄也に会えるのですね?〉


〈はい〉


〈お連れください!

 お願いいたします!

 あ……でも……〉

結の方を振り返ると、笑顔が見えた。


〈良かったね。

 狐さん、私からもお願いします〉


〈はい〉


〈犬さん、お名前は?〉


〈菊乃と申します〉


リグーリが宙に光で書いた。


〈ん♪ 渡竜 菊乃さんね♪

 私、お経の練習してるの♪

 お見送りさせてくださいね♪〉



 庭に出、一生懸命な結のお経に後押しされてモグラの母は昇った。



 街の結界から出た後、リグーリが死司装束を取りに寄り道したのは言うまでもない。







味方同士で争っていた死司神達は眼前に餌をぶら下げられて大喜びで昇りました。


オニキス達は、また魔道やらを浄化するとオフォクスから呼び出されるだろうと、今のうちに眠る為に戻ったのではないでしょうか。


ザブダクルも逃げ帰りましたので、これで地上に続いて上空の戦いも終わりです。



リグーリはモグラに頼まれた母親・菊乃を連れて、エィムとチャムはカケルを連れて昇っています。

そうなると次章はカケルの門前逃走の裏側になりますよね。



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