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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団外伝  作者: みや凜
第一部 第1章 ショウと力丸
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夕の散歩と夜の散歩



 日射しが眩しく春の終わりを告げている日の午後、ショウは澪が押しているベビーカーを護るかのように付き添って、お散歩を楽しんでいた。


〈タカシ♪

 前歩いてる人、タカシが集めてるのとソックリな力 持ってない?〉


〈確かに……よく見つけられたね、ショウ〉


〈別のも入ってる?〉


〈そうだね。力が取り込んだのかな?〉


〈とっても大きい?〉


〈そうだね。

 僕が集めた全部に近いくらい大きいね〉


〈もらえないかな~♪〉


〈無理だよ。彼がユーレイになるまでは〉


〈ふぅん。

 なったらお話ししてみよ~ねっ♪〉


〈そうだね〉



 前をゆっくり歩いている若い男女に近くなり、話し声が聞こえてきた。


(かなで)、その包み何?」


「響に押し付けられたの。

 (かける)に、って」


「で、ずっと持ってたのか?

 邪魔だろ。貰っとくよ」


「翔にも邪魔だと思って……」


「小さな包みなんだから俺が片手で持つよ。

 そんな抱き締めてたら手も繋げないだろ」


「あ……うん」「ほら」

指を絡めて繋ぎ、寄り添った。



〈なかよしさんなんだね~♪〉


〈だから今は力をくださいなんて言えないよ〉


〈そっか~♪

 あ……あそこ……前におっきな車が火でボワボワなってたよね?

 いっぱいユーレイ運ばれてったよね?

 ちっちゃいユーレイ……どうなったかなぁ〉


〈祓い屋ユーレイさん達が向こうに運んでいたから、今夜 捜してみようか?〉


〈うんっ♪ また夜のおさんぽねっ♪〉


「ショウ、こっちよ?」リードを引かれた。


〈は~い♪ ママ♪〉てってって♪




 車道のある大通りから折れて家に向かう。

ブランコだけの小さな公園前を過ぎ――


「あら♪ ショウちゃん♪

 澪サンこんちわ♪」


「小夜子さん、こんにちは。

 これからお仕事ですか?」


「そうなのよぉ。ちょっと早出。

 今日は飛鳥ちゃんだけ? 紗ちゃんは?」

しゃがんでベビーカーの飛鳥をあやす。


「お友達のお家に行ってしまって。

 お散歩ついでに、お迎えに行こうと思ってるの」


「そっか~、元気になって良かったわね♪」


「ショウが家族になってくれたから。

 ね、ショウ?」ワフッ♪


「ショウはホントお利口さんよね~♪

 あら? あそこ。瑠璃サンじゃない?」


「あ……ウチに向かってるわね。

 それじゃあまた」ぺこり。


「まったね~♪」バイバ~イ♪



〈なんか~、トシ兄の匂いする~♪〉


〈近くに来ているのかな?〉


〈じゃなくて~、サヨコさん♪〉


〈ああ、言われてみれば合いそうだね。

 似た者同士、結婚してもいいと思うんだけどね〉


〈タカシもサヨコさんとお友だち?〉


〈高校の同級生だよ。利幸も澪も瑠璃もね〉


〈コウコウって楽しいトコ?♪

 僕もタカシやサクラと行ってみた~い♪〉


〈彩桜君なら、あと何年かしたら行くけど、ショウは犬だから行けないよ〉


〈ふぅん。何するトコ?〉


〈勉強だよ〉


〈僕、勉強だ~い好き♪〉


〈え……?〉


〈本読むの好き~♪〉


〈ショウ……本を知っているの?〉


〈うんっ♪〉


〈そう……それなら僕の部屋に入って読んでみようか?〉


〈うんっ♪〉「瑠璃、待って」


澪の声に振り返った瑠璃が足を止めた。

「早いな。ショウと散歩していたのか。紗は?」


「お友達のお家なの。

 だからお迎えに行こうと思って早く出たのよ」


「ならばショウと飛鳥を預かろう。

 悪いが先に家に上がらせてもらうぞ?」


「お願いしていいの?」


「勝手に入ってよいのならばな」


「それはもちろんいいけど。いいの?」


「ついでにショウの健康診断もしよう」


「ありがとう。それじゃあ鍵ね」


「此方は気にせず、紗が満足するまで一緒に遊んでやれ」


「ありがと」ふふっ♪


「どうした?」


「瑠璃にも早く子供ができるといいわね。

 青生さん、毎週帰ってるんでしょ?」


「授かりものだ。ゆっくり待つさ。

 それまでは紗と飛鳥で練習だ」〈僕は?〉

「ショウもな」わしわし。 ワンッ♪


「子育て練習なら いつでもどうぞ♪

 それじゃあ向こうだから」「ふむ」




 分かれ道から少し歩き――


〈ルリもサクラみたくお話しできるよね♪〉


〈今更どうした?

 病院でも話していたではないか〉


〈あ♪ そ~だった~♪ センセーだ♪

 白いの着てないと違う匂い~♪

 ねっ♪ タカシのお部屋に入りたいの♪

 本あるんでしょ♪〉


〈読みたいのか?〉


〈うんっ♪ 本だ~い好き♪〉


〈入って選んだら出なければならぬぞ?〉

チャリッ、カチャッ。


〈うんっ♪〉


〈足を拭くから待て〉


〈うんっ♪ あ♪ タオル貸して~♪〉


〈ふむ……〉


渡すと人の子のように座って拭き始めた。


〈飛翔、あまり人化させるな〉


〈好きにさせるのは彩桜君と瑠璃の前だけだよ。

 青生君も大丈夫だよね?〉


〈あの兄弟ならば皆 大丈夫だが……。

 うっかり動かぬようにな〉


〈解っているよ。

 ショウも解っているよね?〉


〈うんっ♪〉両前足でお手拭き♪

〈いい?♪〉前足パ~♪


〈器用だな〉タオルを受け取る。


〈へへ~♪〉サッと上がって飛翔の部屋へ。



 瑠璃が追って行くと、後ろ足だけで立ってドアを開けていた。


〈すっご~い♪ 本いっぱ~い♪〉

そのまま二足で駆け寄る。

〈上の見えな~い〉ぴょんぴょん。


飛鳥を抱いた瑠璃も入った。

〈選ぶより、順に持ち出そうか?〉


〈それが良いかもね〉〈うんっ♪〉


〈汚さぬように――いや、飛翔の本だな〉

「ぱ~ぱ~」きゃっきゃっ♪


〈〈えっ?〉〉


飛鳥がショウに向かって手を伸ばしている。


〈見えている、のか?〉


〈薄暗いし、ショウが大きいからかもね〉


〈それならば利幸と間違えそうなものだ。

 飛鳥は飛翔を知らぬのだからな〉


〈そう……だね……〉



―◦―



 その夜遅く――


〈タカシ♪ 行こっ♪〉カチャカチャ♪


〈外すの速くなったね〉


〈でしょ♪〉


もう穴からは出られないので、助走し、飛び越えた。


〈ヒュ~~ン♪〉シタッ♪〈あれれ?〉


〈ん? あ、また怨霊だね。

 だったら祓い屋ユーレイさん達は拠点には居ないだろうから、向こうに行ってみよう〉


〈うんっ♪〉タッタタタッ!




 家々を縫うように、できるだけ真っ直ぐ怨霊に向かって走っていると――


〈待てよ、犬〉


――男の低い声がし、前に声の主が浮かんだ。


(ショウ、替わるよ)(うん……)内々。


〈お前、怨霊から力を奪ってく犬だろ〉

凄んでいるのは声で判るが、胸から上がよく見えない。


(祓い屋ユーレイさん?)(たぶんね)


〈おい、何とか言えよ〉


(逃げるよ)(ん)

尾を丸めて踵を返した。


が、背に乗られてしまった。

〈言うまで離れんからなっ!〉ロデオ状態!


(ナンで乗れるのっ!?)(さぁ……)


〈お前……戌井か? そうだろ。おい♪〉


〈えっ……?〉


〈その声、やっぱ戌井だなっ♪〉


(タカシ! 嬉しそうだけど誰っ!?)

(確かめるから待ってね)(うんっ!)

(走るのはお願いね)(うんうんっ!)


〈お~い、見えてるんだから答えろ戌井♪〉


(オジサンこそ顔見せてっ)(静かにね)

(怖ぁいよぉぉ)(大丈夫だよ。たぶん)

(なんかイヤ~っ!!)(落ち着いてね)







山のお話から街のお話に戻りました。


カケルと奏と小夜子と、もう1人。

ユーレイ探偵団本編で登場した人物も、ちょいちょい出てきます。



本編でも、澪は飛翔の部屋やショウのおうちを生きていた時のままに保っていると、チラッと書きました。


壁一面の本棚に整然と並ぶ本。

きっと、飛翔なら難しい本ばかりなんでしょうね。



ショウの背に乗ったユーレイ――は、もうお分かりでしょうけど……。


次回に続きます。m(_ _)m



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