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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団外伝  作者: みや凜
第二部 第5章 風呂場の件の裏側で
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魑魅魍魎の正体



 モグラが穿(うが)った禍々(まがまが)しい道から何かが現れたならば即対応しようと身構えたまま、ウィスタリア達が下を見詰めていると――


【ほらよっ】【紅火兄まだ居た~♪】ぱふっ♪


――オニキスが彩桜をポイッと投げて消えた。


受け止めた紅火が顔をしかめる。【店番は?】


【若菜姉ちゃんが『もし そう言ったら寝てない紅火こそ帰りなさいって伝えてね』だって~♪】声真似~♪


【む……】


【あ♪ トウゴウジさんだ♪

 あれれ? トウゴウジさんが2人?】


【少し違いませんか? 親子なのでは?】

              【オフォクス様――】

【藤慈兄おはよ~♪】

             【祓い屋が戻ったか?】

【あ、はい。おはようございます】

             【はい。お二人ですが】

【そっか~♪

 トウゴウジさんの父ちゃんなんだ~♪

 そっくり~♪】     【確かめた。では放つ】


ナスタチウムが笑いだした。


【彩桜、他の方から見れば、私達の方が区別がつかないのですよ?】


【そっか~♪ あ! 変なの出たよ!】


【猫? ……何の動物なのでしょう?】


【なんだろねぇ……】

【モグラが魂を混ぜているようなのです】


【ウィスタリア様、魂を混ぜるとは?】


【藤慈達の内には私達の父様が居ります。

 これも混ぜているという状態なのです。

 それよりも乱暴に、無作為に分割して他魂に込めているのですよ】


【どぉして?】【目的は?】


【混ぜられているのは神の欠片を持つ者達。

 獣だけではなく人の魂も混ぜられています。


 敵神は欠片が神に戻る前に滅してしまおうと企んでいるのです。

 神の魂を混ぜると力の反発が起こり、不安定となります。

 悪くすれば力を打ち消し合った挙げ句、欠片自体の消滅も起こり得るのです。


 欠片とは言え神の魂です。

 人世の生物魂で包むのも無理があります。

 その不安定さから外側の人世生物魂が怨霊化し易くなるのです。

 怨霊化した魂は神世の浄化域で浄魂するより他に(すべ)がないのです】


【神様に戻れなくなっちゃうの?】


【後の処置次第です。

 ですので職域に仲間が潜入しているのです】


【そっか~♪

 じゃあ死神さんに渡していいんだね♪】


【そうですね……欠片持ちの皆さんが魑魅魍魎のままでは可哀想ですよね】


【トウゴウジさん達に飛ばされたの、上げちゃう~♪】ぽ~ん♪


【では私も】【ふむ】藤慈と紅火も弾く。



 こうしてトウゴウジとその父(キンギョ)が道の穴から出た魑魅魍魎達を投げ飛ばし、彩桜達が更に弾き上げて、次々と結界から出していった。


 死司神達は予定外の大収穫に驚きつつも、これで今日は怒られずに済むぞと大喜びで連れて昇った。


【あれれ? 塞いじゃったよ?】下を指す。


【応援を呼ぶのかもしれませんね】


【トウゴウジさん、離れちゃったもんねぇ】


【そうですね】



 暫し待つ。


【あ♪ 響お姉ちゃん♪

 お家に入ってっちゃったね~】


【とうとう友達ができたのですね?】


【ん~とぉ、お得意様♪

 御札使いの祓い屋さん♪

 バンドでギターもしてるの♪

 でねっ、ユーレイ探偵団なの~♪】


【ユーレイ専門の探偵なのですか?

 では、このお宅の方にも先程の魑魅魍魎が見えていたのですね……】


【あ、そっか~。

 お風呂入れないから依頼したんだね♪

 あ♪ サイオンジさん達もお風呂場に来てた~♪】


【ソラとショウも、だろ】紅火が睨んでいる。


【そぉだけどぉ】


【む? 霊眼鏡(レイガンキョウ)を売ったのか?】


【売っちゃダメだった? 値札ついてたよ?】


【構わないが……どれを売った?】


【二千円の~。

 他の、二万円と二十万円だったから~】


【俺が最初に作った物だ】


【いつ作ったの?】


【小2……】


【だから二千円?

 二万円のは? 5つあったよ?】


【中2……】


【その間は? 作らなかったの?】


【作っていたが……そうか。

 磨き直していた間に売ったのだな】


【アレ、磨いてなかったの?】


【いや。終えた物を戸棚に戻していた】


【磨いたトコトコだったんだね♪

 良かった~♪

 二十万円のは?】


【お稲荷様の手本だ。

 その値にしておけば売れるなんぞ有り得ぬだろうと……】


【そっか~♪

 最初のでも使えるんでしょ?】


【使える……筈だ】


【紅火兄でも自信ないとかってあるの?】


【俺を何だと思っている?】


【だって~、紅火兄だも~ん♪】


【だから――】【何か始まりましたよ】


【あ、トクさん……呪われてたの?

 もしかして昨日ので!?】


【違うのだろう。

 湖の男性は静かに昇った】


【ふぅん。じゃあ何してるんだろ?

 ウィスタリア師匠、何の術?】


【解呪の一種ですが、どちらかと言えば解錠ですね。

 響殿の内にいらっしゃるのは、白銀光を纏う黒猫の女神様。

 欠片ですが、かなり強い力をお持ちですので、大神バステト様でしょうか?】


【灰猫の女神様も見えるわよ?】


【……見えました。

 纏う黄金光に見覚えがありませんか?】


【黄金光の灰猫女神様ね……あっ!

 何度かマリュース様を訪ねていらしたわ!

 ええっと~奥様の妹神様の~】


【キャティス様ですか?】


【そうそう! キャティス様よ!

 気づいてるなら早く言ってよねっ】


【いえ、以前バステート様から妹神様とお話しなさったと仰っていたのです。

 ナスタチウムが妹神様だと言うので言ってみただけなのですよ】


【それじゃあもうバステート様とキャティス様はお話ししたのね♪

 良かったぁ】


【響殿にはユーレイの女性が重なっておりますね……】


【あ……そうみたいね】

【そっか~♪

 ヨシさん、重なってるんだ♪

 見えないと思った~♪】


【【ヨシさん?】】


【トウゴウジさんと響お姉ちゃんのお師匠様なんだって~♪

 昨日、トウゴウジさんと話してたんだけど聞いてなかった?】


【飛ぶのに集中していたので……】【私も~】


【ふぅん。

 で、響お姉ちゃんとヨシさんの神様が黒猫(バステト)様と灰猫(キャティス)様なんだね♪

 どっちがどっちとなんだか わかんないけど~】


【そうですね。

 私にも組み合わせは分かりません】


【響お姉ちゃん、どっちもの神様の力 使えるの?】


【使えるのではないでしょうか】


【いいな~あっ! 鎖!】

【弾けましたね】【ふむ】


【やはり解錠でしたね】


【トクさんにも神様いるの?

 ちょっとだけ そんな気してたんだ~】


 オニキス師匠が居るって言ってたけど~。


【入っているのは確かですが……】

【隠れているのかしら? 見えないわね】


【かくれんぼ得意な獣神様?】


【小動物神様は皆様 得意ですよ】ふふっ♪


【そっか~♪

 きっとカワイイ動物さんなんだねっ♪

 あれれ? サイオンジさんとトクさん残して み~んなお庭に出たねぇ】


【ご夫婦で話したい事もあるのでしょう】

【庭の方は魔道の断面を確かめているな】


【ほえ? 魔道?】


【そう聞こえた】下を指す。

【魑魅魍魎が通る道なのですから、そう呼ぶのが妥当でしょうね】


【モグラさんの道……モグラさん、早く元に戻してあげなきゃ】


ウィスタリアとナスタチウムが強く頷いた。


【トウゴウジさん……腕輪してる?】

自分の具現環と見比べる。


【ふむ。最初に渡した試作だな。

 問題点を探してくれているのだろう】


【ユーレイさんに物?】


【霊体のみを渡している】


【じゃあソラもショウも使えるねっ♪

 物なのに、どぉするんだろ? って思ってた~♪】


【サイオンジ殿からの依頼なのだぞ?】


【だよねぇ】にゃは♪

【あれれ?

 カケルお兄さん、具現化してる?

 じゃあショウもできるの?】


【はい。カケルとショウは同じ神様を内包しております。

 そのトリノクス様は具現の神。

 ですので持っておりますよ】

ウィスタリアが答えた。


【飛翔さんは?】


【重なっておりますので使えると思いますよ。

 内の神はアーマル。私達の弟です】


【そっか~♪

 トリノクス様はショウの中で、アーマル様は飛翔さんの中だったんだ♪】


【知っていたのですか?】


【うん♪

 ショウの中、いっぱい入ってるな~♪

 って思ってたの♪】


〈あのぉ龍神様……〉【ふえっ!?】


ウィスタリアとナスタチウムが見上げて微笑み、結界端へと上昇した。

〈如何なさいましたか?〉


〈もう終わったのでしょうか?〉こそっと。


〈いえ、まだまだこれからですよ。

 出し易くするのでしょう〉


〈そうですか♪ では待ちます♪〉

若い死司神は嬉しそうな笑顔を向けたまま、仲間が待っている所へと上昇した。


【祓い屋ユーレイさんと死神さん、これからず~っと こんなふうに協力したらいいのにねぇ】


【そうね♪】【そうですね……】







魑魅魍魎の正体は、人魂(じんこん)獣魂(じゅうこん)獣神(けものかみ)の欠片を無茶苦茶に混ぜたものでした。


神魂(しんこん)の大きな塊が込められている堕神なら、内の神が(眠っていても)怨霊化を阻止しますが、小さな欠片では阻止できる程の神力はありません。

支配されたモグラは、それを利用して一触即発で怨霊化する魂(=魑魅魍魎)を作っていたんです。


モグラ自身は怨霊化させられる際にマリュースを抜かれていて、現状は その後に喰って取り込んだ欠片のみとなっていますので、考えついたのでしょうね。



紅火が初めて作った霊眼鏡がプチ活躍し、トクさんの封印を解きましたので、これから魔道端を街の結界の外へと繋ぎます。



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